日本農村医学会雑誌
Online ISSN : 1349-7421
Print ISSN : 0468-2513
ISSN-L : 0468-2513
58 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
シリーズ「農村医学を考える」
原著
  • ——「できる活動」と「している活動」に分けて——
    中井 智博, 三橋 俊高, 鈴本 宜之, 舟橋 宏樹, 後藤 亮吉, 後藤 俊介, 鈴木 ゆき, 杉本 健治, 星田 尚子, 轟木 孝浩, ...
    2009 年 58 巻 1 号 p. 4-12
    発行日: 2009/05/30
    公開日: 2009/07/13
    ジャーナル フリー
     介護保険制度の導入当初から,訪問リハビリテーションが漫然と在宅療養における介護サービスとして提供されることは適切ではないとされてきた。しかし,一方では利用者の目標設定をするために必要な評価方法が不十分であるのも現状である。機能的自立度評価法 (FIM) やBarthel Index (BI) を評価として取り入れるように推奨されているが,これらは「している活動」の評価であり,利用者の最大能力である「できる活動」を把握しなければ目標を設定するのは困難である。そこで,私たちは2005年に「できる活動」と「している活動」をそれぞれ同じ項目で評価し,点数化した生活機能スコア (functioning score: FS) という評価法を考案した。今回,2005年10月から2006年9月までの1年間で訪問リハビリの利用者を対象に評価を試行し調査した。「している活動」の合計得点は前回の44.1±13.7から今回の47.8±14.2へと有意に増加し (p<0.05),また「できる活動」の合計得点は前回の49.6±13.2から今回の51.6±13.5へと有意ではなかったが,増加傾向を示した。新しく考案した評価法で「できる活動」と「している活動」の差を明確にすることで,利用者のどこに問題があるのか的確に把握ができ,介護サービス事業者が共通の目標を設定できたと考えられた。
  • 佐藤 舞子, 大島 和佳子, 村山 正樹, 加藤 崇, 山田 勝身, 長谷川 伸, 倉持 元
    2009 年 58 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2009/05/30
    公開日: 2009/07/13
    ジャーナル フリー
     近年の研究から,透析膜の高い生体適合性と尿毒症性物質の除去が,患者の生命予後の改善に大きな影響を与えていることが示唆され,現在ではハイフラックス膜であるポリスルホン (PS) 膜が広く使われている。しかし,一般にハイフラックス膜での除去性能の向上は,同時に透析膜からのアルブミン漏出を引き起こすことが懸念されている。そこで今回,最近開発されたアルブミン漏出を極力抑えたPS膜を用い,対象としてアルブミン漏出が少なくかつ生体適合性が良いことで用いられているethylenvinylalcohol (EVAL) 膜とを,6か月間ずつ連続使用して膜素材の違いが透析患者の血清総蛋白値,アルブミン値に与える影響を比較検討した。PS膜はEVAL膜に比べて各溶質の除去率は有意に高く,血清総蛋白値も有意に増加した。血清アルブミン値および血清アルブミン変化率は,PS膜では増加傾向を示したがEVAL膜では低下傾向が見られた。よって今回認められた血清総蛋白値および血清アルブミン値の変化の差異は,膜の溶質除去性能の差異に由来しているのではないかと考えられた。このことから特に低蛋白血症の透析患者にはアルブミン漏出を極力抑え,高い尿毒症性物質の除去性能を持つ膜素材の選択は必要であると考えられた。
報告
  • 小野 敦子, 榊原 代幸
    2009 年 58 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2009/05/30
    公開日: 2009/07/13
    ジャーナル フリー
     2002年から2004年の3年間に愛知県知多厚生病院を受診したハチ刺症164例を対象とし,年次推移,月別分布,発生時間,受傷から来院までの時間,年齢,性別,刺傷部位,刺傷か所数,ハチの種類,症状,救急外来受診率等につき検討した。年次比較では2004年が83例と最も多く,月別受診患者数は特に6月から9月に多く,時間帯別では日中に多く認められた。受診者性別では男性が95例と全体の58%を占め,年齢別では50歳以上が多かった。刺症部位は手,上肢,顔面,下肢の順で,露出部に多かった。全身症状の出現した症例は7例で,全体の4%に認めた。全身症状の内訳は,蕁麻疹1例,動悸1例,嘔気2例,気分不快2例,アナフィラキシーショックが1例であった。当院のある知多半島南部では,農業などに従事する高齢者の被害が多く,また,2004年度は5月から6月の降水量が少ないためハチの繁殖に適しており,被害が多かったと考えられた。
  • 谷畑 英一, 玉置 久雄
    2009 年 58 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2009/05/30
    公開日: 2009/07/13
    ジャーナル フリー
     2008年度現在厚生連DPC対象病院は24病院であり,準備病院を含めると60病院になる。厚生連病院の約半数がDPC医療に関わろうとしている。DPC対象病院にアンケート調査を行ない,96%の回収率を得た。出来高と比較した経済効果は約5%の増収であった。経済効果5%以上と5%未満の病院間の平均値の比較では経済効果,調整係数,ジェネリック医薬品導入率に有意差をみとめた。平均在院日数は14.2日,稼働率は81.4%であった。DPC導入前後の平均在院日数の短縮は1.5日,稼働率の低下は5.1%であった。稼働率低下予防策は病診・病病連携,地域連携が多かった。医療機関別係数は機能評価係数に相関していた。クリティカルパス適応率,ジェネリック医薬品導入率はそれぞれ29%,5.9%と低く,医療の質やコストの適正化のためには改善の余地があると思われた。調整係数廃止対策は機能評価係数の取得や予想される新機能係数施設基準の充実が多かった。DPC対象病院では医療の質,コストの適正化,稼働率に配慮しながら急性期病院としての機能を充実させていく必要があると考えられた。
  • 平石 啓, 岩野 弘法, 佐藤 和代, 松村 壮, 小石沢 正
    2009 年 58 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2009/05/30
    公開日: 2009/07/13
    ジャーナル フリー
     今日,医療の現場で抗菌薬が広く使用されるに伴い,術後の予防投与や漫然とした長期投与によって菌交代現象や薬剤耐性菌の定着が起こり大きな問題となっている1)。薬剤耐性菌は,薬剤の不適切な使用により発現し易いため,茨城西南医療センター病院では,ICTによる病棟ラウンドや特定抗菌薬使用届,耐性菌報告書を用いて対応してきた。当初,特定抗菌薬使用届と耐性菌報告書の2種類の情報は別々に管理していたが,今回,データベースを利用して2つの情報を患者IDでリレーションをとることで,1画面に表示・入力できるようになった。これによりMRSA保菌者への抗MRSA薬の不適切な使用を見つけ出し易くなり,ESBL産生菌が発現した場合も,患者が過去に使用した抗菌薬の種類・頻度が一目で分るようになった。また,期間を指定し病棟別に2種類の情報を載せた一覧が表示・印刷できるようになった。今回の改良により作業の簡素化と2種類の情報を関連付けることが可能となり,入院患者の特定抗菌薬の使用と耐性菌検出状況の管理を行なうための良きツールとなり,特定抗菌使用届と耐性菌報告書が一層感染対策に活用できるようになったと考える。今後も院内での抗菌薬使用状況と耐性菌検出状況を的確に把握し,得られた情報をスタッフ間で共有していくことにより感染対策に貢献していきたい。
  • 清水 敏夫, 金本 淳, 宮川 恭一, 武田 哲, 千賀 彩加, 佐近 普子, 加藤 清, 本道 隆明, 木村 薫
    2009 年 58 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2009/05/30
    公開日: 2009/07/13
    ジャーナル フリー
     検査科「培養室」として,平成17年10月よりこれまで延べ900件を越える体外受精の胚移植時に,独自に「説明シート」を作成し患者に対面で説明を行なってきた。
     検査科で体外受精を担当することは診療支援そのものとも言えるが,培養室の立場から患者に直接接して状況を伝えることは,患者にとって不妊治療への理解が更に深まると思う。検査技師にとってもラボワークのみの担当に比べ,説明シートの作成に30分程度を要し,患者に対面することで煩わしいこともある。しかし,患者の顔を見ることにより,担当している業務への自信や責任と,成功率を高めるために研鑽を積む必要性を実感できた。
     患者からの質問に答えるには,それなりの知識と自施設のデータを把握しておく必要がある。患者が心配する胚の質,奇形児などの質問に対して,スタッフ間で情報を共有し,的確に答えることが求められる。また,体外受精の頻回実施にもかかわらず成功しない患者や40歳代後半の患者への説明など,対応に苦慮するケースもある。毎回同じ説明をするだけでなく,成功率を高める方策を積極的に実施して,説明に追加することが必要と思われる。
  • 山田 千夏, 朱宮 哲明, 深見 沙織, 尾崎 隆男
    2009 年 58 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2009/05/30
    公開日: 2009/07/13
    ジャーナル フリー
     食中毒予防において,衛生的な手洗いは非常に重要である。当院栄養科職員33名の手の洗浄度を,ATPふき取り検査と手洗いチェッカーを用いて調査し,両検査を用いた衛生教育の有効性を検討した。
     ATPふき取り検査は2回行なった。1回目の検査では通常の手洗いを行なった後のATPを測定し,後日手洗い教育を行なった。2回目の検査は1回目の検査の約1週間後に行ない,衛生教育前後のATP測定値を比較検討した。測定値は,Aランク (合格),Bランク (注意),Cランク (不合格) に分けて評価した。手洗いの衛生教育には手洗いチェッカーを用いて手指の洗浄度を各自確認した。
     1回目の検査ではAランクの職員は58%であった。手洗いチェッカーによる衛生教育では,爪に関して64%の職員の手洗いが不十分であった。そこで爪の部分を手のひらに擦り合わせることによる手洗い教育を行なった。手洗い教育後の2回目の検査では,Aランクの職員数は91%に増加した。
     本取り組みからATPふき取り検査と手洗いチェッカーを用いた衛生教育は有効であると考えられた。今後も定期的に両検査を行ない,食中毒予防に努めたい。
feedback
Top