日本農村医学会雑誌
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58 巻, 4 号
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シリーズ「農村医学を考える」
原著
  • 早川 富博, 鈴木 祥子, 小林 真哉, 福富 達也, 井出 正芳, 大野 恒夫, 大河内 昌弘, 多気 みつ子, 宮本 忠壽, 丹村 敏則 ...
    2009 年 58 巻 4 号 p. 438-446
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/04/12
    ジャーナル フリー
     発芽玄米の糖代謝・脂質代謝に対する影響を知ることを目的に,糖尿病患者に試験食 (発芽玄米: 白米を1:1に調整) を3か月間摂食させて,その前後で糖・脂質のパラメーターを比較検討した。3か月間の試験食摂取によって,グリコヘモグロビンは,摂取前の6.40±0.23%から6.23±0.19%へと有意な低下が認められた。空腹時血糖値に有意な変化はなかったが,インスリン値とHOMA-IRは低下傾向を示した。T-CHO値,TG値は試験食の摂取によって変化はみられなかったが,LDL-c値は低下傾向,HDL-c値は増加傾向を示し,LDL/HDL比は摂取前の2.03±0.13から,摂取3か月後には1.83±0.12へと有意に低下した。試験食摂取量を多い群と少ない群に分けて検討すると,試験食の摂取量が多い群で,LDL-c値は有意に低下,HDL-c値は有意に増加した。今回,糖尿病患者において,3か月間の発芽玄米摂取によって糖代謝と脂質代謝がともに改善する結果が得られた。これらは,糖尿病患者の食事療法として発芽玄米が有効であることを示すものであるとともに,高コレステロール血症の治療にも有効である可能性を示すものと考えられた。
  • 大貫 新太郎, 湯浅 譲治, 安田 弥子, 井坂 茂夫
    2009 年 58 巻 4 号 p. 447-451
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/04/12
    ジャーナル フリー
     早期前立腺癌に対する前立腺全摘除術の治療成績を集計し,今後の課題をあきらかにする目的で症例の解析を行なった。2001年1月~2006年12月までに当院で前立腺全摘除術を施行した早期前立腺癌63例を検討対象とした。年齢は52~79歳 (平均67.5歳,中央値68歳),治療前PSAは3.5~37.7ng/ml (平均12.2ng/ml,中央値8.8ng/ml) であった。臨床病期T1c: 21例,T2a: 29例,T2b: 13例であった。手術方法は閉鎖リンパ節郭清と恥骨後式前立腺全摘除術を行なった。手術時間は194~340分 (平均261分,中央値245分),出血量は135~3,500ml (平均1,123ml,中央値900ml) で自己血以外に輸血を要した例は11例 (17.5%) であった。摘出標本の病理組織学的検索の結果,Gleasonスコアは6以下: 32例,7: 25例,8以上: 6例であり,pT2a: 31例,pT2b: 4例,pT3: 28例,pN1: 2例であり,Organ confinded disease (以下OCD) は35例 (55.6%) であった。早期の合併症として直腸損傷2例,創部感染10例,精巣上体炎2例を認め,晩期合併症として吻合部狭窄2例が認められた。術後3か月の腹圧性尿失禁 (1日パッド2枚以上) は15例 (23.8%) であった。両側,もしくは片側の神経温存を行なった症例は28例でそのうちPDE5阻害剤を用いて勃起が可能であった症例は6例であった。PSA再発が12例に認められ内分泌療法が追加された。PSA再発に関与する因子としてOCDであるかどうかは有意な因子であった。
  • 川本 徹, 谷畑 英一, 玄 東吉, 湊 志仁, 服部 光治, 下條 ゑみ, 椎貝 達夫
    2009 年 58 巻 4 号 p. 452-458
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/04/12
    ジャーナル フリー
     近年,Helicobacter. pylori菌 (以下,H. pylori菌) 感染が萎縮性胃炎および胃がんの発生に関与することが示唆されたことから,我々はH. pylori菌感染の診断が胃病変の存在を疑う重要な指標になると考えている。そこで,我々は血清H. pylori IgG抗体 (以下H. pylori抗体) と,H. pylori菌感染の有無,萎縮性胃炎の有無,および胃病変の有無との関係を検討することにより,人間ドック,一般健診におけるH. pylori抗体測定の意義を考察した。対象は茨城県取手市および周辺農村地域から人間ドック,一般健診,あるいは外来を受診した148名 (男: 93名,女: 55名) で,上部消化管内視鏡受診者が87例,上部消化管造影受診者が80例であった。内視鏡検査施行87例のうち,H. pylori抗体陽性は55例 (63%) であった。H. pylori菌は抗体陽性55例中41例 (75%),陰性32例中8例 (25%) に認められ,これらの間に有意差が認められた (P<0.0001)。胃病変別のH. pylori抗体陽性率は表層性胃炎,萎縮性胃炎,びらん,潰瘍,胃底腺ポリープ,過形成性ポリープ,腺腫,悪性腫瘍でそれぞれ,17%,70%,61%,77%,31%,62%,0%,100%であった。また,造影検査施行80例中,H. pylori抗体陽性は44例 (55%) で,抗体陽性率は,所見なしが61%,陥凹性病変が59%,隆起性病変が36%,悪性腫瘍が100%であった。以上より,萎縮性胃炎や潰瘍性病変などでH. pylori抗体陽性率が高いことから,人間ドック,一般健診受診者に対して,H. pylori抗体陽性は上部消化管検査,特に内視鏡検査を勧める上で有用な動機付けになり得ると考えられた。
報告
  • ——茨城県内初の試み——
    鈴木 直光
    2009 年 58 巻 4 号 p. 459-468
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/04/12
    ジャーナル フリー
     茨城県行方市では3歳児健診以降で集団生活に入った後,睡眠・食事・電子メディア視聴時間などの生活リズム・環境を整え直し,成長発達のつまずきや集団適応の困難さなどに対して園・保護者・医療・行政の連携により子育て支援ネットワークを構築することを目的とし,全ての5歳児を対象に5歳児健診を県内で初めて開始した。当日は身体計測・問診・視力検査,栄養相談,歯科衛生相談後,音楽療法士によるミュージック・ケアを保護者と共に観察し,心理相談,診察,保健師のまとめで健診は終了となる。診察内容としてはコミュニケーションがとれているか,追視ができるかなどを診るとともに問診票で気になるところを細部にわたってチェックした。配慮が必要な児は,市の相談教室事業の利用を勧め,また保護者の同意を得た後,心理相談員・保健師が園に出向いて定期的な巡回相談を実施している。平成18年度は計10回,平成19年度は計12回の健診を行ない,最終受診率はそれぞれ90%および88%であった。所見としては,眼科的問題8.8% (平成19年度5.6%),多動傾向5.6% (9.7%),肥満4% (2.8%),育児不安2.8% (4.5%),言葉の問題2.4% (4.2%),夜尿2% (3.5%) などが主にみられた。多動傾向の児童は言葉に問題のある児童に比べ有意に入眠時刻に遅れが認められた。スタッフが園を訪問する訪問型健診と異なり,早起き・早寝の推奨など保護者に直接アドバイスできるのが保健センターでやる悉皆型健診の特徴である。
  • ——「職員相談」3年間の取り組み——
    五艘 香, 小瀧 浩, 小宮 進, 別所 隆
    2009 年 58 巻 4 号 p. 469-475
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/04/12
    ジャーナル フリー
     昨今職場におけるストレス状況は悪化してきており,心の健康に対する社会的関心はますます高まってきていると思われる。ストレスを自覚する労働者の増加,仕事上のストレスにより精神障害を生じたとする労災認定件数や過労自殺の増加などの問題が取り上げられるようになってきている。このような時代背景の中,職場として組織的な労働環境の見直しとともに,メンタルヘルス対策が必要であると考える。
     本論文では,伊勢原協同病院におけるメンタルヘルス支援活動の取り組みについて報告する。第一に職員の相談窓口の開設を行なった。開設から相談者数および相談件数は,年々増加を示し導入はスムーズであったと思われる。またメンタルヘルス支援を進めていく上で,院内および院外での連携体制の構築,職場として心の健康問題への取り組みの表明,職員のセルフケア能力の向上,メンタルヘルス不調に陥った職員の早期発見や対応,メンタルヘルスに対する偏見の緩和などを目的とした啓発活動,そして心の健康問題による休業者に対する復職支援などを行なってきた。当院におけるメンタルヘルス体制の基礎を構築してきたのではないかと考えている。
症例報告
  • ――経過中に急性汎発性発疹性膿疱症を呈した1例――
    竹之下 秀雄, 山本 俊幸, 藤山 幹子, 橋本 公二
    2009 年 58 巻 4 号 p. 476-482
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/04/12
    ジャーナル フリー
     59歳,女性。非定型精神病のためカルバマゼピンが処方され,約1か月後に発熱と皮疹が出現した。当科初診時,38°C台の発熱,全身性に浮腫性の播種性紅斑丘疹型の皮疹がみられ,紅皮症状態を呈し,頸部リンパ節が腫脹し,肝機能障害もみられた。初診の3日目には急性汎発性発疹性膿疱症様状態となった。プレドニゾロン50mg/日の全身投与を開始し,徐々に改善傾向を示した。経過中,軽度の膵炎を発症したが治療の必要はなかった。ヒトヘルペスウイルス6型DNAが,全血中より2期間にわたって検出され,この期間は,血清中のアミラーゼ値とリパーゼ値の上昇期間と一致していた。以上より本例を,経過中に急性汎発性発疹性膿疱症を呈し,膵炎を発症したカルバマゼピンによる薬剤性過敏症症候群と診断した。
  • 宮澤 智徳, 千田 匡
    2009 年 58 巻 4 号 p. 483-487
    発行日: 2009/11/30
    公開日: 2010/04/12
    ジャーナル フリー
     症例は48歳の男性で早期胃癌に対し自動吻合器を用いた遠位側胃切除術,Billroth I法による再建を施行した。第18病日頃より腹痛および嘔気,嘔吐が出現した。腹部CT検査や上部消化管内視鏡検査で残胃の著明な拡張と吻合部の浮腫が指摘されため輸液管理を施行したが症状は不変であった。第54病日より茯苓飲を内服後,症状が劇的に改善した。第57病日より食事摂取を再開した。第72病日に茯苓飲の内服を継続したまま退院となった。退院後6週目に茯苓飲を中止したが経口摂取は良好で嘔気,嘔吐は出現していない。
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