日本農村医学会雑誌
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59 巻 , 1 号
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報告
  • 井出 政芳, 早川 富博, 鈴木 宣則, 小林 真哉, 福富 達也, 都築 瑞夫, 江崎 洋江
    2010 年 59 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2010/05/30
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
     家庭における介護力の低下は1985年以降徐々に進行し,2000年に介護保険法が制定されると,高齢者介護は家庭内における私的介護から施設利用の公的介護へとその軸足を移すことになった。施設介護の対象となる高齢者の多くは高血圧・糖尿病・脳血管障害後遺症などの慢性疾患を抱え,さらに認知症を併発するなど,病院-施設間連携の強化は施設介護上喫緊の課題となった。私たちはこうした状況を背景として,病院-施設間において,診療・介護情報を有機的に共有し,施設介護力の強化を図ることを目的として,2009年4月より電子メールによる情報伝達の実験的運用を開始した。電子メールは何よりも情報伝達手段として情報を記述することにおいて優れており,病院-施設-家族間の相互理解のための道具として,ひいては両施設における診療と介護経験の共同化のための装置として機能する。それは終末期高齢者が,<病死としての死>から逃れ,<介護の延長線上における死>として自らの死を実現するための環境を,介護施設内に準備できる可能性を意味する。特に,僻地医療における病院・診療所・施設・介護支援センターなどをリンクした医療・介護の共同化の目的のためには,その導入の容易さ・運用コストの低さからも一度は試みて良い手法である。
  • 矢田部 佳久
    2010 年 59 巻 1 号 p. 17-19
    発行日: 2010/05/30
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
     茨城県北部の整形外科研修体制の現状について検討するため,県北部にある日本整形外科学会 (以下,日整会) が認定する整形外科研修施設 (以下,施設) を調査した。また,他の県内各地域の施設数を調査し,各地域別にその数を比較した。さらに研修施設数を人口比で調べ,地域別に比較した。日整会が認定する施設は,平成20年12月現在茨城県内に45であり,うち県北は5であった。県内他地域の施設数は,県央: 10,県南: 8,つくば: 10,鹿行: 5,県西: 7で,県平均は7.5であった。また,人口10万人当たりの施設数は県北で0.76であった。他地域の人口10万人当たりの施設数は,県央: 2.15,県南: 1.80,つくば: 1.80,鹿行: 1.43,県西: 1.79で,県平均は1.52であった。日整会専門医資格を得るためには,同学会が認定する施設で3年間以上の研修をすることが必須となっており,整形外科専門医資格を得たいと考える医師は必然的に研修施設に集まることとなる。施設数,人口比共に不足していたのは,県北,鹿行の2地域であった。県北の施設数は県平均の3分の2で,最多地域の半分であった。また,人口比では県平均の半分,最多地域の約3分の1であった。これは茨城県北部の整形外科研修体制が不備である実態を表しており,その改善が急務と考えられた。
看護研究報告
  • 熊坂 隆行, 升 秀夫, 片岡 三佳, 棟久 恭子, 森田 優子
    2010 年 59 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 2010/05/30
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
     精神科病院の入院患者を対象として,看護支援における動物を用いたアプローチの有用性を検討した。動物とのふれあいの効果を検討したところ,このアプローチを必要としている患者の傾向と,アプローチによる患者の気分の変化が明らかとなった。患者の入院生活支援を24時間している看護師において,環境整備は重要な看護援助のひとつであり,動物が好きな患者において「動物がいる入院環境を整えること」は,情緒の安定,意欲の向上,環境の適応などに繋がる可能性が考えられた。
  • 吉留 厚子, 吉岡 香織
    2010 年 59 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2010/05/30
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕昭和20年代の加計呂麻島 (かけろまじま) での妊娠・自宅出産体験について明らかにし,現在の出産環境について再考する。
    〔方法〕中林ミエ子氏に戦時中・戦後の加計呂麻での暮らし,妊娠・出産・子育て,「とりあげ婆さん」としての体験について聞き取り調査をした。
    〔結果〕中林氏は調査日当日88歳であり,21歳で結婚し,7人出産した。妊娠中は,出産間際まで田植え・畑仕事・薪拾いなどの農作業を毎日した。出産に向けて準備するものなどは義母に話を聞き,本を見て勉強していた。当時,産科医や産婆はいないので,出産の介助は出産経験のある「とりあげ婆さん」であった。一度出産を経験した女性は伝統的な「とりあげ婆さん」として,出産介助を行なっていたので,同氏も「自分も出産に立ち会う」と自覚し,8人の赤子を取り上げた。
    〔考察〕結びつきの強い地域でのお産は,世代間での知識・技術の伝承や共有なども行なわれ,母親は「次の世代に伝えなければいけない」という使命感や責任感をもっていたと考えられる。妊娠から育児までの経験は,その後の女性が主体性をもって物事に向き合う生き方に繋がっていたのではないかと思われる。
  • 山口 さおり, 八代 利香, 吉留 厚子
    2010 年 59 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2010/05/30
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
     日本看護協会による資格認定制度が創設され10年余り経過したが,鹿児島県にはいずれの養成機関も存在しない。鹿児島県内に就業する看護師を対象に,専門看護師ならびに認定看護師に関する教育ニーズを明らかにし,キャリア形成を支援するための教育を検討することを目的として調査を行なった。調査期間は平成20年9月で,鹿児島県内40病院の看護師1,800名を対象とした。調査用紙を配布した看護師1,800名のうち1,258名より回答が得られ (回収率69.9%),有効回答は999名 (有効回答率79.4%) であった。その結果,40.9%が専門看護師資格を,また56.5%が認定看護師資格の取得を希望していた。資格取得を希望する分野のうち,最も多い専門看護師資格は「がん看護」,ついで「急性・重症患者看護」,認定看護師資格は「救急看護」ついで「緩和ケア」であった。鹿児島県においては,資格認定のための教育機関が存在しないという現状と,離島・へき地を有するという地理的条件が,看護師の教育ニーズを阻む大きな要因となっていた。看護師のキャリア形成を支援するために,キャリアデザインに関する個別的な相談体制および柔軟な教育カリキュラムの構築の必要性が示唆された。
短報
  • 永美 大志, 大谷津 恭之, 加藤 絹枝, 前島 文夫, 西垣 良夫, 夏川 周介
    2010 年 59 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2010/05/30
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
     石灰硫黄合剤は,春先に果樹の殺虫,殺菌に使用される農薬である。製剤は,強アルカリであり,しばしば難治性のアルカリ腐食を本態とする深達性の潰瘍を引き起こす。
     我々も2007年に50代男性の症例を経験した。患者は,3月上旬,防水性の防護具を着用せず庭木に本剤を散布し,ズボンなどへの付着にかまわず,そのまま作業を続行した。夕方より皮膚付着部の疼痛が惹起し,翌朝になっても継続したため受診した。初診時,両下腿後面に白色潰瘍を伴う3度の熱傷を認めた。第6病日デブリードマン術を施行したが,潰瘍は真皮層から脂肪層に及んでいた。人工真皮で被覆して肉芽形成を促した後,第20病日に植皮術を施行した。経過は順調で,約1か月で退院となった。
     わが国において2000年代に入ってからほぼ毎年,本剤による化学熱傷の症例が報告されており,他の研究報告を見ても,この熱傷の発生数がなかなか減少していないことが伺われた。
     この熱傷を防止するには,(1) 防水性の防護具で全身を覆うようにすること,(2) 万一本剤が身体に付着した場合は,迅速に洗浄すること,の2点が肝要である。障害防止のためのさらなる啓発活動が必要と考え,啓発パンフレットを作成した。
地方会
国際会議報告
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