日本農村医学会雑誌
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59 巻 , 4 号
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原著
  • 塚原 貴子, 宮原 伸二, 山下 幸恵
    2010 年 59 巻 4 号 p. 461-469
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
     本研究は,要介護度2以上の判定を受けている認知症患者を,在宅で1年以上介護した家族介護者からの聞き取り調査で,在宅介護の継続要因を明らかにすることである。
     対象者は,介護支援センター,訪問看護ステーションに対象の抽出を依頼し,研究の目的を説明し同意の得られた5人の家族介護者にインタビューした。家族介護者が,インタビューで語った125コードから在宅介護の継続に関わる要因として見出された中核概念は『要介護者から得た介護意欲』『本人の要望に添える予感』『サポートの質と量』『周辺症状の介護技術の向上』『認知症の受容』『予測困難な反応』『周辺症状への対処困難』『緊急時のサポートの不足』の8つであった。
     在宅介護の継続には,『予測困難な反応』『周辺症状への対応困難』『緊急時のサポート不足』の阻害要因を『認知症の受容』『周辺症状の介護技術の向上』によって克服していた。克服を支える原動力には『要介護者から得た介護意欲』や地域住民,身内及び専門職からの必要な『サポートの質と量』を受けていた。在宅介護の決断には『本人の要望に添える予感』を体験していた。
  • 杉浦 正士, 梅村 奈緒, 中根 由美子, 早川 富博
    2010 年 59 巻 4 号 p. 470-481
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
     平成20年度から始まった特定健診・特定保健指導は,長年わが国の住民健診の中心的役割を担ってきた基本健康診査からの大転換であった。
     特定健診・特定保健指導は実施主体が行政から保険者になるなど多くの変更があり,これまでの基本健康診査と比較して予想以上の影響があったと考え検証した。
     特定健診では健診の目的をメタボリックシンドロームの該当者・予備群の減少と明確に示し,健診項目の変更や基準範囲の変更がなされた。この影響は予想以上に大きく,1) 高齢者の受診数の減少,2) 貧血検査・心電図検査の実施が激減,3) 眼底検査実施は皆無に等しい状況,4) 基準範囲の変更により変更された項目では要医療や要経過観察と判定される割合が大幅に増加した,などの変化がみられた。このことは従来の基本健康診査が住民の健康管理・維持のための健診であったのに対して特定健診はメタボリックシンドロームの選別手段的な位置付けとなっており,健診の意義が大きく異なったように思われる。
     地域に根ざした医療・保健・福祉を目指す当院を始めとする厚生連病院としては,特定健診での多くの問題点を直視して積極的なポピュレーションアプローチを展開するなどの取り組みが重要な地域貢献となると考える。
  • 大林 浩幸
    2010 年 59 巻 4 号 p. 482-492
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
    〔目的と背景〕厚生労働省立案の『喘息死ゼロ作戦』達成には,治療ガイドラインの周知と吸入ステロイド薬を適切に早期使用することが重要である。しかし,専門医数が極めて少ない地区で『喘息死ゼロ作戦』の展開には限界がある。岐阜県医師会東濃ブロックで組織した東濃喘息対策委員会は,病・診・薬・行政介護の4層構造連携システムを独自に構築し活動3年目になった。今回これまでの活動成果を検討した。
    〔方法〕喘息カードを媒介とした病診連携や講演会等を通じたガイドラインの周知を行なう第1層,薬剤師対象の吸入指導セミナーを介した医薬連携の第2層,救急隊との連携の第3層,介護職との協力体制の確立を目指す第4層構造を構築し,『喘息死ゼロ作戦』への効果を,吸入ステロイド薬処方量と対10万人喘息死亡者数の変化で評価した。
    〔結果〕地区内の吸入ステロイド薬の処方量が活動前の約2倍となった。薬剤師対象の吸入指導セミナーは地区内薬局の100%の受講を得,良質で均一な吸入指導体制の基礎が出来た。介護支援セミナーを通じ,介護職との協力体制も出来てきた。2回行なった市民公開講座はいずれも盛況で,市民啓蒙に貢献した。東濃地区喘息死亡者は平成10年度の4.13人/10万人から平成20年度には0.81人/10万人と大きく減少し,平成20年度岐阜県全体の1.17人/10万人と比較しても良好な結果を得た。
    〔結論〕東濃喘息対策委員会の構築した4層構造の連携システムは,専門医が少ない地区でも,喘息死を確実に減らせる可能性がある。
  • 川本 晃司, 山下 由美子, 河野 光恵, 安井 賀代子, 岡入 美郷, 野村 美穂, 佐川 京子, 藤井 彩子, 岩重 容子, 岡村 みゆ ...
    2010 年 59 巻 4 号 p. 493-499
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
    〔目的〕適切な眼科通院サポートが無いために白内障手術を諦めている離島住民に対して,比較的長期の入院と離島往診を組み合わせた白内障手術とその術後管理の有効性と術後合併症の発症について検討した。
    〔対象と方法〕対象は定期的に離島往診を行なっている患者のうち,2009年1月から2010年1月までに当科で白内障手術を施行後,当院眼科外来または離島往診にて6か月以上の術後経過観察が可能であった27例54眼とした。上記の患者をI.白内障手術前後に当科への通院が可能な患者群 (通院可能群) と,II.当科への通院が困難な患者群(通院困難群)の2つに分けた。各群の患者には白内障手術前に所定の検査を行ない,手術後に通院可能群は当院外来で,通院困難群では当院外来と離島往診で術後検査を施行した。
    〔結果〕通院可能群は13例26眼,平均年齢は79.3歳,通院困難群は14例28眼,平均年齢は82.6歳であった。術前の検査では平均視力 (logMARで表示。括弧内は少数視力)は通院可能群で0.69 (0.41),通院困難群で0.80 (0.33),術前の平均等価球面度数は通院可能群で-0.43D,通院困難群で-0.42Dでいずれも有意差を認めなかった。術後の視力については通院可能群,通院困難群いずれの群でも概ね2段階以上の視力の改善がみられ通院可能群で0.36 (0.66),通院困難群で0.44 (0.53)であり,術後の眼感染症はいずれの群でも見られなかった。
    〔結論〕眼科通院が困難な離島患者に対して,入院期間を延長し離島往診での手術後診察を組み合わせることで従来と同等の手術結果が得られ,術後の合併症発症に有意な差は見られなかった。
報告
  • 石井 洋子, 佐藤 作喜子, 杵淵 香純, 柳田 奈央子, 菅沼 徹
    2010 年 59 巻 4 号 p. 500-503
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
     伊勢原協同病院では,患者さんが安心して食べられる給食を提供することを目的に,地元野菜の積極的導入を「地産地消」の一環として平成17年1月から開始した。JA病院として「地産地消」に取り組むということは,自給率向上に寄与し地域とよりよい関係を作っていくために,大変重要なことと考えている。「地産地消」の利点として,生産者の顔が見える事により,食品の安心・安全につながることがあげられる。
     現在,JAいせはら野菜部会の部会員10人により,病院への野菜の納入が行なわれている。当初は,生産者が作付け計画の中で作ったものを病院に出荷していたが,次第に病院が必要とする野菜を考慮した生産に変わってきた。最近では,金額ベースで野菜全体の約30%が地場野菜で占められるようになった。一方,現在の生産者の平均年齢が56歳であり,今後も継続的に続けるためには,新たな方策を考えなければならない時期にきている。生産者グループを現時点で増やすことは難しいが,現在のメンバーが作っていない品目について,他の生産者にサブメンバー的な位置づけでの納品依頼を開始している。
症例報告
  • 根岸 由美子, 宮澤 智徳, 小出 則彦, 藤田 亘浩, 本間 憲治
    2010 年 59 巻 4 号 p. 504-508
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
     症例は67歳の男性で右下腹部痛が出現し当科に入院となった。腹部CT検査では虫垂は腫大し壁肥厚を認めた。また虫垂近傍に膿瘍腔と考えられる限局性の低吸収域が存在した。以上より膿瘍形成を伴う急性虫垂炎の診断で手術を施行した。
     手術所見では虫垂は著明に腫大し,虫垂の中間部で腫瘤を形成し小腸と癒着していた。虫垂切除および空腸部分切除を施行し病変を摘出した。病理検査所見は虫垂のほぼ全域に粘液嚢胞腺腫を認めた。また虫垂と一塊となっていた腫瘤は粘液瘤であった。粘液瘤は空腸と癒着し小腸の固有筋層まで粘液の侵入があった。術後経過は良好で第12病日に退院となった。空腸と癒着した虫垂粘液嚢胞腺腫は非常にまれであり文献的考察を加えて報告する。
看護研究報告
  • 藤本 佐希子, 川下 貴志, 伊藤 有沙, 志水 貴江, 飯田 月美, 大谷 憲子
    2010 年 59 巻 4 号 p. 509-512
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
     A病院ICUにおいて重症・救急患者家族アセスメントツール (CNS-FACE) を標準的なツールとして用いることで,スタッフの家族援助に対する認識と実践の変化を明らかにし,今後の家族援助の手がかりを得たいと考え研究を実施した。
     ICU勤務の看護師28名を対象とし,事前にCNS-FACEについて理解を深めるため説明会を開催。CNS-FACEを用いて,ニード・コーピングを把握する重要性を伝えた。看護研究メンバーが無作為に選出した患者家族に対し,CNS-FACEを用いて客観的アセスメントをスタッフに依頼。実施後にアンケートを配布し,看護師の認識の変化を調査した。CNS-FACE施行後,家族との関わりに変化があったと答えたスタッフは看護師経験年数1~3年目100%,4~6年目64%,7年目以上50%であった。CNS-FACEの46項目を把握して関わることで,積極的な介入意識を持つことができたと考える。その結果,経験年数に関わらず,看護者の家族看護に対するストレスの軽減も図れ,家族看護に対する認識の変化をもたらすことができたと考えられる。1~6年目の看護師はニードやコーピングを客観的に得ることができ,家族看護に対する認識の変化をもたらすことができた。7年目以上の看護師における認識の変化は50%であった。CNS-FACEの導入は,6割以上のスタッフが,家族看護に対して有用だと認識した。
  • 小柳 ルミ子, 板垣 円, 土橋 祐子, 渡辺 式, 浜田 美幸
    2010 年 59 巻 4 号 p. 513-517
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
     近年多くの施設でインシデント報告システムが確立され,インシデントに基づいた様々な対策がとられている。当病棟では平成20年4月から6月の3か月間で36件のインシデントが報告されている。その中で確認不足によるインシデントが15件と全体の41.6%を占めた。従来,当病棟ではインシデント発生後に対策を立て事故防止に努めてきた。しかしインシデント発生後の時間経過と共に意識が薄れ同じミスを繰り返してしまうことから,事故防止に対する意識を維持できるような働きがけが必要であると感じた。そこで確認不足によるインシデントに着目し,朝の申し送り10分間の時間を活用して患者認証,注射確認,与薬確認,針の取り扱いなどの対策方法を,スタッフによるロールプレイや質問形式で繰り返し再学習していった。その結果,事故防止の振り返り実施後3か月間の確認不足によるインシデントは7件と減少した。スタッフへのアンケートでは,再学習による事故防止の振り返りは事故防止に対する意識を高めると全員が回答していることから,意識改革に有効であったと考える。さらに朝の10分間の時間を活用したことで記憶がしっかり残ったまま業務に入ることができたこともインシデントの減少につながったのではないかと考える。
  • 古賀 聖典, 南 慶子, 戸高 奈津美, 川本 晃司
    2010 年 59 巻 4 号 p. 518-523
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル フリー
    〔目的〕当院勤務の視能訓練士 (以下ORT) が山口県柳井市保健センターでの3歳児集団健診および当院小児科での3歳児健診に介入することによる視機能異常検出に対する有用性について検討を行なった。
    〔対象と方法〕対象は平成21年7月から平成22年2月末までに柳井市保健センターで実施される3歳児集団健診と当院小児科で3歳児健診を行ないORTによる眼科健診を希望した48名の児とした。方法は,柳井市保健センターでの3歳児集団健診では当日保護者が提出した問診票を用いて,保健師が再度保護者へ児の眼についての詳細な問診を行ない,家庭にて視力検査ができなかった児および家庭での検査で視力が0.5未満であった児に対しては2.5mの視力検査を行なった。当院小児科で3歳児健診を受けた児に対しては,保護者の希望があればORTが小児科外来で2.5mでの視力検査,レフトラクトメーターによる屈折検査,眼位検査,両眼視機能検査を行なった。眼科的検査終了後,保護者へ3歳児眼科健診の意義や希望について,アンケートを実施した。
    〔結果〕柳井市保健センターおよび当院での3歳児眼科健診を受診した3歳児のうち8人 (16.6%) が二次健診受診の対象となった。二次健診で眼科を受診した児の行なった検査では,遠視が3人,不同視弱視が1人であった。アンケートからは視機能検査の専門職であるORT介入による3歳児眼科健診に対して高い評価が得られ,約半数の保護者が家庭で行なう視力検査に不安を持っているという結果が得られた。
    〔結論〕山口県柳井市における3歳児眼科健診にORTを介入させることにより,放置すると将来的に弱視へ至る可能性のある不同視弱視を検出することができた。
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