日本農村医学会雑誌
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59 巻 , 5 号
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原著
  • 平山 克, 佐々木 司郎, 齋藤 礼次郎, 塚本 茂樹, 林 雅人
    2011 年 59 巻 5 号 p. 551-561
    発行日: 2011/01/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
     秋田県厚生連平鹿総合病院 (以下,当院) において診療を担当した最近12年間の食道癌症例を網羅的に集積し,417例のデータベースを構築して検討を行なった。当院は,秋田県の食道癌診療の約10%を担当していると類推可能であった。症例の66%は他医療機関からの紹介であり,当院が地域の中核病院として機能していることが示された。他方,健診や人間ドックによる診断症例は9.6%と少ない結果であった。根治的治療を目指すことが出来た症例は75%であった。診断確定後は98%において自院で治療が行なわれた。施行された治療内容では,平成14年までは手術治療が多く,平成15年以降は化学放射線療法が増加していた。また,根治を目指した症例の91%が当初の治療を完遂しており,そのCR率は73%であった。根治的治療施行例の遠隔成績は,他施設と比較しても遜色のない成績であった。さらに,健診や人間ドックによる診断例の遠隔成績は外来での診断例等と比較して有意に良好であった。今後の治療成績の向上には,このカテゴリーの症例を増加させることが近道かもしれない。再発は治療後1年以内が最も多く,殆どの再発は2年以内であった。当該期間における綿密なfollow upが必要である。一方,死因の検討では根治を目指した症例の中で原病死は66%に留まり,他病死・他癌死が34%を占めていた。即ち,follow upにおいては,対象が高齢者であることを鑑みて,再発のみでなく慎重な全身管理が肝要である。
報告
  • 池田 真紀, 三浦 崇則, 鈴木 久美子, 三井 千鶴, 小川 昭正
    2011 年 59 巻 5 号 p. 562-567
    発行日: 2011/01/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
     安城更生病院 (以下,当院) では多職種で構成された教育研修委員会を立ち上げ,今年で5年目を迎えた。この委員会は,新人オリエンテーション・生涯教育を担当している。今回の調査はこれまでにこの委員会が実施した新人オリエンテーションの実績を振り返るとともに今後の課題を検証することとした。
     当院の新人オリエンテーションの主目的は彼らが社会人として生きるための基礎知識を学ぶことである。そこで新人オリエンテーションの評価を行なうために参加者に対して各プログラムの研修時間と受講者の満足度との関係を調査した。その結果,オリエンテーションのコンセプトとして挙げている “病院の基本理念・方針の周知” において印象に残った受講者が少ないことが明らかとなった。一方で院内見学・感染対策の手洗い指導・接遇と応対など参加型の研修が受講者の印象に残っていることが分かった。加えて,講義型の医療事故防止プログラムは研修時間を延長しても受講者の満足度向上にはつながらなかった。これらのことは講義型の研修は受講者にとって実践をイメージできないために研修の満足度を低下させている可能性が示唆された。今後は,更に充実したオリエンテーションになるよう各コンテンツの企画段階から教育研修委員会が介入し,新入職員が気持ちよく社会人としてスタートできるようサポートしていきたい。
  • 奥本 真史
    2011 年 59 巻 5 号 p. 568-573
    発行日: 2011/01/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
     高齢化社会の到来により,摂食障害により食物や水分を口から食べたり飲んだりできない患者が増加している。また加齢だけでなく,痴呆症や脳血管障害などの疾患によって嚥下障害を引き起こすことも増加している。当院では,NST (栄養サポートチーム) の中で,薬剤師においても患者へ薬を安全に服用するためには,嚥下に関する知識が必要となってきている。
     当院においてコメディカルが実際に施行している嚥下調査は,むせた原因の調査や開口や舌の動作の状況,食事摂取状況や口腔内の状態など,なにが患者にできるかを確認している。
     また嚥下訓練に関しては,NSTを中心に嚥下訓練用パンフレットを作成し,それに基づいて患者やその家族に説明や訓練を実施している。そして各職種で利用できるように工夫している。
     薬剤師として嚥下訓練に関与する場合,患者の正確な嚥下に関しての問題を把握し,状況に応じた訓練を実施し,薬剤の内服へとつなげていく必要がある。また口腔内崩壊錠など内服しやすい薬剤の選択や貼付剤・坐剤・吸入薬など嚥下を必要としない薬剤の選択,とろみ剤を使用した安全な薬剤の内服方法などの工夫も重要である。
     高齢者の嚥下機能を退化させないことは,高齢者のQOLの向上にも関係すると考える。薬剤師として,患者やその家族のQOL向上に貢献するためにも,嚥下に関しての知識や技術をはじめ,薬剤情報提供や管理ができるよう,日々研鑚が必要である。
  • 小泉 孝範, 谷川 浩隆
    2011 年 59 巻 5 号 p. 574-579
    発行日: 2011/01/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
     電子カルテシステムの稼働開始から1年4か月経過後に職員へのアンケート調査を実施し,電子カルテ導入による効果を検証した。導入については72%の職員が良かったと回答しており,高く評価されていた。業務の効率化については,負担が増えたという回答が23%であったが,約2倍の43%は負担が減ったとしており,病院全体としては効率化されたと考えられた。電子カルテ導入の効果としては,日々の診療で蓄積された膨大なデータからData Ware Houseシステムを使用して,多様なデータ抽出が可能となったことがあげられる。安曇総合病院ではこのシステムを,医療の質の評価を行なうための指標 (Quality Indicator) の集計や,診療科別原価計算の精度向上のために利用している。電子カルテの導入により,業務の効率化を追求するだけではなく,蓄積されたデータを分析し「医療の質の向上」や「病院経営の健全化」に活用することが可能となった。
  • 長谷川 毅, 三宅 孝
    2011 年 59 巻 5 号 p. 580-584
    発行日: 2011/01/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
     創傷処置に対してMoist wound healing(湿潤療法)がここ数年の間に急速に普及し認知されてきた。なかでもOpen wet-dressing therapy (OWT: 開放性ウエットドレッシング療法) は通院困難な高齢者を多く抱える中山間地に位置する病院において通院回数を減らす上で非常に有用な方法のひとつである。また,褥瘡外来としての役割もある当院の外科外来では,創傷処置に対してWound bed preparation (創面治癒環境の改善) の重要性も認識して対処を行なっている。Wound bed preparationとMoist wound healingの考えに基づいた被覆材や薬剤の適切な選択およびOWTとそのための創の観察や処置方法の指導により,通院回数を減らすことが可能となった。今後はWound bed preparation, Moist wound healingやOWTの正しい知識を普及させることが安全に創傷処置を行なうために重要である。
症例報告
  • 伊藤 忠彦, 松田 武文, 岩間 直, 近藤 大喜, 井上 雅貴
    2011 年 59 巻 5 号 p. 585-590
    発行日: 2011/01/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
     平鹿総合病院小児科で経験した重症呼吸不全を併発した新型インフルエンザの小児4例を対象に臨床像と治療などの問題点について検討した。4例はワクチン未接種で,3例に気管支喘息の既往があった。2例は発熱と同時に呼吸不全を併発,他の2例も発熱から9時間以内に急激に呼吸不全に陥っており抗ウイルス剤による重症化防止は不可能であった。病態は喘息増悪,肺炎,air leak, plastic bronchitisの併発であり,2例で人工呼吸器管理を行ない,全例で抗ウイルス剤に加えステロイド (3例はメチルプレドニゾロンパルス療法) を,2例にシベレスタットを投与した。院内感染等の問題なく全例回復した。
     小児の新型インフルエンザでは,気管支喘息の既往の有無に関わらず,呼吸器症状の変化に注意を要する。新型インフルエンザの重症化は急激で,抗ウイルス剤による防止は不可能な例があり,流行前の迅速なワクチン接種が重要である。
  • 渡辺 章充, 南風原 明子, 黒澤 信行, 渡部 誠一
    2011 年 59 巻 5 号 p. 591-594
    発行日: 2011/01/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
     ロタウイルス感染に伴う急性脳症を2例経験した。
    〔症例1〕2歳11か月の女児で全身強直間代性けいれんで発症した。人工呼吸管理まで要したが,後遺症なく回復した。
    〔症例2〕2歳2か月の女児で不機嫌状態が遷延し,脳波の徐波化,頭部MRIで小脳に異常信号を認めた。運動機能は回復したが,高次脳機能と軽度の小脳症状が残った。
     ロタウイルスによる脳症には,けいれん発作主体のものだけでなく,小脳に主病変を示すタイプがある。前者は診断・治療とも他のウイルス性急性脳症に準ずることで大きな問題はないが,後者は早期診断に苦慮することもあり,また,有効な治療法も確立されていない。
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