日本農村医学会雑誌
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60 巻 , 2 号
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原著
  • 山田 千夏, 長谷川 京子, 伊藤 美香利, 浅野 有香, 深見 沙織, 加藤 里奈, 重村 隼人, 岩田 弘幸, 朱宮 哲明, 尾崎 隆男
    2011 年 60 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2011/07/30
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
     がん化学療法時における栄養管理の意義は,十分な栄養投与により患者の栄養状態を改善し,治療効果を上げることにある。今回,がん化学療法中の入院患者の味覚や嗅覚の変化および嗜好をアンケート調査し,食欲不振時にも摂取できる食品や調理法を取り入れた化学療法患者に対する献立「化学療法食」を検討した。
     対象者109名中102名 (94%) から回答が得られた。がん化学療法中の食欲低下は66%の患者にみられ,その中で85%の患者が食欲不振を訴えた。嗅覚では29%が魚料理の臭いが気になると回答し,温料理で62%が感じ方が強くなると回答した。食べ易い料理には果物,麺類,果汁等が,食べ難い料理には肉・魚料理,白飯,煮物等があげられた。味付けではケチャップ味は44%が食べ難いと回答したが,醤油味を食べ難いと回答したのは6%と少なかった。料理を食べ易くする為の工夫としては,ふりかけ類の使用が38%と最も多かった。
     結果を基に,8日間サイクルの化学療法食を作成した。朝食は和食,パン食の選択制とし,食べ易いの回答が多かった味付けご飯や寿司,麺類,サンドイッチ,果物等を多く取り入れた。これまでに47名の患者に提供し,平均喫食率は主食,副食共に7割以上であった。今後も調査を継続し,より多くの患者が喫食できる化学療法食を確立していきたい。
  • 木村 義成, 濱野 強, 塩飽 邦憲
    2011 年 60 巻 2 号 p. 66-75
    発行日: 2011/07/30
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
     中山間地域を多く抱える島根県においては,医師不足による救急告示病院の減少により救急搬送時間の長時間化が懸念されている。そこで,地理情報システム (Geographic Information System; GIS) を用いて,島根県における島嶼部を除く救急医療機関へのアクセシビリティについて二次医療圏を分析単位として検討した。本研究では,救急車による救急医療機関への搬送時間 (現場到着から病院への収容にかかる時間) をGISソフトを用いて実際の道路状況による速度を考慮して算出した。この搬送時間により地域を分類し,各地域に居住する人口割合を算出してアクセシビリティを評価した。その結果,地形により医療機関までの直線距離と搬送時間に解離を認めた。さらに,県東部 (松江,出雲,雲南) の医療圏と比較すると,県中央部 (大田) および県西部 (益田,浜田) の医療圏では,救急搬送に30分以上の時間を要する地域に居住する住民の割合が多く,救急医療機関へのアクセス時間の東西格差が観察された。また,大田医療圏に属する大田市立病院の救急告示病院取下げによって,大田医療圏の住民の多くが救急搬送時間の延長を余儀なくされていると推定された。本研究により,地域保健医療計画においては,医師等の医療資源の配分に,地域毎の医療機関へのアクセシビリティを加えた検討が必要と考えられた。
  • 南部 泰士, 佐々木 希, 南部 美由紀, 佐々木 英行, 桐原 優子, 月澤 恵子, 今野谷 美名子, 高橋 俊明
    2011 年 60 巻 2 号 p. 76-84
    発行日: 2011/07/30
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
     秋田県南部前期高齢者女性の介護予防基本チェックリストと骨密度の関連を明らかにし,今後の介護予防支援事業における基礎情報の提供を目的に調査を行なった。基本チェックリスト『口腔』の症状がある前期高齢者女性は骨密度が低かった。また,特定高齢者判定基準で『口腔』に該当している前期高齢者女性は,『運動』,『うつ』の生活機能が低下していた。
     骨密度は前期高齢者女性の要介護リスクを判断する指標となることから,骨密度の維持および向上を図る,骨粗鬆症検診の受診率を向上させる必要がある。
  • 椎貝 達夫, 佐藤 長典, 前田 益孝, 稲葉 直人, 古川 暁子, 吉田 顕子, 宇野 智美
    2011 年 60 巻 2 号 p. 85-95
    発行日: 2011/07/30
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
     日本の透析患者数は毎年増加し,透析に要する医療費は総医療費の7%を超え,国家財政の大きな負担となっている。
     茨城県取手市住民を対象として,残された腎機能を保持する慢性腎臓病 (CKD) 保存療法を導入することにより,透析導入患者数を3年間で30%減らそうとする「D3-30プロジェクト」が,2006年4月に開始された。取手市は人口112,152人 (2006年度) 高齢化率19%の中都市である。CKD保存療法は1987年から取手協同病院に於いて開発されてきたもので,血圧調節,食事療法 (軽度の蛋白制限・食塩制限),薬物療法,集学療法により,尿蛋白排泄量1日0.3g未満への減少を目ざすものである。対象となるCKD患者は取手協同病院の登録医,市保健センターよりの紹介,駅・公会堂に掲示したプロジェクト開始のポスターにより集められた。透析導入数調査は取手協同病院に於ける導入数と,周辺の6か所の透析センターでの導入数を年度毎に調査することにより調べた。透析へ導入された取手市住民の数は介入前の2005年度36人が,2006年度30人 (-17%),2007年度33人 (-8%) となり,2008年度は22人 (-39%),2009年度23人 (-36%) と減少し,始めに掲げた30%減を上回る結果となった。この治療法が全国に普及すれば医療費節約効果はきわめて大きいが,通常行なわれているCKD治療に比し煩雑である点が普及を妨げている。疾患指導管理料等のインセンティヴにより,普及を促進すべきである。
報告
  • 深見 沙織, 中村 崇仁, 柳田 勝康, 山田 慎悟, 重村 隼人, 伊藤 美香利, 岩田 弘幸, 朱宮 哲明, 西村 直子, 尾崎 隆男
    2011 年 60 巻 2 号 p. 96-103
    発行日: 2011/07/30
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
     近年わが国では,食生活の変化に伴い子どもにおける肥満や生活習慣病の増加が起こっている。その解決策として,食育が必要と考えられている。この度われわれは,入院中の子どもとその保護者を対象に,食事を提供する医療従事者の立場で次のような食育の取り組みを開始した。栄養バランスが良く,子どもたちが好き嫌いなく食べられるように工夫した「お子様ランチ」という新メニューを創った。古来の季節行事の日の「お子様ランチ」には,わが国の季節に応じた食文化の紹介文を添えた。保護者に対して,食育の意義,献立に使用した食品の栄養素の解説,レシピ等を記載したパンフレットを週1回定期的に配布した。
     また,この取り組みを評価するため,保護者に対し毎週1回アンケート調査を行なった。開始後3か月間のアンケート結果 (n=215,回収率87%) では,「お子様ランチ」の献立内容,盛付け,子どもの反応,パンフレットの内容の4項目全てで,「よい」という回答が過半数を占めた。食育に興味があるとの回答は93%であり,保護者の食育に対する関心は高かった。一方,子どもが好む食材のみを使用する傾向,外食が多い傾向等,食育上の問題点が見出された。
     入院期間中という短期間の取り組みであるが,保護者に子どもの食育を考える機会を提供できたと考える。今後もこの取り組みを継続し,子どもたちの食育に生かしていきたい。
症例報告
  • 柴原 弘明, 今井 絵理, 植松 夏子, 木下 早苗, 眞野 香, 山本 絢子, 青山 昌広, 西村 大作
    2011 年 60 巻 2 号 p. 104-108
    発行日: 2011/07/30
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
     症例は80歳台女性。肺癌の骨転移による疼痛に対し緩和ケアチームに依頼があった。オピオイド,ロキソプロフェンナトリウムに加えて,鎮痛補助薬としてガバペンチン,イフェンプロジル酒石酸塩投与の追加,さらにオピオイドの増量・変更を行なったが,疼痛の著明な改善はなかった。そこで,ガバペンチンをプレガバリンへスイッチしたところ,疼痛の著明な改善がみられた。プレガバリン内服以前は,疼痛が強いときには臥床していることが多かったが,プレガバリン内服以降は疼痛の改善が得られたため,元気に車いすを押して歩行する姿がみられ,日常生活の活動は改善し,笑顔が多くみられるようになった。ガバペンチンからプレガバリンへのスイッチは,癌性疼痛に対する鎮痛補助薬を考慮するにあたり有効な選択肢のひとつである。
  • 柴原 弘明, 村瀬 陽介, 植松 夏子, 山本 絢子, 西村 大作
    2011 年 60 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 2011/07/30
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
     症例は80歳台男性。原発性肝細胞癌で在宅療養中であった。嘔気と食思不振がみられたが,血液検査では高カルシウム血症はなく,頭部CT・MRIでは明らかな脳転移は認めず,腹部CTではがん性腹膜炎による消化管閉塞や腸管拡張像はみられなかった。入院後に行なった上部消化管内視鏡検査でも器質的異常はみられなかったため,薬物療法としてミルタザピンを3.75mg/日の低用量で開始した。投与開始翌日より食事摂取量は増加し,嘔気や食思不振は全くみられなくなり退院となった。原因が同定されないがん患者の嘔気に対して,低用量ミルタザピンは有効な治療薬の選択肢のひとつであると考えられる。
  • 宮澤 智徳, 古川 真一, 小野 知巳, 武井 伸一, 小出 則彦, 藤田 亘浩, 本間 憲治
    2011 年 60 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2011/07/30
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
     症例は下血を主訴に受診した77歳の男性。下部消化管内視鏡検査で潰瘍性大腸炎と診断され入院。絶食,mesalazine,およびステロイド投与により治療するも症状改善がみられなかったため,難治性潰瘍性大腸炎と判断し全大腸肛門切除術を施行した。術後経過は良好で第31病日に退院となった。一期的手術で吻合を伴わない全大腸肛門切除術は75歳以上の後期高齢者の潰瘍性大腸炎に対する術式として有力な選択肢となると考えられた。
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