日本農村医学会雑誌
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60 巻 , 4 号
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原著
  • 宮原 伸二, 山下 幸恵, 塚原 貴子
    2011 年 60 巻 4 号 p. 507-515
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
    〔はじめに〕中重度認知症の高齢者が在宅で療養をするにはどのようなケアや条件が必要になるのかを,6か月以上在宅療養 (以後長期在宅療養) を行なった事例に対してアンケート調査を行ない多面的に検討したので報告する。
    〔調査対象〕対象者は長期在宅療養継続者37事例,長期在宅療養後に施設入所した者60事例の計97事例 (男31人,女66人) である。平均年齢は85.6歳,平均在宅療養期間は48.9か月である。調査のまとめと解析にあたっては対象者全体でまとめるとともに,項目によっては在宅療養継続者と在宅療養後施設に入所した者とを分けてまとめた。
    〔結果〕対象者には重度認知症が多く,周辺症状は3つ以上見られる人が73%見られたが,これらが長期在宅療養の弊害にはなっていなかった。長期在宅療養後に入所になるのは状態の急変,介護負担の増加などが要因であった。長期在宅療養を可能にするには,専従に近い介護者がいること,介護者の熱意や介護知識・技術が高いこと,また,介護保険のサービスの利用数が多い (特に通所サービス,ショートステイ,訪問看護などの利用回数),さらに,医師やケアマネジャーの在宅療養を支えるという熱意が重要な要件になっていた。
    〔考察〕在宅で長期療養を支えるためには,介護者の確保,介護者の介護知識や技術の向上,中重度認知症に対応する通所介護・リハビリテーション,ショートステイ,訪問看護などのサービスの積極的な利用,また,在宅支援に熱心な主治医やケアマネジャーの存在,地域連携パスの整備が必要であり,これらの条件が揃えば中重度認知症の人でも在宅療養は可能になるだろう。
  • 濱野 強, 木村 義成, 武田 美輪子, 山崎 雅之, 塩飽 邦憲
    2011 年 60 巻 4 号 p. 516-526
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
     中山間地域の医療体制は,経営の不採算性や医師不足などを背景に診療科や病棟の縮小,閉鎖を余儀なくされている。このため,地域医療を維持していくために住民ニーズに合わせた二次医療圏の地域医療計画が必要であるが,住民の受療行動に基づく実証研究は少ない。そこで,個人承諾を得た島根コホート研究により,地理情報システムを活用して高血圧症,脂質異常症,糖尿病の受療行動を医療機関への移動距離と移動時間に基づき解析した。対象者は,2009年に島根県雲南市大東町,加茂町で実施した健康調査で,現病歴,通院医療機関,職業,移動手段について有効回答を得た高血圧症255名,脂質異常症114名,糖尿病42名である。糖尿病治療者の医療機関への移動距離,移動時間は,高血圧症治療者に比べて有意に長く,糖尿病での市外への通院先は糖尿病専門医による治療や透析治療が可能であった。ただし,糖尿病治療者の雲南市外と市内の対象者間でBMIや耐糖能には,有意な差がなかった。また,年齢別の解析では,74歳以下の治療者が75歳以上の治療者に比べて糖尿病と高血圧症で移動距離と移動時間が有意に長かった。以上より,中山間地域の糖尿病患者や前期高齢者は,二次医療圏を越えて通院する傾向が示された。ただし,隣接二次医療圏間の連携強化や治療の質の標準化,さらには患者の自己管理を総合的に支援するディジーズマネジメントプログラムの検討により二次医療圏内の既存の医療資源で対応できる可能性が推察された。
  • 宮島 雄二, 北村 英里奈, 柴田 陽子, 羽田野 ちひろ, 宮崎 史子, 伊藤 祥絵, 澤井 潤, 孫田 みゆき, 松沢 要, 深沢 達也 ...
    2011 年 60 巻 4 号 p. 527-534
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
     1980年から2009年の30年間に当院で治療した小児白血病110例の臨床像と治療成績の変遷を検討した。発症時の平均年齢は5歳11か月で,男女比は1:0.72,白血球数の中央値は1.37×104/μlであった。白血病の病型は,急性リンパ性白血病79.1%,急性骨髄性白血病17.2%,慢性白血病3.6%であった。全症例での30年全生存率は67.4%であった。年代別の10年全生存率は,1980年代46.4%,1990年代69.2%,2000年代87.3%であり,有意に改善していた (P<0.01)。病型別の10年生存率は,ALLが70.7%,AMLが70.6%であったが,最近の症例での10年全生存率はALLが87.0%,AMLが87.5%と改善していた。造血幹細胞移植は24例に行なわれ,移植例の10年全生存率は58.6%であった。3例で二次性腫瘍が発症し,6例が後遺症の治療を現在も受けている。小児白血病の治療成績は時代とともに著明に改善していたが,今後も予後不良例に対する治療強化とともに,予後良好例に対しては副作用の少ない治療法の開発が必要と考えられた。
報告
  • 川出 英行, 山本 直人, 大橋 洋平, 日比野 美紀
    2011 年 60 巻 4 号 p. 535-542
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
     村岡ケンイチ氏が2006年に考案,開始した似顔絵セラピーが,気分・情動状態にどのような変化をもたらすのか,POMS (Profile of Mood States) を用いて検討した。対象は新人看護師46名 (男性1名,女性45名,平均年齢23.09) 及び,緩和ケア病棟に入院中の患者1名 (80代男性) とセラピーに同席した家族1名 (60代女性),病棟看護師3名 (男性1名,女性2名,平均年齢38.67),実習中の学生3名 (女性3名,平均年齢21.67),その他スタッフ3名 (男性3名,平均年齢40.67) であった。方法は似顔絵セラピーを行ない,その前後にPOMSを実施し,セラピー前後のPOMS得点の変化を検証した。新人看護師ではPOMSの6下位尺度全てにおいて,有意に気分が改善することが認められた。緩和ケア病棟においても概ね,気分の改善がみられたが,看護師には改善がみられなかった。似顔絵セラピーは受け手の気分を改善する効果があり,その場を共有する人にも立場に応じて気分の改善効果があると考えられた。似顔絵セラピーの病棟での実施には配慮が必要と考えられるが,心のケアの選択肢であるとともに,グリーフケアとしても意味をなす可能性を持っていると考えられる。今後,より効果的な似顔絵セラピーの活用について事例研究,数量的研究によって検討を重ねていきたい。
症例報告
  • 高橋 博之
    2011 年 60 巻 4 号 p. 543-547
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
     当科で経験した陰茎部外傷の2例につき報告した。症例1は64歳,男性。重度の糖尿病あり。喧嘩の際,股間を蹴られた5日後に当科を受診。陰茎包皮の広範な壊死と二次感染あり。症例2は80歳,男性。深部静脈血栓症にてワーファリン内服中。リハビリ目的の自転車漕ぎを通常の2倍の時間施行後,陰茎全面および陰嚢にかけ皮下出血あり。受傷一週間後に当科受診。両名とも合併症や年齢を考慮し保存的方法にて治療するも改善しないため,全身麻酔下でデブリドマンならびに分層植皮術を施行した。術後の経過は順調であり創部の修復状態も良好であった。陰茎部の植皮はシートグラフトが基本であるが,メッシュスキングラフトでも肥厚性瘢痕や瘢痕拘縮を来さず,また最小の採皮で充分満足のいく陰茎部の創修復が可能であった。
  • 奥本 真史, 要田 裕子, 北村 智樹, 近森 正和, 中西 紀男
    2011 年 60 巻 4 号 p. 548-554
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
     生体内には多種類の金属がさまざまな濃度で存在して,生命機能の維持に重要な役割を担っている。とくに微量元素の生化学的および栄養学的な機能,欠乏症,過剰症などに関する学際的な研究発展とともに微量元素の重要性が広く注目されるようになった。よって栄養指標として体内の微量元素が欠乏しているかどうかを考慮することは栄養療法上重要であり,長期栄養管理において微量元素欠乏症が生じる危険性は以前より知られている。
     今回微量元素欠乏症が疑われた患者を経験した。セレン欠乏症の症例については,院内製剤でセレン注射液を作成し高カロリー輸液へ混注し施行すること,また褥瘡を有する亜鉛欠乏症の症例には,亜鉛含有胃潰瘍治療剤ポラプレジンクを使用することにより血清微量元素濃度も改善し,2症例とも良好な経過がみられた。
     しかし治療薬の使用法や検査方法などには注意を要する。今回微量元素欠乏症に対する検査や治療の問題点について考察したので報告する。
看護研究報告
  • 吉田 真理, 山本 順子, 鴻巣 美佐子
    2011 年 60 巻 4 号 p. 555-561
    発行日: 2011/11/30
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
     当院では,平成21年5月より退院調整看護師を専従で配置し,患者の退院支援・退院調整を行なっている。患者の退院を支援するツールとして「退院調整支援プロセス」(電子カルテ上のシートで,退院調整スクリーニング・退院支援アセスメントシート・退院調整計画書・退院支援計画書を含む) があるが,病棟看護師の入力率が低く,活用しきれていなかった。今回,退院支援の要介入者が全入院患者の32%を占める急性期病棟に所属する病棟看護師に意識調査を行ない,どうすれば「退院調整支援プロセス」を活用できるかを検討した。その結果,「退院調整支援プロセス」の入力率が低い主な理由として,病棟業務の煩雑さ,入力方法の不明確さがあげられた。その対策として,PC入力をルーチン化し,作業フローがわかるような掲示をした。その結果,第一段階である退院調整スクリーニングの入力率の上昇がみられた。しかし,第二段階である退院支援アセスメントシート以降の入力率の変化はなかった。今後の課題はその入力率を上げる対策を講じることである。さらに,活用方法を多角的にみることによって,病棟看護師の教育および看護師間・他部門間における患者情報の共有に対して,「退院調整支援プロセス」の有用性の可能性が示唆された。
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