日本農村医学会雑誌
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61 巻, 1 号
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原著
  • 深見 沙織, 中村 崇仁, 柳田 勝康, 山田 慎悟, 山口 剛, 白石 真弓, 伊藤 美香利, 朱宮 哲明, 西村 直子, 尾崎 隆男
    2012 年 61 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2012/05/30
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
     一般病院において,入院小児が発熱を呈する頻度はかなり高い。発熱を呈する小児では十分な栄養と水分の補給が療養上大切であるが,発熱中には十分摂取できないという問題がある。今回,この問題に対応するため,発熱時にも食べやすいように食材や調理法を工夫した小児用の献立「小児熱発食」を新たに作成した。
     「小児熱発食」は2011年1月6日に導入され,その後3か月間で109名 (1歳~8歳,平均年齢3.3±1.9歳) に提供された。有熱期 (≥37.5℃) における一人当たりの平均提供食数は,4.0±2.9食であった。「小児熱発食」の有用性を評価するため,提供者全例について,有熱期の喫食率調査と保護者に対するアンケート調査を実施した。「小児熱発食」の有熱期平均喫食率は主食3.9±3.0割,副食2.8±2.2割であり,その導入前2か月間における発熱小児112名 (1歳~8歳,平均年齢3.3±2.1歳) の有熱期平均喫食率 (主食3.9±3.0割,副食2.9±2.2割) との間に差は無かった。アンケートの回答は43名から得られた (回収率39%)。「小児熱発食」は良かったとする回答が67%を占めており,保護者からの評価は概ね良好であった。今後はアンケート結果を参考に,有熱期の喫食率の向上を目指して「小児熱発食」の改善に努めていきたい。
報告
  • ——院内オピオイド使用患者に対する病棟ラウンドの評価——
    中村 和行, 三浦 崇則, 万塩 裕之, 米山 英二, 杉浦 洋二, 勝見 章男, 嶋田 美佳, 荻野 晃子, 小池 委子, 竹内 真実子, ...
    2012 年 61 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2012/05/30
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
     がん患者に対しその症状の早期から介入するため,安城更生病院の緩和ケアチーム (以下,PCT) は,オピオイド使用患者を対象に,病棟ラウンド (以下,スクリーニング回診) を実施している。本研究の目的は,スクリーニング回診を実施する当院PCTの活動状況並びに現状の問題点を解析し,その問題点の解決法を見出すことである。
     我々は,PCTの介入状況および介入患者に対して行なった薬物療法に関する提案228件について,PCTが介入した196例をレトロスペクティブに調査した。
     103例に対しては,医師からの依頼により介入を行なった (以下,依頼群)。また,93例には,PCTによるスクリーニング回診による介入が行なわれた (以下,スクリーニング群)。
     スクリーニング回診によって,PCTの介入症例は増加した。スクリーニング回診を実施する以前には,PCTへ介入依頼のなかった医師からの介入依頼症例数も増加した。
     他方,PCTの介入に関する問題点も明らかとなった。PCTが積極的に介入したスクリーニング群において,処方薬の提案に対してレスポンスがないケースが33%存在した。この問題は,PCTと各病棟スタッフとの間の情報交換が主に電子カルテを介したもので,PCTと各病棟スタッフ間の十分な信頼関係を築けなかったことに一部由来するかもしれない。今後は,より良いPCT介入を行なうために,カンファレンスなどの直接的な情報交換を介し,各病棟スタッフとの連携体制 (協力的な体制) を構築する必要がある。
  • ——中年者, 前期高齢者, 後期高齢者の年代別比較——
    太附 広明, 野間 靖弘, 河原 朋子, 河端 将司, 相澤 達, 松崎 淳, 干場 泰成, 杉原 達矢, 河村 洋太, 伊藤 大起, 井関 ...
    2012 年 61 巻 1 号 p. 16-26
    発行日: 2012/05/30
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕AMI患者の臨床的背景と入院経過を中年者群,前期高齢者群,後期高齢者群で比較し,臨床的特徴を検討すること。
    〔方法〕2009年4月から2011年3月の2年間にAMIで入院し,PCI後に心リハを実施した153例を対象とした。65歳未満を中年者群,65歳~75歳未満を前期高齢者群,75歳以上を後期高齢者群とし,3群間で臨床的背景 (責任冠動脈,CK最高値,LVEF,残存狭窄の有無,高血圧の有無,糖尿病の有無,脂質異常症の有無,喫煙の有無,BMI) ならびに入院経過 (心合併症の有無,運動器合併症の有無,200mECG異常,入院日数) を検討した。
    〔結果〕対象者は中年者群84例,前期高齢者群44例,後期高齢者群25例に分類された。臨床的背景ではLVEFは後期高齢者群が前期高齢者に比べ有意に低く,残存狭窄は後期高齢者群で多かった。冠危険因子では,高血圧と糖尿病は3群ともに高率に合併し,脂質異常症は中年者群で多い傾向を示し,喫煙は中年者群で多かった。BMIは中年者群が後期高齢者群に比べ有意に高かった。入院経過に関しては,心合併症と運動器合併症の有無は後期高齢者群が多い分布形態で,入院日数は後期高齢者群が中年者群と前期高齢者群に比べ有意に長かった。
    〔結論〕中年者群は二次予防を目的とした教育指導が重要で,後期高齢者群は合併症への対応とADLを上げるための運動療法と自宅退院への環境整備が重要である。
  • ——食事摂取時のエプロンの改良を試みて——
    高野 香織, 奈良部 友理, 金子 直子, 増山 こう子
    2012 年 61 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2012/05/30
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
     本報告は,老人保健施設での食事援助を通して,家庭でも気軽に使え,介護の手助けができるのではないかという視点で介助用エプロンの改良を試みたものである。対象者は片麻痺があり,食事の際には一部介助が必要であった。さらには食べこぼしがあり,その都度の更衣が必要であった。在宅復帰に向けては,更衣回数の多さは介護負担につながり,主介護者である妻から,「家では毎回着替えるのは大変」という発言があった。そこで,家庭にもあるもので,軽費で簡単に作成できる介助用エプロンの改良が必要となった。何回かの試行錯誤の結果,対象者・家族ともに満足できるエプロンを作成することができた。
  • 永美 大志, 椎貝 達夫, 前島 文夫, 西垣 良夫, 夏川 周介
    2012 年 61 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 2012/05/30
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
     農薬は第二次大戦後急速に使用量が増加し,農薬中毒が農村医学の主たる課題になって久しい。本学会はこの課題に長年取り組んできており,特別研究プロジェクト・農薬中毒部会では全国の関連医療施設の協力のもと臨床例調査を行なってきたので,2007~09年分について報告する。
     農薬中毒 (障害) の症例が,48施設から212例報告された。性別では,男が54%とやや多く,世代別では,60歳代 (23%),70歳代 (22%) が最も多かった。中毒に関わる農薬曝露状況は,自殺が77%を占め,散布中等 (16%),誤飲誤食 (4%) が続いていた。月別に見ると,5月,8月が各12%で最も多かった。
     診断名としては,急性中毒 (90%) が大部分で,皮膚障害 (3%),眼障害 (2%) もあった。
     原因農薬としては,有機リン系殺虫剤(32%)が最も多く,アミノ酸系除草剤 (22%),ビピリジリウム系除草剤 (10%) が続いていた。成分別にみると,グリホサート (32例) が多く,スミチオン (25例),パラコート (21例) が続いていた。
     死亡例が36例報告された。うち16例がパラコート剤によるものであり,9例が有機リン剤によるものであった。パラコート剤は,致死率,死亡数において,他の農薬成分を大きく引き離していた。本剤の流通規制の強化の必要性を改めて認識させる結果であった。
  • 柴原 弘明, 杉村 龍也, 西村 大作
    2012 年 61 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2012/05/30
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    〔背景〕当院ではがんサロン開催時に,短時間の講演 (ミニレクチャー) ののちに交流会を行なっている。
    〔目的〕ミニレクチャーの位置づけを検討すること。
    〔方法〕参加者のアンケート調査結果を集計した。
    〔結果〕ミニレクチャーは多職種で行なったが,医師以外の職種によるミニレクチャーは,医師によるものに比べて,その後の交流会で参加者が「参考になった」と感じる割合が有意に高かった (χ2検定,p=0.021)。
    〔考察〕ミニレクチャーは情報提供だけでなく,引き続き行なう交流会の導入として「場の雰囲気作り」に大切である。さらに,講演者が医師でも参加者の評価を得るには,参加者の気持ちを捉えながらレクチャーし,引き続き行なう交流会に自然な雰囲気で参加することが大切であろう。
    〔結論〕ミニレクチャーは,交流会への雰囲気づくりと,講演者がその場に溶け込むきっかけとなる。
看護研究報告
  • 中嶋 美枝子
    2012 年 61 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2012/05/30
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
     「手術看護の真髄は術前・術後訪問にある」と云われ,多くの病院ではすでに取り組んでいる。しかし,当院では長年,麻酔科常勤医師の不在,「手術室と外来,中央材料室看護師で,手術業務を行なう」というマンパワー不足の問題,各種基準や手順の不備,教育的環境の不備等から,実施できない状況であった。平成21年10月新病院開院に向け,新たな手術室構築「手術看護の展開」が求められる中,平成18年11月より検討していた「外来・手術室・中央材料室スタッフによる固定チームナーシングを導入する事により,マンパワーを確保し,術前・術後訪問が可能となる」という仮説のもと,体制作りの為,平成19年5月,固定チームナーシング研修会を実施した。さらに3つのチーム編成とした基準を作成し,運用を始めた。しかし,固定チームナーシングがスムーズに機能する為には,業務改善が必須と考え,各部署の課題を抽出し,業務のスリム化,各種基準・手順の整備等の業務改善を行なった。さらにスタッフの業務への不安緩和の為,手術室,各科でon job training (以下OJT) を実施し,各チーム内で手術関係スタッフの業務をカバーする事で,平成20年11月より外来及び手術室看護師12名による術前・術後訪問が実施可能となった。
  • 倉益 直子, 田内川 明美, 宮内 幸子
    2012 年 61 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2012/05/30
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
     2004年に看護協会が実施した「新卒看護職員の早期離職等実態調査」において,新人の9.3%が1年以内に離職していたという結果は,看護界を驚かせた。離職理由としては,「基礎教育終了時の能力と現場で求められる能力のギャップ」「肯定的なストロークが少ない職場風土」「教育的配慮の不足」などが挙げられている1)。新人看護師にとっての入職後1年間は,これまでになくストレスフルな毎日であることがこの調査により明らかになった。事実,新人看護師の中で「眠れない」「食べられない」「仕事に行けない」などの深刻な症状を呈し離職に至る者もいる。
     心理学によると,ストレス反応を低下させる要因は,「自尊感情 (self-esteem)」「自己効力感 (self-efficacy)」「アイデンティティ (identity) の確保」の3つであると言われている2)。ところが,医療現場では常に「完全」を求められることや,対人援助職特有の「やってもきりがない」等の不満足感が,自尊感情や自己効力感を低下させる。このことからも新人看護師が初めて接する看護現場は,ストレス反応が起こりやすい環境であると言える。そのため,当院では以前より新人看護師の心身のリラックスを図る新人研修として「集団コラージュ療法」を取り入れてきた。「コラージュ療法」はこれまで,精神科臨床や非行対応臨床などから始まり,最近は,末期がん患者や認知症患者などにも活用されて成果を挙げている。我々が検索した文献では,健康な専門職への適用は見られなかったが,当院では10年前から実施しており,その安全性はすでに確認されている。今回,当院における新人看護師対象の「集団コラージュ療法」について検討したところストレスケアとして有用と考えられる所見が得られたので報告する。
  • ——30歳代と40歳代の比較による検討——
    神崎 匠世, 木村 裕美
    2012 年 61 巻 1 号 p. 55-66
    発行日: 2012/05/30
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,30~40歳代の労働者の健康診断 (以下,健診) データと行動変容ステージおよび生活習慣との関連を明らかにし,30歳代と40歳代との比較により,職場における保健指導のあり方について検討することを目的とした。行動変容ステージおよび生活習慣については,自記式質問紙調査票を用いて調査を行なった。健診結果については,BMI,腹囲,血圧,血液検査値である中性脂肪,血糖を調査項目とした。30歳代ではほとんどの健診項目で男性が女性より高値を示し,保健指導を行なう上で性差を考慮する必要性が推察された。行動変容ステージは,30歳代の腹囲,40歳代のBMIおよび腹囲との関連が認められ,働きかけによる行動変容が健診結果改善に結びつく可能性が考えられた。生活習慣のうち,30歳代の朝食欠食,間食,糖分をひかえる,喫煙,飲酒と健診結果に関連が認められ,若年層の30歳代における生活習慣が健診結果に反映されること,健診結果が健康行動に反映されるということが推察された。30歳代から健康状態を把握し,早期に介入することが,将来の生活習慣病予防に寄与するものと考える。
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