日本農村医学会雑誌
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61 巻 , 4 号
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原著
  • 井出 政芳, 早川 富博, 柏田 礼子, 米田 恵理子, 安藤 望, 渡口 賢隆, 鈴木 宣則, 小林 真哉, 都築 瑞夫, 江崎 洋江, ...
    2013 年 61 巻 4 号 p. 582-601
    発行日: 2013/11/30
    公開日: 2013/02/08
    ジャーナル フリー
     中山間地に住まう高齢者の通院困難性を明らかにするため,次の2点について検討した。(1)当院内科外来を受診した連続188名の患者 (74.5±10.0歳) を対象として,〈近隣性〉の数学的表現であるボロノイ図を用い通院困難性に係わる地理情報学的分析を行なった。(2)被介護者世代の人口と介護者である子の世代の人口比をその地域の有する〈介護力〉と定義し,2008年の豊田市人口統計資料を用い,今後20年間の当院診療圏における介護力変遷の予測を行なった。(1)の分析により,①自力通院可能患者の平均年齢は70±9.8歳,自力通院困難患者のそれは80±7.0歳であり,80歳以降では通院介助を要する高齢者が増加すること,②患者居住地のボロノイ領域面積 (近隣性の指標) は3群に分類でき,これに対応する患者居住地の地図上へのプロットは3層のドーナッツ状構造を示すことが明らかとなった。(2)より,③2008年の時点において80歳未満の者に対する介護力は概ね1.0以下であり,2008年の時点で50代の世代が将来介護される年齢に達した時,その通院困難性は現状より著しく増大することが明らかとなった。これらより,3層のうち幹線道路から遠く離れた最外層に住まう80歳以上の高齢者の通院困難性は特に甚大であり,医療福祉の実践においては最外層の地理情報学的理解が不可欠であること,また通院介助を伴った現行の外来診療形態はその介護力の低下故に将来変更を余儀なくされる可能性のあることが示唆された。
  • 野中 聡, 高宗 直樹, 高野 智王, 青木 健, 鈴木 美香, 木本 雅子, 守屋 大輔, 伊藤 祐輝, 樋口 佳子, 渡辺 慎太郎
    2013 年 61 巻 4 号 p. 602-610
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2013/02/08
    ジャーナル フリー
    〔目的〕当院の心筋梗塞 (MI) 患者を対象とした回復期心臓リハビリテーション (心リハ) におけるレジスタンストレーニング (RT) 導入の効果を検証すること。
    〔対象〕入院による急性期心リハを終了したMI患者86例のうち,外来通院による回復期心リハを少なくとも発症後3か月以上継続できた22例 (平均年齢63.0±10.9歳;男性20例,女性2例)。
    〔方法〕従来の運動療法プログラムを実施した対照群8例と,筋力増強運動の内容を一部変更・追加したRT群14例の運動耐容能の経時的変化について,診療録をもとに後方視的に調査した。運動耐容能の指標として,目標心拍数を用いた同一心拍数に対する自転車エルゴメータ負荷量 (watt) の経時的変化を調査した。
    〔結果〕発症後1か月時点の目標心拍数および負荷量は両群間に有意差を認めず,発症後1・3・5か月の経時的変化において,RT群では目標心拍数に変化を認めず負荷量のみに有意な増加を認めた。対照群では負荷量,目標心拍数ともに変化を認めなかった。また,両群間の3・5か月時点のそれぞれの負荷量の比較ではRT群が有意な高値を示した。
    〔結論〕RTの導入は,当院の回復期心リハに参加するMI患者の運動耐容能の改善に有用であることが示された。
報告
  • 小笠原 雪江, 黒岩 厚夫, 近藤 裕子, 岸野 達志, 中山 正, 宮地 香代, 福富 裕佳, 川村 富紀, 前田 宣男, 曽根 三郎
    2013 年 61 巻 4 号 p. 611-617
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2013/02/08
    ジャーナル フリー
     JA高知病院健診センターではJA組合員や一般住民を対象に1日及び2日人間ドックを実施し,高知県の掲げる「日本一の健康長寿県構想」実現の一助となるよう生活習慣病やがんの早期発見・各疾患の指摘と生活指導・受診勧奨などの予防医療に努めている。高知県でも死因の第1位はがんであるが,本県の特徴として40歳代,50歳代の働き盛り世代の男性の総死亡率が全国平均を1割以上,上回ることが指摘されている。今回2009年4月から2010年3月迄の1年間に当院人間ドックを受診した男性1,826名を対象に血圧・肥満度・飲酒習慣,生活習慣病に関連する脂質・糖代謝・肝機能異常について検討した。
     高知県は高血圧症が全国15位,肥満率の高さは全国10位,1人当り酒類消費量は全国2位と報告され,アルコール関連肝疾患・心血管系疾患・がんなどの発症リスク増大が危惧される。当院の人間ドック受診者のこの年代該当者でも,高血圧や肥満,脂質・糖代謝異常などの異常が多く認められ,メタボリックシンドロームから生活習慣病の発症の背景となっていることが示唆された。自覚症状のない,人間ドックの受診者に対しても,これらの情報を提供し,より早期からの肥満防止や飲酒量の適正化などの保健指導,医療機関での精査・治療への導きなど継続的な指導を工夫しながら努めてゆきたい。
  • 黒江 奈央, 吉留 厚子
    2013 年 61 巻 4 号 p. 618-624
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2013/02/08
    ジャーナル フリー
     本報告では鹿児島県,鹿児島市,県内離島である種子島,名瀬,徳之島,屋久島における統計上の動向からみえる助産師問題を明らかにし,2病院の取り組みの実態及び助産師確保に関する課題を明らかにする。
     鹿児島県では助産師の偏在化が問題となっており離島での助産師不足は深刻である。今後ますます深刻化が予測される助産師不足に対して早急の対応が望まれる。故郷で出産をしたいと島民の助産師に対するニーズは高く,助産師が少ないために周産期管理の安全性が脅かされてはならない。助産師確保の対応策として2011年4月種子島への助産師派遣が開始された。現在複数の常勤助産師が勤務し派遣の要請はないが,助産師確保が困難な離島の特性を踏まえると,今後も助産師派遣の体制を整える必要がある。今給黎総合病院看護部長並びに志戸岡助産師の語りをもとに,今後の派遣体制のあり方と助産師確保の課題についてまとめたので報告する。
  • 小城 千百合, 栗岡 允, 小田 恵子, 小田 則子, 友田 裕康
    2013 年 61 巻 4 号 p. 625-631
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2013/02/08
    ジャーナル フリー
     慢性腎臓病 (以下CKD) 対策は,住民の健康課題としてきわめて重要とされており,今回慢性腎臓病地域連携パス活用と今後の保健指導に活かすことを目的として,健康管理センターの健診データーを分析し,当健診エリアにおけるCKDの実態について検討した。
     方法は,平成16年度と平成21年度 (以下21年度) のCKD症例数・危険因子とその重複症例数・BMI・HbA1cの比較検討を行なった。
     結果は,CKD症例数の増加,中でも50歳代男性・60歳代の男女で有意に増加していた。危険因子の症例数を全国調査と比較すると,21年度の内臓肥満は同等,高血圧は少なかった。また,年度間の比較においては,高血圧は男女とも増加,脂質異常は女性で増加,高血糖は男女とも増加しており,危険因子を3個から4個持つ症例数の割合は,21年度男性46%・女性31%であった。さらに,正常高値以上の高血糖を有する症例数は男性50歳代以上・女性60歳代以上で90%を超えているという結果であった。
     以上のことから,高齢化率の高い当健診エリアにおけるCKD患者数は今後ますます増加し,その速度は速いと予想される。今後は,増加傾向である高血圧・女性の脂質異常・高血糖に注意した一次予防が必要であるとともに,CKD対策として,糖尿病予防に重点的に取り組む必要性が示唆された。
  • 加藤 順子, 太田 俊治, 山際 三郎
    2013 年 61 巻 4 号 p. 632-635
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2013/02/08
    ジャーナル フリー
     出産年齢の高齢化が進み,安全性を重視する現代社会では帝王切開術が年々増加している。帝王切開術で多く施行される脊髄くも膜下麻酔では,リスクが少ない半面,産婦は術後,創部痛や子宮収縮痛に悩まされ辛い出産体験になっていることが多い。
     今回脊髄くも膜下麻酔にオピオイドを加えることで良好な鎮痛効果が得られるという報告をもとに,その有効性と安全性について検討する。対象は脊髄くも膜下麻酔で帝王切開術を受けた19歳から41歳の患者88名 (母体合併症,胎児機能不全例は除く) で,局所麻酔薬 (0.5%高比重ブピバカイン) のみのA群 (n=51) と局所麻酔薬に塩酸モルヒネ0.1mgとフェンタニル0.01mgを併用したB群 (n=37) を比較検討した。A群に比べB群では昇圧剤 (エフェドリン) の使用量が有意に少なく (9.7±11.5mgvs4.9±6.1mg,p=0.02),術中の悪心の発現頻度も低かった (p=0.002)。術後1日目までの鎮痛剤の使用回数を減らすことができ (2.6±1.1回vs0.5±0.7回,p<0.001),早期離床が可能となった。出生児のApgarスコアに有意差は認めなかった。オピオイドを追加した脊髄くも膜下麻酔によって簡便に質の良い周術期が得られ,マンパワー不足である医療現場においても安全で有効な方法であると思われた。
症例報告
  • 櫻井 綾子, 大河内 昌弘, 勝野 哲也, 長縄 博和, 山本 陽一, 郷治 滋希, 岩間 糾, 浅田 馨, 服部 孝平, 後藤 章友, 神 ...
    2013 年 61 巻 4 号 p. 636-642
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2013/02/08
    ジャーナル フリー
     症例は,74歳男性。平成22年7月7日より胸痛が持続し,翌日,当院を受診した。心電図・血液・心エコー検査にて,急性心筋梗塞と診断した。初診時は,経過から自然再開通と考えられたため,抗血小板療法・抗凝固療法を開始し,待機的心カテの方針とした。治療開始3日目より,左鼠径・大腿部痛が出現し,CT・MRIで左腸腰筋血腫を認めた。抗血小板剤・抗凝固剤の中止をしたが,Hb14.1から,9.8g/dlと貧血が進行したため,輸血治療を必要とした。その後,安静治療のみで,疼痛,左腸腰筋の腫脹は徐々に改善した。心臓については,安静に近い状態でも胸痛があるため,抗血小板剤を段階的に2種類内服させ,冠動脈CTと心臓カテーテル検査を行ない,左前下行枝近位部 (#6) の90%狭窄に対してBare Metal Stentを留置した。その後,安静度拡大でも胸痛の再燃はなく,腸腰筋血腫の再発はなく,血腫は自然に吸収された。
  • 奥本 真史, 田原 由季, 真海 厚美, 日山 享士, 駒井 康孝
    2013 年 61 巻 4 号 p. 643-648
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2013/02/08
    ジャーナル フリー
     局所陰圧閉鎖療法は,創傷の治癒を促進させる治療法で,創傷を密封し,創傷に対して陰圧を付加することで創面の保護,肉芽形成の促進および滲出液や感染性老廃物の除去を図る治療方法である。最近ではV.A.C.®ATS治療システム (KCI USA, Inc., San Antonic, USA) という局所陰圧閉鎖療法の専用機器が開発され,広く使用されている。
     また繊維芽細胞増殖因子トラフェルミンは,繊維芽細胞の増殖とともに,血管内皮細胞,繊維芽細胞などに存在するFGF受容体に特異的に結合し,血管新生作用や肉芽形成促進作用などを示すことにより,褥瘡や皮膚潰瘍に対して治療効果を示す薬剤である。
     今回NPUAP分類ステージⅣで,関節腔,体腔に至る損傷の褥瘡患者を経験した。肉芽形成の促進を目的として局所陰圧閉鎖療法を選択した。その際に薬剤として繊維芽細胞増殖因子トラフェルミンを使用することで,創傷治癒に有利に作用するかなどの利点や使用方法における注意点などについて考察したので報告する。
  • 柴原 弘明, 稲垣 弘進, 西村 大作
    2013 年 61 巻 4 号 p. 649-656
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2013/02/08
    ジャーナル フリー
     症例は70歳代女性。前医で右腋窩悪性線維性組織球症,胸腔内浸潤と診断された。サイトカイン産生腫瘍が疑われ,出血による血小板減少と輸血による黄疸がみられた。当緩和ケア病棟転院時の血小板数は1.9万/μl,総ビリルビンは6.4mg/dlで,各種予後予測ツールでの予後は日単位であった。転院後は緩和ケアでの薬物療法を中心に行ない,輸血は行なわなかった。経過中,黄疸と血小板数は改善し,5か月以上生存できた。自験例が予後予測と異なり月単位で生存しえたのは,①出血がなく血小板数が自然回復した,②輸血の副作用の黄疸が改善した,③少量であったが経口摂取が長期間可能であった,ことが要因と考えられた。緩和ケア領域では,予後予測と大きく異なる症例が時折みられ,症状や状態に応じた薬物療法やケアを行なうことが肝要である。
看護研究報告
  • 菅家 若菜, 曽雌 あけみ, 江川 悦子
    2013 年 61 巻 4 号 p. 657-665
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2013/02/08
    ジャーナル フリー
     近年,エンゼルケアの重要性が認識され,多くの検討が重ねられている。筆者らはエンゼルケア研修会での学習会後,新しい院内マニュアルを作成したが殆ど活用されず,旧来の先輩からの伝承や看護学校で学んだ方法で死後の処置が実施されていた。そこで,このマニュアルにそった処置の周知と実践を目的として,病棟スタッフを出演者とした実演学習会の開催とその撮影によるDVD教材の作成,さらに,教材を用いた学習会により,スタッフの意識と手技の向上を図った。参加したスタッフ22名を対象とした,学習会前後のアンケート調査により,その効果を検討した。その結果,ほとんどのスタッフはマニュアルを読まずに旧来の死後の処置を行なっていたが,学習会後には73%が新しいエンゼルケアを,また59%がマニュアル通りに実施できるようになり,全員のエンゼルケアに対する意識が向上したことがわかった。この効果は,シミュレーションとDVDを用いたことによりイメージがつかみやすくなり,結果として意識と手技の向上に結び付いた事によると思われる。またDVD教材は何度も使用できる効果的な伝達学習のツールであり,今後の勤務異動後や新人スタッフの教育において継続的に利用可能である。一方,処置の充分な時間を持ちえたとの回答は59%にとどまり,多忙な日常業務の中でどのようにして良いエンゼルケアを提供するかが課題であることがわかった。
     また,今回の取り組みは,院内の標準的な死後のケアとして取り入れるなど評価され,新人教育への組み入れや必要な物品購入に結びついた。
     今後,さらなる院内スタッフ全体の意識向上が期待できる。
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