日本農村医学会雑誌
Online ISSN : 1349-7421
Print ISSN : 0468-2513
ISSN-L : 0468-2513
62 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 原内 大作, 宇山 攻, 島田 良昭
    2013 年 62 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/17
    ジャーナル フリー
    〔目的〕高齢者乳癌患者の治療は標準治療と異なる選択をすることも多く,また合併症や余命が短いことを理由に患者側からの治療拒否も珍しくない。今回,我々は当院で経験した高齢者乳癌症例を基に適切な治療法を検討した。 〔方法〕80歳以上の高齢者乳癌患者12例を対象に,術前検査,手術方法,病理組織検査,術後補助療法を検討した。 〔結果〕術前検査は,マンモグラフィ,超音波検査,CT検査,乳房MRIと穿刺吸引細胞診を行なった。組織検査において局所麻酔下の生検は同意を得るのに説得を要したが,超音波ガイド下針生検は患者側の抵抗感もなく行なえた。手術は,前半の症例にはリンパ節郭清を伴う全乳房切除術を行なっていたが,後半の症例には乳房部分切除術やセンチネルリンパ節生検などの低侵襲手術を行なった。病理組織検査結果は11例が浸潤癌であり,ホルモンレセプターも11例で陽性であった。術後補助療法は,内分泌療法とフッ化ピリミジン系薬剤の内服投与を行なった。乳房温存手術後の残存乳房への照射は,内分泌療法を行なうことで省略した。結論:高齢者は,手術,化学療法,放射線治療に対する拒否感が強かったが,適応があれば乳房部分切除術,センチネルリンパ節生検やホルモン療法などの低侵襲治療を提案することで根治的治療が行なえた。高齢者というだけでリンパ節郭清や術後補助療法を省略するのではなく,乳癌診療ガイドラインに基づいた根治的な低侵襲治療を考慮すべきである。
報告
  • ── 血液培養との対比を中心に ──
    小出 明奈, 久保田 勝俊, 岩月 奈都, 粕谷 法仁, 山下 愛, 鈴木 和人, 花ノ内 基夫
    2013 年 62 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/17
    ジャーナル フリー
     プロカルシトニン (以下PCT) は重症細菌性感染症及び敗血症のマーカーである。  敗血症は,治療開始の遅れにより,ショック・DIC・多臓器不全を引き起こし,死に至るといわれている為,早期の診断が重要である。多くの感染症マーカー (CRP,血液培養,エンドトキシンなど) は臨床的重要性を欠く場合が多く,ここ5年間で細菌性敗血症の診断マーカーであるPCTが世界的に認知されるようになってきた。  当院では,2008年の改築に伴い救急医療の充実を図るため,PCTを24時間いつでも定量測定し,30分で報告できる体制を整えた。今回,敗血症を疑いPCTと血液培養を同時に採血した患者の検査結果をもとに,敗血症の早期発見,早期治療への有用性について検討した。  PCTと血液培養の一致率は58.96%であった。その背景には血液培養検査はもともと陽性率が低いことと敗血症以外での侵襲によるPCT上昇が考えられた。  また,PCT濃度が0.5ng/mL未満の症例では,細菌性敗血症の可能性が低いことから,PCTは救急医療現場においてバイオマーカーの1つとして迅速診断に有用であることが伺えた。
  • ── 経時的アンケート調査から ──
    五艘 香, 小瀧 浩, 小宮 進, 高畑 武司
    2013 年 62 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/17
    ジャーナル フリー
    昨今の医療現場は,過重労働問題や業務の特殊性,医療訴訟の増大などストレス要因が非常に複雑になってきている。このストレスフルな職場環境の中で,どの医療機関においても看護師不足,離職防止の問題は課題であり,さまざまな支援策がとられている。当院では,働きやすい職場環境を作る事を目的に,心理職が職員のメンタルヘルスケアに取り組んでいる。  本報告では,経時的に実施したアンケート調査から新人看護師の職場適応について検討した。入職直後は,非常に高い心身の疲労度を示していたが,入職2年目に入ると疲労度に改善傾向が見られた。しかし,抑うつ度はまだ高く,セルフエフィカシーも低い状態のままであることがわかった。  医療現場で働く看護師の業務があらためて負荷の高い業種である事を認識,理解した上で,ストレスマネジメント教育や継続的なサポート体制を作っていく事の重要性をあらためて感じた。
症例報告
  • 山本 絢子, 柴原 弘明, 青山 昌広, 中平 健一, 林 安津美, 西村 大作
    2013 年 62 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/17
    ジャーナル フリー
    症例1は50歳代男性。肺腺癌に対して,プロシュア®2本/日を投与し放射線療法とカルボプラチン+ドセタキセルによる化学療法を行なった。体重は入院時62.4kgから退院前63.7kgと増加し,CRPは入院時3.08mg/dlから0.48mg/dlに低下,アルブミンは入院時3.6g/dlから退院前3.5g/dlに維持できた。症例2は60歳代男性。肺扁平上皮癌と診断し,プロシュア®2本/日と抗菌薬投与を行なった。1か月半後,カルボプラチン+S-1による化学療法と放射線療法を施行した。体重は入院時47.0kgから退院前47.2kgと維持,CRPは入院時15.45mg/dlから3.26mg/dlまで低下し,アルブミンは入院時2.6g/dlから退院前2.7g/dlに維持できた。プロシュア®投与により,化学療法肺癌患者で栄養状態の改善と抗炎症効果がみられた。
  • 柴原 弘明, 小林 聡, 世古口 英, 深見 保之, 伊藤 哲, 大西 桜, 冨田 明宏, 白月 遼, 金森 明, 宮村 径, 久留宮 康浩 ...
    2013 年 62 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/17
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性。多発性骨転移がみられ,外科での乳房腫瘍針生検同一日に緩和ケア科を受診した。乳癌骨転移による疼痛が強く,オキシコドンの積極的な増量で疼痛緩和を図った。疼痛緩和を得た後に,緩和ケアと並行しEC療法とweekly PTX療法での化学療法を行なった。自験例では緩和ケア医と主治医とが密に連携を行ない,十分な鎮痛が得られた後に化学療法を行なうことが可能であった。がん治療を行なう主治医と症状緩和を行なう緩和ケア医が良好な信頼関係を築き,ともに患者中心の医療を行なうことが大切である。
  • 金子 緑, 宮澤 智徳, 小出 則彦, 藤田 亘浩
    2013 年 62 巻 1 号 p. 31-33
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/17
    ジャーナル フリー
    症例は39歳の男性で右下腹部痛を主訴に当院を受診した。理学所見で右下腹部に限局する腹膜刺激症状を認めた。腹部CT検査では右下腹部で大網の脂肪濃度上昇があった。以上より特発性分節性大網梗塞と診断した。抗生物質と鎮痛剤投与による保存的治療で症状は速やかに改善し入院後10日目に退院した。特発性分節性大網梗塞はまれな疾患で治療法は確立していないことから,文献的考察を加えて報告する。
看護研究報告
  • 千田 恵子, 佐藤 敏光, 藤原 香織
    2013 年 62 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/17
    ジャーナル フリー
    最近,摂食・嚥下障害を有する患者に対する口腔ケア,嚥下体操,摂食訓練を含む摂食機能療法の必要性が注目されるようになってきた。平成18年4月の診療報酬改定では,3か月以内の患者では算定回数の制限が廃止され,患者により良く関わることが報酬として評価されることになった。当病棟は特定リハビリテーション病棟であり,これまで脳卒中患者で摂食・嚥下障害の患者に摂食機能療法を行なっていたが,担当者の知識不足などから自己流の簡単な方法で行なっており標準化されていなかった。今回,病棟スタッフの摂食機能療法に対する意識調査により現状を分析し,それを基にスタッフが不安に感じている項目の手順や方法と,観察項目を明記した記録用紙を作成した。また,唾液腺・口腔内・顔面マッサージ,嚥下体操などの実技の勉強会を開催し,その内容を写真入りで載せた小冊子のパンフレットを作成し,専用ワゴンに常備した。その結果,標準化した摂食機能療法を継続的に行なうことが可能となり,対象者の口腔環境の回復,口腔機能の維持・回復につながり,摂食・嚥下障害患者の食べる楽しみへの意欲や自信の向上に寄与することが示されたので報告する。
短報
  • 松岡 真由, 中西 恭子, 齊藤 美奈子, 伊藤 友季子, 鈴木 貴士, 筆谷 拓, 安江 充, 平尾 重樹, 渡部 啓孝
    2013 年 62 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/17
    ジャーナル フリー
     嚥下機能評価のための嚥下造影検査時には誤嚥を認めることがあり,誤嚥物除去も必要な対応となっている。当院の検査時誤嚥対応の確立と運用経過を報告する。  対象は2009年10月1日から2011年3月31日までに嚥下造影検査を実施した患者19名の内,硫酸バリウム液・造影剤加模擬食品を誤嚥した6名 (平均年齢78.3±3.0歳,男性4名,女性2名)。嚥下造影検査時誤嚥の初期対応として医師・看護師・言語聴覚士で,咳嗽,強制呼出手技,吸引および体位ドレナージを行なった。この後必要に応じ理学療法士が肺理学療法を行なった。誤嚥物喀出不可の場合,臨床工学技士の協力で陽・陰圧体外式人工呼吸器使用を検討した。誤嚥直後の胸部X線写真所見,誤嚥物喀出の有無,検査後一週間の発熱と炎症反応上昇の有無,呼吸器・消化器症状を評価し,誤嚥の影響を後方視的に調査した。  胸部X線写真に誤嚥物残留ありが3名,残留なしが3名だった。残留ありの3名にチームアプローチで介入し,2名(初期対応1名,理学療法士介入1名)で誤嚥物除去ができた。検査後1週間の発熱と炎症反応上昇は2名あったが検査時の誤嚥が直接原因になった可能性は低かった。呼吸器・消化器症状は全例で認められなかった。  本体制確立でシステム化した誤嚥対応が可能になった。多量の誤嚥があっても胸部X線写真上に反映されない場合もあるため対応考慮の必要があった。
地方会
feedback
Top