日本農村医学会雑誌
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63 巻 , 5 号
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原著
  • 井上 智代, 渡辺 修一郎
    2015 年 63 巻 5 号 p. 723-733
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/09
    ジャーナル フリー
     本研究は, 農村における住民の生の声から健康に資するソーシャル・キャピタルの地域特性を整理することを目的にグループ・インタビュー法を用いて調査し, 質的記述的に分析を行なった。A村に在住する65歳以上高齢者6~9名のグループ3組にインタビューを実施した結果, ソーシャル・キャピタルに関する発言内容が610抽出され, コード数141にまとめられた。141のコードから農村に特徴的な20コードを抽出したのち, 8サブカテゴリー,4カテゴリーに集約した。4カテゴリーは【自然との共生】, 【農村ならではの信頼関係の維持】, 【農村の社会規範を重んじる】, 【農村であることを活かした社会参加とネットワーク】にまとめられた。農村における健康に資するソーシャル・キャピタルには, 自然の中で共生してきた農村独特の人と人とのつながりがもたらす特徴がみられた。先祖の農地を守って生活する農村独特の地縁社会の中で培われてきた強い絆に基づく結束型ソーシャル・キャピタルの側面が多く抽出されたが, 農村の人々の中には橋渡し型ソーシャル・キャピタルの視点も着実に育まれている。農村における高齢者の健康づくりや豊かなコミュニティづくりを推進していくにあたり有用な知見を得ることができた。
  • 西澤 美香, 星野 明子, 桂 敏樹
    2015 年 63 巻 5 号 p. 734-746
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/09
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 農山村地域に居住する壮年期の人々のコミュニティ意識と健康との関連を明らかにし, 壮年期の人々の健康行動を実践するための支援方法について検討することである。対象者はA市B町の30~64歳のうち, 自治会長を通じて調査票を配布できた2,336名で, 有効回答は763名 (有効回答率32.7%) である。  調査は自記式質問紙調査を行ない, 調査票の回収は郵送法とした。調査項目は, 対象者の特性, コミュニティ意識 (地域社会への態度, 近所づきあい, 地域参加), 身体的健康 (健康状態, 健康習慣, 健康行動への態度), 精神的健康 (生活満足度, 抑うつ度) である。分析は, 対象者の特性と地域社会への態度, 近所づきあい, 地域参加, 身体的健康, 精神的健康についての関連, さらに, 身体的健康, 精神的健康を目的変数とし, 主に単変量解析で有意差が認められた項目を説明変数として多変量解析を行なった。  結果, 地域社会への態度得点が高い者ほど, 健康状態得点が高く, 健康習慣および健康行動への態度得点が高かった。同様に, 地域社会への態度得点が高い者ほど, 生活満足度得点が高く, 抑うつ得点が低かった。  以上のことから, コミュニティ意識の高さは農山村地域に居住する壮年期の人々の健康と関連しており, 壮年期の人々の健康支援にはコミュニティ意識が高いという農山村地域の特徴を捉えた上で働きかける必要があると考える。
研究報告
  • 水本 一生
    2015 年 63 巻 5 号 p. 747-752
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/09
    ジャーナル フリー
     難治性皮膚潰瘍に対して電子ネットワークを利用した臨床写真画像転送による大学病院と地域病院の診療連携体制を構築し, 診断治療にあたる試みを行ない, その有用性を検討した。2013年4月から2014年3月までの間に75歳以上の難治性皮膚潰瘍の患者で手術を必要とした26例を対象とした。臨床写真を電子メールに添付し共同研究者である島根大学医学部付属病院皮膚科形成外科診療担当医に配信, チャット形式での検討により, 治療方針を決定し, 熱傷瘢痕9例, 褥瘡7例, 虚血肢3例, 悪性腫瘍1例, 外傷6例に対して地域病院で手術および周術期管理を行なった。術式変更となったものは遊離植皮術を予定していた熱傷瘢痕に対して局所皮弁術を施行した2例 (7.7%) であった。術後, 重篤な合併症を発生した症例はなく, また, 再手術を必要とした症例は外傷に対して縫合閉鎖した1例 (3.8%) のみであった。電子ネットワークを利用した大学病院と地域病院の診療連携により高齢者難治性皮膚潰瘍の診断・治療を地域病院で展開することが可能であった。
  • 神谷 公江, 鈴木 憲彦, 片田 直幸
    2015 年 63 巻 5 号 p. 753-757
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/09
    ジャーナル フリー
     当院が位置する豊田市は, 今後人口が微増し, 急速に高齢化が進む地域である。市民病院の役割を担う当院の将来像を, 「国立社会保障・人口問題研究所」が試算した「市区町村別5歳階級別データ」(平成25年3月推計)1)を使用し推察した。年少, 生産年齢, 前期高齢者, 後期高齢者人口の4段階に分け, 疾病構造については, 団塊の世代が全て75歳以上になる2025年に注目して分析を行なった。  豊田市の人口は, 2035年にかけて, 年少, 生産年齢は微減し, 前期高齢者は1.2倍, 後期高齢者は2.4倍に増加となっている。豊田市の後期高齢者の約12%が当院に入院しているため, 後期高齢者人口の増加とともに, 退院患者数も増加する。団塊の世代が全て75歳以上になる2025年を見ると, 産科疾患, 新生児疾患の患者絶対数は人口の減少とともに減少するが, 後期高齢者によくみられる, 新生物, 循環器, 消化器, 呼吸器, 外傷疾患の絶対数が増加すると考えられる。  当院の退院患者の約8割は豊田市民であり, 2025年の全退院患者推定数は約2万人である。2012年の平均在院日数を当てはめた場合, 病床利用率は105%となり, 病床が足りない状況が考えられ, 平均在院日数の短縮等の病床確保の対策が必要となる。
症例報告
  • 梅木 英紀, 遅野井 彩, 伏木 淳, 岡本 千明, 津堅 美貴子, 染川 可明
    2015 年 63 巻 5 号 p. 758-763
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/09
    ジャーナル フリー
     症例は32歳。卵巣皮様嚢腫と診断され, セボフルランを用いて全麻下に腹腔鏡下嚢腫切除を施行した。アドレナリン局所注入直後に血圧が急上昇し, 心室性頻拍を呈した。手術を中断してキシロカインを静注したところ, 血圧は正常化し洞調律に回復した。手術は予定通り終了し, 術後経過も順調であった。  一般に腹腔鏡手術時には出血軽減のためバゾプレシンが使用されることが多い。心停止などの有害事象報告もあるが, 保険適応が無いため, 医薬品副作用被害救済制度をうけることはできない。アドレナリンは保険で効能が認められており, ハロゲン含有吸入麻酔薬との併用で心室性頻拍などを生じるとされているが, 麻酔科学会による調査では, セボフルラン, イソフルランとの併用では重篤な副作用は生じないと結論づけている。  手術時にはアドレナリンの使用を推奨する。但し本症例のようにセボフルラン併用時でも心室性頻拍を呈することがあるため注意を要する。
  • 佐野 尚子, 村田 哲也, 別所 裕二, 齋藤 麻菜美, 伊藤 竜吾, 濱田 正行
    2015 年 63 巻 5 号 p. 764-771
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/09
    ジャーナル フリー
     遅延発育型の菌は, 数日の血液培養で陽性シグナルを認めても培養液のグラム染色で見落とされやすく, 偽陽性として報告されてしまうことがある。今回我々は悪性リンパ腫に対する化学療法中の患者から遅延発育型螺旋菌が検出された症例を経験したので報告する。本症例では, 度重なる発熱に対して血液培養が施行され, 血液培養装置BACTEC9240 (Becton Dickinson, 以下BD) でボトル内CO2濃度上昇による陽性シグナルが出たものの培養液のグラム染色では菌が認められず, 偽陽性として報告されることが続いた。培養時間を延長することにより漸く検出された菌は, グラム染色上Helicobacter属を疑う螺旋菌で, polymerase chain reaction (以下PCR) 法により増幅した16S rRNAをコードする遺伝子をsequence解析し, 得られた配列をBasic Local Alignment Search Tool (以下BLAST) による相同性検索にかけたところ最も高い相同性 (98.08%) を認めたのはHelicobacter canadensisであった。H. canadensisは, 近年下痢症患者から分離された腸管感染性の病原菌の1つで, 人畜共通感染症の危険性が指摘されており, 免疫不全患者での報告例も少なくないことから注意が必要である。血液培養で偽陽性が続く場合, 遅延発育型の菌も疑って培養時間を長くとるなど培養条件を変更してみることが大切である。
  • 阿部 智信, 仲 広志, 恩田 久孝, 今井 厚, 奥山 智子, 高野 靖悟
    2015 年 63 巻 5 号 p. 772-779
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/09
    ジャーナル フリー
     迅速な医療連携により救命した, 2例の静脈血栓塞栓症を経験した。症例1は呼吸困難を主訴として救急搬送された70代女性である。心電図検査 (ECG) でSIQⅢTⅢパターンであったことから急性肺性心が疑われ入院となった。超音波検査 (US) により血栓を伴う膝窩静脈性血管瘤の血栓遊離による肺血栓塞栓症 (PTE) と診断した。症例2は下肢疼痛及び腫脹を主訴として当院に紹介された60代男性である。USにより大腿動脈瘤及び深部静脈血栓症 (DVT) を指摘され入院となる。2症例とも早期のUSによりDVTが明らかとなり, CT検査でPTEと診断, 適切な処置により救命し得た症例であった。早期のUSは診断や血管の形態評価に極めて有用であった。
  • 北見 智恵, 河内 保之, 牧野 成人, 西村 淳, 川原 聖佳子, 新国 恵也
    2015 年 63 巻 5 号 p. 780-786
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/09
    ジャーナル フリー
     胆管切除後のRoux-en-Y再建後, 再発により輸入脚に閉塞が生じた輸入脚症候群に対し, 経皮経腸ドレナージおよびバイパス術を行なった症例を経験したので報告する。症例1は75歳女性。肝門部胆管癌術後, 局所再発によるつりあげ空腸と十二指腸の通過障害に対し, 経皮経腸ドレナージを施行後, バイパス術を施行した。症例2は57歳男性。膵癌術後, 腹膜播種により輸入脚, 輸出脚, 終末回腸が狭窄, それぞれバイパス術を施行した。症例3は60歳女性, 胆嚢癌術後膵頭部局所再発により, 輸入脚が狭窄, 経皮経腸ドレナージを施行した。3例とも自宅復帰し, 4, 4, 2か月後に永眠された。終末期患者の消化管閉塞に対する外科的介入は適応やタイミングの判断が難しい。症例によっては手術が患者のQOLの向上に寄与し, 在宅期間の延長をはかれることから, 予後, 患者の状態を的確に判断し, 時には外科的介入も躊躇せずに行なうことが重要である。
  • 丹村 敏則, 松岡 哲平, 西川 菜摘, 山田 修司, 大脇 俊宏, 鈴木 健人, 田中 創始, 冨本 茂裕, 高橋 佳嗣, 宮本 忠壽
    2015 年 63 巻 5 号 p. 787-791
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/09
    ジャーナル フリー
     糖尿病が認知症の発症, 進展に大きく影響すると言われ, また, 今後, 認知症が増加することが予測されている。今回, 認知症合併高齢糖尿病患者であるが, 様々な工夫により, 良好な血糖コントロールが実現し, さらに, 介護者負担軽減を実現することができた症例を経験した。とくに高齢化の進んだ地域での認知症合併糖尿病の医療・介護を進めていく上で参考になると考えられたので報告する。症例は80歳, 女性。倦怠感を主訴に外来受診し, 高血糖 (随時血糖1,096mg/dl) を認め入院。インスリン強化療法で血糖コントロール安定。入院後, 認知症を認めた。糖尿病教育指導でスナック菓子などの間食が消失した。退院後の生活 (独居) を考慮し, 内服薬単独に変更したところ, 300mg/dl以上の高血糖持続。週1回注射タイプGLP-1製剤と内服薬の併用にて良好なコントロールが実現し, 退院。認知症のある高齢糖尿病患者であるが, さまざまな工夫で良好なコントロールと介護者負担軽減が可能になった。
看護研究報告
  • 玉腰 晶美, 池田 京子, 石腰 由美
    2015 年 63 巻 5 号 p. 792-796
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/09
    ジャーナル フリー
     A病院は山間部に位置し, 人口約15万人の地域における中核病院であり, 二次救急病院に指定されている。しかし独立した救急外来がないため, 平日昼間は各診療科の医師と看護師, 夜間休日は, 当直医師1名と当直看護師2名で救急患者に対応している。当直看護師は, 外来経験年数や救急対応能力に差があり, 不安と葛藤しながら相談電話や救急患者の対応をしている。また, 平成24年5月に新病院に移転し, 主要道路の近くに位置したこと, ヘリポートが新設されたことから, 今まで以上に多種多様な受診者や救急患者の搬入が予測された。そこで, どのスタッフも短時間で必要な観察と的確なアセスメントができ, トリアージに一貫性を持たせることができるようにしたいと考えた。その方法として, 症状別トリアージ基準, 重症度分類の作成を行ない, 関係スタッフ全員の救急対応能力のレベルアップを目的とした学習会の開催や事例検討等に取り組んだ。
資料
  • 吉浦 隆雄, 古庄 剛, 栗本 純一, 櫻木 三能, 高野 恵, 内田 大地, 板谷 貴好, 宇都宮 美智, 吉岡 由香理, 和田 沙織, ...
    2015 年 63 巻 5 号 p. 797-804
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/09
    ジャーナル フリー
     大分県厚生連鶴見病院は, 平成23年4月新館完成と同時期に, 多機能かつ高性能のシステムを有する放射線治療装置を導入し, 同年9月からがん放射線治療を開始した。  当院は, がん治療高機能病院として安全で質の高い医療を提供し, 高機能・高精度の放射線治療が実施でき, 患者さんや社会から信頼されることを目指している。  がん放射線治療においては, 高い専門性を有した医師, 診療放射線技師, 看護師による緊密なチーム医療の実践が重要である。その中で診療放射線技師は, 日常のがん放射線治療において治療計画による線量分布作成やモニタ単位数の計算, 位置決め撮影, 固定具・補助具の作製, 照射照合, 患者のセットアップと毎日の照射治療, 放射線治療機器等の品質保証・品質管理, 患者さんへの説明, 放射線管理, 医療安全など多岐にわたる業務を実践している。  とくに, がん放射線治療システムの導入から治療開始までの過程においては, ①仕様書の作成, ②装置の決定, ③関係法令に基づく手続き, ④受け入れ試験, ⑤臨床データの取得, ⑥コミッショニング, ⑦治療線量の検証などの作業が必要であり, いずれも診療放射線技師の責任のもとに実施しなければならない。  今回, 当院のがん放射線治療システムの導入から治療の開始において, がん放射線治療を牽引する診療放射線技師の役割と実践について言及する。
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