日本農村医学会雑誌
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64 巻 , 2 号
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原著
  • 冨士井 睦
    2015 年 64 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕頭部外傷による錐体骨骨折後に, 遅発性顔面神経麻痺 (delayed facial palsy: DFP) を発症することがある。今回, 我々は顔面神経麻痺出現時に用いられるHouse-Brackmann grading system (HBS) に基づいた重症度とDFPの改善に要した期間との関連を後ろ向きに検討した。 〔対象と方法〕頭部外傷による錐体骨骨折282例のうちDFPを認めたのは33例であった。DFPの経過観察中に医学・美容上問題のないHBSⅡへ改善した時点を治癒とした。33例のDFPのうち最重症でもHBSⅡであった3例と顔面神経開放術を行なったHBSⅤの1例を除いた29例に対し, 麻痺の重症度とDFPの改善までの期間についてlog rank検定にて統計学的に検討した。 〔結果〕HBSⅤの重度群 (n=7) はHBSⅢ, Ⅳの中等度群 (n=22) に比べ統計学的有意に治癒期間が延長した (p=0.02)。後者は全例治癒に至り, 治癒に至るまでの中央値は50日, 前者では1年の経過観察後も2例で顔面神経麻痺は継続し, 治癒に至った5例の治癒に至るまでの日数の中央値は93日であった。 〔結語〕DFPはHBSによって予後予測が可能である事が示唆された。またDFPでもHBSⅤに至れば顔面神経麻痺を後遺する可能性がある。
  • 杉浦 正士, 早川 富博
    2015 年 64 巻 2 号 p. 114-124
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
     当院の診療圏である三河中山間地域を対象として「認知症についてのアンケート調査」を実施し, 65歳以上の回答者に対しては日常生活状況および活動能力, 精神的な健康状態についての項目を追加実施した。活動能力指標として老研式活動能力指標, 精神的な健康状態評価法として老年期うつ病評価尺度 (GDS) を用い, ロジスティック回帰分析によりアンケート調査結果37項目の関与について検討した。  活動能力指標に対しては,「毎日するべき仕事の有無」「田畑の世話」「趣味の有無」「ボランティアとしての協力意向」「話し相手」などがオッズ比2.0以上 (p‹0.001) と強い関与が認められ, 精神的な健康状態も「趣味の有無」「ボランティアとしての協力意向」「話し相手」などほぼ同様な項目がオッズ比2.0以上 (p‹0.001) であった。このことから, 高齢者の日常生活には目的意識や役割, 地域との関わりなどを持つことが重要であることが明らかとなった。  高齢者の一層の増加が予測される状況では「健康な高齢者が身体的・精神的に弱くなった高齢者を見守り・支援する体制」を地域で構築することが重要と考えており, 今回の結果を踏まえた地域住民を中心とした早急な体制づくりが必要である。
  • 島袋 剛二, 遠藤 誠一, 西田 慈子, 佐川 義英, 高木 香織, 小林 真弓, 中村 玲子, 尾臺 珠美, 羅 ことい, 栗田 郁, 藤 ...
    2015 年 64 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
     術後の癒着は腸閉塞や妊娠可能年齢婦人では不妊症の原因となり得るため, 癒着の防止は極めて重要である。そこで今回, 帝王切開術 (以下, 帝切) で癒着防止材として使用されるヒアルロン酸ナトリウム/カルボキメチルセルロース癒着防止吸収性バリア (HA/CMC) の癒着防止効果と有害事象について後方視的に検討した。  2回以上の帝切を受けた妊婦で前回帝切時にHA/CMCを貼付した45例について腹壁創下と子宮への癒着の有無, 腸閉塞症状の発生について各々評価した。また, 前回帝切後から今回帝切時までの観察期間中に異物であるHA/CMCを腹腔内に留置したことによる感染等の有害事象発生の有無についても評価した。  腹壁切開創下との癒着は4.4% (2/45例) の頻度であった。2例とも創部上端と大網との軽度の癒着であった。子宮との癒着は2.2% (1/45例) の頻度であり, 骨盤腹膜が膀胱子宮窩腹膜縫合部左端に癒着していたが手術操作には大きな影響はなかった。観察期間中に腸閉塞との関連が推測される嘔気, 嘔吐, 腹痛等の症状は皆無であった。有害事象は発熱が6.7% (3/45例) でみられた。発熱の原因はそれぞれインフルエンザ, 乳腺炎, 静脈炎にともなう発熱でHA/CMC貼付との関連性はないと判定された。  HA/CMCを貼付した帝切症例での癒着頻度は低く, 腸閉塞症状も皆無であり, また有害事象もなかったことから, HA/CMCは反復手術がしばしば施行される帝切では有用な癒着防止材であると考えられた。
  • 柴原 弘明, 村松 雅人, 丹羽 孝寿, 西村 大作
    2015 年 64 巻 2 号 p. 131-139
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕看取り期の患者における皮膚湿潤 (冷たくじっとりとした皮膚所見) の出現と関連因子を明らかにする。 〔方法〕緩和ケア病棟で, 看取りのクリニカルパス (Liverpool Care Pathway[LCP]日本語版) を用い, 看護師により皮膚湿潤を前向きに観察した。 〔結果〕LCP適用患者213例中, 皮膚湿潤は48例 (22.5%) にみられ, 夏・日中午前に多く, 出現後死亡まで平均45.8時間であった。多変量解析では非ステロイド系消炎鎮痛剤 (NSAIDs) 投与が独立した関連因子であった。結語: 皮膚湿潤は, 以前われわれが報告した後ろ向き研究 (頻度10.9%, 出現後死亡まで平均10時間) に比べ, 高頻度かつ早期からみられ, NSAIDs投与が独立した関連因子であった。
  • 角田 英恵, 桂 敏樹, 星野 明子, 臼井 香苗
    2015 年 64 巻 2 号 p. 140-154
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
     本研究は, 高齢者のコミュニティ感覚や近隣効果尺度等が心の健康と関連する要因であるかを検証することを目的とした。2011年8月~9月, A市老人クラブに所属する65歳以上の男女およびA市社会福祉協議会が実施する元気デイ参加者の65歳以上の男女の計820人を対象に, 無記名自記式質問紙調査を実施し, 全ての調査項目に有効な回答が得られた577人 (有効回答率70.4%) を分析対象とした。分析は単変量解析および多変量解析を行なった。その結果, 生活満足度と正の関連があった要因は「主観的健康感」「高血圧」「中学校区」「地域への愛着」「ソーシャルサポート」「現病歴なし」であり, 負の関連があった要因は「神経症性」「ストレス」であった。一方, 抑うつの危険因子となったのは「一人暮らし」「神経症性」「ストレス」であり, 改善因子となったのは「主観的健康感」「趣味活動」「美観」「社交性」であった。以上のことから, 高齢者の心の健康には,主観的健康感や性格特性等のさまざまな個人的要因とともに, コミュニティ感覚「地域への愛着」, 居住環境「美観」が関連することが明らかになった。高齢者が地域で健やかに生き生きと過ごすためには, 性格特性等の個人的要因を踏まえながら, 地域のつながりを深めるような支援や, 住み心地のよいコミュニティづくりを進めることが必要であると考える。
研究報告
  • 白石 卓也
    2015 年 64 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
     医療・介護関連肺炎 (nursing and healthcare-associated pneumonia: NHCAP) 診療ガイドラインに, 主治医は本人や家族の意向を尊重し, 倫理面に配慮しながら高齢者肺炎患者の治療方針を決めるべきだと示された。しかし, 本人や家族と相談しても, 高齢者肺炎患者の多様な背景から治療方針の決定に迷うことがあった。そのため, 何か高齢者特有の指標があれば, 高齢者肺炎患者における治療方針決定の一助となると考えた。近年, 高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し, 生活機能障害, 要介護状態, 死亡などの転帰に陥りやすいフレイルが注目されている。そこで本研究では, 中山間地域に位置する当診療所で経験した高齢者市中肺炎患者とフレイルの関連を検討した。対象患者は, 2014年4月~2015年1月の間に診療所医師が診察し, 外来や在宅で肺炎を治療した, もしくは病院に搬送し肺炎を治療された当診療所に定期受診する75歳以上の高齢者とした。治療前後の生活状況, NHCAPか否か, 初診時の重症度および治療前のフレイルを調査した。調査期間中に肺炎の診断で治療された高齢者は7例 (男性3例, 女性4例) で, 平均年齢は87.7歳であった。全例がNHCAPであり, 治療前フレイルと判定された。NHCAPの中でもフレイルが進行するにつれて, 生存や従来生活していた場所への退院は難しかった。フレイルの評価は高齢者肺炎患者治療後の転帰の予測に有用で, 高齢者肺炎患者における治療方針決定の一助となる可能性が示唆された。
  • 小池 卓也, 河野 悟, 塩見 理紗, 荒井 真, 高橋 雅史, 保刈 岳雄, 高野 靖悟
    2015 年 64 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
    〔目的〕膵頭十二指腸切除術 (以下PD) 後の手術部位感染 (以下SSI) 対策として合成吸収糸による真皮埋没縫合を導入し, その有用性について検討した。 〔対象・方法〕2006年3月から2014年3月までにPDを施行した69例に対し, 2006年3月から2010年3月までスキンステイプラ (注 : 金属製の皮膚縫合器) にて閉創した38例 (非埋没群) と2010年4月から2014年3月まで真皮埋没縫合 (注 : 縫合糸を皮下に埋没する縫合法) にて閉創した31例 (埋没群) に分け, 両群間の年齢, 性別, BMI, 喫煙歴, 糖尿病・透析の既往, 手術時間, 出血量等, SSI発生に関わる因子を検討し, SSI発生率を比較した 〔結果〕表層SSI発生 (注 : 切開創表面の感染) は非埋没群8例 (21.0%), 埋没群3例 (9.7%) であった。真皮埋没縫合群で発生率が低下したが, 有意差は認めなかった (P=0.17)。その他の因子には有意な差は認めなかった。 〔結語〕今回の検討ではPD後のSSI対策として, 真皮埋没縫合には統計学的な有意差は認めなかった。しかし, 表層SSIは減少傾向であり, 病棟業務の軽減・患者満足度への貢献という利点もあり, 今後症例を重ねて更なる検討を加えていく必要があると考えられた。
症例報告
  • 石原 和浩, 鷹尾 千佳, 田中 秀典, 高橋 治海, 山本 悟
    2015 年 64 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
     結腸癌術後に腹壁再発をきたすことは比較的まれと考えられたため, 文献的考察を加えて報告する。症例は60代の女性。検診で便潜血反応陽性を指摘され, 大腸内視鏡検査にてS状結腸に2型大腸癌が認められた。手術はS状結腸切除術, D3リンパ節郭清, 結腸直腸側端吻合を施行した。病理診断は中分化腺癌で, StageⅡであった。補助化学療法は施行せずに経過観察中, 腫瘍マーカーが高値となり, 精査にて孤立性の腹壁再発と診断。腫瘍から約2cmのマージンを確保して腹直筋を含む病巣を切除した。病理診断では結腸癌の再発として矛盾しない所見であった。現在, 初回手術から約7年経過しているが明らかな再発なく経過している。本症例の再発形式として腹壁への癌細胞のImplantationが原因と考えられたため, 術中の手術操作, 腹壁の創保護などに十分留意する必要がある。
看護研究報告
  • 堀田 好紀, 阿部 翔子, 長岡 由華
    2015 年 64 巻 2 号 p. 172-179
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
     循環器病棟では, 心電図モニターによるアラームが頻繁に鳴っている。アラームはアーチファクトなど機器判定とは違う波形 (不適切なアラーム) であることが多い。そこで7日間, 患者数56人, のべ患者数100人のアラームを調査したところ, 全アラーム数は3,699個で, 全アラーム中徐脈が47%, 頻脈30%, 心室性期外収縮連発10%あった。アラームの原因は, アラーム判定と実際の波形が一致する, 正当なアラームが49%, 電極の脱落や接触不良16%, 機器誤認11%, 体動乱れ11%だった。そこで, アラームを減らすために, 電極が乾いたり外れやすくならないよう電極を1日1回貼り替えること, 貼る位置が汗で汚れている場合は拭き取ること, 体動が多い場合影響の少ない場所に電極を貼ること, リード線が引っ張られないようテープで固定すること, 1mV以上のQRS波が得られるような位置に電極を貼る事, アラームの範囲を適切に設定することの, 以上6項目の対策が必要と思われた。
資料
  • 杉浦 正士, 白井 善男, 早川 富博
    2015 年 64 巻 2 号 p. 180-186
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/13
    ジャーナル フリー
     高齢者の外出機会が少なく, 理由として「何もすることがない」が半数以上を占めたことに対応するため「生甲斐づくり事業」を実施した。  平成25年度に全面改築工事が完了して, 地域開放室, 講義室, 会議室などの開放可能な院内施設の有効活用を考える病院コミュニティー機能WGを立ち上げ,「院内施設を広く地域に開放して地域交流の拠点とする」を目指した統一ルールを策定した。  実施した事業は, 病院スタッフによる「ロコモ予防体操倶楽部」「脳いきいき倶楽部」「院長のサロン」, 地域の方やボランティアによる「整膚美容サロン」「カラオケ教室」「ミニデイサービス」の合計6教室である。参加者は, 教室により異なるが10名から30名の参加が得られた。女性が8割以上と多く, 平均年齢も約75歳とかなり高齢となっている。  参加料金は, 教室により無料~500円で, 半年間経過後に300円の有償とした「ロコモ予防体操倶楽部」「脳いきいき倶楽部」の両教室も8割以上の参加者が確保できた。また,「脳いきいき倶楽部」では, 1年経過後の再評価で「改善」と判定される割合が高率で教室参加の効果も明らかとなった。  事業実施については,「遠隔者が参加し辛い」「男性の参加が少ない」「支出超過となる」などの課題も明らかとなったが, これらの課題解決に向けた取り組みを地域コミュニティー再構築の一環として展開することが重要と考える。
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