日本農村医学会雑誌
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65 巻 , 4 号
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綜説
  • 柴田 滋子
    2016 年 65 巻 4 号 p. 729-737
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     訪問看護師におけるバーンアウト研究の動向を明らかにすることで,バーンアウト予防への一助とすることと今後の研究の方向性を検討することを目的とした。医学中央雑誌,CiNiiにおいて「看護」「訪問看護」「バーンアウト」をキーワードとして文献を検索し,このうち訪問看護においては8件の文献を抽出した。  これまでに明らかになっている訪問看護師におけるバーンアウトの関連要因は,個人要因,労働環境,職場内の人間関係と研修体制,職場外の要因,これらから派生すると考えられる責任感や負担感等の個人の認識,コミュニケーション技術等であった。バーンアウトを予防するためには,過度の労働による身体的負担を軽減するために効率よく働けるシステム作りと,過度な負担感や責任感を軽減する職場環境,そして自己の役割と成長を認識し,仕事(訪問看護)を肯定的に受け止められることが重要であり,今後は訪問看護の業務特性や困難感をふまえたうえでのさらなる研究と関連要因間の関係性を明らかにすることで,より具体的な対策に繫げていくことが必要であると考える。
原著
  • 細谷 まち子, 牛久 英雄, 依田 達也, 蓮見 純平, 坂本 昌彦
    2016 年 65 巻 4 号 p. 738-746
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     近年わが国では小児医療の進歩に伴い,救命率が向上している。一方では,重度の障がいを残したこどもたちが増加し,その多くは自宅で生活をしている。佐久総合病院の位置する佐久圏域のなかで,重症心身障がい児の背景を調査した。さらに自宅で生活をしている重症心身障がい児が,家庭でどのような医療的ケアを受け,また社会的資源を利用しているか調査をした。  2015年4月1日時点で,佐久圏域に住んでいる18歳以下の重度知的障がいと重度肢体不自由を重複している小児を対象とした。  佐久圏域では,重症心身障がい児数は40例で人口比は0.02%であった。30例(75%)が自宅で生活をしていた。基礎疾患は,周産期に由来する症例が21例(52.5%)であった。  自宅で生活をしている30例中,超重症児は8例,準超重症児は7例,それ以外の重症児は15例であった。社会的支援の中の訪問サービスでは,往診が1例,訪問看護の利用は10例であった。超重症児は全例で訪問看護を受けていた。短期入所は,医療型入所施設が1か所で,一般病院を利用している重症児もいた。児童短期入所の利用は,13例(43.3%)であった。児童通所支援の利用は,19例(63.3%)であった。  訪問看護は,医療的ケアの必要度が高い重症児が利用していて家族の支えになっていた。一方児童短期入所施設や児童通所支援が不足していて,利用者は半数に満たない。今後,重症心身障がい児を地域で支援する社会資源の充実が望まれる。
  • 南部 泰士, 伏見 進
    2016 年 65 巻 4 号 p. 747-757
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,秋田県南部A地域医療支援病院で脳ドックを受診した人のリスク因子(性別,年齢,BMI,喫煙歴,糖尿病の有無,血圧値)とその合計点数であるリスクスコア(10年間で脳卒中を発症する確率と血管年齢)を算出し,脳ドック受診者の一次予防行動の推進のための基礎資料とすることを目的とした。  対象は平成21年4月1日から平成25年8月30日までの間に,秋田県南部A地域医療支援病院で脳ドックを受診した40歳から60歳の男女1,426人(男性798人56.0%,女性628人44.0%)である。  リスクスコアを属性で比較した結果,性差は無かったが,女性において,未破裂脳動脈瘤「有」の人のリスクスコアが「無」の人より高値であった(「有」29.0±8.3,「無」22.0±8.9,p⁢0.001)。また,未破裂動脈瘤を有する男性,女性共に各リスク因子の点数(年齢,BMI,喫煙歴,糖尿病,血圧)が高値であった(p<0.001)。  脳ドック受診者のリスクスコアの算出は,脳ドック受診者の喫煙率や糖尿病の有無,肥満,血圧値に関する個人の生活習慣を把握することにつながり,一次予防行動を推進するための保健指導の根拠となるという有用な知見を得ることができた。
  • 渡邊 慶子, 沼田 聡, 島田 郁子, 佐賀 啓子, 田中 守
    2016 年 65 巻 4 号 p. 758-765
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     がん治療中の患者は抗がん剤治療,放射線治療等の有害事象により,食欲不振をきたす場合が多く,食事摂取における支援が必要となってくる。当院は2011年12月より,がん治療患者のQOL維持向上,治療の完遂を目的に食事摂取支援食として,「ぼっちり食」を考案し運用してきた。本研究では,がん治療時の食事摂取量の増加を目的に支援食を開発,導入した「ぼっちり食」の有効性について検討した。ぼっちり食の提供基準は,がん治療中に3日間の平均摂取栄養量が必要栄養量の2分の1以下に低下した患者を対象とした。食事提供時間2時間前までオーダーを可能とし,患者の希望に応じて温度や量の調整を行なった。調査項目は,年齢,性別,主病名,抗がん剤治療の有無,放射線治療の有無,ぼっちり食期間,注文回数,ぼっちり食導入前平均摂取エネルギー量,ぼっちり食導入後平均摂取エネルギー量,ぼっちり食喫食率,副食の喫食率とした。ぼっちり食提供前の平均摂取エネルギー量は226.6±14.8kcalに対して,提供後の平均摂取エネルギー量が294.1±15.3kcalと増加しており,ぼっちり食及び副食の喫食率とぼっちり食導入後の摂取エネルギー量にかなり強い正の相関が認められた。以上の結果から,「ぼっちり食」は有用な食事摂取支援食となることが示唆された。
  • 安井 昭夫, 北島 正一朗, 丸尾 尚伸, 武井 新吾, 大脇 尚子, 鈴村 優茉, 水谷 晴美, 澤木 絵美, 溝口 真里子, 加藤 佑奈 ...
    2016 年 65 巻 4 号 p. 766-779
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     造血幹細胞移植は,患者の最大耐容量を超える大量の抗癌剤投与や全身放射線照射(total body irradiation ; TBI)を行ない,患者の骨髄とともに悪性腫瘍の殺滅を達成した後に造血幹細胞を輸注することで,失われた造血能を補う治療法である。放射線,抗癌剤および免疫抑制剤を用いるため,口腔の有害事象として,粘膜炎,出血,易感染性,さらには移植片対宿主病(graft versus host disease ; GVHD)が問題となる。我々は造血幹細胞移植を行なう患者に対して,血液・腫瘍内科と歯科口腔外科が連携して周術期口腔機能管理を実施しているので報告する。対象は2008年から2015年までに自家移植52例,同種移植139例,合計191例の造血幹細胞移植患者である。移植前処置開始までにセルフケアによるブラッシング,含嗽,保湿などの口腔ケア指導に加え,専門的口腔ケアとして歯科衛生士による歯面清掃,機械的歯面清掃および3DS(dental drug delivery system)を完了させる。周術期口腔機能管理によって,咽頭粘膜の細菌検査ではカンジダ菌の頻度が19.3%から4.3%に減少した。造血幹細胞移植に伴う口腔有害事象に対して,移植前処置までに支持療法として口腔ケアプログラムの標準化を立案することは,患者のQOL向上に効果的であると考えられた。
  • 細井 愛, 佐藤 賢治, 坂本 武也, 親松 学
    2016 年 65 巻 4 号 p. 780-791
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     我が国の高齢化はとどまるところを知らず,医療・介護への要求は高まるばかりであるが,医療・介護資源は充足される兆しすら見えない。新潟県佐渡市は,高齢化率36.8%と抜きんでた高齢社会であり,医療従事者も高齢化している。要医療者の増加と病態の複雑化に対して圧倒的に少ない医療資源で対応しなければならず,提供できる医療の維持すら困難になりつつある。こうした問題に対応するため,平成25年から新しい地域医療連携ネットワーク,通称「さどひまわりネット」が稼働した。診療報酬明細情報を核に,電子カルテの有無にかかわらずすべての参加医療機関の病名・処方内容・処置内容・検体検査結果・画像結果を自動的に抽出し,相互に共有するシステムである。介護施設利用者が医療機関を受診する機会も激増しているが,医療と介護の間には,医療従事者の意識の問題などもあり,スムーズな情報の伝達がしづらいという問題が存在する。このたび,「さどひまわりネット」を用いて,介護側から利用者の日常生活動作や日常的なバイタルの情報を提供できる環境を構築する取り組みを開始した。本稿では医療と介護の機能的な連携を実現することを目的としてどのようなネットワークシステムを構築したかについて述べる。
  • 橋之口 園子, 大野 佳子, 草野 健
    2016 年 65 巻 4 号 p. 792-803
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,個人の意思を尊重した介護の実現に向けて,自分が要介護状態になった際の要望に関する事前の意思決定および意思表示と健康意識や地域における社会活動との関連について,予備的に検討することである。対象は老年人口割合の高い農村地域において,集落抽出法により得られた40~74歳の男女920人のうち,調査の同意と有効回答を得た408人とした。調査項目は,性別,年齢,介護経験の有無,健康への不安感,地域活動への参加度等の15項目であり,分析方法は,単変量解析を用いて意思表示および意思決定の関連要因について検討した。有意差のみられた変数を独立変数とし,意思表示/意思決定を従属変数とし,ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行なった。その結果,意思決定をした者/意思表示をした者は全体の23.8%/25.0%であり2項目間に有意な関連があったため,いずれかの項目が他の促進要因となることが示唆された。意思決定には地域活動への参加度,意思表示,介護考慮が有意に関連しており,意思表示には健診に関する会話の頻度,意思決定,介護考慮が有意に関連していた。これまで意思決定の関連要因として認知症に対する意識の程度は示されたものの,意思表示を促す動機や関連因子については不明であった。本調査により地域活動への参加度は意思決定に,健診に関する会話の頻度は意思表示に影響することが示唆された。
  • 高橋 友明, 畑 幸彦, 石垣 範雄, 雫田 研輔, 田島 泰裕, 三村 遼子, 前田 翔子
    2016 年 65 巻 4 号 p. 804-808
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     我々は,先行研究で腱板機能不全患者は僧帽筋上部線維の過剰な収縮と下部線維の活動低下が肩甲帯筋のアンバランスを生み,それによって腱板の機能不全を引き起こすと述べた。本研究の目的は,我々が行なっている肩甲骨周囲筋のアンバランスを矯正するための『肩甲帯筋トレーニング』の効果を明らかにすることである。対象は肩関節に愁訴のない健常人50例100肩で,下垂位最大外旋位(棘下筋テストの肢位)で男性は5kg負荷,女性は3kg負荷で3秒間保持を3回実施し,同時に僧帽筋の筋活動を計測した。次に肩甲帯筋トレーニングを5秒間2回実施後に前述と同様の方法で筋活動を計測し,トレーニング前後での筋活動量と利き手・非利き手側間での筋活動量を比較した。なお,測定筋は僧帽筋上部・中部および下部線維であり,表面筋電計Noraxon 社製MyoSystem 1400Aを用いて得られた波形を筋活動量として,3秒間の筋活動量積分値を最大随意収縮で正規化した活動量%MVCを算出した.僧帽筋上部線維の筋活動量はトレーニング後が前より有意に抑制されており(p<0.05),僧帽筋中部・下部線維の筋活動量はトレーニング後が前より有意に多かった(p<0.05)。今回の結果から,我々が行なっている肩甲帯筋トレーニングは,肩甲骨周囲筋のアンバランスを改善し,肩甲骨の安定化に寄与している可能性が示唆された。
研究報告
  • 栁川 伸幸, 武藤 瑞恵, 市來 一彦, 石川 千里, 武藤 桃太郎, 井上 充貴
    2016 年 65 巻 4 号 p. 809-815
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     中核都市と地方都市における医療環境には少なからず差があり,特に胆膵疾患に対する診療においては顕著であるのが現状である。そこで,胆膵領域の専門医が常駐していない医療機関に専門医を派遣することにより,地域の胆膵疾患診療レベルの向上の可能性と患者の負担軽減に関する検討を行なった。平成25年8月から平成27年3月までの間,旭川厚生病院(以下,旭川病院)の胆膵専門医が遠軽厚生病院(以下,遠軽病院)で,超音波内視鏡検査(EUS)及び経乳頭的処置を施行した患者68例(男性38例,女性30例,年齢中央値68歳)を対象とした。旭川病院の医師が施行したEUS症例は25例であり,経過観察例および手術例から検討した旭川病院医師の正診率は92.0%(23/25)であった。旭川病院医師が施行した経乳頭的処置症例は43例であり,その手技完遂率は88.4%(38/43)で,そのうち遠軽病院で手技を完遂できなかった症例に対する旭川病院医師の手技完遂率は75%(3/4)であった。同時期に遠軽病院から旭川病院に紹介された症例は14例で,内訳は手技不成功例が2例で,その他は患者の希望で検査を希望したり,さらなる精査が必要な症例であった。以上より,胆膵領域の専門医が存在しない医療施設に対して専門医を派遣することは,その地域の診療に十分寄与できるものと考えられた。さらに患者に対しては,負担を軽減するものであり,本研究で検討した病病連携は非常に有用なシステムであると考えられた。
  • 谷 匡浩, 泉川 裕紀, 佐藤 義晴, 佐藤 文昭
    2016 年 65 巻 4 号 p. 816-822
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     近年,一般撮影を含む放射線検査による被ばくが学会でも取り上げられるなど,医療関係者や社会の関心が高まり,医療被ばく低減施設の増加につながっている。今回,我々は当院の一般撮影における撮影部位ごとの被ばく線量を測定し,日本放射線技師会から出されている被ばく線量低減目標値と比較することにより,撮影条件について検討したので報告する。本研究では27項目の撮影部位を線量計と線量推定ソフトを用いて測定した。その結果,当院の撮影条件は低減目標値を超えるものが数項目あったものの概ね目標値を下回っていた。超えていた項目も診断に必要がある場合は許容範囲内と判断できる程度であった。今回の試みによって当院診療放射線技師の被ばく線量低減意識が高まった。
  • 永江 恵子, 大野 佳子, 草野 健
    2016 年 65 巻 4 号 p. 823-835
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     これまで農作業中の様々な事故防止対策はなされてきたが死亡件数は横ばいであり,作業工程毎に評価した調査研究はみあたらない。そこで,医療等の分野で利用され,事故の未然防止に有効な故障モード影響度解析(Failure Mode and Effect Analysis)を応用した農業機械の作業工程表を作成し,その有用性を試験的に評価することを本研究の目的とする。A県B市の農業従事者38人のうち同意を得た18人に対して作成した作業工程表に沿って対面調査を行なった。その結果,傷害事故件数:ヒヤリハット件数の比は1:8であった。また, 28工程のうち10工程において注意が不十分であること,特に「シートベルトを着用する」,「2柱式安全フレーム(折り曲げ式)を正規の状態に立てる」段階に課題があることが示唆された。今後は作業機環境や生活背景を踏まえ,より簡便な作業工程の開発と客観的データ分析の集積が望まれる。
  • 後藤 亮吉, 佐々木 ゆき, 花井 望佐子, 永井 雄太, 田上 裕記, 中井 智博
    2016 年 65 巻 4 号 p. 836-842
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     自主グループの発足要因と自主グループへの参加及び継続に関連する要因を明らかにすることを目的とした。対象は設楽町の自主グループ参加者とし,自主グループへ参加したきっかけ(以下:参加要因),自主グループを発足した要因(以下:発足要因),自主グループを継続している要因(以下:継続要因)を調査した。自記式質問紙法にて行い自由記述の内容をKJ法に準じて整理した。類似した内容のラベルをまとめ,サブカテゴリーを生成し,類似したサブカテゴリーからカテゴリーを生成した。  96名(男性7名,女性89名)から回答を得た結果,自主グループの参加要因は,6つのカテゴリーが得られ「他者からの勧め」が最も多かった。次に,自主グループの発足要因として,7つのカテゴリーが得られ「仲間の存在」が最も多かった。自主グループの継続要因としては,7つのカテゴリーが得られ「自身の健康」が最も多かった。自主グループの参加・発足要因として「仲間の存在」など他者の存在が大きく影響していると考えられた。また,継続要因は「自身の健康」であり,主体的に参加することにより,さらに参加継続に繋がっていると考えられた。以上のことから,地域の実情と人々のつながりを考慮し,住民の健康意識を高め,住民を主体とした自助・共助の関係性を築くことが重要であると考えられた。
症例報告
  • 梶川 裕子, 池田 光泰, 山川 理奈, 外丸 香織, 池部 晃司, 山本 加代子, 笹谷 真奈美, 水野 誠士, 藤井 隆, 櫻谷 正明, ...
    2016 年 65 巻 4 号 p. 843-849
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     Capnocytophaga canimorsus(以下C. canimorsus)は,イヌ・ネコの口腔内に常在する紡錘状の通性嫌気性グラム陰性桿菌である。C. canimorsusによる咬傷・掻傷感染症は極めて稀ではあるが,ヒトに敗血症を惹起する事があり,その致死率は約30%と高い。  全身倦怠感と発熱で来院した56歳男性。来院時に血小板数著減の精査で施行した末梢血液塗抹標本の無染色鏡検において菌体を認め,即時にグラム染色を施行し,紡錘状のグラム陰性桿菌を確認した。さらに飼猫の掻傷・咬傷の病歴より初期段階からC. canimorsus感染症を推定した。血液培養陽性検体から原因菌がC. canimorsusであることを早期に同定し,適切な治療により播種性血管内凝固症候群の状態を伴う敗血症から救命し得た。C. canimorsusの早期診断に末梢血液塗抹標本の鏡検(無染色)が有用であった。
  • 奥野 充, 足立 政治, 堀部 陽平, 大野 智彦, 後藤 尚絵, 中村 憲昭, 山内 治, 齋藤 公志郎
    2016 年 65 巻 4 号 p. 850-856
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     48歳,男性。全身倦怠感にて当院受診。原発性硬化性胆管炎による閉塞性黄疸を認めた。内視鏡的胆管ドレナージではドレナージ不良であったため,経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)を行なった。肝不全兆候がみられることから肝移植術を予定し,手術までの間,PTGBDカテーテルの長期留置を余儀なくされた。しかし12か月後に胸水が出現。肝萎縮によりPTGBDカテーテルが右横隔膜を貫通し胸腔内に露出した状態であった。その後全身状態が悪化し死亡した。横隔膜穿孔は長期間PTGBDカテーテルを行なう場合に起きうる重篤な合併症と考えられ注意が必要である。
  • 服部 早苗, 市川 麻以子, 沖倉 詩織, 萬年山 悠, 高木 香織, 西田 慈子, 塗師 由紀子, 中村 玲子, 尾臺 珠美, 遠藤 誠一 ...
    2016 年 65 巻 4 号 p. 857-861
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     肺動脈血栓症(PTE)の90%以上は深部静脈血栓症(DVT)に起因するといわれている。PTEは妊産婦死亡の原因となる代表的な疾患である。妊娠自体が血栓傾向の発生頻度を上げる原因の1つでもあることから,産科領域におけるDVTの管理及び治療は非常に重要である。また妊娠,産褥期にはプロテインC,プロテインSによる凝固抑制機構の変化が起こり,後天性に凝固が亢進した状態になっており,このことも血栓症のリスク因子の1つとなる。産科領域におけるDVT合併妊娠に対する確立された治療法はまだないが,今回我々はDVTとPTEを発症した低プロテインS活性妊婦に対して下大静脈フィルターを留置し分娩に至った1症例を経験したので報告する。
  • 大谷 清孝, 藤本 まゆ, 稲垣 瞳
    2016 年 65 巻 4 号 p. 862-867
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     アドレナリン自己注射製剤(以下エピペン®)は,15kg未満児には原則禁忌であるが,生命の危機に直面している緊急時に用いる場合はこの限りではない。今回,乳製品の誤食によりアナフィラキシーを認めた15kg未満児に対して,エピペン®が奏功した1例を経験した。症例は2歳男児。乳によるアナフィラキシー既往が3回あり,体重が12kgであったため,保護者の同意を得て,エピペン®を処方していた。家族旅行中に乳製品の誤食直後から,咳嗽,膨疹,呼吸苦,嗄声,意識低下を認めた。母親がアナフィラキシーと判断し,エピペン®を使用した。使用後は徐々に軽快し,救急車にて医療機関へ搬送となった。搬送時は蕁麻疹が残存しており,抗ヒスタミン剤とステロイド薬を投与後,入院となった。遅発性の反応を認めず,全身状態良好のため翌日退院となった。15kg未満児のアナフィラキシーに対してエピペン®が有効であったが,症例の蓄積が必要である。
  • 池田 聡, 内田 温, 井上 和成, 鈴木 恵子
    2016 年 65 巻 4 号 p. 868-871
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     われわれは,紡錘細胞型の細胞像を呈した77歳の甲状腺髄様癌の症例を報告する。針穿刺吸引細胞診では,炎症や出血のない背景を伴い紡錘型の細胞が多数出現していた。細胞は悪性所見に乏しく均一的であった。腫瘍の確定のため免疫細胞化学染色が行なわれた。染色の結果,CEA,カルシトニンが陽性となり,紡錘細胞亜型髄様癌と推定することができた。細胞はpap染色では悪性と診断することが難しく,診断には免疫細胞化学的検索が必要であった。髄様癌は細胞像が多彩であり,形態診断のみでは診断するのは困難である。当院では穿刺吸引細胞診検体は全てLBC固定液で保存されており,免疫細胞化学のような再検討のためにはLBC固定液での保存が有効と考えられた。
看護研究報告
  • 堀田 好紀, 成田 真里亜, 海老島 のどか, 阿部 翔子
    2016 年 65 巻 4 号 p. 872-878
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     循環器病棟における,心電図モニターによるアラームの現状を調査したところ,器械判定と実際の波形が一致する,正当なアラームは49%だった。不適切なアラームを減らす取り組みとして,我々はこれまでに,「電極が乾いたり外れやすくならないよう電極を1日1回貼り替える」,「貼る位置が汗で汚れている場合は拭き取る」など6項目の対策が必要であることを報告した。  本報告ではこの対策の有効性を,対策前後のアラームの数,種類,原因の3項目で評価した。その結果,アラーム数が3,699個から1,109個へ,脱落接触不良が629個から30個へ,器械誤認が432個から114個へそれぞれ減少した事が明らかとなった。一方,体動による乱れは415個から418個と変化がなかった。我々が提唱した6項目の対策は,不適切なアラーム,特に脱落接触不良と器械誤認が原因となるものの減少に有効である可能性が示唆された。  さらに,不適切なアラームの減少を目的として,「器械判定の感度を下げる」事の是非を検討したところ,アラームとすべき波形を器械が認識できない事例があったことがわかり,検出感度を下げることは好ましくないことがわかった。
  • 田中 勝男, 藤村 恭子, 山田 純子
    2016 年 65 巻 4 号 p. 879-883
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー
     当病棟では看取りの機会が多く,年間約80名の方が亡くなられている。看取りの際に立ち会う看護師の経験や死別体験は様々であり,エンゼルケアを行なうことに不安があるという声を聞く。統一したマニュアルもないため,不安が解決できるようにエンゼルケアの形を医療者側は考えていく必要がある。  そこで当院の病棟看護師208名に独自に作成したアンケートを配布(173部回収)し,看取りの場におけるエンゼルケアの実態調査を行なって,現状から課題を抽出することとした。その結果,経験年数に関わらず,「不安がまったくない」は5%未満であった。技術面の不安は「閉口しない」(51.7%)「メイクが生前のものに近くなったか判断できない」(40.2%)などで基本的な技術項目が上位を占めていた。今後教材があればエンゼルケアを学びたい人は全体の95%であった。結論としてエンゼルケアを行なうことでの不安は経験年数,体験人数と関連せず,精神面の不安は過半数以上を占めていた。エンゼルケアに対する関心は高く,教材があれば学びたいということが明らかになった。
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