日本農村医学会雑誌
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66 巻 , 4 号
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原著
  • 平川 仁尚
    2017 年 66 巻 4 号 p. 455-461
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
     一人暮らしの男性高齢者は,孤独,スピリチュアルペインや苦悩を感じやすいが,スピリチュアリティを扱った先行研究には女性やがん患者を対象としたものが多く,一般の一人暮らしの男性高齢者を対象としたものはほとんどない。本研究の目的は,一人暮らしの男性高齢者のスピリチュアリティや苦悩を構造化することである。全国のケアマネジャー計30名を対象者として,一人暮らしの男性高齢者の生活支援に関わって感じたことをテーマにディスカッションを行なった。その内容を構造化した結果,一人暮らしの男性高齢者は孤独,不安,愛情欲求を抱えながら辛い現実を生きていることが示唆された。過去の出来事が現在のスピリチュアリティに影響を与えていることも分かった。しかし,マンション等の防犯セキュリティ,支援の拒絶もあり,ケアマネジャーはどのように一人暮らしの男性高齢者を支援して行なったらよいのか日々悩んでいる現状が明らかとなった。
  • 桂 敏樹, 藤本 萌美, 志澤 美保, 星野 明子, 臼井 香苗
    2017 年 66 巻 4 号 p. 462-471
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
     地域健康高齢者7,820例のコホート研究を実施した。目的変数を新規の要介護認定発生,説明変数を二次予防事業対象者判定,特定保健指導レベル,調整変数を性別,年齢,居住地区,介護予防事業利用としてCox 比例ハザード回帰分析を行なった。その結果,以下が明らかになった。  基本チェックリストによる二次予防事業対象者判定の重点項目は,前期高齢者,後期高齢者ともにスクリーニングに有効であり,二次予防事業対象者は要介護認定発生のリスクが高いことが明らかになった。また,一部機能低下ありも要介護認定発生の有意なリスク要因であった。
研究報告
  • 堤 徳正, 川又 光子, 秋月 浩光
    2017 年 66 巻 4 号 p. 472-480
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
     ある施設から他病院へ常勤職員として感染管理認定看護師(Certified Nurse in Infection Control,以下CNIC)を派遣することは,日本では一般的でない。今回,大学病院から市中病院へCNICを2 年間常勤派遣する事業を実施したので,それに対する受け入れ側病院職員の評価を調査した。派遣先の全職員624名に無記名自記式質問紙を配布し,回収できた423回答(67.8%)のうち,CNICが常勤職員として派遣されていることを知っていた297名からの回答を解析した。276回答(92.9%),194回答(65.3%),286回答(96.3%)および234回答(78.8%)が,それぞれ「病院にとって派遣が(少し)有益だった」,「派遣期間が(やや)短かった」,「感染管理が推進・改善されたと感じたことがあった」,および「派遣が業務に役立つことがあった」と述べていた.これに対し, 3回答(1.0%)および22回答(7.4%)が,それぞれ「業務に支障があった」「改善すべき点があった」と述べていた. 今回の事業は,受け入れ側病院の感染対策の向上に寄与することができたと考えるが,事業終了後も同レベルの感染対策が維持できるか,受け入れ側病院の状況を確認する予定である.
  • 樋浦 一哉, 谷口 知明, 能登 数馬, 小原 秀治, 小林 龍, 渡辺 浩明
    2017 年 66 巻 4 号 p. 481-486
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
     抗菌薬使用量の評価方法として, 多くの施設で世界保健機関(World Health Organization ; WHO)が推奨する抗菌薬使用密度(antimicrobial use density ; AUD)が用いられている。AUD には,WHO が設定している1 日平均投与量(DDD ; defined daily dose)を用いる。本邦において抗菌薬の標準的な投与量が海外と異なるため,DDDを用いた使用量評価に支障を来している可能性がある。そこで,カルバペネム系抗菌薬であるメロペネム(meropenem ; MEPM)の自施設1 日平均投与量(modified defined daily dose ; mDDD) を用いた自施設抗菌薬使用密度(modified antimicrobial use density ; mAUD)を算出した。また,mAUD と緑膿菌耐性率との関連性を調査した。2010~2016年度のAUD はそれぞれ5.9±1.4,7.0±2.9,8.2±2.3,6.8±2.1,7.3±2.2,7.0±2.1,8.0±3.0であり,mAUD は11.7±2.7,12.0±4.9,11.3±3.1,11.0±3.4,11.4±3.5,11.5±3.5,11.2±4.2であった。また,2010~2016年度の緑膿菌耐性率はそれぞれ35.1%,37.9%,10.0%,6.0%,22.6%,10.6%,10.0%であった。mAUD と緑膿菌耐性率の間に強い正の相関(P < 0.01,r=0.88)がみられた。mAUD は緑膿菌の耐性化をコントロールするうえで,有効な指標になることが示唆された。
症例報告
  • 佐々木 一希, 新明 美佳
    2017 年 66 巻 4 号 p. 487-493
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
     右変形性股関節症の治療のため入院となった81歳の女性に,人工股関節置換術(Total Hip Arthroplasty:以下THA)が施行された。術後は順調に回復し,T 字杖歩行が可能となった。術後9 病日で地域包括ケア病床へ転棟し,午前と午後の2 回(計4 単位)のリハビリテーション(以下リハ)を実施。術後22病日に右膝鵞足部痛が出現。リハビリテーション栄養(以下リハ栄養)アセスメントを実施し,加齢と摂取エネルギー不足によるサルコペニアを認めた。栄養管理と体重増加後のレジスタンストレーニング(以下RT)を実施し,鵞足部痛消失とT 字杖歩行を再獲得することができた。患者の病棟内の活動量,体重,食事摂取量などの栄養管理を含め,多職種との関わりを密にすることは,患者のADL の拡大や生活の質(Quality of Life:以下QOL)の向上に必要だと考える。
  • 荻原 園子, 折井 みゆき, 安達 亙
    2017 年 66 巻 4 号 p. 494-498
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
     グリセリン浣腸液の腸管外注入により急性腎不全をきたした症例を報告し,浣腸の手技および腸管外注入後の症状につき考察を加えた。
     症例は嵌頓痔核で手術予定の60歳代の女性。大腸内視鏡検査の前処置としてグリセリン浣腸120mlを施行した直後より肛門痛を訴えた。浣腸終了2 時間後より心窩部痛,嘔気が出現,10時間後には褐色調の尿を認めた。翌日には1 日尿量が96ml と乏尿となり,血液検査にて溶血が認められた。CT で直腸周囲の空気と浮腫を確認しグリセリン浣腸の腸管外注入による急性腎不全と診断した。2 日後より血液透析を開始し, 3 日後にハプトグロビンを投与した。9 日間に6 回の血液透析を実施して利尿期を迎えた。透析終了後の腎機能の回復は良好で, 2 か月後に腎機能は完全に正常化した。
  • 小林 史岳, 唐澤 忠宏, 松下 智人, 小松 修, 安達 亙
    2017 年 66 巻 4 号 p. 499-503
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
     ツキヨタケ中毒の6 例を報告する。ある住民が採取してきたキノコを,バター焼きにして近隣住民6 人で食べた。食事開始1 時間から1 時間30分で嘔気が出現し,全員が当院救急外来を受診した。救急隊により,摂取したキノコがツキヨタケである可能性が示された。入院し対症的,保存的加療を行ない,全員翌日に退院した。しかしながら, 1 名が退院翌日からの腹痛,食思不振のため,もう1 名が退院当日からの嘔吐,下血のため,退院翌々日に再入院となり,後者はCT で十二指腸から空腸に強い壁肥厚を認めた。
     ツキヨタケ(Lampteromyces japonicus)による典型的な症状は,摂取後30分から3時間での嘔吐,下痢,腹痛だが,重症例では数日後に腸管の浮腫をきたすことがあるため,注意が必要である。
  • 伊藤 浩子, 筑田 陽子, 飯場 萌絵, 野口 里枝, 染谷 勝巳, 野崎 礼史, 小川 功
    2017 年 66 巻 4 号 p. 504-508
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
     卵巣腫瘍の診断は問診,経腟超音波検査,腫瘍マーカー,CT 検査,MRI 検査,腫瘍径などの情報を総合的に判断している.しかし確定診断には,手術により摘出した腫瘍の病理検査が必要である。今回,我々は腸管穿孔を認める卵巣腫瘍に対し,内視鏡的に組織生検を行ない,術前に確定診断ができた症例を経験したので報告する。
     症例は68歳女性。下腹部痛を主訴に当科受診し,経腟超音波検査にて巨大卵巣腫瘍を認め,精査目的で入院となった。発熱と炎症反応高値を認め,造影CT 検査でS 状結腸の造影効果を伴う壁肥厚と腫瘍内の消化管内のガス像を認めることから,下部消化管穿孔による腹腔内膿瘍が疑われた。経腹的に膿瘍に対し穿刺ドレナージを行なうと,排液内に毛髪を認めた。一般に毛髪を認めるのは卵巣成熟嚢胞性奇形腫であることから,腫瘍と腸管の交通が疑われ下部消化管内視鏡検査を行なった。その結果,卵巣腫瘍のS 状結腸への浸潤が認められた。同時に行なった組織生検で扁平上皮癌が確認され,悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫を術前に診断し,大学病院で手術を行ない,術後に化学療法が行なわれた。
  • 立石 遥子, 菅原 望, 園田 浩生, 藤巻 哲夫, 杉山 雅也, 埜村 智之
    2017 年 66 巻 4 号 p. 509-514
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
     65歳男性。来院1か月前から咳嗽が出現し,当院内科を受診した。画像にて右多房性胸水を認め,胸水は滲出性であった。膿胸,結核性胸膜炎,入院中に関節リウマチと診断されたことからリウマチ性胸膜炎などを疑った。抗生剤投与と胸腔ドレナージを行なったが,多房性のためドレナージ効果が不十分であった。胸水所見に有意所見無く,病状も改善乏しいため治療診断目的に胸腔鏡下右胸膜剥皮術,胸膜生検を施行した。
     病理では好塩基性の変性と壊死が非常に目立つ組織で,リンパ球などの単核細胞の浸潤も認められ,非特異的慢性炎症の所見であった。全身ステロイド投与にて速やかに病状が軽快した事から臨床経過と合わせてリウマチ性胸膜炎と診断した。リウマチ性胸膜炎が疑われるが,膿胸との鑑別に苦慮する場合は,胸腔鏡下胸膜生検を積極的に行なうのが望ましいと思われた。
看護研究報告
  • 鵜沼 祐子, 渡会 友子, 今野 祥子, 黒澤 和子, 榎本 千佳子, 佐藤 美奈子
    2017 年 66 巻 4 号 p. 515-520
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2017/12/20
    ジャーナル フリー
     当院整形外科病棟では周術期の深部静脈血栓症(以下DVT)予防に,弾性ストッキングを使用しているが,サイズが合わない,骨突出や皮膚障害があるなどの理由で使用できない患者には,弾性包帯を使用している。弾性包帯は適切な着圧で正しく装着すれば弾性ストッキング同様の効果があると考えられている。しかし,圧迫圧が不明確で低下しやすい,骨突出のある患者では局所の圧迫により皮膚損傷が見られるという問題点がある。異なる種類の包帯を多層に重ねる包帯法(以下多層包帯─キャストパディング,弾性包帯,自着包帯を使用)は,弾性包帯の問題点を補うことができるのではないかと考え,着圧測定器を装着し,両者の方法で経時的な着圧変化,6時間後の皮膚状態,一般状態,着圧感を評価した。
     6時間後の平均着圧低下率は,弾性包帯で52%,多層包帯では37.4%であった。
     皮膚のしわは,6時間後に弾性包帯装着下肢で10名にはっきりと見られ,多層包帯装着下肢では薄いしわが9名に見られた。
     弾性包帯と多層包帯の着圧低下のt検定の結果,P=0.036と有意差が認められた。
     6時間後の平均着圧低下,皮膚状態から,多層包帯の方が着圧低下しにくく,キャストパディングは局所への圧の集中を軽減させる効果があったと言える。しかし参考文献では,DVT予防に弾性包帯は安易に使用すべきではないと述べているため,弾性包帯を使用する際は,正しい知識をもち,適切な着圧で巻く訓練が必要である。
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