日本農村医学会雑誌
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67 巻 , 1 号
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綜説
  • 小林 禅, 沼沢 祥行, 新谷 周三
    2018 年 67 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー
     本態性血小板血症(essential thrombocythemia: ET)の臨床像と治療について,特にCalreticulin遺伝子(CALR )変異に関する最近の知見を中心にまとめた。CALR 変異は,第9エクソンの蛋白質翻訳領域におけるフレームシフト変異であり,52塩基欠失(1型)と,5塩基挿入(2型)が代表的である。CALR 変異陽性 ETは,Janus kinase2 (JAK2 )変異陽性ETに比べ,若年発症で,男性の割合が高く,血小板数が多く,ヘモグロビン値,白血球数が少なく,血栓症発症率が低い。真性赤血球増加症への移行はない。CALR 1型変異陽性ETは,2型変異陽性ETに比べ血栓症,骨髄線維症への移行のリスクが高い。CALR 変異陽性 ETの標準治療はJAK2 変異陰性 ETの治療アルゴリズムに基づくが,CALR 1型,2型変異陽性ETの間で治療方針を変えるべきかに関してはさらなる検討が待たれる。
原著
  • 森 茂雄, 久留宮 康恵, 小野 ひかる, 橋本 賢
    2018 年 67 巻 1 号 p. 9-19
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー
     摂食・嚥下機能低下に対する治療食は,物性の調整,とりわけ粘度調整を必要とし,各種とろみ剤が利用されている。そこで本研究は,とろみ剤の違いによる粘度の違いや時間経過による粘度変化について評価すること,およびとろみ剤分量と粘度の関係を示す粘度指標を作成することを目的とした。  粘度計測は,音叉型振動式粘度計を用いて行ない,静粘度と濃度の関係を日本摂食嚥下リハビリテーション学会分類2013とろみの段階粘度を参考にして示した。とろみ剤を溶解して5分後有意な粘度安定が認められたことから,溶解5分後の値の粘度を指標とし,濃度との間における相関曲線からとろみ段階の境界粘度の濃度を推計し,粘度指標を作成した。50mPa・sから150mPa・sにまでの静粘度範囲でのとろみ剤濃度を比較したところ,少ないもので0.43%,多いもので1.06%となり,おおよそ2倍の乖離を認め,使用する市販とろみ剤を変更したり,施設間で市販とろみ剤を利用した治療食を共有したりする場合,物性の統一が困難となることが予想された。結語として,多職種間でも共通認識が持ちやすい粘度指標を作成した。とろみ剤の正確な計量の重要性を意識付ける指標となり,栄養指導や多職種連携のツールとなりうる可能性が期待された。
研究報告
  • 大槻 優子, 仲根 よし子, 中田 久恵, 島貫 秀樹, 纐纈 祐子, 武 敏子, 椎名 清和
    2018 年 67 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー
     本研究は,農村過疎地域における在宅介護の実態と課題を明らかにし,専門職の役割と具体的な支援方法を検討するための基礎資料を得ることを目的とする。調査方法は,タウンメールにより,65歳以上の方を在宅で介護した経験がある方を対象に無記名式質問紙による調査を行なった。調査内容は,対象者の属性,介護に関する内容(介護保険制度,介護サービス,介護サービスに対する満足度,介護を継続するために必要な支援)である。有効回答数は244名で男性101名,女性143名,介護年数は平均5 年10か月である。要介護認定者は65.6%で,介護サービス利用者は64.3%であった。利用している介護サービスの中で,通所介護(デイサービス),短期入所生活介護(ショートステイ)は半数以上の方が利用していた。また,介護サービスを利用していない方は20.5%で,その理由は,「他人の世話になりたくない」42.0%,「利用するほどではない」40.0%,「家族で介護は十分」26.0%などであった。介護を継続するために必要な介護サービスのなかで「福祉用具貸与」と「通所リハビリテーション」,介護サービス以外の支援では「同居家族」の項目において,女性介護者のほうが有意に高かった。
     今後の課題として,農村過疎地域で在宅介護を可能にするためには,必要な介護サービスを有効に活用することが重要であり,専門職として介護保険制度についての知識や利用方法など理解しやすいような情報提供の工夫が必要と考える。
  • 吉村 隆
    2018 年 67 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー
     本研究では,農村地域居住者の食習慣に注目し,生活習慣病予防事業における支援終了後,10年経過時の食習慣の実態を調査した。対象者210名に10年後の食習慣に関する調査票を郵送したところ,セミナー群53名(有効回答率54.6%),運動群56名(有効回答率49.5%)の計109名から回答が得られた。調査の結果,セミナー群および運動群で共通していたのは,果物の摂取頻度(セミナー群 p<.05,運動群 p<.01)が少なくなり,糖質の種類への配慮(セミナー群 p<.01,運動群 p<.05)がなされない傾向にあるということであった。これには,食品の手に入りやすさ,対象者の身体的心理的要因,居住環境要因,伝統的な食文化などの要因が関連していると考えられた。食事の規則正しさ,肉と魚の頻度など望ましい食習慣を維持した8項目は,対象者にとって取り組みやすく継続しやすい項目である可能性があると考えられた。また,一度望ましい生活習慣を身につけても,徐々に元の生活習慣に戻る可能性があるため,保健事業等で一定の効果が得られたとしても,その効果が生涯にわたり維持されるとは限らないと考えられた。
  • 藤井 博之
    2018 年 67 巻 1 号 p. 37-51
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー
     多職種連携には現任者の多職種連携教育(IPE)が必要とされる。医療機関で多職種が参加する研修には種々あるが,全体像は明らかでない。本研究では,某病院の多職種研修の種類と参加状況を調査し,IPEの資源としていかに活用するか検討する。S 病院の①職員13名への半構造化面接と,②全職員2,336人を対象にした質問紙調査を実施し,混合研究法で検討した。調査①では,S 病院で行なわれている多職種研修(以下研修)の3 つのカテゴリー(現任訓練,研修プログラム,業務外の活動)と,研修を通した学び方,育て方に関する4つのコードを抽出した。調査②(回収率56.7%)の結果は,研修の種類別参加経験者率は,委員会・学習会71.2%,新人研修65.8%,院内研修会60.0%,院外研修会47.7%,事例検討会42.9%の順に高く,約9 割の職員が1つ以上に参加していた。属性別比較(χ2検定と残差分析)では(1)経験年数が短いほど新人研修で高く,それ以外で低い(p<.01)。(2)ソーシャルワーカーは上位5つの研修の全てで,看護介護は委員会・学習会等,診療技術系は新人研修,療法士は新人研修等,医師は事例検討会等で高い(いずれも p<.01)。(3)慢性期部門は新人研修以外の多くで高い(p<.01, p<.05)。(4)非役職者は新人研修以外の全てで低い(p<.01)。以上から,多職種研修の全体像を把握し複数の研修に共通の目標を設定することで,効果的なIPEの資源となりうる。今後,業務外の活動を含む各研修の特徴を明らかにする必要がある。
  • 本宮 真, 渡辺 直也, 紺野 拓也, 安井 啓悟
    2018 年 67 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー
     北海道における労働災害(労災)の現状は,致死的な災害の対策により死亡者数は減少傾向にあるが,一方で非致死的な労災事故対策は不十分とされている。北海道十勝管内における非致死的な労災外傷の状況を明らかにするため,十勝管内で唯一3次救命センターを備えた総合病院である当院の整形外科における労災外傷の現状を調査し,多数回手術症例に関して検討した。2013年11月~2016年7月までの整形外科受診患者のうち,労災保険を利用して加療を行なった全患者を対象とし,年齢・性別・職業・受傷機転・受傷部位(上肢・下肢・脊柱)・疾患名・手術回数を調査した。全労災症例数は818件あり,平均年齢は47歳(16~82歳)であった。受傷部位は上肢482件,下肢273件,脊柱123件と上肢の外傷が最多であった。371件に手術が施行されており,3回以上の手術を要した重度症例は37件(上肢28,下肢11)であった。職業は1次産業が19件,2次産業は14件で,受傷原因は農工業機械による巻き込まれが19件であった。多数回手術例は,上肢複合組織損傷例または軟部欠損を伴う重度下肢外傷例のいずれかであった。重度上下肢外傷は軟部組織損傷を伴うため,複数回の手術を含む長期の加療が必要となる。今後より詳細に労災外傷の状況を検討し労災外傷の発生予防策を検討するとともに,積極的な治療による後遺症の軽減,および職業復帰支援を計画していく予定である。
  • 荒川 桃子, 樋浦 一哉, 谷口 知明, 小林 龍, 小原 秀治, 渡辺 浩明
    2018 年 67 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー
     近年,非弁膜性心房細動(nonvalvular atrial fibrillation; NVAF)の心原性脳梗塞予防に対して直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant; DOAC)が承認された。DOACは,出血リスクが高い症例に対して減量投与を必要とするが,その投与量の基準は薬剤によって異なっている。そこでDOAC(ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバン)の投与量に関する調査を行なった。
     対象129例のうち投与量の基準と照らし合わせた結果,基準用量群が85例,基準外用量群が44例であった。基準外用量群の内訳は,減量投与が推奨されるところ通常用量を投与しているのが6例(通常用量群),通常用量投与が推奨されているところ減量し投与しているのが38例(減量群)であり減量群の方が年齢が高く,CHADS2 Scoreが有意に低かった。出血性イベント発生は基準用量群2例,減量群3例であった。また,血栓性イベント発生は基準用量群の1例のみであった。
     対象の約30%が投与量基準より低い用量で投与されており,特に高齢者に対し出血性イベントを回避するため,投与量を減らしている傾向がみられた。しかし本調査では減量投与症例においても出血性イベントが起きている。投与量基準外の用量における有効性や安全性の報告はされていないが,実臨床では多くみられる投与方法である。大規模なコホート研究などによりデータが集積されることが望まれる。
  • 沢木 あゆみ, 根本 宏之, 瀧澤 忠久
    2018 年 67 巻 1 号 p. 65-75
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー
     現在,医療はサービス業であるという考え方が社会に広く浸透し,患者が病院を選ぶ時代が到来した。ゆえに多くの医療機関が職員の接遇を向上させるための活動を行なっている。茨城西南医療センター病院(以下,「当院」という。)においても同様に,様々な職種のスタッフによって組織された「サービス・接遇向上委員会」が接遇向上を目的に活動を行なっており,これを受けて我々診療放射線技師も接遇の自己評価を中心とした複数の取り組みを行なってきた。
     本研究では,放射線部として接遇向上のための様々な取り組みを行なっている過程において,容易に改善が見られないものに着目し,その要因について分析することを目的としている。
     約2年にわたる経過を見ると,診療放射線技師の接遇は全体的に改善傾向を示しており,啓発活動による効果があったものと考えられた。しかし,自己の接遇に対する評価を行なっている項目の中にはある一定以上の改善が見られない項目が存在していた。今回はこれらに着目し,これまでに実施した各取り組みについての評価検討を行なった。
症例報告
  • 関 慎也, 藤松 孝旨, 角田 卓也
    2018 年 67 巻 1 号 p. 76-81
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー
     レジオネラ肺炎は早期診断と適切な治療介入が重要である。当院は農村地区にあり,当院におけるレジオネラ肺炎9症例の臨床的特徴について検討し,農村地区における市中肺炎の鑑別の一助となることを目的に報告する。全症例が男性であり,低二酸化炭素血症,低Na血症,CPK高値が全症例,AST・ALT高値が8症例,eGFRの低下が7症例にみられた。感染経路は6症例で推定され,温泉が4症例,冷蔵トラック車両が1症例,井戸水が1症例であった。6症例が尿中レジオネラ抗原で診断され,3症例で痰のLoop-Mediated Isothermal Amplification(LAMP)法で診断された。これらの病歴や検査所見があるときは尿中抗原や痰のPolymerase chain reaction(PCR)法またはLAMP法で確認することが重要である。
  • 安井 昭夫, 武井 新吾, 鶯塚 晃士, 大川 多永子, 福山 隆一, 千田 美歩
    2018 年 67 巻 1 号 p. 82-86
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー
     口腔外科領域の切除手術によって生じた口腔内の粘膜欠損部に対して,吸収性生体材料であるポリグリコール酸シート(PGAシート)とフィブリン糊スプレーで被覆する報告がみられるようになっている。
     上顎歯肉白板症切除後に生じた骨面露出に対してPGAシートとフィブリン糊で被覆し,良好な結果を得た1例を経験したので報告する。患者は64歳男性で,右上顎歯肉に22×10mmの白色角化病変を認め,上顎歯肉白板症切除術を施行した。手術によって生じた骨面露出部にはPGAシートとフィブリン糊で被覆し,術後5週で創部の上皮化が完了し,瘢痕拘縮も認められなかった。口腔外科切除手術に伴う骨面露出に対するPGAシートとフィブリン糊スプレーによる被覆法は,創部に緊密に接着することで疼痛緩和・出血予防・瘢痕拘縮の抑制などをもたらし,手術侵襲がきわめて少なく操作も簡便なため,手術時間の短縮にも有用であると考えられた。
  • 石井 政嗣, 佐野 淳一, 平野 佑樹, 柏木 浩暢, 西岡 道人, 飯尾 宏, 壁島 康郎
    2018 年 67 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/23
    ジャーナル フリー
     症例は74歳,女性。左下腹部痛を主訴に当院外来を受診した。身体所見では圧痛は認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった。血液検査所見では炎症反応高値を認めた。超音波検査,CT検査ともに左下腹部腹壁直下に腹腔内膿瘍を認め,内部に異物(魚骨)を認めた。膿瘍と隣接する結腸も透視下に下部消化管内視鏡を施行したが結腸内腔には異常なく造影検査でも膿瘍との交通は確認できなかった。禁食,抗菌剤投与を行なったが,症状改善認めず,開腹手術を行なうこととした。開腹所見では,膿瘍内に魚骨を確認し,膿瘍と強固にS状結腸壁が癒着を認め,S状結腸を部分切除した。術後経過は良好で12日目に退院となった。摘出標本では腸管との交通は確認されず,慢性的な膿瘍形成を認めた。自験例では魚骨の摂取も明確でなく,消化管との交通も証明できなかった点から慢性的な発症であることが考えられた。魚骨による腹腔内膿瘍の1例を経験したので文献的考察を加え報告する。
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