日本農村医学会雑誌
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67 巻 , 2 号
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原著
  • 大谷 清孝, 稲垣 瞳
    2018 年 67 巻 2 号 p. 103-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/28
    ジャーナル フリー
     小児アレルギー疾患に関する母親への意識調査などの報告が散見されるが,妊婦を対象とした小児アレルギー疾患に関する検討は少ない。2015年4月1日から2016年3月31日において,後期母親学級(30週以降)に参加した255名の妊婦を対象に無記名記入方式の調査票を配布した。対象を初妊婦と経産婦に群分けし,食物アレルギー(food allergy,以下FA),アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis,以下AD)に関する認識を検討した。対象から医療関係者(医師,看護師,医療事務等),調査票の未提出,および無効回答を除外した。後期母親学級に参加した妊婦は255例であり,調査票の回収率は94%(239/250)であった。除外対象を考慮した検討対象は,初妊婦は180名,経産婦は42名であった。年齢中央値(四分位)は,初妊婦が30歳(26~34歳)で,経産婦が32歳(20~41歳)であり,両群間に有意な差を認めなかった。FAでは,診断根拠が血液検査と回答した初妊婦が67%(121例),経産婦が64%(27例)と最多であり,他の回答より有意に多かった(p<0.001)。ADでは,湿疹がなくてもスキンケアをした方がADの発症を予防できると回答した割合は初妊婦の71%(127例)より経産婦の55%(23例)の方が有意に少なかった(p=0.02)。湿疹に対してステロイド外用薬を使用してはいけないと回答した初妊婦の36%(65例)より経産婦の17%(7例)の方が有意に少なかった(p<0.01)。FAの診断根拠やADの治療に関する正確な情報を発信する必要がある。
研究報告
  • 立木 一美, 熊澤 伊和生, 川瀬 徳子, 山田 裕樹, 渡邉 二三雄, 馬渕 智子, 高井 美帆子
    2018 年 67 巻 2 号 p. 113-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/28
    ジャーナル フリー
     揖斐厚生病院は,高齢化率の高い地域の診療圏をカバーしており,地域包括ケアシステムの構築が重要な課題となってきている。住み慣れた地域での生活継続のために,必要不可欠な経口栄養摂取の維持・肺炎予防を目的とする地域一体型NSTシステムを構築し,実践してきたのでその成果及び今後の課題を報告する。  本研究では,地域一体型NSTシステム(NST外来・NST入院・NST訪研究報告:問)の構築を行ない,その普及活動の検証を行なった。期間は2016年2月から2017年3月までである。 内容は,潜在しているNST対象者の抽出調査及び後ろ向き診療録調査・NST外来の拡充(外科医師による診察及び内視鏡下嚥下機能検査・歯科受診・管理栄養士及び言語聴覚士による評価後,共同作成した情報提供書を紹介元へ返送)・NST入院の導入(地域包括ケア病棟で2週間の入院中,口腔ケア回診・嚥下パスポートの導入・リハビリテーションの開始・NST回診・在宅スタッフとの担当者ケア会議を実施。退院後,言語聴覚士のNST訪問開始)である。本システムの普及活動として,地域の介護保険施設や医療機関等へ出向いて顔の見える連携を心掛けた。  地域一体型NSTシステム「揖斐モデル」の導入・開始を行なうことで,本システムは地域での医療ニーズが高いことが判明し,今後,地域包括ケアシステムの中で在宅医療体制を支える柱となる可能性が示唆された。肺炎件数の低下やQOL改善などの真のアウトカム変化については今後さらなる検証が必要である。
  • 小野瀬 慎二, 万本 健生, 芋生 祥之, 辻󠄀村 悠, 松尾 節子, 武井 隼児, 飛田 広大, 坂田 薫, 土子 紗也香, 吉田 和歌 ...
    2018 年 67 巻 2 号 p. 125-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/28
    ジャーナル フリー
     人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:以下,TKA)術後の患者では下肢の腫脹が必発し,術後機能に影響を与える場合がある。本研究では,大腿部腫脹に影響する因子を調査することを目的とした。
     2014年10月から2016年12月に,当院において片側TKAを施行された患者86名(年齢:74.2±7.1歳,性別:男性17名;女性69名)を対象とした。検討項目は大腿周囲径の変化率(膝蓋骨直上・直上5 cm 上・10cm 上),年齢,BMI,手術時間,出血量,血液生化学検査(CRP,ALB,D ダイマー),膝関節屈曲可動域(以下,膝屈曲ROM)変化率とし,測定時期は術前,術後7 日目とした。変化率は術後7 日目の測定値/術前の測定値とした。統計処理は周囲径変化率と各項目をSpearman の順位相関係数を用いて検討した。大腿周囲径は術後増加していた(膝蓋骨直上:106.3±8.1%,直上5 cm 上:107.0±7.7%,直上10cm 上:106.3±8.7%)。膝蓋骨直上の周囲径変化率と膝屈曲ROM変化率は負の相関を認めた(r=-0.33,p<0.01)。その他,各項目間に有意な相関は認められなかった。本研究ではTKA術後の大腿部腫脹と膝関節可動域との関連性を認めたが,その他の術中や術後の因子の検索には至らなかった。今後は検索する因子も含めて改めて検討する必要がある。
  • 平川 仁尚, 稲垣 美代子, 塚本 英人
    2018 年 67 巻 2 号 p. 129-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/28
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,限界集落化の危機に直面しながらも地域包括ケアシステム構築に積極的に取り組んでいる農村地区の現状を,特に認知症に焦点を当てて,明らかにすることである。
     2017年5月から9月に,岐阜県A市の農村部1地区の医療,介護・福祉関係者6名を対象にインタビューを実施した。テーマは,認知症の地域包括ケアシステムの現状と課題であった。テーマ分析により質的データを構造化した。その結果,対象の地区の認知症地域包括ケアシステムは,介護施設によるボランティア活動,地域の専門職,民生委員,住民らの「お節介ネットワーク」によって支えられていることが示唆された。また,「元気な高齢者を意識的かつ積極的にボランティアとして地域活動に巻き込むことこそがその人達の介護予防につながる」という認識が重要なコンセプトであった。今後の課題について,本人の人生の最終段階の希望について話し合う,アドバンス・ケア・プランニングについて学ぶ機会の提供が必要と考えた。
  • 斗野 美幸, 中野 浩志, 板倉 礼卓, 中田 実
    2018 年 67 巻 2 号 p. 134-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/28
    ジャーナル フリー
     当院では2015年度から臨床工学科による閉鎖循環式保育器の院内定期点検を実施している。開始約1年後の点検時,真菌および一般細菌が両者とも検出されたため,その原因を探索し対応することで保育器のクリーン化を達成したので報告する。
     定期点検時に保育器を清掃した際,主にファン・臥床台下に汚れが付着していることが発見された。また,ファンからは菌が検出されたため,その後,当科ですべてのファンのブラシ洗浄・消毒した後,中央材料室で洗浄するという運用に変更した。しかし,この運用により,保育器内側からの菌は検出されなくなったが,ファンからは引き続き検出されている。
     これまで患者さんの感染事例は報告されていないが,当科が責任を持って定期的な清掃除菌,点検を実施する事で保育器のクリーン化が実現でき,感染症コントロールにつながると考えられた。また,当科で保育器のトラブルに対応できるようになったことも意義がある。
  • 杉山 昌秀, 篠原 佳祐, 宮田 智陽, 関口 展貴
    2018 年 67 巻 2 号 p. 139-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/28
    ジャーナル フリー
     第2世代の5-ヒドロキシトリプタミン3受容体拮抗薬5-hydroxytryptamine 3 receptor antagonist; 5-HT3RA)であるパロノセトロンは,従来の5-HT3RA薬と比較し高い受容体親和性と長い半減期をもち,化学療法誘発性悪心・嘔吐ChemotherapyInducedNauseaandVomiting; CINV)に対する予防的投与で優れた有効性が示されている。しかし,CINVを認めた患者に対する有効性の報告はない。そこで今回我々は,CINVを認めた患者に対し次コースから使用した場合の有効性について検討した。2010年8月から2013年1月の2年6か月で対象患者は50名であった。対象患者の治療レジメンは高度催吐リスクが27名,中等度催吐リスクは23名であった。全例グラニセトロンからパロノセトロンに変更された。重篤度が下がった割合は,急性期悪心で60%であった。また,遅発期では嘔吐90%,悪心66%に重篤度低下を認めた。救済療法を使用した患者は48%から24%に減少した。グラニセトロンでCINVが発現した患者に対し,パロノセトロンへ変更することにより悪心・嘔吐の改善を認め,有効性が確認できた。
  • 宇野 智江, 野村 賢一, 石川 茂樹, 余語 鎮治, 金山 康秀
    2018 年 67 巻 2 号 p. 144-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/28
    ジャーナル フリー
     ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドラインの遵守率は20%台と推測されているが,医原性である同症の管理と治療に薬剤師の職能を活かすことができるのではないかと考え,全国厚生連病院102施設を対象としてアンケート調査を実施した。本調査の目的は,各施設の実態を明らかにすることと,骨粗鬆症リエゾンサービスやガイドラインの啓発とした。回答数は67件(回収率65.7%)で,骨粗鬆症マネージャーを有する施設は6施設(9%)であった。3か月以上ステロイドを処方されている患者を薬剤部で把握している施設は7施設(10%),薬剤師が骨粗鬆症治療薬の処方提案を行なっている施設は23施設(34%)であり,その7割の施設で提案はほぼ受け入れられていた。骨粗鬆症マネージャーを有する施設は1割に満たなかったが,3割を超える施設でステロイド性骨粗鬆症から患者を守るべく処方提案が行なわれていた。そして,薬剤師の提案は比較的医師に受け入れやすいこと,7割の薬剤長がガイドラインの遵守率向上のため薬剤師が重要な役割を果たすことができると考えていることが明らかになった。
  • 星野 有
    2018 年 67 巻 2 号 p. 149-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/28
    ジャーナル フリー
     二次救急医療機関として地域輪番体制下に救急診療を担当している当院では,夜間休日において専門医による即時のCT読影結果が提供されていない状況にあるため,輪番翌日以降の通常診療において救急専従医と放射線科医が診療録とCT画像をチェックし,見落とし所見と判断した場合,速やかに救急専従医が受診後の患者に追加報告を行ない,必要時には再診対応をしている。今回,過去3年間の見落とし症例に関して,疾患分類,重症度,予後を調査検討し,当院の追加報告の現状を報告する。調査の結果,見落とし症例は171件で,総CT検査件数15,196件の1.1%であった。疾患分類では,腫瘍性疾患と外傷性疾患が多く,前者では肺腫瘍,後者では頭蓋内出血が多かった。再診後に根治的な治療を要した重症例は,感染性腹部大動脈瘤,頸椎骨折,くも膜下出血,下垂体卒中,喉頭悪性腫瘍,胸部大動脈解離,腸管穿孔であった。迅速な追加報告によって,これら報告に関連した死亡例はみられず,再診までに病態悪化はみられなかった。今回の結果より,諸家の報告との比較においては当院の見落とし症例の頻度は低い傾向にあり,疾患分類では腫瘍性疾患,外傷性疾患が多く,特に肺病変,頭蓋内出血,大動脈病変の読影に注意を要することが分かり,重症例の見落とし要因には,稀な疾患,撮像範囲の上下端,軽微な所見が関連していると考えられた。また,当院の追加報告の対応が有用であることが示唆された。
症例報告
  • 飯塚 泰弘, 福田 啓太, 杉山 勇太, 志水 太郎, 遠藤 南, 上田 真子, 後藤 文男, 河村 貴広
    2018 年 67 巻 2 号 p. 159-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/28
    ジャーナル フリー
     症例は68歳,男性。腹痛・嘔吐・下痢で受診し身体所見・血液検査・エコー・単純CTより急性胃腸炎が疑われ入院した。絶食・補液で加療したが翌朝に心肺停止となり蘇生できず死亡した。病理解剖で上腸間膜静脈に充満した血栓を認め上腸間膜静脈血栓症と診断した。本症はまれな疾患で非特異的な症状のみを呈することが多く,診断に苦慮することがあるが,診断の遅れにより予後が不良となることがあり,本症を鑑別に挙げることが重要である。
  • 篠原 亜友美, 鈴木 智子, 太田 正, 井上 菊美, 堀内 清美, 藤井 博之, 北澤 彰浩
    2018 年 67 巻 2 号 p. 165-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/28
    ジャーナル フリー
     当院は,ケアの質向上による患者の生活機能向上と職員の安全確保を目的に,補助器具・福祉用具の導入と技術支援を推進するテクノエイド委員会(2012年)を発足させ,テクノエイド支援室(2013年)を開設した。テクノエイド支援室の業務は,テクノエイド回診,職員の教育・研修,機器管理,院内各部署から相談のあった事例への個別支援である。本報告では,複雑な支援を要した2症例を紹介し,テクノエイドに関する個別支援の意義を考察する。[症例1]介助量が多くなった筋萎縮性側索硬化症患者でポータブルトイレ利用継続を希望しているが,立ち上がりが困難となり,座面の高さ調節の依頼があった。[症例2]多肢切断患者で移乗介助時に患者・介助者とも疼痛・苦痛があり,移乗方法の検討依頼があった。介助用リフトが必要と考えたが,硬いスリングが断端の疼痛を強めるため調整を行なった。
     これらの症例では,既成の用具で対応できず,支援方法を検討した結果,用具の自作あるいは加工が必要となった。ケアの質を高め,QOLの向上を図るために,必要な時に必要なモノをスムーズに提供する仕組みが必要である。個別支援にあたっては,初回時にどれだけ適切な対応ができるかが重要で,以降の介入が可能か否かを分けることにもなる。そのためには,今回のような自作・加工が必要な場合もある。
  • 成島 道樹, 松永 晃直, 岡上 能斗竜, 知久 才穂子
    2018 年 67 巻 2 号 p. 172-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/28
    ジャーナル フリー
     症例は81歳の男性で,食餌のつかえ感と体重減少を主訴に前医受診。上部消化管内視鏡検査で進行胃癌と診断され加療目的にて当院に紹介。食事摂取ができなかったため同日入院となった。入院後,白血球異常高値を伴う発熱が続いたが原因不明であった.血清 Granulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)を測定したところ高値を呈したため,G-CSF産生胃癌を強く疑った。全身状態は不良であり周術期合併症リスクも懸念されたが,このままでは全身状態がさらに増悪すると判断し手術を行なった。術後,誤嚥性肺炎を契機に急性呼吸促迫症候群をきたしたため人工換気による呼吸管理を要した。経口摂取ができない状態が長期にわたり栄養管理に難渋したが,最終的に食事摂取が可能となり軽快退院した。
看護研究報告
  • 齋藤 謙太, 田中 千鶴子, 鈴木 景子, 寺井 裕貴, 安保 菜摘, 畠山 真弓, 中野渡 由紀子, 大平 美智子
    2018 年 67 巻 2 号 p. 181-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/28
    ジャーナル フリー
     百合草らが「全化学療法患者のうち40%が口腔粘膜炎を発症し,さらにその半分の患者に重症口腔粘膜炎のため輸液,麻薬性鎮痛薬の投与,そして治療内容の変更がなされている。」1) と報告しているように,がん化学療法を受けている患者には,早期から口腔ケア介入を行なっていく必要性が提唱されている。しかし筆者らが勤務している当院の呼吸器内科・血液腫瘍内科病棟(以下,当病棟)では,平均100件/月程度のがん化学療法を行なっているが口腔ケアは個々の看護師任せで記録も残されていなかった。今回,当病棟看護師24名を対象に口腔ケア調査とEilers Oral Assessment Guide(以下OAG)の項目に沿ったアセスメント力をみる独自の口腔アセスメントテスト(以下,テスト)を実施し,口腔ケアアセスメントシート(以下シート)を作成・導入した。アンケート調査では「何らかの観察や口腔ケア介入は行なっているが,根拠や自信がない」,「口腔内観察で患者の協力が得られていない現状や患者指導で統一性がない」などの意見があった。シート導入前後のテストの変化を平均点で評価したところ,テストスコアが有意に上昇したことがわかった。また,シート活用で早期からケア介入ができ,自分たちで選択したケアの記載やその妥当性を確認できるようになりアセスメント力,ケア力向上に効果があった。
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