日本農村医学会雑誌
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67 巻 , 4 号
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原著
  • 桂 敏樹, 古俣 理子, 小倉 真衣, 石川 信仁, 星野 明子, 志澤 美保, 臼井 香苗
    2018 年 67 巻 4 号 p. 457-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,要介護状態でない地域在住高齢者を対象に,閉じこもり及び非閉じこもり高齢者におけるソーシャルキャピタル(SC)とフレイルとの関連を検証することを目的とした。
     閉じこもり高齢者47名と,性別と年齢でマッチングした非閉じこもり高齢者47名を対象に,2016年7月~10月の期間で訪問調査測定を実施した。調査項目は身体的フレイル,精神的フレイル,社会的フレイル,ソーシャルキャピタルである。閉じこもり群におけるフレイルとソーシャルキャピタルの関連はχ2検定により分析した。
     地域閉じこもり高齢者ではSCは精神的フレイルと有意な関連が認められた。一方地域非閉じこもり高齢者においてSCは全てのフレイルと有意な関連が認められた。
     地域在住高齢者においてSCは包括的なフレイルと精神的フレイル出現の予防と関連している。一方地域閉じこもり高齢者では地域における抽出方法と精神的フレイル予防の介入方法開発が必要である。
  • 後藤 研誠, 西村 直子, 高尾 洋輝, 福田 悠人, 吉兼 綾美, 鬼頭 周大, 春田 一憲, 野口 智靖, 竹本 康二, 尾崎 隆男
    2018 年 67 巻 4 号 p. 469-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     肺炎マイコプラズマ(Mp)抗原検出による迅速診断キット(リボテストマイコプラズマ(以下リボテスト):旭化成ファーマ)の有用性には一定の見解がない。2014年1月1日~2016年3月31日に当センターに肺炎で入院した小児を対象とし,入院時,咽頭拭い液からloop-mediated isothermal amplification(LAMP)法およびリボテストを施行し,また入・退院時のペア血清を用いてMp抗体価(PA法)を測定した。Mpの診断は,LAMP法が陽性またはPA法による抗体価が4倍以上の上昇とした。Mpの非流行期(2014年1月~2015年7月)および流行期(2015年8月~2016年3月)に群分けし,LAMP法とペア血清に対するリボテストの有用性を比較検討した。対象は1,140例であり,うちMp肺炎と診断した対象は237例(21%)であった。Mp肺炎に対するリボテストの感度は非流行期および流行期で各々23%(16/70),22%(36/167)といずれも低値であった。血清診断例(n=203)に対するリボテストの感度は,非流行期および流行期で各々25%(13/51),22%(34/152)であり,LAMP法と比べて有意に低値であった。リボテスト偽陽性は非流行期に16例(2%),流行期に6例(1%)であり,またリボテストの陽性的中率は,流行期の86%(36/42)より非流行期の50%(16/32)の方が有意に低値であった。多変量解析では,リボテスト偽陽性者は入院病日(発熱)が短く,他病原体の検出割合が高値であった(p<0.01)。Mpの診断には,感度や陽性的中率の低いリボテストはLAMP法などの検査より有用性が劣るため,総合的に判断することが重要である。
  • 緒方 久美子, 西尾 美登里, 坂梨 左織, 古賀 佳代子
    2018 年 67 巻 4 号 p. 477-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     地方の商業施設で開催された介護と健康に関する集会に参加した地域住民の主観的健康感と関連要因を明らかにした。参加者に無記名の自記式質問紙調査を実施し,403名から回答を得た。対象者は,健康群326名(80.9%),非健康群77名(19.1%)で,平均年齢は66.3±11.6歳であった。主観的健康感と有意な関係があったのは,年齢,禁煙,定期的な運動,日常生活の援助の必要性,情緒的サポート,心理状態であった。年齢別に非高齢者群と高齢者群で分析した結果,非高齢者群の主観的健康感はいずれの項目とも有意差が認められず,高齢者群では,禁煙,日常生活の援助の必要性,情緒的サポート,心理状態の4項目で有意差が認められた。特に高齢者においては,自立した生活を継続するために身体機能の維持・向上に努める必要があり,もし何らかの支援が必要になった場合はより心理的健康を維持するために,家族や地域社会との繋がりが継続できるような支援体制の構築が重要である。
研究報告
  • 鈴木 悠斗, 中尾 心人, 村松 秀樹, 荒川 総介, 酒井 祐輔, 藤田 浩平, 成田 淳, 服部 晋也, 佐藤 英文
    2018 年 67 巻 4 号 p. 485-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     EGFR遺伝子変異陽性肺癌において,2017年時点では,第1~2世代EGFR-TKIs耐性化後に再生検でT790M変異を検出しOsimertinib投与が行なわれている。T790M変異検出は組織検体での評価が基本とされ,胸水や心嚢水が採取可能な場合はセルブロックでの検討が考慮されるが臨床的検討は十分でない。当院にて第1~2世代のEGFR-TKIs使用後に増悪し,胸水または心嚢水細胞診陽性となり,セルブロックでT790M変異検査を行なった症例について臨床的特徴を検討することとした。2016年4月から2017年8月の間に,当院にて体腔液セルブロックでT790M変異検出を試みた9例について,診療録をもとに後方視的に検討した。対象となった9例の患者背景は,年齢中央値が76歳,男性3例,初診時病期はⅣ期が7例,Ⅲ期および術後再発が各1例であった。初回診断方法は気管支鏡下生検が4例,胸水での診断が3例,CTガイド下生検と手術検体での診断が各1例であった。EGFR遺伝子変異はDel19が3例,L858Rが6例であった。初回診断からT790M検査までの期間中央値は30.8か月で,セルブロックからT790Mが検出されたのは7例であった。体腔液セルブロックから高率にT790M陽性変異が検出されたが,採取検体の部位や増悪様式の違いによるT790M検出頻度の差異などについて,さらなる検討が必要と考えられた。
  • 三浦 真美, 山崎 雄斗, 矢板 沙来美, 安納 崇之, 小林 伸行
    2018 年 67 巻 4 号 p. 492-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     当センターは地域完結型医療を目指す法人であり,その中で当院は急性期を担うDPC対象病院である。当院ではDPC/PDPSの入院期間Ⅱ以内での退院率向上を目指しているが,一般に脳卒中患者は入院期間が長期化する傾向にあり,当院も例外ではない。そこで今回,脳卒中の中でも当病棟において入院患者数の多い脳梗塞に対象を絞り,入院期間とそれに影響を及ぼす因子について明らかにするために実態調査を行なった。
     2016年5月から2017年3月に入院し,内科的加療を行なった脳梗塞109例を対象とした。年齢,性別,入院時NIHSS,病型,来院手段,摂食経路,入院前居住地,介護保険認定の有無,退院先の項目を抽出し,DPC期間Ⅱ以内の退院とⅢ以上の退院の2群に分け解析を行なった。
     全体の平均在院日数は21.0日,平均年齢80.5歳,男:女=52:57であり,期間Ⅱ以内の退院は53.2%,期間Ⅲ以上は46.8%であった。入院期間延長に強く関連したのは入院前居住地に退院できない場合であった。自宅から入院の場合,NIHSSが高点数になるほど自宅退院困難であり,NIHSSは退院転帰因子として重要な指標となると判明した。また,長期入院者の期間短縮に向けては,退院先決定までの日数に加え,転院までの待ち期間が重要であり,病棟看護師の退院支援,当センターの施設間連携やシステム強化への継続的な取り組みが重要と考えられた。
  • 平林 直樹, 西澤 理, 矢花 由佳, 若田 真実, 佐々木 涼子
    2018 年 67 巻 4 号 p. 500-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     骨盤底臓器脱は直接生命に危険があるものでないため,しばしば放置されてきた。その中には水腎症を伴う例があり,腎不全に至った例もある。当院女性骨盤底医学センター受診者のなかに,潜在する水腎症がどの程度存在するか,また治療により改善するか検討した。2016年1月から2017年12月までに女性骨盤底医学センターを受診した555人(のべ2,065人)のうち,骨盤底臓器脱と診断したものは265人であった。このうち手術を希望した192人を対象とした。術前検査として超音波検査を行ない,水腎症を,正常,軽度,中等度,高度に分類した。手術時に骨盤底臓器脱の程度を,ステージⅠ~Ⅳに分類した。水腎症と診断した症例は合計20人(10.4%)であり,その水腎症の程度の内訳は,軽度:9人,中等度:6人,高度:5人であった。脱のステージが高くなると,水腎症になりやすいとされているが,ステージⅣ骨盤底臓器脱20人中に,水腎症を7人に認め,うち3人が高度水腎症であった。術前中等度水腎症6人,高度水腎症5人ともに術後に水腎症は改善した。骨盤底臓器脱では水腎症を伴う症例があり,上部尿路の検査が必要である。超音波検査は水腎症の発見に有益である。水腎症が改善するまで6~10月間を要した例があり,早期発見が重要である。TVM手術では膀胱脱ばかりでなく,子宮脱でも子宮摘除をせずに治療することが可能で,水腎症の改善も期待できる。
  • 松尾 光浩, 月城 孝志, 樋口 清博
    2018 年 67 巻 4 号 p. 507-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     喀痰抗酸菌塗抹検査は結核菌の排菌量を把握することが目的であり,結核菌の確定には培養検査または分子生物学的な検査が必要である。しかし救急医療などの状況においては,結核の補助診断として塗抹検査の結果を参考にすることが少なくない。そこで本研究では喀痰抗酸菌塗抹検査の有用性を再考する目的で,当院で施行された塗抹検査およびその培養結果を後ろ向きにカルテ調査を行なった。2012年から6年間に1,814件の喀痰抗酸菌検査が施行された。培養の結果,結核菌は26検体(1.4%)および非結核性抗酸菌は116検体(6.4%)から検出され,非結核性抗酸菌の方が有意に多かった(オッズ比4.7, P<0.001)。塗抹検査陽性の結核菌に対する感度,特異度および陽性尤度比はそれぞれ42.3%,94.5%および7.64(95%信頼区間:4.69~12.45)であった。一方,陽性的中率は0.100(95%信頼区間:0.051~0.172)であった。以上の結果から,喀痰抗酸菌塗抹検査の感度および陽性的中率が高くないために,結核診断への寄与は小さいものと考えられた。塗抹検査による結核菌の検出力は施設内の検査精度だけでなく非結核性抗酸菌の有病率も影響することから,その地域での抗酸菌疫学を把握することが塗抹結果の解釈に重要であるものと考えられる。
症例報告
  • 杉山 昌秀, 青木 悠, 篠原 佳祐, 宮田 智陽, 関口 展貴
    2018 年 67 巻 4 号 p. 512-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     潰瘍性大腸炎に対するタクロリムスの治療は,早期に高トラフ値に保つことの重要性が示唆されている。我々は添付文書より多い初期投与量で開始し,連日TDMによる用量調節を行なった2症例について検討を行なった。2症例とも10~15ng/mLの高トラフ域を維持されることで症状の改善が認められた。高トラフ域に入ったのが開始後9日目であり,添付文書の投与法と同程度の日数を要した。
  • 小杉 康夫, 福原 昇, 岩田 邦裕, 朝比奈 泰斗
    2018 年 67 巻 4 号 p. 516-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     乳癌術後放射線治療後経過観察中に同側乳房内再発を来し,追加乳房切除術施行予定となった58歳女性と冠動脈バイパス術後経過観察中に両側肺癌を指摘された81歳男性に対しがんの全身検索目的でDWIBS(diffusion weighted imaging with background signal suppression:背景抑制広範囲拡散強調画像)を施行した。その結果,両症例とも二次的に膀胱癌が発見され,適切な治療につながった。いずれの症例もPET/CTでは発見困難な病変であった可能性が高く,少なくとも本症例ではがんの全身検索としてDWIBS がPET/CTに比して有用であったと考えられるので報告する。
  • 平宇 健治, 平野 裕, 戸沢 香澄, 折野 公人, 佐々木 晋一, 佐々木 靖博, 石井 良明, 米屋 崇峻, 南塚 佑介
    2018 年 67 巻 4 号 p. 521-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     症例は78歳,男性。1年前に成人T細胞性白血病・リンパ腫(Adult T-cell leukemia/lymphoma.以下ATL)と診断され,標準化学療法を施行したが,副作用とせん妄症状のために治療を断念。病勢は安定していたため,エトポシドのみで経過観察していた。今回,急激な腹痛のために救急外来を受診し,消化管穿孔の診断で手術を行なった。回腸に全周性壁肥厚と穿孔部を認め,小腸部分切除を行なった。病理組織学的に腫瘍細胞浸潤による小腸穿孔と診断された。術後2か月より強力ではない化学療法を施行したが,約5か月で原病死された。ATLは全身臓器に浸潤する高い臓器親和性を有し,消化管に浸潤すると様々な消化器症状をきたす。全治療経過にわたって消化管穿孔を発症する可能性があり,発症すると極めて予後不良となることを念頭に置き,病勢把握,日和見感染の予防および消化器病変の早期発見が重要と考えられた。
  • 久保田 大夢, 仲井 宏史, 高木 理光, 橋本 英久, 熊澤 愼志
    2018 年 67 巻 4 号 p. 528-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     膝蓋下脂肪体は関節運動に伴い機能的に変形し,膝関節内の内圧調整に関与する。その一方で,炎症や変性をきっかけに膝前方部痛の要因になる組織である。今回,若年女性ハンドボール選手で膝前方部痛を呈した症例を経験した。単純レントゲン画像及びMRI画像からは明らかな異常を認めなかったが,超音波検査による動態観察では,健側と比較して膝関節最終伸展域で,膝蓋下脂肪体が膝蓋靱帯と脛骨顆の間に進入する動態が乏しかった。膝関節可動域(患側/健側)は屈曲140°/150°,伸展-10°/5°と制限があり,各最終域で膝蓋骨下部に疼痛を訴えた。また健側と比較して膝蓋骨低位と膝蓋下脂肪体の柔軟性低下を認めた。所見から疼痛の原因は膝蓋下脂肪体の機能障害による膝関節伸展制限であると推察した。膝蓋下脂肪体への治療や関節可動域訓練及び筋力増強訓練を実施したことで,疼痛と関節可動域制限は改善し競技への復帰を果たした。
看護研究報告
  • 水野 忍, 奥村 恵子, 中野 路子
    2018 年 67 巻 4 号 p. 533-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     新たに透析室に配属された看護師に対する教育を看護師と臨床工学技士が行なっている。指導する側の職種によって指導内容や優先度が異なり,指導を受ける看護師に混乱が生じ,指導者が困惑することが多々見られた。両職種の教育における視点が異なるのではないかと考え,看護師と臨床工学技士にアンケート調査を行なった。その結果,両職種間で指導内容のどの項目を重要と認識するかで大きな差がみられた。“基本的な機械操作”,“穿刺・シャントの観察”で,多くの看護師が重要としたのに対し,臨床工学技士でこれを重要とした者はわずかだった。このような両職種の教育における視点の差が,意見の異なる原因だった。
     看護師教育の視点で両職種に大きな違いがあったのは,教育の重要項目とその優先順位,看護師混乱時の対処方法であった。他職種が共同で行なうチーム医療は,透析室ならではの体制である。職種によって考え方や視点は違っても,少しずつ歩み寄ることは,今後の大きな課題である。お互いの特性をふまえてよく話し合い,質の高いチーム医療を提供できるよう,今後も協力して看護師教育を充実させていきたいと考える。
資料
  • 杉浦 利江, 高橋 由佳, 坂本 忍, 稲森 美穂, 山田 浩昭, 米積 信宏, 森下 博子, 前田 美都里, 川合 智之
    2018 年 67 巻 4 号 p. 538-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/18
    ジャーナル フリー
     安城更生病院(以下当院と略す)は,病院のスタッフ全員が,将来ビジョンを見据えた地域の病院となるためのプロジェクトに取り組んでいる。医事課を担当する病院職員は,「地域住民の健康と幸福」というスローガンの下,このプロジェクトに関わっている。達成に向けて3つの目標,すなわち1.未収金管理における回収の改善,2.委託金削減,3.委託取引件数の減少,を設定した。具体的な内容は,1.コンビニ決済の利用による未収金の回収,2.限度額適用認定証の周知および国民健康保険対象者の高額療養費貸付制度の推進による高額療養費の回収,3.無戸籍者への戸籍取得支援並びに健康保険の給付支援である。コンビニ決済の利用による未収金の回収額は約9万円/月であり,無戸籍者への戸籍取得支援並びに健康保険の給付支援により約8万円の回収が可能であった。さらに,限度額適用認定証利用の周知および高額療養費貸付制度の利用の推進は,年間約1,700万円の回収額を生みだした。今回の取り組みにより2016年の4月から8月の委託金の平均月額は890,188円で,委託件数は12件,2017年にはそれぞれ305,615円,10件へと削減することができた。本プロジェクトは,患者の自主的な医療費の支払いを促し,回収額の増加並びに委託金や委託取引件数の削減をもたらした。
地方会
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