日本農村医学会雑誌
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68 巻, 5 号
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原著
  • 南部 泰士, 上林 美保子, 三浦 まゆみ
    2020 年 68 巻 5 号 p. 567-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     本研究は,人口減少や少子高齢多死社会が進む農村において,高齢者が「地域について感じていることや考えていること(地域についての思い)」を文脈から捉え明らかにし,農村地域高齢者の生活機能向上に向けた地域づくりに繋げるための保健師活動に関する基礎資料とすることを目的とした。
     農村地域の高齢者362名の自由記述データを計量テキスト分析の手法を用いて,共起ネットワークの作成と対応分析を行なった。共起ネットワークの構造分析の結果,【子ども・若い人が少なく,増える空き家による淋しさ】【時代と共に変化する近所,近隣付き合い】【進む集落の高齢化・過疎化】【家族と共に日々生きる,過ごす大切さ】【元気に今を生き,年老いる】【病院,行政,店舗等への土地柄によるアクセスの困難と不安】の6群のカテゴリーが抽出された。対応分析による抽出語の全体的付置において,第一成分に強く寄与する因子として「町内」「大変」「過疎」「町」が抽出された。
     本研究によって明らかになった内容分析のカテゴリーは,農村で生活する高齢者同士が担っている自助・互助役割と,保健サービスに代表される共助・公助機能を客観的に評価し,それらを最大限に生かした地域づくりを行なうための視点となる可能性がある。
  • 髙橋 祥
    2020 年 68 巻 5 号 p. 577-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     頭痛を繰り返す小児の中で,通常の鎮痛剤やトリプタン製剤が奏功せず,また繰り返す頭痛のために学校からの早退や休学を余儀なくされたり,いじめの対象になってしまう例は少なくない。本研究では,平成30年の1年間に当院を受診した難治性頭痛のみが主訴の15歳以下の小児例の中で,CTあるいはMRIの画像検査で異常を認めない例を対象にした。この中で,脳波検査で異常波が出現していた30症例(男性19例,女性11例,4歳~15歳(平均年齢10.7歳)についてretrospectiveに検討し,診断及び治療,そしてその治療効果について分析し考察した。全30例中,抗てんかん薬での治療が奏功した症例は24例(80%)であり,奏功例においては全例で1~2週間以内に明らかな頭痛の改善が認められた。
  • 新開 由香理, 加藤 龍一, 堺 正仁, 柳原 弘志, 藤田 浩二
    2020 年 68 巻 5 号 p. 588-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     転倒予防セミナーにおいて,同意が得られた参加者に身体機能測定,ロコモーションチェック(以下:ロコチェック)およびアンケート調査を実施した。このうち独立歩行可能で脆弱性骨折の既往のない中年期(40~69歳)の女性113例を対象に,ロコチェックに1つ以上該当した49例をロコチェック陽性群として統計学的に分析した。多重ロジスティック回帰分析の結果,ロコチェック陽性に有意に関連する要因は,Body Mass Index(以下:BMI)増加,Timed up and go test(以下:TUG)遅延,握力低下,年齢であった。
     本解析結果および先行研究から,運動器の健康寿命延伸には,ロコチェックにより早期にロコモの可能性に気付き対策を講じると共に,BMIの適正維持,動的体幹バランスおよび握力の維持が重要であると考えられた。
研究報告
  • ─A県国民健康保険診療施設への調査から─
    岩渕 光子, 蘇武 彩加, 上林 美保子
    2020 年 68 巻 5 号 p. 595-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     本研究は,限られた医療資源の中にある過疎地域の医療機関における看護現任教育体制の現状と課題を明らかにすることを目的とした。A県の国民健康保険診療施設29施設の看護部長を対象に,自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,回答施設の概要,看護職員の雇用状況及び看護部門の状況,人材育成の状況,看護管理や人材育成の課題,中小規模医療機関の施設間ネットワークである。
     18施設(病院5施設,診療所13施設)から回答が得られた。看護職員への教育方法は,「県や自治体が主催する研修会への参加」「外部機関または関連施設の研修」「OJT」の順で多く,院外教育が中心であった。院内教育を実施しない理由として「人員が確保できないこと」「看護職員の教育組織(委員会等)が設置されていない」ことが,また,院外教育へ派遣していない理由として「時間確保が困難」なことが最も多くあげられていた。人材育成の課題は【人材不足により人材育成が困難】【スタッフの意欲低下】があげられた。
     病院5施設をみると,既卒看護師の離職率は17.6%であった。また,看護職員の教育組織を設置している病院は3施設(60.0%)であり全国調査より低かった。過疎地域では就業経験のある多様な人材が採用されることから,その看護職の実践能力に合わせた学習機会を多施設とも協力して提供し,院外教育が院内教育と結びつけられるOJTを検討していく必要がある。
  • 辻村 早苗, 渕田 英津子
    2020 年 68 巻 5 号 p. 606-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     地域包括ケア病棟は,2014年の診療報酬改定において「地域包括ケア病棟入院料及び地域包括ケア入院医療管理料:地域包括ケア病棟」として創設され,2014年5月の114病院の届出から,2018年6月には2,191病院へと,急激に増加している。しかし,地域包括ケア病棟に関する先行研究では,病棟の体制整備や運用状況の特集や報告が多く,地域包括ケア病棟の医療の有用性の内容は明らかにされていない現状がある。
     本研究は,国内文献から地域包括ケア病棟の医療の有用性の記述部分をコードとして抽出し,Avedis Donabedianの医療の質の枠組みを参考に,質的帰納的にサブカテゴリ,カテゴリを生成した。また,分類したカテゴリを地域包括ケア病棟の医療の『構造』『過程』『成果』に分類し,看護の役割を検討した。
     結果,25文献に地域包括ケア病棟の医療の有用性の記述があり,50コードが抽出され,20サブカテゴリ,9カテゴリが生成された。地域包括ケア病棟の医療の有用性を高めるために地域包括ケア病棟の看護は,『構造』の基盤を整備し,『過程』において入院患者や家族の療養生活支援を行ない,多職種連携を強化し,専門職としての力量を促進する役割があると考える。また,看護が『構造』『過程』の役割を担うことで,合理的な地域包括ケア病棟の運営,地域療養支援システムの進展がされ,『成果』に繋がる可能性が示された。
  • 松尾 光浩
    2020 年 68 巻 5 号 p. 617-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     薬剤師による疑義照会は医薬品の適正使用や安全性の確保に貢献する。近年,臨床知識を持ち合わせた薬剤師の育成が行なわれているにもかかわらず,実臨床において医師側がどのような疑義照会を求めているのか明らかにした報告はない。そこで本研究では,糸魚川総合病院に在籍する医師(62名)を対象に文部科学省が定める薬学教育コアカリキュラムを参考に作成したアンケート調査を行なった。選択肢を「是非指摘してほしい」,「指摘されても良い」,「分からない」および「指摘してほしくない」の順番で順位付けを行ない,各項目について平均順位を求めた。その結果,全32項目における平均順位は989.5±98.5であった。平均順位が有意に低かった項目は「医薬品の安全性(副作用,有害事象)」(711.3位,P=0.040)と「薬の作用(薬理作用,薬物相互作用)」(754.8位,P=0.035)であった。一方,平均順位が最も高かったのは「薬物治療,治療方針」(1,194.7位,P>0.05)であった。次に,糸魚川市内の調剤薬局にこれらの結果を開示し,薬剤師に対するアンケート調査を実施した(回収率65%)。その結果,「本研究結果は今後の疑義照会に活用できる」に対して「非常に当てはまる」または「少し当てはまる」を選択した薬剤師は28名(87.5%)と多かった。本研究から,医師は医薬品の安全性や薬理作用に関わる疑義照会を強く望んでいることが明らかとなった。今回得られた結果により薬剤師による疑義照会が促進され,医療安全の向上に貢献することが期待される。
  • 加藤 祐亮, 堀 学, 林 伸幸, 塚本 英人
    2020 年 68 巻 5 号 p. 623-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     近年の要介護,要支援者人口の増加,および平均寿命と健康寿命の差が問題視されている中1),市の地域包括支援センター協力の元,平成28年度より地域住民を対象とした予防リハビリ教室を開始した。平成28年度に1年間を通して実施した結果,次の4点の課題が明らかになった。1.1回あたりの参加者が平均4.6人と少ない事,2.男女比=1:9と男性参加率が低い事,3.各地域あたり1度の開催であるため参加後の状態を把握ができていない事,4.教室後のアンケート結果によると,自宅での運動継続率が42.5%との割合が低い事,である。そこで平成29年度の教室に向け市の地域包括支援センターと改善方法を検討し実施した。1および2の課題に対して,教室の内容紹介と開催予定日を市の広報誌,回覧板へ掲載した。また自治体の方にも協力依頼お願いし参加者を呼びかけた。3および4の課題に対して,4月より教室の回数を増やし,また各地域にて1度のみの開催を4回継続にて実施した。加えて参加者の身体面の評価,把握の為に握力,片脚立位,膝伸展筋力の客観的評価を実施した。これらの活動を通して参加人数の増加,教室後,自宅での訓練も続けている参加者数の増加が明らかになった。しかし,参加者の男女比の問題など未解決であり,今後も市の地域包括支援センターと協力し,より参加者に役立つ教室を目指したい。
  • 松田 純一, 花島 まり, 上田 幸子, 増野 竜太郎, 大田 冨美代, 矢野 由香, 重田 匡利, 三谷 伸之, 久我 貴之
    2020 年 68 巻 5 号 p. 627-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     人生の最終段階における医療方針の決定において,患者の意思を尊重した望ましい医療を検討する基礎データの作成を目的として,人口約35,000人,高齢化率40.7%(2017年)の地域住民243名と医療従事者282名を対象とした意識調査を行なった。その結果,人生の最終段階における医療の選択に関して,リビングウィルの作成には賛成だが,実際には作成はしていないことが明らかになった。また,人生の最終段階において地域住民の66.7%,医療従事者の85.9%が「自宅で過ごしたい」と回答した。地域住民の24.0%が,入院での療養や看取りを期待すると回答した。理由として人生の最終段階に行なわれる医療がイメージできないことによる不安や,家族への介護負担に対する配慮などが多かった。治療の選択として,抗がん剤や放射線治療,点滴に関して地域住民と医療従事者に有意差はみられなかったが,中心静脈栄養,経鼻栄養,胃ろう,人工呼吸器,蘇生処置を望んでいる医療従事者は地域住民に比べて,有意に少ないことがわかった。患者の意思を尊重した人生の最終段階における医療を実現するためには,医療従事者が個々の患者の人生観や価値観などを把握し,治療の選択に関する地域住民への情報提供や自己決定を支援する体制づくりが必要であると思われた。
  • ─テキストマイニング分析を用いた内容分析から─
    古賀 佳代子, 木村 裕美, 西尾 美登里, 久木原 博子
    2020 年 68 巻 5 号 p. 634-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     地域包括支援センター(以下,地域包括)は,業務量の過大や職員不足,離職問題等が報告されており,保健師,社会福祉士,主任介護支援専門員それぞれの専門性が発揮できていない。保健師も保健師間相互の連携の希薄さ等を実感し今後の保健活動への懸念を感じている。本研究では,地域包括保健師の研修教育体制を確立するための基礎資料の示唆を得るために,専門性を明らかにすることを目的とした。A県内の地域包括に所属している経験年数3年以上の保健師8名を対象とし,テキストマイニングKH Coderで分析した。その結果,「相談を受け,関係性を大事にし,判断する能力」,「認知症高齢者や精神疾患,医療的知識,在宅生活を知ることが必要」,「介護予防事業の支援」,「保健師が訪問やサロンに行って皆と一緒に活動」,「地域で包括的に保健指導等の活動が求められる仕事」の5クラスターが抽出された。専門性を発揮するためには,保健師,社会福祉士,主任介護支援専門員の3職種それぞれの専門性を活かしてチームアプローチを包括的に支援することが望ましい。また,教育体制として,ビジョンを立てることや相談できる人・スーパーバイズの必要性,キャリアパスの「見える化」を整備することで,地域包括の機能がさらに発揮できると示唆を得ることができた。
症例報告
  • 橋本 智史, 稲垣 秀司, 可児 裕介, 塚本 英人
    2020 年 68 巻 5 号 p. 643-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     糖尿病性腎症に起因する血液透析患者の増加と,維持透析患者の長期化に伴いVA(Vasucular Access)にかかわる合併症が増加している。なかでも中枢側静脈の狭窄または閉塞などの病変(中心静脈病変)に伴う静脈高血圧症は深刻な合併症の1つである。シャント肢の中心静脈病変により高度腫脹や透析困難な状況になると,かつて当院ではシャントを結紮し,他肢に新たなシャントを造設せざるを得なかった。しかし,この方法ではシャント作成可能な部位が少なくなってしまう。これに対して,PTA(percutaneous transliminal angioplasty)では,使用中のシャントが温存可能となり,静脈高血圧症におけるシャント肢の腫脹が改善可能となる。今回,中心静脈病変(内膜増殖による器質的狭窄と周囲臓器・病変からの圧迫による狭窄)の2症例を経験した。症例とともに当院での造影CTの検査方法を紹介する。
  • 洞口 正志, 林 健次郎, 布施川 一樹, 石井 大介, 茂木 はるか, 滝戸 成人, 小笠原 弘之, 川原田 康, 久保田 洋介, 榎本 ...
    2020 年 68 巻 5 号 p. 648-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     症例は70歳,男性,約1か月持続する下痢を主訴に近医を受診し,整腸剤,抗生剤治療を受けたが全身の浮腫も続発し当院に紹介された。腹部超音波検査と造影CTから大腸癌,肝転移の疑いで入院加療した。下部消化管内視鏡検査でS状結腸に全周性の病変を認め,生検組織で腺癌と診断された。肝転移あるいは肝膿瘍を伴ったS状結腸癌と診断し,S状結腸切除と肝病変一括切除を考慮したが,同時切除は負担が大きいと判断し,S状結腸切除を先行する方針とした。しかし,間歇的な発熱は増悪し,再度施行したCTから肝病変は肝膿瘍を強く疑う所見と診断し,経皮的肝膿瘍穿刺ドレナージ(PTAD)を行なった。3日後S状結腸切除を行なった。術後,肝膿瘍は徐々に縮小した。術後5年間無再発,無再燃であった。肝膿瘍を合併したS状結腸癌の1例を経験したので報告する。
  • 長谷川 博康, 多田 耕輔, 小佐々 博明
    2020 年 68 巻 5 号 p. 654-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     症例は64歳,女性。軽乗用車を運転中に乗用車と衝突し受傷した。胸部X線検査,CT検査にて左胸腔内に腹腔内臓器の脱出を認め,外傷性左横隔膜ヘルニアの診断にて開腹手術を施行した。剣状突起下10cmの皮膚切開による小開腹で行なった。左横隔膜腱中心に約8cmの損傷部を認め,ここより胃が胸腔内に脱出していた。胸腹腔内臓器に合併損傷を認めなかった。横隔膜損傷部を単結節縫合,閉鎖した。循環動態が安定し,臓器損傷のない外傷性横隔膜ヘルニア手術に際して,小開腹アプローチは損傷部位への到達と検索が容易である。また,修復の面でも直視下に確実に行なうことができることから,有用なアプローチと考える。
資料
  • 古澤 幸江, 宗宮 知香, 折戸 朱美, 栗田 祐子
    2020 年 68 巻 5 号 p. 659-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,コンピテンシー学習会(以下学習会)の参加後のアンケート内容から,主任看護師の管理行動の振り返りにおける気づきを分析し,A病院看護部の看護管理者育成を目指した学習会の課題を明らかにすることである。研究方法は,A病院に勤務する主任看護師22名を対象として,アンケート調査を実施しアンケート結果を質的帰納的に分析した。①理解できた内容,②何が今後に活かせるか,③感じたことなどの項目への記載を求めた。結果,【行動に活かす気づき】【知識として得た気づき】の2カテゴリが抽出され,【行動に活かす気づき】は22サブカテゴリ,【知識として得た気づき】は3サブカテゴリで生成された。課題は,〈信念の維持〉〈顧客志向〉〈質保証〉のコンピテンシーが【知識として得た気づき】に留まっていたため,【行動に活かす気づき】に繋げ,現場で管理行動として実践できるようにすることであった。
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