当院は茨城県唯一の第一種感染症指定医療機関かつ地域周産期母子医療センターであり積極的にCOVID-19陽性妊婦の受け入れを行なってきた。今回,当院で管理したCOVID-19陽性妊婦58例の周産期転帰について報告する。2020年7月から2022年9月までに当院で管理したCOVID-19陽性妊婦を後方視的に検討した。管理したCOVID-19PCR/抗原陽性58例の重症度は軽症49例(84.5%),中等症Ⅰ5例(8.6%),中等症Ⅱ2例(3.4%),偽陽性2例(3.4%)であった。産科合併症として切迫早産5例,妊娠糖尿病3例,切迫流産1例を認めた。分娩となった22例の分娩様式は経腟分娩18例,帝王切開3例,他院へ搬送後の緊急帝王切開1例であった。それぞれの妊婦の分娩時は発症日を0日として,4日目が4例,5日目3例,その他1,3,7,8,14,16,21,25,29日目が1例ずつ,また経過中無症候であったが入院時もしくは家族陽性判明時のスクリーニング検査で陽性となった例が4例あった。周産期転帰の平均は分娩週数38週4日(34週2日~40週6日,標準偏差10.164),児出生体重3,042g(2,000~3,680g,標準偏差401.268),Apgar score 1分7.90点(6~9,標準偏差0.514),5分8.86点(8~9,標準偏差0.343),臍帯動脈血液ガスpH 7.304(7.120~7.360,標準偏差0.058)であった。第6波以降の期間に管理したCOVID-19陽性妊婦44例においては,軽症43例(97.7%),偽陽性1例(2.3%)であった。COVID-19陽性妊婦は非陽性妊婦と比較し早産が多いという報告も見られ,当院では切迫早産を5例に認めた。
COVID-19陽性妊婦は周産期リスクが高いとされており,慎重な管理が求められるため当初は選択的帝王切開とする医療機関が多く,実際に当院でも他の医療機関において対応困難と判断された症例が多く紹介受診となった。しかし当院で経腟分娩となった18例では周産期予後は良好であり,重症でなければCOVID-19陽性のみを理由に帝王切開を選択することは必須ではないと考えられる。また第6波以降患者の重症度が有意に低下している理由として,ワクチン接種が浸透した影響もしくは変異株による病勢の変化の影響が考えられる。今後も妊婦へのワクチン接種の推奨を継続しつつ,COVID-19の病勢に合わせて柔軟に対応を変えていく必要がある。
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