The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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53 巻, 11 号
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巻頭言
特集『内部障害のリハビリテーション―拡がる対象疾患とエビデンス―』
  • 上月 正博
    2016 年 53 巻 11 号 p. 818-822
    発行日: 2016/11/18
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     内部障害には,心臓機能障害,腎臓機能障害,肝臓機能障害,呼吸機能障害,膀胱・直腸機能障害,小腸機能障害,ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害がある.内部障害者数は急増し,身体障害者総数の30%を超えた.特に最近の増加率は非常に高く,内部障害者増加分は身体障害者増加分の93%を占めている.このように,内部障害リハビリテーション(以下,リハ)はすでにリハ医学・医療の基本領域になっており,重複障害リハでも役割が大きい.また,内部障害リハのゴールは単に在宅生活復帰や復職だけではなく,機能障害増悪,疾患再発防止,生命予後の延長を含むものであり,究極の理想的な医学・医療であるといっても過言ではない.

  • 牧田 茂
    2016 年 53 巻 11 号 p. 823-828
    発行日: 2016/11/18
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     虚血性心疾患を中心とする循環器疾患治療における心臓リハビリテーション(以下,リハ)は,再灌流療法やCCUの普及,冠動脈バイパス術の進歩により早期離床・早期退院が可能となったため,冠危険因子是正による二次予防(再発予防)へと目的が変わってきている.また,対象疾患も広がりをみせ,閉塞性動脈硬化症や植込型補助人工心臓も新たな心臓リハの適応とされている.したがって,単に運動療法のみを行っていれば事足りるものではなく,食事療法や禁煙指導を含めた包括的心臓リハを目指すべきであると考える.この目的を達成するためには,医療専門職がチームワークで対処していかねばならない.さらに,患者のセルフコントロール支援のためには行動変容プログラムを含めた長期的な関与が求められている.

  • 海老原 覚, 大国 生幸, 宮城 翠, 伊豆蔵 英明
    2016 年 53 巻 11 号 p. 829-833
    発行日: 2016/11/18
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     慢性閉塞性肺疾患(COPD)の呼吸リハビリテーション(以下,リハ)効果のメカニズムは,「呼吸困難→不活発→筋力低下→呼吸困難増悪」という悪循環を逆方向に回転させ,同時に予後規定因子の1つである栄養摂取面の改善にも寄与することである.間質性肺炎においても呼吸リハが,運動耐容能低下・呼吸困難・QOL悪化・不安・うつに有効であると報告されている.肺炎で亡くなる人のほとんどが高齢者であり,不動により不可逆的な筋力低下・筋萎縮をもたらす可能性があるので,できる限り早期のリハによる離床訓練が重要である.そしてすべての呼吸器疾患において誤嚥に対してのリハ介入も考慮しなければならない.

  • 伊藤 修
    2016 年 53 巻 11 号 p. 834-838
    発行日: 2016/11/18
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     維持透析患者は年々増加し,医療経済的にも高額な医療費が問題となり,その対策が急務となっている.腎臓機能障害に伴い,心機能低下,筋力低下,脂質・糖代謝異常,神経系機能障害,精神心理的異常などさまざまな障害が発生する.これらの二次的障害や合併症により活動量,運動耐容能が低下し,廃用症候群に陥り,日常生活動作(ADL)を妨げ,生活の質(QOL)を低下させてしまう.非運動・非身体活動である患者の死亡の危険性は高く,予後を改善させるためには,適切な運動や身体活動を積極的に行う対策が必要であり,運動療法を中核とした包括的な「腎臓リハビリテーション」が近年注目されている.

  • 水田 敏彦
    2016 年 53 巻 11 号 p. 839-844
    発行日: 2016/11/18
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     肝疾患領域におけるリハビリテーション(以下,リハ)の概念はいまだ確立していない.しかし高齢化,生活習慣関連肝疾患の増加,サルコペニアへの関心の高まりなど,運動療法への注目度は増している.慢性肝疾患ではさまざまな代謝異常を背景として,蛋白エネルギー低栄養やサルコペニアが起こりやすい.C型慢性肝炎や肝硬変患者に適切な栄養と運動療法を行うことにより,インスリン抵抗性や耐糖能異常が改善し,発がんリスクを低下させ得る可能性がある.心不全,呼吸不全,腎不全など他の臓器不全ではリハがすでに日常臨床で行われており,肝不全(慢性肝疾患)においても患者の予後やQOL改善のため肝リハ学の確立を急ぐ必要がある.

  • 原田 卓
    2016 年 53 巻 11 号 p. 845-850
    発行日: 2016/11/18
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     糖尿病は世界的に増加の一途を辿っており,わが国も例外ではない.糖尿病が問題なのはその合併症であり,血糖コントロールが不良であれば,それにより機能的予後さらには生命予後への重大な影響を及ぼす.合併症の予防・進展抑制のためにも,適切な血糖コントロールのみならず,血圧・脂質代謝・体重の維持が重要である.そのうえで,リハビリテーションの占める役割は大きい.高齢者の増加に伴い,血糖コントロールの目標を見極めたうえで,薬物療法や運動療法を進めるためにも低血糖を避けながら,最適な方法を選択し,十分な効果を得ることが求められる.

  • 片岡 ひとみ
    2016 年 53 巻 11 号 p. 851-854
    発行日: 2016/11/18
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     膀胱・直腸機能障害をもつストーマ保有者は,排泄経路や排泄方法の変更に伴うさまざまな問題に直面する.在院日数が短縮化された医療現場では,入院中に実施できるストーマリハビリテーション(以下,リハ)に限界がある.そのため,術前管理の重要性が高まっている.永久的ストーマ保有者は生涯にわたりストーマと共に生活するため,継続した指導,支援が不可欠である.ストーマリハにおける術前・術後管理,退院後の継続支援の必要性,社会保障制度などについて概説する.

  • 若林 秀隆
    2016 年 53 巻 11 号 p. 855-859
    発行日: 2016/11/18
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     腸管リハビリテーション(以下,リハ)の目的は,消化管粘膜の増殖を促し,消化吸収能を増加させ,経静脈栄養から経腸栄養,経口摂取へと栄養投与経路を移行させることである.狭義の腸管リハ=腸管機能改善といえる.一方,広義の腸管リハは,小腸機能障害のある患者の機能,活動,参加を最大限高めることといえる.小腸機能障害では低栄養やサルコペニアを認めることが多いため,リハ栄養の考え方が広義の腸管リハに有用である.小腸機能障害では,加齢,活動,栄養,疾患といったサルコペニアの原因を複数,認めることがある.サルコペニアの治療はその原因によって異なるため,サルコペニアの原因を多職種で評価して介入すべきである.

教育講座
連載
高次脳機能障害に対する認知リハビリテーションの技術
ISPRM招致活動記録
短報
  • 田村 正樹, 野田 和惠, 種村 留美
    2016 年 53 巻 11 号 p. 872-877
    発行日: 2016/11/18
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     目的:基本動作の介護負担が大きい半側空間無視(USN)患者の介護者に対して,基本動作の介護方法とUSNへの介入を指導することで介護者の介護負担,QOL,抑うつ度,患者のUSN,認知機能,ADLに改善が得られるかを示すことである.
     方法:アンケート調査の結果から基本動作時の介護負担が大きい4名の介護者に対して各2回の指導を行い,1カ月後の介護者のJ-ZBI,SF-36,GDS,患者のBIT,CBS,MMSE,FIMの結果を比較した.
     結果:指導により介護者のJ-ZBI,SF-36,GDSの結果では,個人差があるものの改善を認めた.一方,USN患者に関しては,CBS病識失認得点からUSNに対する気付きに改善を認めることが示唆された.さらに,MMSEから認知機能の改善が示唆された.
     結論:基本動作の介護負担が大きいUSN患者の介護者に各2回の指導を行い,毎日の介護場面やADL場面で実施することは介護者の介護負担,QOL,抑うつ度,USN患者の病識への気付きや認知機能に対して効果的な介入である可能性が示唆された.

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