The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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54 巻, 4 号
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巻頭言
特集『就労支援―最近の知見と展望―』
  • 佐伯 覚, 伊藤 英明, 加藤 徳明, 松嶋 康之
    2017 年 54 巻 4 号 p. 258-261
    発行日: 2017/04/18
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    障害者の社会参加・就労は重要なリハビリテーションの目標であり,ノーマライゼイションの理念を具現化するものである.わが国の障害者施策は,障害者雇用促進法に基づいて進められており,最近の改正により新たな段階に移行した.身体障害者の就労状況は増加傾向にあるが,障害者の重度化・高齢化,非正規雇用などの労働態様の変化,急激な医療環境の変化の影響を受けている.リハビリテーション医学の中では,中途障害者の職場復帰を対象とすることが多く,産業現場との調整による適正配置と両立支援が実施されている.今後の展望として,就業障害者の健康管理などに取り組む必要がある.

  • 千賀 美菜子, 千賀 将, 田中 宏太佳
    2017 年 54 巻 4 号 p. 262-265
    発行日: 2017/04/18
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    脊髄損傷者は,労働環境を適切に調整することができると,残存能力を活用し安定して業務を遂行できる場合が多い.労働環境を整えるためには,企業関係者との連携が必須で,特に上司の理解を引き出す必要がある.そのために,復職時の患者の残存能力について適切に伝えたり,職場訪問で具体的な解決策を提供したりして,企業側の不安を軽減することが重要である.また,復職後も安定して勤務できるように,患者自身の健康管理能力を高める必要がある.

  • 内田 信也
    2017 年 54 巻 4 号 p. 266-269
    発行日: 2017/04/18
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    失語症者の就労支援について,失語症者が職場で遭遇しやすい障壁と対応方略,失語症者の職場復帰の現状,失語症者の就労に影響する諸要因について概説した.失語症者の就労支援にあたっては,地域障害者職業センターにおけるジョブコーチの活用に加え,医療機関と事業所の連携が重要である.

  • ―外傷性脳損傷者を中心に―
    先﨑 章
    2017 年 54 巻 4 号 p. 270-273
    発行日: 2017/04/18
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    復職や就労の予後を予測できる単一の指標はない.外傷性脳損傷の場合,就労の予後と関連する可能性があるものとして,年齢,教育レベル,受傷前の職業レベル,重症度(昏睡期間の長さ,外傷後健忘期間,入院期間),現状の機能,うつや不安の程度,性別や人種,さまざまな神経心理学検査結果などがあるが決定的なものはない.就労支援に際しては,成功あるいは失敗に至り得る多角的な要因を念頭に置きつつ,必要に応じて多職種で連携して,個別性のある柔軟な介入,長期的な切れ目のない支援が必要である.加えて,小児期発症の高次脳機能障害者に対しては,青年期や就労前時期段階での就労準備支援が必要である.
    加えて日本での障害者の就労支援は,ハローワーク,地域障害者職業センター,障害者就業・生活支援センター,障害者職業能力開発校,就労移行支援事業所,就労継続支援事業所(A型・B型)が連携して行っている.支援において大切なことは,連携支援,障害認識,周囲の理解とその対応,アセスメントである.職場での配慮事項として,指示の出し方の工夫,本人の特徴に合わせた業務内容,担当者を決める,易疲労性への配慮がある.

  • 西田 拓司
    2017 年 54 巻 4 号 p. 274-278
    発行日: 2017/04/18
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    てんかんのある人の就労率は一般と比べて低い.この背景には,てんかん発作や併存障害といった医学的側面,てんかんのある人自身の自信欠如,依存性,対人関係の困難といった心理的側面,就労支援のための法制度の不備や職場の理解の不足といった社会的側面があると考えられる.てんかんのある人にとって就労は経済的なメリットになるだけでなく,社会の中で責任をもち役割を果たすことで自己効力感や自尊心を高め,いわゆるリカバリーを進めることにもつながる.てんかんのある人の就労支援は,本人の希望を尊重しながら,医学的側面から心理社会的側面に至るまで多重的,多層的に行っていく必要がある.

  • 永吉 美砂子
    2017 年 54 巻 4 号 p. 279-282
    発行日: 2017/04/18
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    発達障害を取り巻く問題はますます複雑化している.多様な認知特性を本人が受容し周囲が理解することで社会適応が可能になる.就労に関しても同様で,幼少時からの段階的な社会性の獲得ができて就労準備に入ることができる.発達障害は脳の認知機能障害で医療の問題であるが,評価・診断・治療や福祉行政は年齢で分断されてきた.しかし,2015年の発達障害者支援法の改正により年齢による切れ目のない支援体制が可能になった.一方,発達障害者の就労支援制度の充実が図られ発達障害者向けの雇用促進施策が全国的に展開されている.今後は医療・福祉・教育・就労などの各分野が連携して就労および就労定着が可能になり支援が充実することが期待される.

  • ―過去・現状そして今後の展望―
    橋本 学
    2017 年 54 巻 4 号 p. 283-288
    発行日: 2017/04/18
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    改正障害者雇用促進法により2018年4月から精神障害者も法定雇用率算定式に加えられることになり,精神障害者雇用義務化が行われることになった.精神障害者の就労については従来の職業リハビリテーションの「保護的環境で職業訓練してから就労する(train-then-place)」方法では訓練内容が汎化せず,「早く就労の現場に出て仕事に慣れながら訓練する(place-then-train)」方法のほうが就労アウトカムを改善させるという考え方が有力となった.このような援助付き雇用プログラムの1つがindividual placement and support(IPS)である.IPSは多くのrandomized controlled trial(RCT)によって有効性が示されている.今日では,IPSに認知リハビリテーションを併用することでさらに効果を高めようとする試みが行われている.

  • 古屋 佑子, 高橋 都
    2017 年 54 巻 4 号 p. 289-292
    発行日: 2017/04/18
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    近年,がん患者の治療と仕事の両立支援に向けた政策の動きが活発化している.医療従事者は仕事の場である会社のことを想像しにくいが,今後主治医が就業上の配慮に対する意見を会社から求められることも増えていくと想定される.リハビリテーションに携わる医療従事者は,一定の時間を患者と過ごし,密にコミュニケーションをとることができるため,主治医や患者から就労に関する相談や意見を求められる機会もあると考えられる.本稿では,医療機関においてリハビリテーションを担当する医療従事者が,日常診療の中で実践できる患者への就労支援のポイントを示す.

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原著
  • ―多施設ランダム化比較試験による検討―
    福村 直毅, 山本 ひとみ, 北原 正和, 鎌倉 嘉一郎, 植木 昭彦, 牛山 雅夫
    2017 年 54 巻 4 号 p. 303-314
    発行日: 2017/04/18
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    【目的】機能的自立度評価表(FIM)による分類が重症(FIM総得点≦40点)患者の日常生活動作(ADL)や栄養・免疫状態低下に対する補中益気湯の有効性および安全性について検討した.

    【方法】片麻痺を伴う脳血管障害後遺症でリハビリテーション施行患者31例を対象に補中益気湯(TJ-41)投与群と非投与群に無作為に割付し,24週間観察した.評価はADL,炎症性合併症発症率などである.

    【結果】FIM総得点は両群ともに治療前後で有意に改善したが,FIM利得に群間差はなかった.炎症性合併症発症率はTJ-41投与群で有意に低かった(p=0.049).FIM運動得点が20点以下の症例において,治療前後の総リンパ球数変化比はTJ-41投与群で増加傾向が認められた.本研究において副作用はなかった.

    【結論】補中益気湯は脳血管疾患などのリハビリテーションにおいて炎症性合併症対策に有用である可能性が示唆された.

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