The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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54 巻, 5 号
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巻頭言
特集『リハビリテーション医療におけるジェンダーの視点』
  • 大串 幹
    2017 年 54 巻 5 号 p. 330-334
    発行日: 2017/05/18
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    変形性関節症はリハビリテーション領域で最も多い運動器疾患であり,高齢者では必発の病態であるのに加え,女性に多いという特徴がある.荷重・非荷重関節にかかわらず,増悪により日常生活に影響する原因疾患でありQOLを低下させる.ジェンダーとしての女性には家事・育児・介護などの役割のほか,ファッションへの関心など本疾患と関連して考察すべきことが多い.これらは複雑に絡み合っており,医学的視点だけでは解決が困難なものある.生物学的視点に加えジェンダーの視点とリハビリテーションの視点をもって疾患をより包括的に捉えることで,さらに細やかで効果的なアプローチが期待できる.

  • 永田 智子
    2017 年 54 巻 5 号 p. 335-339
    発行日: 2017/05/18
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    脊髄損傷は,救命救急医療と急性期から生活期まで尿路管理をはじめとする医療の進歩により生命予後が大きく向上した.脊髄損傷の発生状況は女性の頻度が少なく,少数派である.女性特有の二次疾患リスクを考慮した医療,医学的リハビリテーションが求められている.慢性期には,加齢に伴う変化,性別,ライフステージごとの障害特性に即した健康管理,疾病予防と教育も課題である.脊髄損傷の二次疾病にかかわる尿路管理,骨粗鬆症,うつについて述べる.

  • 中馬 孝容
    2017 年 54 巻 5 号 p. 340-346
    発行日: 2017/05/18
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病の有病率は日本においては女性のほうが多い傾向がある.海外では男性のほうが多く,エストロゲンの効果についての報告は散見されるが,一定の見解は出ていない.パーキンソン病患者のアンケート調査より,女性の患者における転倒場所としては居間と台所が多く,さらに転倒後骨折も女性のほうが多い傾向があった.より女性において困っていると回答した項目は,歩行車歩行,姿勢異常,疲労,疼痛であった.多発性硬化症は若い女性が発症することが多く,妊娠についての検討は重要となる.妊娠中の再発は少ないが,出産後に再発が増える.再発の対応策を主治医,患者・家族で十分に相談をすることが大切である.

  • 豊岡 志保, 須貝 緋登美, 菅野 真衣, 長谷部 久美, 本間 道子, 菊地 千佳, 佐藤 幸恵
    2017 年 54 巻 5 号 p. 347-350
    発行日: 2017/05/18
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    高次脳機能障害者は過去の調査でも男性に多いため,女性障害者の視点から検討されることは少ない.山形県高次脳機能障がい者支援センターの調べでは,女性を対象にした相談件数は20%未満と少なく,年齢が低く,相談内容は社会復帰や社会制度についての割合が多かった.また,男性より家族からの相談が多かった.併設の通所教室利用者も女性は20%未満であり,転帰では,自宅生活が多く,施設入所はなかった.就労や利用継続について男女差はなかった.今後は社会参加について積極的に支援していくとともに,結婚,出産や育児など,ライフイベントへの対応として女性向けのプログラムの作成を検討する必要があると考えられた.

  • 藤谷 順子
    2017 年 54 巻 5 号 p. 351-357
    発行日: 2017/05/18
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    内部障害疾患の中では,循環器疾患について,性差医学研究が多くなされている.エストロゲンに心血管保護作用があるため,また日本での女性の低い喫煙率を背景として有経女性の虚血性心疾患の頻度は低いが,閉経後は増加し,超高齢社会を反映して,運動機能の低い高齢女性の虚血性心疾患や心不全が増加しており,リハビリテーション上の配慮を要する.リハビリテーションの効果についての性差研究は多くなく,運動耐容能の改善における性差についての見解も一定していないが,生活指導に有効なポイントが男女で異なることは報告されている.一方,慢性閉塞性肺疾患や糖尿病合併症においては,男性やその社会背景への配慮が必要である.

  • 小口 和代
    2017 年 54 巻 5 号 p. 358-362
    発行日: 2017/05/18
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    摂食嚥下障害は生命維持に直結する障害である.65歳以上人口あたりの肺炎死は,男性は女性の約1.7倍,食物による気道閉塞死は約1.3倍であり,摂食嚥下障害関連死のリスクは性差がある.男性では喉頭位置低下,最大舌圧低下が女性より若い時期から起きており,嚥下機能の予備能が女性より低い.壮年期から摂食嚥下障害の予防・啓発が必要である.当科で関わった誤嚥性肺炎の性別・年代別の退院時経口摂取獲得率に差はなかった.超高齢者においても個々にリハビリテーション適応を判断すべきである.また,高齢者の食生活の問題点として,買い物の問題を挙げるのはより女性に多かった.IADL低下に対する社会的な食生活支援は,超高齢社会の重要な課題である.

  • 土岐 めぐみ
    2017 年 54 巻 5 号 p. 363-366
    発行日: 2017/05/18
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    平均寿命が長く,平均寿命と健康寿命の差が長い女性は,介護を受ける機会が男性よりも多い.家族形態の変化に伴い,家族の中で介護を担うことは困難になってきている.従来女性の仕事とされてきた介護に,男性の参加が増えている.介護負担が高じて起こる,虐待や殺人などを防ぐために,介護される者だけではなく,「介護者を支援する」という考え方が出てきている.経済的・社会的な支援システムの構築が望まれる.

  • 浅見 豊子
    2017 年 54 巻 5 号 p. 367-371
    発行日: 2017/05/18
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    2015年12月に第4次男女共同参画基本計画閣議が決定され,2016年4月には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が完全施行されるなど,「すべての女性が輝く社会」をスローガンに,女性の活躍を加速させることが政府の重点方針となっている.しかし,現実には今なお男女における性差が存在し,一般社会のみならず医療界,そしてリハビリテーション(以下,リハビリ)科女性医師も『ジェンダー』の不理解により生じている諸問題を抱えている.リハビリ科女性専門医ネットワーク(RJN)としては,リハビリ科女性医師がさらなる活躍の場を得るために必要な,多様で柔軟な働き方への取り組み,採用・登用の推進のための取り組み,教育への取り組み,支援体制や職場環境整備への取り組みなどに向けた活動を継続している.

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原著
  • 天野 徹哉, 玉利 光太郎, 内田 茂博, 伊藤 秀幸, 田中 繁治, 森川 真也, 河村 顕治
    2017 年 54 巻 5 号 p. 384-391
    発行日: 2017/05/18
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    目的:膝OA患者の身体機能に関連する因子を検討し,術前の機能低下の実態を明らかにすることである.

    方法:TKA前の重度膝OA患者467名を対象とし,背景因子(性別・年齢・BMI・K-L分類・疼痛)と身体機能(筋力・ROM)の調査・測定を行った.背景因子を独立変数,身体機能を従属変数とした重回帰分析を行い,有意に関連する因子を基に階級分けをしたうえで術前機能の中央値を算出した.

    結果:膝関節筋力の関連因子は性別・BMI・K-L分類・疼痛であった.膝屈曲ROMの関連因子は性別とBMIであり,膝伸展ROMの関連因子はK-L分類であった.膝伸展筋力の中央値は男性0.98/0.92 Nm/kg(Grade 3/Grade 4),女性0.70/0.59 Nm/kgであり,膝屈曲筋力の中央値は男性0.53/0.45 Nm/kg,女性0.36/0.30 Nm/kgであった.膝屈曲ROMの中央値は男性130°,女性120°であり,膝伸展ROMの中央値は-5/-10°(Grade 3/Grade 4)であった.

    結論:TKA前の筋力低下とROM制限の程度を明らかにした.本研究で得られた知見は,膝OA患者の機能低下を解釈する際の一助になると考える.

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