The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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54 巻, 6 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
特集『患者・家族のメンタル支援』
  • 渡邉 修
    2017 年 54 巻 6 号 p. 410-415
    発行日: 2017/06/16
    公開日: 2017/08/17
    ジャーナル フリー

    外傷性脳損傷は,前頭葉,側頭葉が損傷されやすいために,うつ,易怒性,自発性低下などの社会的行動障害が表れやすい.さらに20歳代と50歳代に2相性のピークを有し,男性に多いために,母親もしくは妻が介護者となりやすく,その介護負担感は,特に精神的要素が大きい.患者,家族ともに,社会的孤立に陥りやすいことから,それぞれに対し,心理療法(個人療法,グループ療法),認知行動療法,ピアサポート,地域支援体制の充実を図る必要がある.特に,外傷性脳損傷者に対しては,自己効力感の喪失,社会的役割の喪失,生きがいの喪失を再獲得できるような生活環境の調整が必要である.

  • 中山 亜未, 川端 浩一, 吉松 大樹
    2017 年 54 巻 6 号 p. 416-419
    発行日: 2017/06/16
    公開日: 2017/08/17
    ジャーナル フリー

    リハビリテーションの一環で取り入れられたスポーツは,現在では「障害者スポーツ」,「アダプテッドスポーツ」,「パラスポーツ」,「デフスポーツ」などさまざまな名称が飛び交うほど注目されている.障害者スポーツを行う選手の中には,残った機能を活かし,義足や伴走者など自身の障害を補う道具や手段を用いることで,健常者以上の成績と競技力を発揮している選手も存在する.本稿では,主にパラリンピック選手の「こころ」の支援における組織,取り組み,強化方法を,数々の研究者や実践者の報告を基に述べていきたい.

  • 安藤 潔
    2017 年 54 巻 6 号 p. 420-424
    発行日: 2017/06/16
    公開日: 2017/08/17
    ジャーナル フリー

    2006年に「がん対策基本法」が施行され,患者・家族の視点が尊重されるようになったことをきっかけに,がん患者・家族のメンタル支援の重要性が認識されている.コーチングは「傾聴」「承認」「質問」を意識的に活用して有効な対話的コミュニケーションを創り出し,相手の気づきを促し,行動変容をもたらし,目標達成をサポートする.がん医療の中でコーチングは,①病名告知,②治療法の決定,③入院中,④退院指導と社会復帰,⑤外来通院中のグループコーチング,⑥再発時,⑦終末期,⑧がん家族支援,⑨がん医療におけるチーム医療,などの場面で有効であり,がん患者・家族のメンタル支援のための普及が期待される.

  • ―患者・家族のメンタル支援―
    西川 満則
    2017 年 54 巻 6 号 p. 425-428
    発行日: 2017/06/16
    公開日: 2017/08/17
    ジャーナル フリー

    患者・家族のメンタル支援において,エンド・オブ・ライフケアが重要である.その中心となる概念に,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)がある.患者が,人生の最終段階に向けた思いを表明することを支援するACPファシリテーターの存在が,ますます重要になってくるだろう.表明されたACPは,人生の最終段階におけるさまざまな難しい医療・ケアの選択の際にも,本人の意思を尊重するための道標になる.患者・家族が生活するのは地域である.地域でACPファシリテーターを養成し,地域単位でACPを推進することは,地域で暮らす患者・家族のメンタル支援に資する活動である.

  • 鈴鴨 よしみ
    2017 年 54 巻 6 号 p. 429-432
    発行日: 2017/06/16
    公開日: 2017/08/17
    ジャーナル フリー

    ロービジョンとは視力を完全に失ってはいないが見えにくさのために生活上の不自由を生じる状態を指す.社会の高齢化に伴いロービジョン者が急増しているにもかかわらず,ロービジョンに対する一般的な理解は不足している.視覚機能の損失は,日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼすだけでなく,多くの場合心理的なダメージも大きい.本人のみならず家族の生活にも大きな影響を及ぼすことがある.適切な情報やケアを提供するシステムを構築し,ロービジョンの生活への影響を最小限にするリハビリテーションシステムが求められる.

  • 伊藤 弘人
    2017 年 54 巻 6 号 p. 433-437
    発行日: 2017/06/16
    公開日: 2017/08/17
    ジャーナル フリー

    慢性疾患の疾病負担は重く,メンタルヘルスの問題が関与することが少なくない.慢性疾患への医療には,発症予防から急性期医療,慢性疾患管理,そして緩和ケアまでのステージがあり,各ステージでメンタルヘルスケアの技術が寄与する可能性がある.すなわち,説明,動機づけ,メンタルヘルスの評価・必要時の連携およびフォローアップである.超高齢化を迎えているわが国において,複数の慢性疾患が併存することは日常的で,うつ病や認知症は併存疾患の主要な要素である.慢性疾患の専門医療において,メンタルヘルスケアの技術へのニーズは高まるであろう.

  • 松村 由美
    2017 年 54 巻 6 号 p. 438-440
    発行日: 2017/06/16
    公開日: 2017/08/17
    ジャーナル フリー

    メディエーションはコミュニケーション促進のツールであり,医療事故発生後の事故調査の際にも利用できる.医療事故の被害にあった患者や家族の精神状態は,心理的パニック状態,怒り,抑うつを経て,回復,再起に至る.一方で,医療事故の当事者である医療者も,後悔や怒りを抱えている.双方が直接コミュニケーションを行うことは,難しいことがある.その際,仲介者であるメディエータが中立的な立場で,それぞれと対話を行い,その結果を他方に伝えることで対話を継続することができる.医療機関が医療事故に向き合い続けていることそのものが,害を受けた患者や当事者である医療者にとっての事故からの精神的回復につながる.

  • 山口 育子
    2017 年 54 巻 6 号 p. 441-444
    発行日: 2017/06/16
    公開日: 2017/08/17
    ジャーナル フリー

    1990年に活動を始めて以来,患者の意識や患者を取り巻く医療の環境は大きく変化してきた.情報は提供されるようになったが,あふれる情報の中で溺れている患者も増えてきている.情報の一方的な提供に終らず,患者が情報を理解し,共有できるインフォームド・コンセントのあり方が問われている.患者が理解し,選択するためにも,医療者のサポートと双方のコミュニケーション能力の向上が不可欠である.

教育講座
原著
  • ―短期入院集中リハの有用性―
    加世田 ゆみ子, 池田 順子, 杉原 勝宣, 石井 良昌, 郡山 達男
    2017 年 54 巻 6 号 p. 455-463
    発行日: 2017/06/16
    公開日: 2017/08/17
    ジャーナル フリー

    【目的】パーキンソン病・パーキンソン症候群(PD)では,病期進行と共に,骨折や肺炎を契機に機能が低下する.本報告では,合併症のないPDに対する短期入院集中リハ(1カ月)の有用性を検討した.

    【方法】PD患者84名の内訳は,合併症なし群53名,合併症あり群31名(整形外科疾患15名,廃用症候群16名).リハビリテーション(リハ)提供体制は,合併症なし群では一般病棟のみ,合併症あり群では回復期リハまたは一般病棟で,患者を5群に分類した.短期入院集中リハの成績を合併症あり群と比較した.

    【結果】①5群でFIMが改善した.②合併症なし群では合併症あり群より有意にFIM効率が高く(p<0.05),リハ総単位数/FIM利得,総診療点数/FIM利得が低い傾向がみられた(p=0.07, p=0.1).

    【結論】合併症発症後のリハ効率は不良であった.合併症発症前の短期入院集中リハはコスト効率も優れる傾向がみられた.

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