The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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55 巻, 11 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
特集『転倒予防の新しい視点』
  • 萩野 浩
    2018 年 55 巻 11 号 p. 898-904
    発行日: 2018/11/16
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    わが国の地域在宅高齢者の年間転倒発生率は10~25%で,施設入所者では10~50%程度である.高齢者の転倒による外傷発生頻度は54~70%程度で,骨折に至る症例は6~12%程度である.転倒の危険因子は身体機能の低下に起因する内的因子と,居住環境などに起因する外的因子とに分けられる.地域在宅高齢者の転倒を防止するためには,まず,対象の高齢者に関して転倒の危険因子を明らかにすることが必要である.単一の転倒防止介入は転倒防止に有効ではなく,個別の危険因子の評価と包括的介入が必要となる.施設入所者の転倒対策では,まず転倒事例の調査とその要因分析を実施する.転倒防止のための介入は在宅高齢者と同様に単一の介入は有効ではなく,個別の危険因子の評価と包括的な介入が必要である.

  • 横田 慎一郎
    2018 年 55 巻 11 号 p. 905-909
    発行日: 2018/11/16
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    筆者らは,電子カルテに蓄積したリアルワールドデータを用いた患者転倒に関する研究を行ってきた.転倒リスク判別モデル構築と電子カルテ実装研究においては,多くの医療機関において実装可能な汎用的手法を示した.電子カルテ実装前後での医療機関内転倒発生状況比較研究では,実装後に判別モデルを使用した状態の患者と使用していない状態の患者で統計的有意な差がなく,臨床看護のルーチン業務の必要性を問いかける結果を得た.半自動的な患者転倒リスク判別手法に関する研究では,評価タイミングに関する課題解決や臨床の労力削減の可能性を示した.電子カルテ蓄積データを用いることで,患者転倒に関する研究の可能性が拡がると考える.

  • 大高 洋平
    2018 年 55 巻 11 号 p. 910-914
    発行日: 2018/11/16
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    高齢者の転倒予防について,系統的レビューでは,運動や転倒リスクの評価と修正などの介入に転倒減少効果があるとされる.しかし,これらは厳しく統制された条件や対象者の選択過程を経て得られた知見であり,実際に地域社会の中で転倒予防プログラムを実施するにあたっては,実現可能性と受け入れ状況が長期間にわたり確認される必要がある.群馬県館林市の高齢者サロンにおいて実施した転倒予防の活動の検証により,転倒リスク評価と個別のフィードバック,転倒予防講義を含むプログラムは,地域社会構造の中で実施することで転倒を減少させ,長期的な地域の受け入れがよく,適切なプログラムであることが示唆された.

  • 小林 吉之
    2018 年 55 巻 11 号 p. 915-920
    発行日: 2018/11/16
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    歩行は誰もが行う最も基本的な移動手段の1つである.近年の歩行に関する研究の発展によって,転倒リスクが高い者の歩行特徴が明らかになりつつある.このような成果は,歩容から個々人の転倒リスクを評価して,転倒の発生を未然に防ぐためのさまざまな対策や技術に生かされている.本稿では,主成分分析を用いた歩行特徴の包括的比較評価法を用いて,近年われわれが実施してきた転倒リスクが高い者の歩行特徴を包括的に比較評価した研究と,その成果に基づく,ウェアラブルセンサーを用いた転倒リスク評価装置の開発の内容を中心に,近年の研究の概況とそれらから展望される予防法について解説する.

  • 結城 賢弥, 朝岡 亮
    2018 年 55 巻 11 号 p. 921-926
    発行日: 2018/11/16
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    白内障,緑内障,加齢黄斑変性などの眼疾患は視機能障害をきたす眼疾患である.白内障は手術により視機能を回復できるものの,加齢黄斑変性では完全に視機能を回復することは難しく,また緑内障の視野障害/視力障害は不可逆性である.安全な歩行や体勢の維持に正常な視機能が不可欠であることは想像しやすい.眼疾患の多くは加齢がリスク要因であり,多くの高齢者が眼疾患による視機能障害とともに日常生活を送っていると思われる.転倒は高齢者の不慮の事故死の第2位の原因であり,眼疾患の予防により転倒予防が可能であるかは大きな問題である.本報告では白内障,緑内障,加齢黄斑変性と転倒の関係について述べた過去の報告を総括したいと考えている.

  • 菊池 吉晃
    2018 年 55 巻 11 号 p. 927-932
    発行日: 2018/11/16
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    転倒が大きな社会問題となっている現在,身体不安定性の基盤となる神経機構の解明は危急の課題であるが,いまだにその詳細は未知のままである.特に,人を対象とする研究が十分進んでいない原因の1つに方法論上の問題がある.筆者らは,fMRIを用いた自己認知パラダイムを応用することによって,自己が自己身体の不安定な状態を認知する際,他者のそれとはまったく異なる自己特異的な脳活動が生じることを明らかにした.特に,右半球の傍小脳脚核,後部島皮質,頭頂島前庭皮質,腹側運動前野/下前頭接続部の活動は,実際の身体不安定性に関与する脳領域でもあることから,このパラダイムの有効性が確認できた.

  • 宮越 浩一
    2018 年 55 巻 11 号 p. 933-938
    発行日: 2018/11/16
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    転倒予防対策は医療機関にとって重要な課題であり,重点的に取り組む必要がある.しかし,その効果は限定的である.限度を超えた転倒予防策は,過剰な予防策による患者への害,医療機関の組織の疲弊につながる危険性がある.ここでは転倒対策による「益」と「害」,コストや患者負担も考慮して,総合的な判断をすることが必要である.そして,PDCAサイクルにより継続的な改善を行い,組織ごとに最善の結果を生み出す努力を行うことが求められる.これには強固な医療システムを構築することが必要である.このような活動を継続することで全職員が医療安全に関心をもつ風土を形成することが可能となる.

教育講座
原著
  • ―やむを得ない転倒判定チェックシートの信頼性と予測的妥当性の検討―
    渡部 喬之, 鈴木 久義, 小貫 祐介, 長島 潤, 迫 力太郎, 川手 信行
    2018 年 55 巻 11 号 p. 948-955
    発行日: 2018/11/16
    公開日: 2018/12/29
    [早期公開] 公開日: 2018/09/28
    ジャーナル フリー

    目的:脳卒中患者におけるやむを得ない転倒判定チェックシート(以下,判定シート)の,信頼性と予測的妥当性を検討した.

    方法:検者5名で脳卒中転倒者20例に対し判定シートを評価,また2名は同様の対象に再評価を行い,検者間でのFleissのκ係数,検者内でのCohenのκ係数を算出した.予測的妥当性の検討は,対象の脳卒中転倒者123名の中から判定シートを用いてやむを得ない転倒者を抽出し,その他の転倒者との間で,再転倒割合,運動FIMを比較した.

    結果:判定結果のFleissのκ係数は0.838,Cohenのκ係数は1.000であり,高い検者間・検者内信頼性を認めた.やむを得ない転倒者の再転倒割合は,その他の転倒者に比べ有意に低かった.運動FIMは有意に高く,やむを得ない転倒者は一定以上の能力回復を認める傾向にあった.

    考察:判定シートの信頼性と予測的妥当性が高いことが示された.判定シートで転倒の質を評価することは,転倒後の患者指導などに使用できると考える.

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