The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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55 巻, 8 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
特集『認知症とリハビリテーション医学』
  • 三原 雅史
    2018 年 55 巻 8 号 p. 634-636
    発行日: 2018/08/17
    公開日: 2018/10/03
    ジャーナル フリー

    急速な高齢化に伴い,わが国ではこれからさらに認知症患者の増加が予想されている.今後,リハビリテーション科医にとってもさまざまな場面で認知症医療への関与が増えると考えられるが,特にリハビリテーション医療の認知症に対するエビデンスの構築や多職種連携が必要な生活期場面での指導的な役割が期待されている.今後の認知症医療においては,認知症専門医やリハビリテーション関連職種との連携のもと,リハビリテーション科医がより重要な役割を果たしていくことが望まれる.

  • 古和 久朋
    2018 年 55 巻 8 号 p. 637-642
    発行日: 2018/08/17
    公開日: 2018/10/03
    ジャーナル フリー

    認知症とは,いったん正常に発達した知的機能が持続的に低下し,複数の認知機能障害が存在するために社会生活に支障をきたすようになった状態,と定義される.その原因疾患はtreatable dementia(治せる認知症)も含めて多く存在するが,その9割以上が,アルツハイマー型認知症,血管性認知症,レビー小体関連認知症,前頭側頭葉変性症が占める.それぞれに発症様式や症状,罹患部位に特徴があり,これらを知ることが鑑別診断を行ううえで一助となる.患者の高齢化に伴い,1人の認知症患者には神経病理学的に複数の疾患が合併することがむしろ自然であり,そのことに留意しながら臨床的に観察,記載する姿勢が求められている.

  • 久德 弓子, 三原 雅史
    2018 年 55 巻 8 号 p. 643-647
    発行日: 2018/08/17
    公開日: 2018/10/03
    ジャーナル フリー

    認知症とは,いったん正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害により持続的に低下し,日常生活や社会生活に支障をきたす状態をさす.認知症を完治させる薬物療法はなく,認知症の進行を少しでも抑制し,地域での生活を継続することが目標となる.認知症の薬物療法には,中核症状に対する治療とBPSDに対する治療がある.中核症状に対する治療薬にはChE阻害薬とNMDA受容体拮抗薬があり,ADに対する使用が推奨されている.BPSDに対する薬物療法は,非薬物療法的アプローチを用いても改善が認められない場合に行われるが,有効な薬剤は少なく保険適用外使用となるため,基本的には使用すべきではない.

  • 北村 立
    2018 年 55 巻 8 号 p. 648-652
    発行日: 2018/08/17
    公開日: 2018/10/03
    ジャーナル フリー

    2015年1月に公表された「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)の概要を説明し,認知症のリハビリテーション医療が「実際に生活する場面で,有する認知機能等の能力を最大限に活かしながら,ADLやIADLを自立し継続できるよう推進すること」と定義されていることを紹介した.また,2013年に改訂されたDSM-5(米国精神医学会の診断マニュアル)では認知症と軽度認知障害の鑑別点として日常生活における自立のレベルを挙げていることを示した.生活機能障害としての認知症が注目される中で,病院における認知症のリハビリテーションモデルの例を提示し,リハビリテーション科医の役割を論じた.

  • 田中 尚文
    2018 年 55 巻 8 号 p. 653-657
    発行日: 2018/08/17
    公開日: 2018/10/03
    ジャーナル フリー

    認知症リハビリテーションでは,他の疾患に対するリハビリテーション医療と同様に,薬物療法と非薬物療法を組み合わせた包括的な治療が行われている.認知機能低下に対して,疾患特異的な薬物治療あるいは外科的治療があれば,それらを用いて治療を開始する.行動・心理症状に対しては原則として非薬物治療が薬物治療よりも優先される.臨床ではさまざまな非薬物療法が行われているが,現状ではいずれもエビデンスレベルは低いとされている.本稿では,認知症リハビリテーションにおいて,非薬物療法としてよく用いられている回想法,認知的アプローチ(認知刺激療法,認知訓練,認知リハビリテーション),音楽療法,および運動療法について概説した.

  • 佐藤 正之
    2018 年 55 巻 8 号 p. 658-663
    発行日: 2018/08/17
    公開日: 2018/10/03
    ジャーナル フリー

    認知症に対する非薬物療法の中で,現時点で発症予防・進行抑制への有効性が確立しているのは運動療法だけである.具体的な方法・頻度・期間については未確定であるが,中等度の有酸素運動を1日30~40分,週3日以上で,半年~1年の継続が推奨されている.運動療法と他の非薬物療法との組み合わせにより,さらに効果が増大すると期待される.筆者が行った産官学の共同研究である御浜-紀宝プロジェクトでは,運動療法と音楽療法との組み合わせ(音楽体操)が健常高齢者と軽度~中等度の認知症患者の認知機能を改善することが報告されている.さらに,御浜-紀宝スキャンプロジェクトにおいて,それらの神経基盤が検討されている.

  • 髙尾 芳樹
    2018 年 55 巻 8 号 p. 664-668
    発行日: 2018/08/17
    公開日: 2018/10/03
    ジャーナル フリー

    通所リハビリテーション医療は,介護保険制度の居宅給付として提供されている.認知症患者が急速に増加する中で,多職種協働の専門チームにより利用者個々の状態に合わせさまざまな介入技法を組み合わせた認知症に対するリハビリテーション医療が提供され,認知機能改善,行動・心理症状軽減などの効果が示されている.居宅に潜在する要支援・要介護受給者の通所をいかにして促すかは大きな課題となっているが,魅力的な楽しめるプログラムの提供などにより通所促進が図られ,地域包括ケアシステム構築が促進される中で,通所リハビリテーション医療の役割は重要である.

  • 山口 智晴, 黒沢 一美
    2018 年 55 巻 8 号 p. 669-673
    発行日: 2018/08/17
    公開日: 2018/10/03
    ジャーナル フリー

    訪問リハビリテーション医療の場面では,認知症を単に認知機能障害や認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)と捉えるのではなく,それらにより日常のさまざまな生活動作や周囲の人との関係性に障害をきたしている状態と捉える.日常生活の自立が阻害され,周囲との関係性にも問題を生じることは,本人の不安やBPSD悪化につながり在宅生活の継続にも影響する.認知症施策推進総合戦略がめざす認知症者の穏やかな地域生活の継続には,認知症の原疾患や病期,本人が置かれた生活環境など,多面的かつ個別的な支援が必要である.認知症者の実際の生活場面を訪問し,具体的な生活機能障害への支援を行う訪問リハビリテーション医療が果たす役割は大きい.

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短報
  • 本田 陽亮, 瀬戸川 啓, 上谷 清隆, 藤岡 宏幸, 吉矢 晋一, 道免 和久
    原稿種別: 短報
    2018 年 55 巻 8 号 p. 702-706
    発行日: 2018/08/17
    公開日: 2018/10/03
    [早期公開] 公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー

    目的:重度変形性膝関節症(膝OA)患者における,歩行時の膝関節周囲筋の筋活動と拮抗筋の同時収縮指数(co-contraction index:CCI)の特徴について解析を行い,膝関節の疼痛との関係について検討した.

    方法:膝OA患者11名のKellgren-Lawrence分類でⅢまたはⅣ度である13膝を対象とした.快適歩行における内側広筋,外側広筋,半腱様筋,大腿二頭筋の平均筋活動とCCIを算出した.膝関節の疼痛は,numerical rating scale(NRS)を用いて測定を行った.平均筋活動,膝関節内側および外側の平均CCIとNRSとの関係を,Spearmanの順位相関係数により検定した.

    結果:NRSと立脚後期での大腿二頭筋の平均筋活動(r=-0.61,p<0.05),外側平均CCI(r=-0.582,p<0.05),内側平均CCI(r=-0.596,p<0.05)にそれぞれ負の相関を認めた.

    結論:歩行時の膝OA患者に特徴的な膝関節周囲筋のCCIの増大は,歩行時の疼痛と負の相関関係があった.

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