The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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56 巻, 12 号
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巻頭言
特集『心臓先端治療と心臓リハビリテーション』
  • ―不整脈・心不全―
    後藤 葉一
    2019 年 56 巻 12 号 p. 968-978
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2020/01/27
    ジャーナル フリー

    心疾患は原因別に,冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞など),構造的心疾患(弁膜症,先天性心疾患,心筋症など),不整脈(心房細動,心室頻拍など),そしてあらゆる心疾患の終末像としての心不全,の4つのカテゴリーに分けることができる.30年前の循環器病学では,心疾患に対する治療は,まず安静と薬物治療で開始し,それが無効である場合には,全身麻酔による開胸開心術,すなわち冠動脈疾患であればバイパス手術,弁膜症であれば弁置換術,という選択肢しかなかった.現在では,30年前には心不全に対して禁忌であった運動療法やβ遮断薬がガイドラインでクラスⅠとして推奨されるようになったうえ,全身麻酔や開胸処置が不要な低侵襲のデバイスやカテーテル治療が開発され,従来の侵襲的治療を受けることができなかった超高齢・高リスク患者でもさまざまな治療を受けることができるようになった.本稿では,心疾患に対する最近の治療の進歩のうち,構造的心疾患,不整脈,心不全に対するカテーテル治療とデバイス治療を中心として,心臓リハビリテーションとの関連を念頭に置いて概説する.

  • 石川 淳也, 上月 正博
    2019 年 56 巻 12 号 p. 979-983
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2020/01/27
    ジャーナル フリー

    植込み型除細動器(ICD)は致死性心室不整脈の患者生命に大きく貢献しているが,電気的除細動(ショック治療)による生活の質(QOL)低下などの問題がある.その一方で,心臓リハビリテーションはICD患者のQOL向上のみならず,最近のメタ解析によると,運動療法群が非運動療法群よりもICDによるショック治療の発生率が低く,最大酸素摂取量の増加が示されたことから,ICDやCRT-D患者における心臓リハビリテーションの安全性も報告されている.また,ICD患者は多くの日常的な不安を抱えており,心臓リハビリテーション介入時は医療スタッフと患者の距離が近いことから不安解決の場にもなる.

  • 三橋 武司
    2019 年 56 巻 12 号 p. 984-989
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2020/01/27
    ジャーナル フリー

    心臓ペースメーカーのレートレスポンス機能は,主に運動時に心拍数が上昇しない症例に用いられる.しかし,その特異性や感度は洞結節にはかなわない.心不全を合併した患者ではレートレスポンスにより運動耐容能が上昇することもあるが,不用意に心拍数を増加させると心室性不整脈の発生や心不全の増悪をきたす可能性もある.心臓リハビリテーション時には運動の種類により心拍数の十分な増加が得られない場合があり,患者の症状やペースメーカーから得られるレートヒストグラムなどを参考に設定を考える必要がある.

  • 三浦 平寛
    2019 年 56 巻 12 号 p. 990-995
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2020/01/27
    ジャーナル フリー

    本邦の心臓移植件数は年々増加しており,移植患者の経過は良好で社会復帰も多く,心臓リハビリテーションが重要である.心臓リハビリテーションにおいて,心臓移植患者に特有の特徴(除神経など)を考慮して行う必要があり,また定期的に心肺運動負荷試験などによる運動耐容能評価を実施し,その結果を患者にフィードバックして運動療法を継続することが患者の生存率やQOL維持につながる.小児心臓移植においては,成人心臓移植と異なり,成長や心臓リハビリテーションへのモチベーション,思春期のアドヒアランスの低下,流行性感染症などの問題があり,年齢や状態にあわせた介入と家族や学校を含めた指導を行うことが重要である.

  • 伴野 潤一, 安達 仁, 倉林 正彦, 和田 直樹
    2019 年 56 巻 12 号 p. 996-1001
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2020/01/27
    ジャーナル フリー

    心不全患者に対する治療は著しい進歩を遂げている.内科的治療によっても生命維持が困難な重症心不全患者に対しては,心臓移植までのブリッジとして補助人工心臓(ventricular assist device:VAD)の使用が検討される.現在,本邦でも多くの心移植待機者に植込み型補助人工心臓(implantable VAD:iVAD)が装着されており,今後適応拡大によりiVAD患者が増加することも予想されている.本稿ではiVADの種類,適応や,リハビリテーション治療の果たす役割,方法,留意点などについて述べる.

  • 岩波 裕治, 内 昌之, 福田 大空, 黒田 悠加, 杉澤 樹, 海老原 覚
    2019 年 56 巻 12 号 p. 1002-1008
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2020/01/27
    ジャーナル フリー

    大動脈弁閉鎖不全症(aortic stenosis:AS)は,高齢化に伴い急速に患者数が増加している.高度な侵襲を伴う大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)が従来の標準治療であったが,ハイリスクのため適応とならない症例に対し,低侵襲治療の経カテーテル的大動脈弁植込み術(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)が積極的に実施されるようになった.適応に関しては,ハートチームでの検討が必要とされ,理学療法士もその一員で,術前後でのfrailty評価を含め心臓リハビリテーションの重要な役割を担う.TAVIに対しての心臓リハビリテーションに関するデータは少ないのが現状であるが,高齢frailtyな症例に対し,個々に適したプログラムの適応が重要となる.

  • 小山 照幸
    2019 年 56 巻 12 号 p. 1009-1014
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2020/01/27
    ジャーナル フリー

    平均寿命の延長とともにフレイル高齢心不全患者が増加している.心不全の原因としては僧帽弁閉鎖不全によるものが著しく増加している.僧帽弁閉鎖不全に対して,経カテーテル的に僧帽弁の形成(transcatheter mitral valve repair:TMVRepair)を行う画期的な治療法が登場した.クリップとデリバリーシステムのセットでMitraClip®という登録商標であり,今後,飛躍的に増加していくと思われる.その治療と併行してリハビリテーション治療が重要となる.リハビリテーション関連職は,多職種チームの一員として,適応を決めるカンファレンスの段階から参加すべきである.低侵襲治療とはいえ,加齢とともに身体機能,精神機能は低下してきており,適応は総合的に検討するべきである.また,術後は,患者個々の状態に応じて運動療法を継続させることがきわめて重要である.

  • ―緩和ケアとの共存―
    白石 裕一, 白山 武司, 的場 聖明, 三上 靖夫
    2019 年 56 巻 12 号 p. 1015-1019
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2020/01/27
    ジャーナル フリー

    高齢化に伴い心不全患者の増加は著しく,大きな問題となっている.フレイルやサルコペニア,低栄養,脳血管や骨関節疾患,がん,うつ,認知症などの合併も増加し,リハビリテーション医療の面からも全身にわたる評価や介入が必要となる.一方,心疾患の死亡者数の第1位は心不全であり,進行した心不全症例では死に至る疾患であるという理解の中でリハビリテーション医療も進める必要がある.また,循環器疾患における緩和ケアの考え方も普及が進み,繰り返す入院が必要となる時期にはACP(意思決定支援)を行いチームによるサポートが必要である.心不全終末期におけるリハビリテーションのあり方はまだ確立されていないが,ACPを踏まえた患者個々の状況に合わせたプログラムが必要となる.

教育講座
原著
  • 山科 俊輔, 原田 和宏, 小野 晋也, 足立 真澄, 三宅 和也, 河村 顕治
    原稿種別: 原著
    2019 年 56 巻 12 号 p. 1032-1043
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2020/01/27
    [早期公開] 公開日: 2019/12/16
    ジャーナル フリー

    目的:変形性膝関節症(膝OA)患者の歩行異常性に関する観察項目の内容妥当性を検討したうえで,それらの項目と三次元歩行解析データとの基準関連妥当性および再検査信頼性を検証することを目的とした.

    方法:歩行異常性の項目プールを作成し,評定を三件法とした.内容妥当性は膝OAの有識者4名から意見を得て精査し,3名以上が同意した内容を検討項目とした.各項目の基準関連妥当性は三次元歩行解析装置にて検討し,再検査信頼性は同一対象者を2回評価した際の一致率から検討した.

    結果:観察による歩行異常性の項目として11項目の内容妥当性を吟味し得た.そのうち,8項目が三次元歩行解析データと関連する傾向を示した.信頼性の検討では,8項目が0.61を超える結果となった.

    結論:観察による歩行異常性評価は三次元歩行解析データとの基準関連妥当性および再検査信頼性を備えることから,膝OAの特異的な歩行動態を評価できる可能性がある.

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