The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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56 巻, 5 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
特集『骨粗鬆症とリハビリテーション医療』
  • ―地域住民コホートROADスタディより
    吉村 典子
    2019 年 56 巻 5 号 p. 344-348
    発行日: 2019/05/17
    公開日: 2019/06/22
    ジャーナル フリー

    わが国の運動器障害とそれによる運動障害や要介護の予防を目的として,2005年に設立された大規模住民コホートスタディROADの結果から,骨粗鬆症(OP)の有病率を推定したところ,腰椎L2-4の測定で診断した場合は男性で3.4%,女性で19.2%,大腿骨頚部の場合男性12.4%,女性26.5%となった.3年間の追跡でOPの累積発生率を推定したところ,腰椎では0.76%/年,大腿骨頚部では1.83%/年となった.同様にROADスタディの追跡調査結果を用いて,サルコペニアの累積発生率を求めたところ2.0%/年となり,フレイルの累積発生率は1.2%/年となった.さらに,OPの存在は将来のサルコペニアの発生リスクを有意に上げていることがわかった.加えて,OPの存在は将来のフレイルの発生リスクを有意に上げていることもわかった.この結果より,OPは骨折リスクを上げるだけではなく,サルコペニア,フレイルの発生のリスクを上昇させることもわかった.

  • 川口 浩
    2019 年 56 巻 5 号 p. 349-360
    発行日: 2019/05/17
    公開日: 2019/06/22
    ジャーナル フリー

    骨は常に骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収を繰り返して再構築(リモデリング)を営み続けている組織であり,骨量はこの2つの異なる細胞系列間の機能的平衡状態により維持されている.この調節機構が破綻をきたし,骨吸収が骨形成を相対的に上回ったときに骨粗鬆症が発症する.骨粗鬆症治療の主たる目的は骨強度の維持による骨折の予防である.骨強度は骨量と骨代謝回転によって決定される.

    本稿では,骨粗鬆症の背景にある分子メカニズムについて概説する.現行の骨粗鬆症治療薬の特徴,作用メカニズムをよく理解して,患者の状態に応じた適確な選択をすることが重要である.

  • 萩野 浩
    2019 年 56 巻 5 号 p. 361-366
    発行日: 2019/05/17
    公開日: 2019/06/22
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症の薬物治療開始の対象は診断基準を満たす例の他,骨密度で評価した骨量減少者(YAMの80%未満)のうち,①大腿骨近位部骨折の家族歴を有する例,②FRAX®による評価で主要骨折の10年間発生確率が15%以上(75歳未満に適応)の例である.わが国で骨粗鬆症治療薬として認可されている薬剤のうち,骨折抑制効果が示されているのは窒素含有ビスホスホネート,抗ランクル抗体,選択的エストロゲン受容体モジュレータ,副甲状腺ホルモン,抗スクレロスチン抗体,新規活性型ビタミンD3で,骨粗鬆症治療ではこれら6剤から選択する.

  • 宮腰 尚久
    2019 年 56 巻 5 号 p. 367-370
    発行日: 2019/05/17
    公開日: 2019/06/22
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症患者において,四肢の骨折予防には,転倒予防のためのバランス訓練や下肢の筋力訓練を主体とする運動が有効であり,椎体骨折の予防には,背筋力を維持・強化する運動が有効であると考えられる.ただし,これまでの研究によれば,これらの運動療法による骨折の一次予防に対するエビデンスは明らかであるが,二次予防に対するエビデンスは非常に少ない.運動療法は,簡便なものが普及しやすいが,効果を重視した包括的な運動プログラムも考案されている.運動療法は,身体運動機能が衰える前の段階から,予防的に導入するのが望ましい.

  • 伊東 学
    2019 年 56 巻 5 号 p. 371-375
    発行日: 2019/05/17
    公開日: 2019/06/22
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症の脊椎骨折は,受傷直後には生存率の低下はなく,早期治療の重要性はあまり強調されなかった.しかしながら,椎体骨折後は数年経過してから生存率が減少するために,その治療意義が見直されている.保存治療には,装具治療が最も多く行われている.一方,近年では副甲状腺ホルモン剤などで骨癒合促進させる医療も行われている.低侵襲手術では壊れた椎体にセメントを詰める椎体形成術があるが,侵襲の大きな脊椎変形矯正手術も行われている.高齢者の手術であることから,低侵襲で早期にリハビリテーション治療に移行できるものが望ましい.各症例で全身予備能も異なるため,執刀医と意見を交換しながら,症例ごとにリハビリテーション治療をカスタマイズすることが重要となる.

  • 織田 崇, 山中 佑香, 和田 卓郎
    2019 年 56 巻 5 号 p. 376-380
    発行日: 2019/05/17
    公開日: 2019/06/22
    ジャーナル フリー

    橈骨遠位端骨折は,骨粗鬆症に関連して発生する頻度の高い骨折である.近年では,骨が脆弱な高齢者の橈骨遠位端骨折に対しても,角度安定性のある掌側ロッキングプレートを使用した手術により骨折の整復保持が可能となった.術後翌日よりリハビリテーション治療を行うことで早期に手関節機能を回復し,日常生活や社会活動に復帰することが期待できる.

  • 尾﨑 まり
    2019 年 56 巻 5 号 p. 381-385
    発行日: 2019/05/17
    公開日: 2019/06/22
    ジャーナル フリー

    わが国では超高齢化の進行とともに骨粗鬆症性骨折も年々増え続けている.中でも大腿骨近位部骨折は発生数の多い骨折であり,そのほとんどに手術治療が行われている.大腿骨近位部骨折をひとたび起こすと,患者のADLは低下するとともに肺炎,精神障害などの内科的合併症を引き起こし,生命予後も悪化する.

    大腿骨近位部骨折患者には,術前より可及的早期にリハビリテーション治療を開始し,筋力低下の予防,日常生活能力と栄養状態を維持することが大切である.術後も翌日から座位を取らせるなど,早期離床に努めるべきである.

    また,急性期,回復期,維持期にわたって多職種で介入し,患者のADL,QOL維持に努めることが大切である.

  • 鈴木 敦詞
    2019 年 56 巻 5 号 p. 386-390
    発行日: 2019/05/17
    公開日: 2019/06/22
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症性骨折減少のためには,高リスク群の抽出とともに慢性疾患管理が必要となる.対象年齢が後期高齢者・超高齢者が中心となる骨粗鬆症では,能動的に患者支援にかかわることが必要である.日本骨粗鬆症学会では,骨折の一次予防と二次予防の両者を俯瞰する骨粗鬆症リエゾンサービス®事業を開始し,その担い手となる骨粗鬆症マネージャー®を育成するとともに,エビデンスづくりに向けての取り組みを行っている.骨粗鬆症の治療の柱は,栄養・運動・薬物療法であり,高齢者が安全に運動療法を行ううえで理学療法士・作業療法士を中心とした的確なアセスメントと指導は大きな力を発揮する.

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  • 春山 幸志郎, 川上 途行, 羽鳥 朱里, 池澤 真紀, 大塚 友吉, 里宇 明元
    原稿種別: 原著
    2019 年 56 巻 5 号 p. 413-424
    発行日: 2019/05/17
    公開日: 2019/06/22
    [早期公開] 公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,脊髄小脳変性症(SCD),多系統萎縮症(MSA)患者のリハビリテーション実施状況による患者背景を比較し,リハビリテーション医療における課題を明らかにすることである.

    方法:患者会会員914名のアンケート調査を解析し,リハビリテーション実施形態の分布とそれによる基本情報,リハビリテーション関連情報の群間比較を実施した.

    結果:対象者のうちリハビリテーション実施群は67.9%,自主練習群は17.7%,非実施群は14.3%であった.リハビリテーション実施群では,生活自立度の低下や要介護度の増加に伴い実施割合が増加した.リハビリテーション実施群と自主練習群におけるリハビリテーションによる主観的変化は差を認めなかったが,リハビリテーション実施群では継続の意思が有意に高かった(p=0.018).

    結論:SCD,MSA患者の自主練習を含めたリハビリテーションの実施割合は高かったが,主観的な訓練効果は明らかでなかった.病期にかかわらず専門職による定期的なリハビリテーション指導が行える環境の整備が必要と考えられる.

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