The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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57 巻, 11 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
巻頭言
理事長就任に際してのご挨拶
特集『関節リウマチ』
  • 松下 功
    2020 年 57 巻 11 号 p. 1005-1010
    発行日: 2020/11/18
    公開日: 2020/12/19
    ジャーナル フリー

    関節リウマチの有病率は0.2~1.0%といわれ,男女比はおおよそ1:3程度と報告されている.好発年齢はこれまで40~50歳前後とされてきたが,近年では高齢発症の患者が増加してきている.関節リウマチの診断については2010年の分類基準を用いることで早期診断が可能となったが,これまで以上に鑑別診断を厳密に行わなくてはならない.わが国で作成された『関節リウマチ診療ガイドライン2014』の特徴として,非薬物療法に対するリコメンデーションが掲載されている.同ガイドラインでは関節リウマチに対するリハビリテーション治療の重要性が提唱されており,関節保護および運動療法は関節リウマチ患者の機能を向上させるため強く推奨されている.

  • 前田 眞治
    2020 年 57 巻 11 号 p. 1011-1016
    発行日: 2020/11/18
    公開日: 2020/12/19
    ジャーナル フリー

    関節リウマチ(RA)の薬物療法は近年,劇的な変化を遂げている.かつての痛みを軽減するNSAIDsの治療から,免疫力や炎症を抑えるステロイド,抗リウマチ薬へと時代とともに変遷している.1999年に現在基本的治療薬として用いられているメトトレキサートが承認され,2003年から生物学的製剤が注射製剤で登場し劇的な変化をもたらした.さらに,2013年にはJAK阻害薬が経口製剤として登場している.現在,生物学的製剤11剤+JAK阻害薬4剤と治療の選択肢が多様になり,多くの患者が寛解導入可能になっている.生物学的製剤やJAK阻害薬の作用メカニズムを知ることでより有効な薬物処方ができるものと思われ,その作用メカニズムと薬物投与例も提示した.

  • ―超音波検査について―
    三浦 靖史, 前田 俊恒
    2020 年 57 巻 11 号 p. 1017-1022
    発行日: 2020/11/18
    公開日: 2020/12/19
    ジャーナル フリー

    生物学的製剤の登場は,関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の薬物療法にパラダイムシフトをもたらしただけでなく,診断基準,治療目標,治療手順まで,疾患にかかわる概念を大きく変えた.適切なタイミングでの薬物療法の導入に欠かせないのが早期診断と疾患活動性の評価であり,画像診断として関節超音波検査が広く用いられるようになっている.今日,RAのリハビリテーション診療は,RAによって重い身体障害が生じた患者を対象としたものから,完全寛解に至って健常者と大差ない生活を送る患者も対象としたものへと変わりつつあるが,超音波検査はRAのリハビリテーション診療の多様な場面において,活用されることが期待される.

  • 中村 めぐみ, 谷村 浩子, 松尾 絹絵, 土井 博文, 島原 範芳, 佐浦 隆一
    2020 年 57 巻 11 号 p. 1023-1030
    発行日: 2020/11/18
    公開日: 2020/12/19
    ジャーナル フリー

    関節リウマチのリハビリテーション医療は,薬物医療の進歩で大きく変容した.『関節リウマチ診療ガイドライン2014』では,RAの治療目標として「長期予後の改善」や「生命予後の改善」が掲げられ,その手段として薬物治療,手術療法,生活指導などの基礎療法,理学療法や作業療法などのリハビリテーション治療の実施が強く推奨されている.本稿では,「長期予後の改善」の一助となり得る,ランダム化比較試験でアドヒアランスの向上とその維持が証明されたハンドエクササイズ・プログラムThe Strengthening and Stretching for Rheumatoid Arthritis of the Hand(SARAH)とその邦訳版の使い方を紹介する.

  • 水関 隆也, 増田 哲夫, 鈴木 修身
    2020 年 57 巻 11 号 p. 1031-1038
    発行日: 2020/11/18
    公開日: 2020/12/19
    ジャーナル フリー

    関節リウマチ(RA)の内科的治療の進歩に伴い手術治療,とりわけ滑膜切除術の適応症例は減少した.現在では,かつての滑膜炎から生じた関節の破壊,変形に対する再建術,腱の断裂,(亜)脱臼に対する再建術が中心となっている.すなわち,肘関節では破壊肘に対する人工肘関節形成術が,手関節では吸収,破壊された手関節の安定化術がよく行われ,手関節の変形から2次的に生じた皮下伸筋腱断裂の再建,手指尺側偏位矯正術も需要が多い.本稿ではこれらの手術の適応,要点,および周術期のリハビリテーション治療について概説する.

  • 高窪 祐弥, 和根崎 禎大, 高木 理彰
    2020 年 57 巻 11 号 p. 1039-1046
    発行日: 2020/11/18
    公開日: 2020/12/19
    ジャーナル フリー

    関節リウマチ(RA)の薬剤治療の進歩に伴い,手術治療にもパラダイムシフトが起き,RA患者の膝滑膜切除術,下肢の人工関節手術は,手術数の減少が報告されている.しかし,薬剤治療が進歩しても一度関節破壊が進行した大関節は,生物学的製剤の投与によってもその破壊の進行抑制は難しいとされる.さらに,RA患者の高齢化に伴う骨粗鬆症化と相まって変形性関節症の進行を認めるため,今後も一定数のRA下肢手術の必要性が見込まれる.RAは多関節罹患であるため,手術部位以外の関節の状態,疾患活動性も見極め,患者1人ひとりの病態,生活環境,家族背景,合併症を考慮しながら,総合的なリハビリテーション治療を行うことが望ましい.

  • 林 正春
    2020 年 57 巻 11 号 p. 1047-1053
    発行日: 2020/11/18
    公開日: 2020/12/19
    ジャーナル フリー

    関節リウマチの治療は,薬物治療の進歩により,「臨床的」「構造的」「機能的」寛解が望める時代となっている.発症早期からの生物学的製剤(Bio)の適用で,「炎症」「疼痛」「関節破壊」は抑制され,ADL・IADLが確保できる.しかし,Bio未使用患者や急性増悪時の局所的な関節の「炎症」「疼痛」「変形」の発生で,ADL・IADL・QOLの低下につながる可能性がある.その関節症状における1つの治療方法としてスプリント治療がある.本稿では,スプリントで得られた,「関節機能再獲得」「変形の改善と予防」「IADLおよびQOL支援」などの治療効果について症例を提示する.

  • 柏倉 剛, 青沼 宏, 河野 哲也, 宮腰 尚久, 島田 洋一
    2020 年 57 巻 11 号 p. 1054-1061
    発行日: 2020/11/18
    公開日: 2020/12/19
    ジャーナル フリー

    RA治療は新規薬剤の登場により向上した.RCTでは複雑化した実臨床を表すことが困難であり,観察研究としてのコホート研究が重要である.国内には数多くの優れたRAコホート研究があり,数多くの臨床的知見を出している.秋田県は,長期間全国一の高齢化率を継続しており,高齢RA患者が多い.また,高齢者は遠方への通院が困難なため,RA治療の標準化と地域格差解消をめざし,秋田大学整形外科は2010年に秋田整形外科リウマチグループ(AORA)を立ち上げ,実態調査のためAORAレジストリーを構築した.今回,AORAを含め国内のRAコホートについて概説した.

教育講座
リハビリテーション医学研究のこれから
原著
  • 菊地 謙, 新田 收, 松浦 孝明
    原稿種別: 原著
    2020 年 57 巻 11 号 p. 1090-1098
    発行日: 2020/11/18
    公開日: 2020/12/19
    [早期公開] 公開日: 2020/09/04
    ジャーナル フリー

    目的:親子分離経験が脳性麻痺児の社会適応能力に与える影響を,明らかにすることを目的とした.

    方法:対象児は,特別支援学校に所属する脳性麻痺児で,5・6日間の親子分離キャンプに参加した「キャンプ参加群」と,親子分離経験をしない「非参加群」に振り分けた.社会適応能力を評価することのできるASA旭出式社会適応スキル検査を,親子分離経験の前後に実施した.統計解析は,社会適応スキル検査得点を従属変数,2群と時間経過を独立変数とした,反復測定二元配置分散分析を行った.交互作用が見込まれた場合は,単純主効果の検定を行った.

    結果:検査の下位項目である社会生活スキルと,全スキル得点において交互作用が認められた.単純主効果の検定の結果,「キャンプ参加群」でこの2項目と対人関係スキルの時間経過に伴う向上的な変化がみられた.

    結論:脳性麻痺児にとって親子分離経験は,社会適応能力の向上が期待できる機会であると考えられた.

症例報告
  • ―生活の中での麻痺手の使用頻度向上を達成した1例―
    下村 忠賛, 川上 途行, 大嶋 理, 土方 奈奈子, 中村 拓也, 岡 阿沙子, 奥山 航平, 里宇 明元
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 57 巻 11 号 p. 1099-1104
    発行日: 2020/11/18
    公開日: 2020/12/19
    [早期公開] 公開日: 2020/09/04
    ジャーナル フリー

    Intracranial germ cell tumor is more common in Asian countries, including Japan, than in Western countries. The disease is characterized by juvenile onset with a mean age at diagnosis of 18 years. Most patients with intracranial germ cell tumors in the basal ganglia manifest paralytic symptoms, but few of these patients have been reported to have long-term progression of motor paralysis and rehabilitation interventions.

    A young male patient was diagnosed as having right basal ganglia germinoma and left hemiplegia at the age of 10 years. He received intervention and long-term follow-up for upper limb function. He underwent hybrid assistive neuromuscular dynamic stimulation therapy at the age of 14 years and modified constraint-induced movement therapy (modified CI therapy) at the age of 20 years. With such a gradual neurorehabilitation intervention, the Fugl-Meyer assessment score for the upper limb improved from 41 to 58 points, and the frequency of use of the paralyzed hand also improved. We hope that this report will provide guidance when considering treatment options for similar diseases in the future.

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