The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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57 巻, 7 号
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巻頭言
特集『肢体不自由児におけるリハビリテーション医学』
  • 朝貝 芳美
    2020 年 57 巻 7 号 p. 584-588
    発行日: 2020/07/17
    公開日: 2020/08/28
    ジャーナル フリー

    肢体不自由児という名称は高木憲次先生により提唱され,医療だけでなく教育,職能指導,社会参加といった肢体不自由児療育の理念は,わが国リハビリテーション医療の源流となった.しかし,その定義は時代の変化とともに少しずつ変化してきている.高木先生の定義では「原因は四肢・体幹に限るものではなく,肢体疾患と同義語ではない」とされたが,単に「手足が不自由」な「肢体疾患」とみられることもある.地域生活を支援し,必要な時期に必要な量と質の(リ)ハビリテーション医療を提供し,子どものもつ能力を最大限伸ばすことのできる,成育期の(リ)ハビリテーション医療を標準化し確立していく中で,さらによい名称が求められている.

  • ―動的評価とX線による静的評価―
    田中 弘志, 小崎 慶介
    2020 年 57 巻 7 号 p. 589-593
    発行日: 2020/07/17
    公開日: 2020/08/28
    ジャーナル フリー

    肢体不自由児のリハビリテーション治療においては動的評価とX線を用いた静的評価が重要となる.脳性麻痺ではGMFCSによる移動機能の分類,MASを用いた筋緊張の評価を行い治療目標を設定する.二分脊椎ではSharrard分類とHoffer分類による動的評価を行い予後を予測し治療目標を立てる.治療目標を立てたうえでROMやX線による静的評価を行い患者の脊椎,関節を評価する.脊椎ではCobb角を用いて評価を行い,50°以上では手術治療も考慮して検討する.股関節ではMPを用いて評価し,50%以上の高度亜脱臼では手術治療を含めて検討を行う.足部変形ではTalo-foot angleを用いて評価し,0°以下の重度内反,+40°以上の重度外反で皮膚障害を伴う場合手術治療を考慮する.

  • 志村 司
    2020 年 57 巻 7 号 p. 594-598
    発行日: 2020/07/17
    公開日: 2020/08/28
    ジャーナル フリー

    肢体不自由児の運動療法は,成長発達の自然経過が無視できないこと,治療効果の標準化・指標化が難しいこと,また評価方法も多様化しており基準を求めることが難しいことなど,いまだ考えを統一することが困難である.さらに,運動機能以外の諸問題(知的障害・発達障害・合併症・介入時期・生活環境など)が複雑に関与してくるため,訓練目標として運動機能面だけにとどまらず,ADLの促進,QOL充実など生活機能・生活スキルの向上も必要である.そのため一医療・療育施設がすべてを担うのは困難であり,地域社会・医療との連携を早期より密にしていく努力が必要と考える.

  • 根津 敦夫
    2020 年 57 巻 7 号 p. 599-603
    発行日: 2020/07/17
    公開日: 2020/08/28
    ジャーナル フリー

    肢体不自由児の痙縮やジストニアに対し,国内でも2009年以降ボツリヌス毒素による神経ブロックが多用されている.軽症例への早期治療は,歩容や巧緻動作の問題を短期間で改善させ,数回の治療で完了できる.一方,重症例では,幼少期までは有効だが,学童期以降は体格が大きくなるにつれて用量不足となるため,効果不十分となる.また,治療3~6カ月後には症状が繰り返し再燃するため,治療終了の見通しが立たない.そのような場合,脊髄後根切断術やバクロフェン持続髄注療法への移行または併用を検討すべきである.これらの治療を適切な時期に導入すれば,装具療法との併用で,拘縮・変形の進行をある程度抑制することができる.

  • ―手術療法―
    伊藤 順一
    2020 年 57 巻 7 号 p. 604-611
    発行日: 2020/07/17
    公開日: 2020/08/28
    ジャーナル フリー

    肢体不自由児のリハビリテーション,療育を実践していくときには,内在する運動発達を誘導し,成育を阻害する解剖生理学的異常を取り除くことが必要である.治療にあたっては,幼児期は保存的に対応し,成長終了までに悪化が予測されるものに関しては,児の環境,生理的な状態も評価して手術の適応,タイミングを計画するとよい.また,認識されていない脆弱な部分が隠れていることもあるため,手術にあたっては,事前にリハビリテーション入院や十分な検査の後に手術を計画する.症例が少ない領域で,患児ごとの多様性があることから,経験のある術者の執刀,十分な術後のリハビリテーション治療が大切である.

  • ―コミュニケーション・摂食嚥下療法―
    椎名 英貴
    2020 年 57 巻 7 号 p. 612-616
    発行日: 2020/07/17
    公開日: 2020/08/28
    ジャーナル フリー

    食事・コミュニケーションに問題をもつ肢体不自由児の原疾患としては,脳性麻痺をはじめとする中枢神経系損傷に起因するものがほとんどである.対象児の重症度は高く,聴覚障害や視覚認知の問題を合併する場合も多い.多くの場合,姿勢運動障害を背景にもち,食事・コミュニケーションに与える影響も大きい.摂食嚥下障害の対応は,食事姿勢の調整,嚥下調整食の調整,口腔運動機能への介入が大きな柱となる.コミュニケーションに関しては音声言語によるコミュニケーションにとどまらず,表情,視線,指さしなどを用いた非言語的コミュニケーションや機器を使用した拡大代替コミュニケーション(augmentative and alternative communication:AAC)を積極的に取り入れる.

  • 中川 栄二
    2020 年 57 巻 7 号 p. 617-622
    発行日: 2020/07/17
    公開日: 2020/08/28
    ジャーナル フリー

    重症心身障害の領域では,「リハビリテーション」という用語よりも「療育」(医療と育成)という,医療的なかかわりと教育・保育および生活指導・援助の育児(育成)的なかかわりをあわせた用語がよく使われる.リハビリテーション医療については,単なる理学療法・作業療法・言語療法という狭い範囲に留まらず,周囲の人々の心のバリアフリーまでも含む社会環境の整備にまで広げ,社会参加の促進を図ることを意味する.それには全身状態の管理,日常生活動作訓練,異常肢位・姿勢の改善などが必要で,理学療法,作業療法,言語療法,心理療法,生活指導など多職種連携による継続的な支援が重要である.

  • ―のざわ特別支援学校の取り組み―
    岡崎 貴志, 渡邉 貴子, 高木 綾子
    2020 年 57 巻 7 号 p. 623-628
    発行日: 2020/07/17
    公開日: 2020/08/28
    ジャーナル フリー

    特別支援学校では,個々の実態に合わせた課題を学習する自立活動がある.肢体不自由児は身体にかかわる課題がみえやすいが,認知精神面を含めた疾患特性・発達段階とその不均等も活動や学習困難の要因につながっている.本校では教員と自立活動実習助手(作業療法士〔OT〕/言語聴覚士〔ST〕/看護師〔NS〕免許保有)が連携し,細かい発達段階や疾患に関する医療的視点と日常の教育的視点を合わせて,丁寧な評価と実態整理を行っている.目の前の課題ではなく,実態整理からみえてきた本人を主体とする「本当の願い」「真のニーズ」が重要と考えている.教育的ニーズに必要な支援の合理的配慮をし,生活や学習と合わせて自立活動を行うことで,成長発達に大きくつながっていく.

教育講座
原著
  • 森口 八郎, 横内 葵, 石川 正恒, 山田 茂樹
    原稿種別: 原著
    2020 年 57 巻 7 号 p. 648-656
    発行日: 2020/07/17
    公開日: 2020/08/28
    [早期公開] 公開日: 2020/07/08
    ジャーナル フリー

    目的:特発性正常圧水頭症(iNPH)のシャント術後リハビリテーション治療の有用性については検証されておらず,入院リハビリテーション治療期間と退院時の歩行機能や退院後の経過との関係性を後方視的に検討した.

    方法:iNPH患者81人(平均年齢76歳)を解析対象とし,入院リハビリテーション治療期間が2週間以上であった38人と2週間未満であった43人に分け,治療前後のTUG,10 m直線歩行試験,180°ターン,CS-30,MMSE,FABの改善度を比較した.退院後の経過は3段階で判定した.

    結果:2週間未満よりも2週間以上の入院リハビリテーション治療を行った患者のほうが,退院前のTUG,180°ターン,CS-30が有意に改善していた.特に,入院時TUG ≥13.5秒の場合には退院後の経過が良好であった.

    結論:iNPH患者は,自立歩行を目標として手術と術後リハビリテーション治療を計画的に行うことが重要である.

  • 小川 秀幸, 西尾 尚倫, 音部 雄平, 木村 鷹介, 大路 駿介, 山田 実
    原稿種別: 原著
    2020 年 57 巻 7 号 p. 657-667
    発行日: 2020/07/17
    公開日: 2020/08/28
    [早期公開] 公開日: 2020/07/08
    ジャーナル フリー

    目的:回復期脳卒中患者におけるリハビリテーション治療満足度と関連する要因を検討すること.

    方法:研究デザインは横断研究とした.対象は回復期病棟にてリハビリテーション治療を実施した初回発症の脳卒中患者41名(50.5 ± 9.3歳,男性73.2%)とした.統計解析は,リハビリテーション治療満足度(CSSNS)を従属変数とし,満足度との関連が報告されている身体機能変化(SIAS-M gain),ADL改善度(M-FIM effectiveness),精神面(JSS-D),楽観性(LOT-R),サービス品質(SERVPERF)を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を用いて検討した.

    結果:リハビリテーション治療満足度は55.5 ± 8.3点であった.重回帰分析にてリハビリテーション治療満足度に関連する要因として,M-FIM effectiveness(標準化偏回帰係数β=0.48,p<0.01)とSERVPERF(標準化偏回帰係数β=0.48,p<0.01)が抽出された.

    結論:回復期脳卒中患者において,ADL能力を改善させることと,リハビリテーション治療のサービス品質向上に取り組むことが満足度を高める可能性が示唆された.

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