The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
Online ISSN : 1881-8560
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58 巻, 12 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
特集『感覚障害のリハビリテーション医学・医療』
  • 久壽米木 駿, 上羽 瑠美, 近藤 健二, 山岨 達也
    2021 年 58 巻 12 号 p. 1350-1355
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2022/04/13
    ジャーナル フリー

    COVID-19の特徴的な臨床症状として,嗅覚・味覚障害がある.これらの化学感覚の喪失は,他の症状が寛解した後も持続することがあり,生活の質を低下させることから重要な問題である.COVID-19による嗅覚・味覚障害の原因として,鼻腔の嗅粘膜および舌の味蕾にSARS-CoV-2ウイルスが宿主細胞に侵入するためのアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体,およびそれを補助するセリンプロテアーゼ(TMPRSS2)とタンパク質変換酵素(Furin)が多量に発現しているため,ウイルスの影響を受けやすいことが挙げられる.嗅粘膜で炎症と形態的損傷が起こり,次に嗅球ニューロンが損傷を受けることで,COVID-19による嗅覚障害が遷延する可能性がある.しかしながら,現時点では不明な機序が多く,解明のためには今後の症例検討や実験的研究が必須である.

  • 奥谷 文乃
    2021 年 58 巻 12 号 p. 1356-1360
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2022/04/13
    ジャーナル フリー

    嗅覚刺激療法(olfactory training)は,嗅覚障害の治療法として注目されている.対象は嗅神経性および中枢性で,嗅覚伝導路の末梢受容器から中枢のいずれかに原因があるものであり,匂い分子が嗅神経細胞に到達できない気導性嗅覚障害は除く.作用機構は非常に高い再生能をもつ嗅神経細胞を匂い刺激によって興奮させることで,嗅球のみならず,さらに上位においてシナプス可塑性を誘導すると考えられ,ニューロリハビリテーション治療の1つとみなすことができる.世界的にはすでに有用性が証明されており,わが国においても日本人向けの匂いを用いて,日本人向けの嗅覚検査であるT&T olfactometryで評価をする全国研究が進行中である.

  • 伊藤 加代子, 船山 さおり, 井上 誠
    2021 年 58 巻 12 号 p. 1361-1366
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2022/04/13
    ジャーナル フリー

    味覚障害は高齢者に多く認められ,QOLを低下させるだけでなく,塩分過剰摂取による高血圧のリスク増加や,食欲不振による低栄養を招く恐れもある.味覚障害の検査には,神経支配領域別の閾値を測定するテーストディスク法や電気味覚検査,口腔内全体の閾値を測定する全口腔法などがある.味覚障害の原因は多様で,亜鉛欠乏性,薬剤性,特発性などが多いが,複数要因が複雑に関与していることもある.治療は,原因に応じて行うが,亜鉛欠乏性味覚障害に対しては,亜鉛補充を行う.治療効果は,発症から早期であるほど高いため,味覚障害の早期発見,早期治療が重要である.

  • 氏間 和仁
    2021 年 58 巻 12 号 p. 1367-1376
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2022/04/13
    ジャーナル フリー

    教育的視機能評価について,医療での検査などとの目的の違いを整理したうえで,教育的視力評価,教育的視野評価,教育的読書評価について紹介し,それらの結果を用いた視覚活用教育,合理的配慮,入学試験での配慮要求について解決策の道筋の1例を紹介した.教育的視力評価はランドルト環を用いることになるが,教室での実施や提示位置を変更した際の換算の方法について指摘した.教育的視野評価は,顔などをみる方法と日用視野測定ツールというアプリを利用する方法を紹介した.教育的読書評価は,日常的に実施する方法とMNREAD-Jを活用する方法を紹介した.また,それらの結果を活用する道筋として,視覚活用教育および配慮要求について紹介した.

  • 石川 浩太郎
    2021 年 58 巻 12 号 p. 1377-1382
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2022/04/13
    ジャーナル フリー

    聴覚障害は頻度の高い障害の1つである.難聴の程度と患者の年齢により対処方法は異なるが,主に補聴器や人工内耳などの補聴機器を使用しながら,言語聴覚士と連携し言語聴覚訓練を実施する.医師は各種訓練方法の適応,補聴機器の特徴を十分に理解し,患者や家族に対して適切に説明しながら,訓練を円滑に進めることが重要である.また,訓練を行う際に並行して行う原因検索では,画像診断や難聴遺伝学的検査などが有用である.特に難聴遺伝学的検査では,難聴の将来予測や合併症の有無,人工内耳の効果予測など,訓練に必要な重要な情報を得ることができる.

  • ―過敏性腸症候群 (IBS)に認められる内臓知覚過敏―
    金澤 素, 福土 審
    2021 年 58 巻 12 号 p. 1383-1390
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2022/04/13
    ジャーナル フリー

    過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)の主要な病態生理として内臓知覚異常,消化管運動機能異常ならびに心理社会的異常が知られている.さらに,中枢と末梢(腸)における機能的な相互関連の変化,すなわち脳腸相関の異常がIBS病態の中心的な役割を果たしている.疼痛に関連する脳内ネットワークはペインマトリックスと呼ばれている.脳機能画像研究によって内臓感覚に関する情動・覚醒系に関連する脳領域の刺激反応亢進性がIBS患者において認められることが明らかになった.このような内臓知覚異常に対する機能回復を目的とした特異的な治療法は十分確立されていないが,薬物療法のみならず,さまざまなモダリティによってさらなる検討が進められている.

  • 大國 生幸, 海老原 覚
    2021 年 58 巻 12 号 p. 1391-1398
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2022/04/13
    ジャーナル フリー

    摂食嚥下は,食塊を口腔から咽頭・食道を経て胃まで送る一連の過程で,通常5期に分けられる.中でも咽頭期は嚥下反射が中心となり,咽頭感覚は摂食嚥下において重要な役割を担う.咽頭感覚に関連する神経学的または構造的な欠陥は摂食嚥下に影響を及ぼすため,咽頭感覚障害はさまざまな疾患に不随する摂食嚥下障害の要因の1つとなる.咽頭感覚障害のリハビリテーション医療は,実際に食物を用いて行う直接訓練と,食物を用いない間接訓練とに分けられる.近年,感覚および運動経路の刺激に基づく新しい治療法として,刺激療法が着目されている.リハビリテーション医療は,個々の患者の状態や摂食嚥下機能に基づいて行う必要があり,多職種からなるチームによる治療が推奨される.

  • 武田 克彦
    2021 年 58 巻 12 号 p. 1399-1406
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2022/04/13
    ジャーナル フリー

    触覚の仕組みとして,皮膚における4つの機械受容器について解説し,末梢神経脊髄から大脳に至る経路を述べた.次に,その経路における障害について述べた.触覚の高次の中枢である中心後回には階層構造があることが,Iwamuraらによる研究からわかった.そして,中心後回の損傷による感覚障害と運動障害について,筆者自身の研究からわかったことを報告した.触覚障害のリハビリテーション医療について,末梢神経障害の場合の方法と,脳血管障害例を対象とした場合の今までの報告の系統的レビューなどについて述べた.新しい試みもなされているものの,現状はまだまだという段階である.今後リハビリテーション医療を進めるうえで重要と思われる視点について最後に触れた.

教育講座
リハビリテーション医学研究のこれから
短報
  • 蓮川 嶺希, 上出 杏里, 深澤 聡子, 清谷 知賀子, 松本 公一
    原稿種別: 短報
    2021 年 58 巻 12 号 p. 1427-1434
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2022/04/13
    [早期公開] 公開日: 2021/12/14
    ジャーナル フリー

    目的:当院に通院する小児がん経験者に新体力テストおよび活動度・社会参加に関する評価を行い,その特徴と課題について検討した.

    対象:2018年8月~2019年8月に当院で開催された小児がん長期フォローアップのイベントに参加した5歳以上の小児がん経験者44名のうち,小学生以上の30名(年齢中央値9歳,男子17名,女子13名).

    方法:カルテおよびイベントでの評価を後方視的に調査した.調査項目は性別,診断名,評価時・発症時年齢,退院後経過年数,身体機能および認知機能,体育以外の習い事や部活動での運動参加の有無,新体力テスト,小児活動・社会参加評価スケールなどである.

    結果:体力は退院後の経過年数にかかわらず,男女および全年齢に共通して全国平均よりも低い傾向を示し,特に持久力が低下していた.また,今回の対象の30名中26名(87%)は全日の登校や1日かけての外出が可能であり,さらに11名(37%)は,体育以外の習い事や部活動での運動に参加していた.

    結論:小児がん経験者は,学校や余暇活動,運動の習い事などの社会参加を果たしていても,体力の低下を長きにわたって抱えていると考えられる.入院中から生涯にわたる継続的な体力への支援と,成長に応じた活動や社会参加の実現が望まれる.今後は疾患や治療内容別による体力の比較検討を行い,活動・社会参加の背景からも体力低下の要因を明らかにしていくことが課題である.

症例報告
  • 小原 卓己, 吉村 芳弘, 田中 龍太郎, 槌田 義美, 竹村 健一, 田中 智香
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 58 巻 12 号 p. 1435-1441
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2022/04/13
    [早期公開] 公開日: 2021/12/14
    ジャーナル フリー

    Heterotopic ossification (HO) is one of the complications of a cervical cord injury that results in limited range of motion, which can interfere with basic movements and activities of daily living. We encountered a case of a cervical cord injury patient with limited range of motion and mobility due to HO of the hip joint who experienced improvement in both as a result of early surgery and rehabilitation. A 17-year-old boy was diagnosed with a cervical cord injury due to an anterior fracture of the sixth cervical vertebrae following a fall into a pool. It was classified as bilateral C6BII according to the Zancolli's classification for cervical cord injury. The patient presented with limited range of motion in his left hip and was diagnosed with HO four months after the injury. Eight months after the injury, his hip range of motion deteriorated further;consequently, he required continuous transfer assistance. Therefore, surgical HO removal was performed during this period of convalescent rehabilitation. The patient underwent constant post-operative rehabilitation, and the range of motion in his left hip joint improved;thus, he became independent in transfer activities. A concomitant HO after a cervical cord injury can lead to functional impairment in convalescent rehabilitation. In addition, no practice guidelines have been developed that include recommendations on when to perform surgical procedures for HO. Treatment of HO with a combination of immediate surgery and aggressive rehabilitation can be expected to restore function and maximize activity and participation in patients with cervical cord injury with concomitant HO.

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