The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
Online ISSN : 1881-8560
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59 巻, 12 号
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巻頭言
特集『糖尿病のリハビリテーション医療―合併症対策と最新治療―』
  • ―糖尿病が及ぼす障害とリハビリテーション医療への影響―
    上月 正博
    2022 年 59 巻 12 号 p. 1188-1194
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー

    糖尿病がもたらす障害の基本は血管障害であり,糖尿病性大血管病(脳卒中,冠動脈疾患,末梢血管疾患),糖尿病細小血管病(網膜症,神経障害,腎症),足病変など多様かつ全身に及ぶ.糖尿病は,障害者の機能予後や生命予後に大きな影響を及ぼす.例えば,低血糖,足病変,視力障害,四肢末端の異常感覚,起立性低血圧などは,患者のADLやQOLを大きく損なわせるとともに,リハビリテーション医療の障害になる.また,糖尿病は脳血管障害・虚血性心疾患・腎不全などの初発・再発の重要な危険因子でもある.このように,糖尿病患者では内部障害や運動機能障害に配慮したリハビリテーション医療の実践が求められている.

  • 長澤 幹, 石垣 泰
    2022 年 59 巻 12 号 p. 1195-1201
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー

    高齢者糖尿病は増加の一途を辿っており,すでに種々の障害や合併症を抱えている患者も少なくない.高齢者糖尿病は個人差が著しく大きいことが特徴であり,たとえ年齢が同じであっても罹病期間や合併症の状態によりその状況は異なる.そのため,個々の背景と患者本人およびその介護者の希望をよく考慮したうえで,柔軟に治療目標を設定する.また糖尿病薬物治療を行う際の注意点として,①重症低血糖を避けること,②アドヒアランスを向上させること,③高齢者特有の副作用に注意することが挙げられる.そのため,各薬剤の特徴を十分に理解したうえで薬剤選択を行うことが重要である.

  • ―有酸素運動かレジスタンス運動か―
    細井 雅之, 薬師寺 洋介, 元山 宏華
    2022 年 59 巻 12 号 p. 1202-1208
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー

    糖尿病の運動療法としては,まず,「身体不活動」を減らすこと,「立ち上がる」といった身体活動量を増やすことから始めることが基本である.次に,バランス運動,ストレッチング,柔軟体操から始めることも勧められる.特に,高齢者や日常の身体活動量に少ないものに勧められる.家事,庭いじりから,ヨガ,太極拳,ダンス,そして歩行,水泳,インターバルトレーニングといった有酸素運動が勧められる.同時にレジスタンス運動も軽負荷のものから勧められる.スロージョギング,スロースクワットといったものから,マシーンを使うような高負荷のものもある.できれば,有酸素運動とレジスタンス運動は併用するほうが望ましい.ただし,併発症を有する患者はメディカルチェックを受けておくことが必要である.使用薬剤も確認しておくとよい.

  • 高橋 珠緒
    2022 年 59 巻 12 号 p. 1209-1214
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー

    糖尿病網膜症は糖尿病に起因した特徴的な眼底所見を呈する病態で,進行すると視力障害に陥る.糖尿病罹病期間,高血糖,高血圧がリスク因子となり,網膜症の発症・進展を抑止するうえで血糖コントロールや血圧コントロールが重要となる.糖尿病網膜症を有する患者は,運動療法を行う際,網膜症の程度および可能な運動の程度を評価する必要がある.

    視覚障害のリハビリテーション医療(ロービジョンケア)では,個々のニーズに合わせ,視覚補助具の活用,歩行訓練,日常生活訓練,環境調整,就業支援などが行われる.視力が低下した糖尿病患者の血糖管理において,音声付きの血糖測定器や,視力障害者向けのインスリン注射機器が活用できる.

  • 三浦 平寛, 伊藤 修
    2022 年 59 巻 12 号 p. 1215-1221
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー

    糖尿病性腎臓病(DKD)は,典型的な糖尿病性腎症(DN)に加えて,顕性アルブミン尿を伴わないまま糸球体濾過量(GFR)が低下する非典型的な糖尿病関連腎疾患を含む概念である.治療戦略としては血糖コントロールを主軸に血圧や脂質異常のコントロール,食事・運動などの生活習慣改善というようにDNと変わりはない.本邦では,人口の高齢化,糖尿病罹患率の上昇,透析療法の進歩や合併症治療の進歩による延命効果によって,DKD患者は年々増加すると考えられる.糖尿病患者では,心肺機能,運動耐容能,血管内皮機能などの低下をきたしており,慢性腎臓病(CKD)患者では,体液異常,貧血,血行動態異常などの合併によって心機能が低下し,長期間の安静による廃用やタンパクエネルギーの低下とあいまってサルコペニアが進行し,運動耐容能が低下している.そのため糖尿病とCKDの合併は,さらなる心血管系合併症を増加させ,QOL(quality of life)や生命予後の悪化を招くと考えられる.DKD治療においてはその進行を防ぎ透析導入への進展を遅らせることが重要であり,その治療の1つとして運動療法の効果が期待される.

  • 上野 博司, 垣田 真里, 天谷 文昌, 三上 靖夫
    2022 年 59 巻 12 号 p. 1222-1230
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー

    糖尿病性神経障害は糖尿病の3大合併症の1つであり,国内で300万人以上が罹患していると推定されている.高血糖による解糖系の代謝障害が原因で神経障害が惹起され,痛みやしびれなどの感覚神経障害が生じ,進行すると運動神経や自律神経にも障害が及び,QOLの低下を招く.痛みを伴う有痛性糖尿病性神経障害に対しては,神経障害性疼痛に対する薬物療法,神経ブロックや脊髄刺激療法などのインターベンショナル治療,光線療法などの物理療法といった非薬物療法による症状緩和を行う.また,感覚障害,運動障害,自律神経障害による身体機能障害の回復とQOLの維持にリハビリテーション治療が効果的であり,重要な役割を担う.

  • 安 隆則
    2022 年 59 巻 12 号 p. 1231-1236
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー

    アメリカスポーツ医学会は,「Exercise is Medicine」を提唱しており,このコンセプトは糖尿病性大血管合併症の重症化予防にも適応される.運動療法に伴うリスクを十分に理解したうえで,日常生活の中に運動を組み入れていただきたい.特に,シックデイのときには,運動を休み,こまめに水分補給をし,絶食しないようにしながら,中断すべき薬(SGLT2阻害薬など)を休薬し,中断してはいけない薬(インスリン製剤)を継続するように日頃から患者に指示しておかなければならない.運動療法の進め方については,ガイドラインに従って患者ごとにエビデンスに基づいた運動処方をし,フォローする必要がある.

教育講座
リハビリテーション医学研究のこれから
原著
  • ―リハビリテーション科専門医に施行したアンケート結果から―
    中尾 真理, 大西 秀明, 浅川 育世, 田上 未来, 出江 紳一
    原稿種別: 原著
    2022 年 59 巻 12 号 p. 1248-1258
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2023/03/03
    [早期公開] 公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    リハビリテーション科専門医を対象として,支援機器開発現場の課題と,機器開発において専門医がリハビリテーション科医師に求める能力についてのアンケート調査を実施し366名より回答を得た.支援機器開発に関与経験をもつ専門医の8割が課題を感じていた.課題とは,医工の共通言語の欠如と現場での使用方法や使用者の障害像の共有の困難さであった.支援機器開発に求める医師の能力は,「患者にとっての機器の必要性(ニーズ)を深く洞察する力」および「コミュニケーション力」であった.他分野との考え方の違いを乗り越えるための意思疎通や伝える能力,チームワークの要件としての情報・目的・知識の共有,患者を含めた協働が重要であると考えられていた.このような開発方法に,デザイン思考やバイオデザインは親和性が高いが,残念ながら7割以上の回答者はその知識を持ち合わせていなかった.リハビリテーション科専門医がバイオデザイン的開発手法を体得できるような機会の提供が必要である.

症例報告
  • 鈴木 玄一郎, 日比 新, 笠原 優人, 渡部 晃平, 原 真里, 森 圭市郎
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 59 巻 12 号 p. 1259-1265
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2023/03/03
    [早期公開] 公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

    Since hand deformities in rheumatoid arthritis (RA) are relatively not very painful, the worsening of the deformities often goes unnoticed and the functional impairment progresses irreversibly. Herein, we report a case of boutonnière deformity of the left middle and ring fingers treated with rehabilitation since an early stage. The patient was a 58-year-old woman who was referred to our hospital due to joint pain in the fingers and feet, following which a diagnosis of RA as made;however, she could not be administered methotrexate due to complications. PIP joint deformity of the left middle and ring fingers developed later. The middle finger was in -50-degree extension and difficult to correct passively, while the ring finger was in -35-degree extension and correctable. Surgery for the left middle finger was proposed based on the diagnosis of boutonnière deformity;however, consent was not obtained. After a steroid injection in the painful middle finger, she was managed using a Capener splint and ROM exercises with finger stretching. The symptoms improved five months following the rehabilitation intervention. Nalebuff et al. classified the severity of the boutonnière deformity based on the limited PIP joint extension and recommended treatment accordingly. In this case, surgical treatment was believed to be required;however, since the patient refused surgery, conservative treatment was chosen. Although the extension was severe, there was little joint destruction, due to which the symptoms improved with early and active intervention. Orthotic treatment and occupational therapy were effective in improving ADL.

Secondary Publication
  • 三石 敬之, 石原 禎人
    2022 年 59 巻 12 号 p. 1266-1274
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,頚椎前方軟部組織(prevertebral soft tissue:PVST)肥厚が嚥下障害のリスクを高めるかを明らかにし,どの椎体レベルのPVST肥厚計測が有用かを確認し,さらに,そのカットオフ値を決定することである.

    方法:対象は頚髄損傷の専門診療を行う単一施設において43カ月間に治療を受けた外傷性頚髄損傷の患者である.除外基準は,頚椎前方手術,外傷性脳損傷合併,椎骨動脈損傷合併,脳血管障害の既往,神経変性疾患の合併,受傷後30日目の気管内挿管,受傷後24時間以内の神経症状消失,ハローベスト使用とした.受傷日のCTにおけるC1,C2,C3,C6,C7前方のPVST厚と,外傷性頚髄損傷受傷後30日および60日の嚥下障害の有無(Food Intake LEVEL Scaleスコア<8)との関連をROC曲線で解析し,最も大きいAUCとなる椎体高位を同定し,さらにPVST厚のカットオフ値を算出した.PVST厚を含むさまざまな危険因子と発症後30日目および60日目の嚥下障害との関連を単変量解析および多変量解析で検討した.

    結果:対象は受傷後30日で80名,受傷後60日で79名となった.C3高位のPVST厚増加(受傷後30日:≧8.3 mm,受傷後60日:≧9.4 mm)と気管切開に,嚥下障害との独立した関連が認められた.

    結論:PVST厚増加は嚥下障害の独立した危険因子であることが示された.受傷時のPVSTを計測することにより,急性期でも嚥下障害の重症度を推定することが可能であると考えた.

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