The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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61 巻, 11 号
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巻頭言
特集『慢性疼痛最前線』
  • 服部 貴文, 大賀 智史, 松原 貴子
    2024 年 61 巻 11 号 p. 1020-1027
    発行日: 2024/11/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    慢性疼痛は,組織損傷・機能障害に起因する侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛が発症の契機となることが多い一方で,疼痛が長引くことによって末梢・中枢神経系の神経感作や心理社会的要因が強く関与するようになり,痛覚変調性疼痛へと移行するケースも存在する.そのため,慢性疼痛診療に際しては,疼痛の機構分類や関連要因をもとにスクリーニングするとともに,多面的な予後予測因子の抽出を行い,病態に応じたアプローチを講じることが重要である.

  • 坂本 淳哉, 沖田 実
    2024 年 61 巻 11 号 p. 1028-1032
    発行日: 2024/11/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    慢性疼痛に対するリハビリテーション治療の効果を検証した無作為化比較試験が蓄積され,それらを統合したシステマティックレビュー・メタアナリシスの知見が慢性疼痛の診療ガイドラインに反映されている.リハビリテーション治療の中でも,運動療法は疼痛軽減効果や身体機能の改善効果が認められ,有害事象が少ないことから慢性疼痛治療において実施することが強く推奨されている.また,慢性疼痛患者の認知の歪みを是正するための認知行動療法や患者教育を併用した運動療法も実施することが強く推奨されている.これらの知見やガイドラインの推奨は慢性疼痛治療における指針となり,十分な吟味のうえで活用することが望まれる.

  • ―「いきいきリハビリノート」を用いた認知行動療法に基づく運動促進法を含めて―
    岩﨑 円, 木村 慎二
    2024 年 61 巻 11 号 p. 1033-1039
    発行日: 2024/11/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    慢性一次性疼痛とは,1つ以上の解剖学的領域の疼痛で,3カ月以上持続または再発し,重大な精神的苦痛(不安,怒り,欲求不満,抑うつ気分など)を伴い,症状が他の診断ではうまく説明できないものと定義される.また,身体症状症は患者の訴える身体症状に対する「思考や感情,行動」が過度なものをいい,慢性一次性疼痛症候群ときわめて類似している.本稿では慢性一次性疼痛症候群および身体症状症の概要とアプローチ,特に筆者らが開発した認知行動療法に基づく運動促進法を行うためのツールである「いきいきリハビリノート」の使用法の概要・ねらいと,その使用実績について報告する.

  • 矢吹 省司
    2024 年 61 巻 11 号 p. 1040-1045
    発行日: 2024/11/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    慢性疼痛は,国際疾患分類第11版(ICD-11)で疾患として分類され,その中の1つが慢性術後疼痛(CPSP)または慢性外傷後疼痛(CPTP)である.CPSPとCPTPともに,重度の侵害刺激が加わり発生した痛みが3カ月以上持続している状態であると考えられる.発生率は10~60%程度と報告されている.発症には,神経障害性のメカニズムがきわめて重要であり,心理社会的要因が強く関与している.慢性疼痛となってしまった場合,疾患別の治療というよりは,慢性疼痛という概念のもとに多面的にアプローチする必要がある.

  • 宮田 知恵子
    2024 年 61 巻 11 号 p. 1046-1052
    発行日: 2024/11/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    痛みは,がんの病期によらず出現するがん患者の代表的な苦痛症状の1つである.そして,がんの原発巣や転移巣,あるいは,がん治療が原因となって引き起こされる痛みで,3カ月以上の長期にわたり持続したり再発したりする痛みは「慢性がん関連疼痛」といわれる.がんの直接的な痛み“慢性がん性疼痛”と,がん治療に関連した痛み“慢性がん治療後疼痛”に分類されるが,いずれの場合もがんサバイバーのQOLに影響を及ぼす要因となるため,がん診療の一環として適切な対応が求められている.ここでは,慢性がん関連疼痛に関して,リハビリテーション治療の最近の知見を含め概説する.

  • 西岡 浩子, 北原 雅樹
    2024 年 61 巻 11 号 p. 1053-1059
    発行日: 2024/11/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    神経障害性疼痛とは一体何か.よく使われる診断名ではあるが,診断基準を満たしていなかったり,治療法で薬物療法のみを用いたりして,かえって患者の状態を悪化させている場合も少なくない.本稿では,神経障害性疼痛について,あらためて定義と診断アルゴリズムをしっかりと確認する.そして,薬物療法の適正化と運動療法の介入で改善した40代女性,痛みではなく日常生活の質の向上にフォーカスして改善した70代女性,神経障害性疼痛の診断基準を認めておらず薬物療法を使用せずに改善した80代男性,の3例から臨床での具体的な対処法について提示する.

  • 森戸 剛史, 金岡 恒治
    2024 年 61 巻 11 号 p. 1060-1068
    発行日: 2024/11/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,慢性二次性筋骨格系疼痛に焦点を当て,特に腰痛に関する病態と運動療法の効果を論じる.脊柱起立筋付着部障害や仙腸関節障害における病態別の運動療法の有効性を実例とともに紹介し,モーターコントロールエクササイズ(MCEx)の介入が疼痛軽減および機能改善に寄与することを示した.また,地域住民に対する運動介入プログラムでも腰痛軽減と生活機能の向上が確認され,MCExは一般住民にも有効である.腰痛に対する運動器機能の評価と運動療法の重要性を提示する.

  • 西須 大徳, 牛田 享宏
    2024 年 61 巻 11 号 p. 1069-1074
    発行日: 2024/11/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    慢性疼痛は生物・心理・社会的モデルであらわされる複雑な病態であり,集学的アプローチを主体とした多角的介入が世界的主流となっている.複数の医療専門職が対応することで,red flagを見逃すことなく,包括的介入を進めることが可能となる.われわれの施設では,医療者側の治療方針にずれが生じないよう,医療者間連携を重視したシステム構築を行っている.集学的カンファレンスを主軸として,各専門職の視点から可能な治療を行うとともに,必要に応じたペインマネジメントプログラムの提供を行っている.将来的には,特殊な施設だけで行うのではなく,地域のネットワークをうまく利用した地域密着型の医療形態が望まれる.

教育講座
原著
  • ―重回帰分析と交差妥当性による検討―
    荒尾 雅文, 金森 宏, 鬼塚 俊朗, 野本 達哉, 今村 安秀, 潮見 泰藏
    原稿種別: 原著
    2024 年 61 巻 11 号 p. 1102-1109
    発行日: 2024/11/18
    公開日: 2025/02/10
    [早期公開] 公開日: 2024/11/15
    ジャーナル 認証あり

    目的:本研究の目的は,回復期リハビリテーション病棟に入院するすべての患者に適用可能で,入院初期に評価可能な単純な指標を説明変数とするADLの予測モデルを構築することである.

    方法:対象は当院の回復期リハビリテーション病棟に入院した1,153名の患者であった.入院時のFIMの18の下位項目,性別,年齢,発症からの期間を説明変数とし,退院時の13の運動下位項目を合計して算出したFIM運動スコア合計を目的変数として,ステップワイズ重回帰分析を行った.予測モデルが臨床的に適用可能であることを確認するため,解析対象とは独立した85名の被験者に対し交差妥当性の検証を行った.

    結果:解析群の重回帰分析の結果,R2が0.712と有意な重回帰式が得られた.また,検証群の85名の患者について,退院時の予測FIMと実際のFIMの差を両群間で検定したところ,両群間に有意差はなく,r=0.888(p<0.01)の強い相関が認められた.

    結論:この予測モデルは,目的変数が簡便に取得でき予測式を構築する労力が少ない.本研究の結果から,他の回復期ハビリテーション病棟においても各々のデータを用いて予後予測モデルを構築し,臨床応用することに資する可能性が示唆された.

症例報告
  • 渡邉(阿部) 真理奈, 宮澤 僚, 渡部 喬之, 牧野 美咲, 田代 尚範, 礒 良崇
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 61 巻 11 号 p. 1110-1119
    発行日: 2024/11/18
    公開日: 2025/02/10
    [早期公開] 公開日: 2024/11/15
    ジャーナル 認証あり

    We report the case of a 20-year-old woman with hypertrophic cardiomyopathy and severe brain dysfunction caused by post-resuscitation encephalopathy. Transferred to our hospital's convalescent rehabilitation ward, she aimed to regain independence in daily living and return to college. Upon admission, she was diagnosed with moderate attention impairment and intellectual disability. She underwent a 4-month intensive inpatient rehabilitation program, including occupational therapy (OT). Despite modest improvements in day-to-day activities and brain function by discharge, these were insufficient for her to resume university childcare classes. Further improvement in behavioral control, physical activity management, and exercise tolerance was necessary post-discharge.

    OT is pivotal in supporting patient self-management of day-to-day activities, is included within the cardiac rehabilitation (CR) program covered by health insurance. Thus, we introduced her to the CR program for aerobic exercise training and OT. Counseling for physical activity based on the aerobic threshold was performed at each visit, using a chart to record daily activities and heart rate to prevent overactivity, which could lead to fatal arrhythmia.

    Eventually, she resumed her classes and engaged in childcare training. For patients with brain and heart conditions, a combination of rehabilitation in the convalescent ward and outpatient CR seems to be beneficial for secondary prevention and long-term self-management.

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