The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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61 巻, 12 号
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巻頭言
特集『ドラッグ・ラグ/ロス時代における神経・筋疾患に対するリハビリテーション治療』
  • 中村 治雅
    2024 年 61 巻 12 号 p. 1130-1134
    発行日: 2024/12/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    海外承認されているが本邦では承認されていない未承認薬問題の中で,ドラッグ・ラグのみならずドラッグ・ロスが話題となっている.海外から遅れて承認され国内に届く(ラグ)だけでなく,将来も国内で承認されない(ロス)が起こっている.ドラッグ・ロスの問題は,開発が新興企業中心になっていること,海外中心に開発され国内でその開発に着手されないことである.期待事業価値の低さ,臨床試験環境,薬事制度などが問題とされている.現在,国において問題に対する検討会議と,その解決に向けた創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議からの中間取りまとめが発表され,その工程表に沿って対応が行われている.

  • 佐久嶋 研
    2024 年 61 巻 12 号 p. 1135-1140
    発行日: 2024/12/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)は,患者数が少なく採算性が低いため,開発が進みにくい医薬品である.本邦では1993年に希少疾病用医薬品指定制度が導入され,企業は助成金や税制優遇,優先審査などの支援を受けられるようになり,開発が促進された.しかし,国内開発の遅れや超希少疾患に対する対応不足,ドラッグ・ロスといった課題が存在する.近年,バイオテクノロジーの進展により,新たな治療モダリティが登場しているが,開発コストの増大や薬価高騰が問題となっている.今後は,創薬エコシステムの構築や医療DX・治験DXの活用など,総力的な取り組みが重要である.

  • 芦田 雪, 青木 吉嗣
    2024 年 61 巻 12 号 p. 1141-1147
    発行日: 2024/12/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    希少難治性神経・筋疾患に対する核酸医薬品や遺伝子治療技術などの革新的な治療法が開発・承認され,その有効性ならびに安全性が報告されるようになった.これらの治療法は,これまで対症療法しか行うことのできなかった希少難治性神経・筋疾患を根本的に治療し得る方法として注目され,その開発は現在も世界中でめざましい発展を遂げている.これに伴い,進行する神経・筋症状に対し,限定的にしか行うことのできなかったリハビリテーション治療のあり方についてもアップデートしていく必要がある.本稿では,希少難治性神経・筋疾患に対する核酸医薬品および遺伝子治療技術について,その作用機序ならびに特徴,最新の開発例について概説する.

  • 原 貴敏
    2024 年 61 巻 12 号 p. 1148-1154
    発行日: 2024/12/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    神経筋疾患においては,各種新規治療薬の導入により,これまで進行の予防の観点でのみ行っていたリハビリテーション治療が,機能を向上・改善できる医療を提供できる可能性が出てきた.しかしながら,本邦においては,ドラッグラグ・ロスの影響により身体機能評価のエビデンスや症例数の確保の問題などから,神経筋疾患に対するリハビリテーション治療の発展は十分ではない.実際,多くのエビデンスは海外からの流入に過ぎず,本邦からのエビデンスの発出が不十分である.ドラッグラグ・ロスの解消について,われわれリハビリテーション科もその一助になるように,身体機能評価やリハビリテーション治療のエビデンス確立などを通じて研究に努める必要がある.

  • 松村 剛
    2024 年 61 巻 12 号 p. 1155-1161
    発行日: 2024/12/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    筋ジストロフィーをはじめとする遺伝性筋疾患は,慢性進行性でこれまで根本的な治療手段がなかったが,活動維持や生命予後改善にリハビリテーション医療が果たしてきた役割は大きい.近年,この領域では新規治療薬の開発が盛んになっており,治療効果を評価する鋭敏で精度の高い臨床機能評価の開発が重要になっている.さらに,疾患修飾薬の有効性評価は実臨床でも継続する必要があり,定期的に共通の臨床機能評価を行い自然歴データ・real world dataを蓄積する努力がこれまで以上に重要となる.また,新規治療薬で得られる効果の最大化や,機能予後の変化に合わせて従来のリハビリテーション治療を修正していく工夫も求められる.

  • 石川 悠加
    2024 年 61 巻 12 号 p. 1162-1168
    発行日: 2024/12/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    神経疾患の多くは,これまで治療法がないといわれてきた神経難病である.しかし,近年,脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)では,本疾患の歴史の中で初めてスプライシング修飾や遺伝子治療などの新しい薬物治療により,臨床経過を大幅に変更することが可能になった.未発症での投与も承認され,新生児スクリーニングも都道府県単位で導入が進められている.完全に治癒するまでには至らないが,運動機能だけでなく,嚥下,呼吸においても,発達が改善したり,症状を軽くしたり,進行を緩やかにする.治療薬導入後に修飾された経過は,これまで経験したことがない新たな病型(new phenotype)と呼ばれ,リハビリテーション治療の方法やゴール設定を変更する必要がある.

  • 浅川 孝司
    2024 年 61 巻 12 号 p. 1169-1176
    発行日: 2024/12/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    神経・筋疾患は慢性の進行性疾患である.その病気の進行過程で呼吸機能低下はほぼすべての神経・筋疾患に起こり得るといっても過言ではない.呼吸機能低下は十分な呼吸ができなくなるだけでなく,咳嗽力低下を引き起こし誤嚥,窒息を誘発する.さらに,発声を困難にさせコミュニケーション能力が低下するなど,その影響は多岐にわたる.神経・筋疾患患者への呼吸リハビリテーションでは,換気補助,咳嗽力強化,肺容量リクルートメントの3側面への介入が行われる.本稿では,神経・筋疾患への呼吸リハビリテーションの有用性とそのエビデンスについて自施設での取り組みを交えて提示する.

  • 荻野 美恵子
    2024 年 61 巻 12 号 p. 1177-1183
    発行日: 2024/12/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    世界中で次々に難病に対する新薬が開発され,中には目覚ましい効果がみられる疾患も出てきた.とても喜ばしいことで,日本人だけが使えないということがないように関係者一同努力をし,一日も早く疾患が治癒する時代が到来することを望むばかりである.しかし,現場にいる私たちがしなければならないことは,今できることを最大限に行い,少しでも進行を抑制し,新薬が手に入ったときによい状態でいられるように努力することである.それには医療ケアが重要な意味をもつ.本稿では,筆者の経験をもとに,求められている医療ケアについて解説を試みる.

教育講座
症例報告
  • 桑江 うらら, 土岐 明子, 山中 緑, 相澤 智紀, 山本 福子, 青野 勝成
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 61 巻 12 号 p. 1207-1213
    発行日: 2024/12/18
    公開日: 2025/02/10
    [早期公開] 公開日: 2024/12/17
    ジャーナル 認証あり

    Few case reports have documented patients with respiratory muscle paralysis due to spinal cord infarction or the need for ventilation. Objective:Herein, we report a case of non-invasive positive pressure ventilation (NPPV)-aided respiratory management. Patients:A 46-year-old man experienced sudden breathing difficulty, and, owing to respiratory failure, underwent tracheostomy and mechanical ventilation following tracheal intubation. The patient exhibited complete limb paralysis and was diagnosed with spinal cord infarction. Methods:Ventilator weaning was challenging, and necessitated patient transfer to our hospital. Results:Upon admission, the patient exhibited a forced vital capacity of 250 mL and required complete assistance. The ventilator settings were adjusted to a tidal volume of 20 mL/kg of the ideal body weight and positive end expiratory pressure off. One month post-admission, the patient was transferred for all day respiratory management with NPPV. One year after the onset, the patient's vital capacity improved to 1960 mL. The patient engaged in activities involving changes in body position or transfer training, gait training, and activities of daily living training with NPPV. Following training, the patient could independently propel a wheelchair and walk 40 m using a walker. The patient could also eat, brush his teeth using a self-help device, and independently wipe their face.

    Conclusion:Respiratory dysfunction in this case was a ventilatory impairment resulting from respiratory muscle paralysis. Pulmonary rehabilitation for cervical spinal cord injury facilitates respiratory management with NPPV, improves respiratory condition, and reduces the amount of assistance.

  • 山田 裕子, 松下 睦
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 61 巻 12 号 p. 1214-1219
    発行日: 2024/12/18
    公開日: 2025/02/10
    [早期公開] 公開日: 2024/12/17
    ジャーナル 認証あり

    Glucocorticoid-induced osteoporosis is one of the most common and serious adverse effects of glucocorticoid use. Pharmacological treatment is strongly recommended for patients at a high risk of fracture;however, it is generally avoided during pregnancy. Here, we present the rehabilitation of a pregnant patient with multiple vertebral fractures caused by glucocorticoid-induced osteoporosis. A 27-year-old woman with systemic lupus erythematosus had an unplanned pregnancy and began receiving oral glucocorticoid therapy (15 mg/day). Pharmacological treatment of osteoporosis was not recommended during pregnancy. At 31 weeks of gestation, the patient was admitted to our hospital with severe back pain. Plain X-rays showed multiple vertebral fractures. The patient was diagnosed with glucocorticoid-induced osteoporosis. She required prolonged bed rest until birth because of severe pain and high risk of additional fractures. The therapeutic strategy after delivery was shared with the Departments of Rehabilitation, Obstetrics, and Gynecology, Rheumatology, and Orthopedic Surgery. At 37 weeks of gestation, she gave birth by cesarean section, and teriparatide administration was started immediately. Six days after delivery, computed tomography showed multiple vertebral fractures from Th5 to L5, and L2-L4 bone mineral density was 0.798 g/cm2, which was 67% of the young adult mean. She wore a corset and began a rehabilitation program. Frequent consultations were conducted with an orthopedic surgeon, and the patient carefully proceeded with getting out of bed. She gradually regained the ability to sit, stand, and walk. Sixty-three days after delivery, she could walk with a cane and was discharged from our hospital.

Secondary Publication
  • 松本 健, 吉川 遼, 原田 理沙, 足立 明真, 大西 宏和, 今村 愛生, 髙宮 大輝, 牧浦 大祐, 小槇 公大, 小川 真人, 酒井 ...
    2024 年 61 巻 12 号 p. 1220-1229
    発行日: 2024/12/18
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    背景:長期的なactivities of daily living(ADL)の障害がintensive care unit(ICU)患者において認められるが,どのような因子が影響しているのかはあまりわかっていない.われわれは,身体所見の推移に着目し,退院時のADLに影響を与える因子について検討した.

    方法:2018年4月~2020年10月に当院ICUに入室した成人患者411名を対象とした.身体所見として握力や上腕周囲径,下腿周囲径,大腿四頭筋厚,Barthel Index(BI)をICU入室時,ICU退室時,退院時にそれぞれ測定した.退院時のBIにてhigh ADL群とlow ADL群の2群に分け,傾向スコアマッチングを用いて2群間の比較を行った.

    結果:411名の患者のうち,傾向スコアマッチングを行って114名(65±15歳)を評価した.High ADL群ではICU退室時や退院時にlow ADL群に比べて身体機能が高かった.筋量は低下傾向を認めていたが,その減少率はhigh ADL群ではlow ADL群と比べて軽度だった.下腿周囲径と大腿四頭筋厚からhigh ADL群かlow ADL群かを予測するためのカットオフ値はそれぞれ-7.89%(感度:0.778,特異度:0.556)と-28.1%(感度:0.810,特異度:0.588)であった.

    考察:入院中の下腿周囲径や大腿四頭筋厚の減少率が低い患者の退院時ADLは保たれていた.身体機能の推移を評価することでICU入室患者の退院時ADLを予測できる可能性が示唆された.

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