The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
Online ISSN : 1881-8560
Print ISSN : 1881-3526
ISSN-L : 1881-3526
62 巻, 1 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
巻頭言
特集『リハビリテーション医療における転倒予防』
  • 萩野 浩
    2025 年 62 巻 1 号 p. 4-9
    発行日: 2025/01/18
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり

    地域在住高齢者の年間転倒発生率は10~25%で,施設入所者では在宅高齢者よりも高い.夏季に比較して冬季に転倒率が高い.転倒・転落による死亡数は経年的に増加し,2009年には転倒事故による死亡者数が交通事故による死亡者数を上回った.労働災害に占める転倒事故の割合は全体の27%と最も多い.人種差では日本人は英国白人より転倒率が低い.転倒リスクには身体機能の低下に起因する内的要因,居住環境などに起因する外的要因に加えて,行動要因,社会管理的要因がある.

  • 和田 崇, 尾﨑 まり
    2025 年 62 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2025/01/18
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり

    リハビリテーション医療従事者には,個々の患者の特性を十分に考慮した最適な転倒・骨折予防を実践し,健康寿命の延伸に寄与することが求められる.骨粗鬆症は骨折リスクを高めるだけでなく,それ自体が転倒リスクをも増加させるため,転倒・骨折リスク評価や骨粗鬆症治療としての薬物療法,運動療法の包括的な実施が必要である.加えて,骨折リエゾンサービス(fracture liaison service:FLS),骨粗鬆症リエゾンサービス(osteoporosis liaison service:OLS)の活動への理解を深め,地域での一次骨折予防や,急性期から生活期に至るまでのシームレスな連携による二次骨折予防の実践が期待される.

  • 井上 達朗
    2025 年 62 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2025/01/18
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり

    サルコペニアとフレイルは転倒の強力なリスク因子である.転倒の最重症アウトカムの1つは骨折であり,サルコペニアとフレイルに加え,骨粗鬆症も含めた多面的な診断・評価,リハビリテーション治療が不可欠である.運動療法は転倒を予防する効果はあるものの,転倒による骨折を予防するには十分ではない.ビタミンDやたんぱく質をはじめとする栄養と運動を併用することが,サルコペニアやフレイル,転倒による骨折を予防する上で必要不可欠である.

  • 新井 智之
    2025 年 62 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2025/01/18
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり

    転倒の原因とロコモティブシンドローム(ロコモ)の原因は重複する要因が多いため,ロコモに対する対策が転倒予防にもつながる.ロコモの判定方法やスクリーニングの方法であるロコモ度テストやロコチェックは,転倒予防の評価としても活用できる.特に,「40 cm台からの片脚立ち上がり」は,転倒スクリーニング手段として有用である.また,ロコモ対策として用いられているロコモーショントレーニング(ロコトレ)は,バランス,筋力,歩行などの身体機能の改善に有用であり,転倒リスクを低減する効果がある運動種目である.さらにロコトレは,実施率や継続率も高い運動であるため,中高年の健康増進および転倒予防に有効である.

  • 石井 慎一郎
    2025 年 62 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2025/01/18
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり

    バランス機能は静的バランスと動的バランスに大別される.静的バランスは姿勢保持に対するバランス機能であり,動的バランスは重心移動を伴う動作の中で動的平衡を保つバランス機能である.また,動的バランスには外乱によって動的平衡が崩れた際に身体を安定した状態に戻す機能も含まれる.バランス機能は状況に合わせて必要とされる要素が異なる.本稿ではバランス機能を静的バランス,動的バランス,外乱応答,歩行時のバランスに分類し,それぞれのバイオメカニクスを解説し,トレーニング方法についても紹介する.

  • 牧迫 飛雄馬
    2025 年 62 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2025/01/18
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり

    高齢期での転倒発生には,筋力低下や歩行障害,バランス障害などのほか,認知障害が独立した危険因子となる.軽度認知障害を有する高齢者では転倒リスクが増大し,身体機能の低下が併存するとさらに転倒リスクが顕著となる.そのため,転倒を予防する戦略として運動介入による効果が期待されるが,確立された転倒予防の方法が存在する状況ではない.個々の転倒リスクを考慮したうえでリハビリテーション専門職による管理や指導の下での運動介入に加えて,多職種で連携した生活環境も考慮した包括的な支援が必要となる.また,二重課題下での運動を適切に注意配分しながら遂行するようなプログラムは転倒予防の効果も期待される.

  • 山本 悠太, 松田 直美, 饗場 郁子
    2025 年 62 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2025/01/18
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり

    転倒予防のためには患者の内的要因,行動要因に加えて,患者周辺の物的環境を含む環境要因を主とする外的要因に対する対策が必要である.例えば,生活場面における床面の状態やベッドの高さ,履きもの,照明,手すりやベッド柵,家具の設置状況などが転倒リスクに関与する.これらは静的な配置だけでなく,実際の生活場面を想定した動的な指導も重要で,リハビリテーション医療の中で実践することが求められる.病院内では入院初日から理学療法士・作業療法士が患者の移動能力・運動機能を確認し,適切な環境調整と動作指導を行うこと,また転倒リスクの高い患者の場合は,多職種で患者に合った最適な環境整備を多角的に提案することが重要である.

  • 祖川 倫太郎, 島ノ江 千里
    2025 年 62 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2025/01/18
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり

    転倒のリスク因子は多岐にわたるが,薬物もその1つに含まれており,特に睡眠薬は,転倒リスクを増大させる薬剤として知られている.近年,従来から使用されてきたベンゾジアゼピン系薬に加え,メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬といった新規作用機序を有する睡眠薬が使用されるようになってきた.このような機序を持つ睡眠薬については,転倒リスクが軽減する可能性が示唆されており,リスクに基づく薬剤選択がますます重要になってきている.本稿では,これまでのエビデンスをもとに作用機序別の睡眠薬と転倒の関連性について概説する.

教育講座
原著
  • 山中 雄翔, 米津 亮, 久郷 真人, 澤野 翔一朗, 宮垣 茉梨奈
    2025 年 62 巻 1 号 p. 76-84
    発行日: 2025/01/18
    公開日: 2025/03/18
    [早期公開] 公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり

    目的:近年,脳卒中の死亡率は改善し,早期離床は重度の後遺症を持つ患者に対しても積極的に実施されている.しかし,早期離床の効果に関する先行研究では,対象者の多くの割合を脳卒中軽症例が占めており,疾患の重症度の影響が加味されていない.本研究では,中等症以上の脳卒中患者に限定して,48時間以内の早期離床による不動関連合併症と機能予後について検討した.

    方法:中等症以上の脳梗塞,脳出血患者83例を対象とした.早期離床群と離床遅延群の2群に分け,不動関連合併症(肺炎,尿路感染症,深部静脈血栓症,褥瘡,肺塞栓症)の発生と機能予後(急性期病院退院時のmodified Rankin scale(mRS))に及ぼす影響を後方視的に調査した.

    結果:早期離床群では不動関連合併症のうち肺炎の発症率と急性期退院時mRSの割合が有意に低下した(p<0.01).

    結論:中等症以上の脳卒中患者への早期離床は特に肺炎の予防に寄与し,機能改善も得られる可能性が示唆された.

症例報告
  • 溝部 怜, 佐々木 信幸, 兒島 良恵, 畑中 康志, 西山 駿樹, 大泉 奈々, 溝部 良太
    2025 年 62 巻 1 号 p. 85-91
    発行日: 2025/01/18
    公開日: 2025/03/18
    [早期公開] 公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり

    Objective: Studies have reported that animal-assisted therapy (AAT) intervention can improve patient motivation to complete rehabilitation treatment.

    Methods: AAT was administered four times for a patient whose rehabilitation treatment was hindered by pain and depression following cervical myelopathy surgery. Ward nurses evaluated the patient's behavior and facial expressions before and during each AAT session using our hospital's own Faces Pain Scale. The AAT intervention was timed to coincide with the implementation of training items that were likely to induce pain.

    Results: The patient, who underwent cervical myelopathy surgery and whose rehabilitation treatment was severely hindered, reported significantly improved treatment motivation after the AAT intervention. A significantly better treatment response was obtained immediately after the AAT intervention. The Faces Pain Scale score was the worst prior to starting AAT (at 5). However, it peaked at 1 and remained there from the initial intervention to the fourth and final intervention. These results suggest immediate and lasting effects of AAT.

    Conclusion: Significant changes were observed after the initial AAT intervention, suggesting that its effect was more significant for the awareness of pain and motivation for rehabilitation than for pain relief.

JARM NEWS
新任教授インタビュー
委員会紹介
REPORT
feedback
Top