The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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最新号
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巻頭言
特集『伝統ある物理療法・物理刺激の最新のエビデンス』
  • 松元 秀次
    2025 年 62 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 2025/02/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル 認証あり

    日本には多くの温泉があり,文化的にも古来親しまれてきた.温泉療法は,物理療法としてリハビリテーション医療とのつながりが深い.温泉療法の作用機序や適応症,禁忌症,リスクを知ることで,安心・安全に温泉療法を利用することができる.温泉療法のエビデンスはまだ十分ではないが,神経疾患や心臓疾患,健康増進などへの効果が報告されてきている.また,健康増進目的に温泉型健康増進施設が整備されてきている.温泉療法は,簡便かつ繰り返し利用可能で,満足度が高いことから,上手な温泉療法の活用は,リハビリテーション治療の1つとして,その効果を高める可能性を秘めている.

  • 岩下 佳弘, 前田 曙, 山田 しょう子, 飯山 準一
    2025 年 62 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2025/02/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル 認証あり

    温熱の基礎メカニズムは未だ不明な点も多いが,1997年以降TRPV1をはじめとする温熱感受性TRPチャネルが発見され,全身諸臓器での発現が示されている.我々は浸透圧センサーとしても作用し,尿細管に多く発現するTRPV4を念頭におき研究している.深部体温を1℃,30分/日程度上昇させる反復刺激は,慢性腎臓病(CKD)に対して尿細管障害を軽減し腎保護作用が期待できる.また炎症発生の約6時間前に温熱プレコンディショニングを行うことで,シスプラチン腎症や虚血性腎症で炎症軽減が確認できる.TRPチャネルを入り口とする様々な細胞へのシグナル伝達の詳細を探索することで,温熱を用いた腎臓リハビリテーションの未来が見えてくる.

  • 上條 義一郎, 西山 一成, 藤田 恭久, 西村 行秀
    2025 年 62 巻 2 号 p. 113-121
    発行日: 2025/02/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル 認証あり

    温熱療法は血管拡張による血流増加,血管透過性亢進を生じさせ,寒冷療法は血管収縮を引き起こす.温熱療法は熱ショック蛋白質の発現を増加させ,筋の成長と分化に関与する遺伝子の発現を増やすことが知られ,ヒトにおいて筋加温は筋力トレーニングによる筋肉量改善効果を促進させ,痙縮や疼痛を改善させる.寒冷療法は急性炎症を抑え,鎮痛効果があり,褥瘡治療や,手冷浴は熱中症予防対策にもなる.しかし,局所冷却直後には運動機能は低下する.局所温熱・寒冷療法は,実施目的を明確にし,それらの副作用を理解し適切な管理を行い,運動療法と併用されれば,高齢者,患者の体力や日常生活動作改善,アスリートやパラアスリートの競技力向上に貢献できる.

  • 河村 健太郎
    2025 年 62 巻 2 号 p. 122-130
    発行日: 2025/02/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル 認証あり

    振動刺激は脳卒中や脊髄損傷など中枢神経疾患患者の種々の機能障害に対して積極的に活用できる.筆者の講座では,痙縮筋への直接振動刺激により痙縮を軽減させる治療法(振動刺激痙縮抑制法)を開発し,その神経生理学的メカニズムの探究や効果の検証,治療法の普及に注力してきた.さらに,振動刺激がもたらす緊張性振動反射を利用した随意運動の誘導や促通を,機能的振動刺激法や訓練ロボットとの併用に応用してきた.加えて,振動刺激は感覚障害や半側空間無視の治療にも寄与する可能性が示されている.振動刺激は安全かつ簡便に利用できる治療法として,促通反復療法など質と量を確保した訓練と併用することで幅広い活用と効果が期待される.

  • 岡本 隆嗣, 渡邊 匠, 上森 奨悟
    2025 年 62 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 2025/02/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル 認証あり

    痙縮は上位運動ニューロン症候群の1つであり,筋緊張の速度依存性増加を特徴とする.そのメカニズムは複雑で未解明な点が多いが,反射などの神経要素と,筋や結合組織を含めた非神経要素に分けると考えやすい.体外衝撃波療法(ESWT)の臨床応用は,尿路結石や運動器疾患の治療から始まり,2000年以降,痙縮治療にも有効性が示されている.ESWTには集束型(FSW)と拡散型(RPW)の2種類があり,いずれも痙縮軽減効果が同等に示されている.RPWは侵襲性が低く,安全性が高いため,臨床で使いやすい.ESWTは筋自体の粘弾性を変化させるなどのいくつかの作用機序が示されており,照射方法や条件設定については今後さらなる研究が期待される.

  • 外山 慶一
    2025 年 62 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 2025/02/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル 認証あり

    摂食嚥下リハビリテーション分野において用いられる電気刺激療法は,頚部への神経筋電気刺激療法や経皮的電気神経刺激療法が使用されてきた.神経筋電気刺激療法は舌骨上筋群の筋力低下や,舌骨・喉頭運動範囲制限,喉頭閉鎖不全,食道入口部開大時間の短縮,舌根後退運動の低下,咽頭収縮の低下を原因とする嚥下障害が対象となり,舌骨上筋群や甲状舌骨筋の筋力増強や神経筋再教育を目的に実施される.本稿では,神経筋電気刺激療法のエビデンスや禁忌事項,使用機器の種類や刺激条件を紹介したうえで,臨床で効果的に活用する具体的な方法とポイントにも触れ,今後の展望と課題を解説する.

  • 西 祐樹
    2025 年 62 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 2025/02/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル 認証あり

    経皮的電気神経刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation:TENS)は疼痛や異常感覚の軽減を目的とした物理療法であり,副作用の少なさから鎮痛薬の代替治療としても期待されている.TENSの効果機序は主にゲートコントロール理論,内因性オピオイドの放出,下行性疼痛抑制系により説明され,TENSのパラメーターにより適応が異なる.一方,これら従来のTENSや他のリハビリテーション治療ではしびれ感に対して奏功しない.そのため,筆者はしびれ感に対する新規のTENSを開発し,その効果を検証している.本稿では,TENSの機序や適応について概説する.

  • 粕谷 大智
    2025 年 62 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 2025/02/18
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル 認証あり

    リハビリテーション医療において鍼灸は,以前からリハビリテーション治療を円滑に遂行するため,または鎮痛や痙縮予防として行われてきた.この鎮痛に関しては,頭部や末梢部の経穴に施術を行うことで,下行性疼痛抑制系の賦活化により,β–エンドルフィンやセロトニンの分泌促進作用を高め,痛みを抑制するシステムの正常化が期待される.さらに患側のみでなく健側への治療を行うことで,高位中枢への反応が起こりやすいことが研究で裏付けられている.また,嚥下機能向上に重要な感覚入力(上咽頭神経刺激)や顔面部の三叉神経や顔面神経への刺激,不良姿勢の改善(肩甲舌骨筋や後頭下筋群刺激)を目的とした鍼灸治療により,嚥下機能の向上や唾液分泌亢進も期待できる.

教育講座
原著
  • 鈴木 良枝, 清水 美帆, 加藤 佑基, 百崎 良
    2025 年 62 巻 2 号 p. 182-188
    発行日: 2025/02/18
    公開日: 2025/04/18
    [早期公開] 公開日: 2025/02/17
    ジャーナル 認証あり

    はじめに:脊椎圧迫骨折患者では,疼痛や安静臥床に伴う不活動により筋力低下などを引き起こしやすく,身体機能や日常生活動作(activities of daily living:ADL)を低下させる可能性が高い.今回,脊椎圧迫骨折患者において,リハビリテーション治療提供量が機能予後に与える影響を検討した.

    方法:JMDCの多施設データを用い,65歳以上の脊椎圧迫骨折患者18,174例を対象とした.入院中のリハビリテーション治療提供量が1日平均1単位以上であった患者群(高提供群)と,1日平均1単位未満(低提供群)との間で,Barthel index(BI)利得,BI効率,退院時ADL自立(BI≧95),自宅退院を比較した.

    結果:高提供群は4,145例,低提供群は14,029例であった.高提供群ではBI利得,BI効率が高く,退院時ADL自立割合(41.6%),自宅退院割合(79.1%)も高かった.また,重回帰分析において,高提供群ではBI利得が高く(回帰係数:2.423),BI効率も高かった(回帰係数:0.043).多重ロジスティック回帰分析では高提供群では,自宅退院割合が高く(オッズ比:1.26),退院時ADL自立割合が高かった(オッズ比1.17).

    結語:脊椎圧迫骨折患者において,リハビリテーション治療提供量が機能予後に影響を与えている可能性がある.

  • 鈴木 翔太, 高良 光, 佐藤 周平, 安部 陽子, 宮里 将平, 濱田 麻由, 石川 由樹, 皆方 伸, 守屋 正道, 大林 茂
    2025 年 62 巻 2 号 p. 189-200
    発行日: 2025/02/18
    公開日: 2025/04/18
    [早期公開] 公開日: 2025/02/17
    ジャーナル 認証あり

    目的:予後不良とされる高齢者や重症例の急性期くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)に対する早期離床が歩行再獲得の要因となるかを明らかにする.

    方法:研究デザインは多施設共同による後ろ向き観察研究とした.対象はSAHと診断され,リハビリテーション治療が実施された471例(Group 1)である.さらにGroup 1のうち65歳以上の高齢者(Group 2)とWorld Federation of Neurological Societies(WFNS)グレードⅣまたはⅤの重症例(Group 3)に対象を分けた.主な調査項目は年齢,性別,破裂動脈瘤部位,modified Fisher scale,WFNSグレード,破裂動脈瘤に対する治療法,脳脊髄液ドレーンの留置日数,人工呼吸器の装着日数,脳内出血,症候性脳血管攣縮,肺炎や深部静脈血栓症などの合併症,シャント術,離床開始までの日数,発症後30日以内の歩行再獲得状況とした.統計解析は,すべてのGroupで歩行再獲得状況を回復群と未回復群の2群に分けてその他の調査項目の群間比較を行った.さらにすべてのGroupにおいて従属変数を発症後30日以内の歩行再獲得状況,独立変数をその他の項目として多重ロジスティック回帰分析を行った.

    結果:すべてのGroupに共通して早期離床は歩行再獲得の独立した因子であった.さらに前方循環系の破裂動脈瘤,合併症およびシャント術の有無はすべてのGroupに共通して歩行再獲得の独立した因子であった.

    結論:高齢者や重症例においても急性期SAHに対する早期離床は,発症後30日以内の歩行再獲得の要因になることが示唆された.

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