The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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最新号
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巻頭言
特集『失語症のリハビリテーション医療と先端的取り組み』
  • 佐藤 睦子
    2025 年 62 巻 4 号 p. 313-319
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/06/18
    ジャーナル 認証あり

    大脳言語野が損傷されると,それまで問題なく機能していた言語能力がさまざまな程度に損なわれて失語症が生じる.言語症状は口頭言語のみならず文字言語にも及ぶ.古典的には表出系言語障害を示し言語理解が比較的保たれるBroca失語や,流暢な発語ながら聴覚的言語理解障害を示すWernicke失語などに分類される.しかし,失語症は単一の症状ではなく言語症状の集合体としての症候群であるため,古典的分類に当てはめにくく分類不能とせざるを得ない場合もある.本稿では,古典的失語症分類について述べた上で,実臨床で遭遇する失語性言語症状ならびにその評価法や対応について概説する.

  • 春原 則子
    2025 年 62 巻 4 号 p. 320-325
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/06/18
    ジャーナル 認証あり

    失語症臨床は,失語症のある人と家族など周囲の人たちがその人らしく生きていけるように支援することを目標とする.そのためには,医学リハビリテーションと社会リハビリテーション双方の視点が必要である.とはいえ,代償手段が限定的な失語症においては,言語機能の改善は非常に重要であり,様々なセラピー手法や評価法の開発,研究,実践が進められている.本稿では伝統的に用いられている手法と,近年注目されているセラピーのいくつかを紹介する.良質な言語聴覚療法提供のためには,さらなる治験の積み重ねとともに,個々人が自身のセラピーを批判的に振り返り,必要に応じて新たな知見を取り入れていくことも重要である.

  • 内山 侑紀, 栄元 一記, 道免 和久
    2025 年 62 巻 4 号 p. 326-332
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/06/18
    ジャーナル 認証あり

    CIAT(constraint-induced aphasia therapy)は,CI療法(constraint-induced movement therapy)の理論を失語症患者の言語聴覚療法に応用した治療法である.失語症患者のコミュニケーション手段の変容を学習性不使用の概念から説明し,発話以外の代替手段の使用を制限し短期集中訓練を実施する.さらに日常生活への汎化を目的とした行動療法(transfer package)を併用することで日常生活での発話が促され,さらに発話が強化されることが証明されている.CIAT発展の背景や近年のエビデンスを概説し,当院の実際のCIATプログラムを提示する.

  • 羽田 拓也
    2025 年 62 巻 4 号 p. 333-338
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/06/18
    ジャーナル 認証あり

    失語症のリハビリテーション治療の確立は重要な課題である.近年になり,反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)と集中的な言語訓練の併用は,失語症の改善に有効であるとする研究結果が国内外から報告されている.rTMSは脳の可塑性を高め,機能的再構築を促進するが,その効果は一時的であり,持続的な効果を得るためには言語訓練との併用が不可欠である.機能的MRIは言語機能に関連する賦活部位を特定することができ,これに基づきrTMSの刺激部位や頻度を決定することが重要となる.rTMSによる治療は,失語症患者の社会復帰の一助となる可能性が高く,今後のさらなる研究と臨床応用が期待される.

  • 大橋 良浩, 行田 智哉
    2025 年 62 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/06/18
    ジャーナル 認証あり

    脳卒中後の失語症への経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は,リハビリテーション治療(speech and language therapy:SLT)と併用することで,tDCS単独使用よりも効果が高く,持続性があることが特に慢性期の介入で確認されている.しかし,失語症は損傷される脳領域と出現する言語症状が多様であるため,刺激効果の個人差という課題がある.本稿では,その主要因を①失語症タイプ,②刺激脳領域,③刺激前後の言語評価に分けて考察し,①と③の失語症評価に関わる項目には神経心理学的視点が重要であり,②の刺激脳領域の特定にはfMRIなどの認知神経科学的手法が最も有効であると考えた.

  • 島 淳
    2025 年 62 巻 4 号 p. 345-352
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/06/18
    ジャーナル 認証あり

    失語症はコミュニケーションへ大きな影響を及ぼすことから,機能回復や機能維持につながる手法の検討は重要な課題である.経頭蓋交流電気刺激(transcranial alternating current stimulation:tACS)は外部からの律動的な脳刺激を加えることで脳内部におけるネットワークの変化を生じうる刺激法として考案されている.失語症においても領域間のネットワークの異常が示唆されており,症状に関連した周波数帯域および失語症に関連した脳領域を考慮したtACSによる治療可能性が期待される.

  • 小金丸 聡子
    2025 年 62 巻 4 号 p. 353-361
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/06/18
    ジャーナル 認証あり

    ブレイン・マシーン・インターフェイス(BMI)は,脳と機械をつなぎ,脳活動により外部デバイスを制御する技術である.BMIにより,患者の機能に関わる脳活動がリアルタイムでフィードバックされ,コンピュータや機械が適切に作動することが報酬となって,患者は当該脳活動の増強(もしくは抑制)方法を学習する.近年,事象関連電位P300を用いたBMIにより失語症の回復が報告されている.特に単語識別課題における聴覚P300を用いた失語症BMIの有用性が示されている.しかしながら介入前後の比較しかなく,対照群を設定したRCTによる検証が今後必要と考えられる.また発話機能代替BMIとして失語症への応用が期待される言語再生神経補綴についても概説する.

  • 多田 紀子, 大塚 佳代子
    2025 年 62 巻 4 号 p. 362-367
    発行日: 2025/04/18
    公開日: 2025/06/18
    ジャーナル 認証あり

    失語症は長期にわたり改善がみられるとされるが,現行の医療,介護,福祉制度では言語機能のリハビリテーションの継続が難しい.そこで,欧米で有効性が示されている失語症者に対するオンラインを利用した遠隔リハビリテーション(以下,遠隔言語リハビリテーション)を参照し,我々が2019年に行った研究結果をもとに改変を加えて,音声言語発話を主体とした遠隔言語リハビリテーションプログラムを作成した.今回,そのプログラムを失語症者105名に対して実施し,藤田らによる会話能力の評価を用いて評価した.結果は,中等度の失語症者では改善が見られた.重度では維持〜やや改善,軽度では新たな評価指標の必要性が考えられた.遠隔言語リハビリテーションは,ITリテラシーやWi-Fi環境,オンラインで完結できる評価法がないなど,課題はあるが,居住区を問わず実施できる利便性と継続のしやすさなどの利点がある.特に,就労をしている失語症者の支援に活用できると考える.

教育講座
原著
  • 小原 健輔, 羽田 拓也, 山田 実李, 向當 由奈, 中山 恭秀, 安保 雅博
    2025 年 62 巻 4 号 p. 388-402
    発行日: 2025/04/17
    公開日: 2025/06/18
    [早期公開] 公開日: 2025/04/17
    ジャーナル 認証あり

    目的:近年,失語症に対して反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)が応用され,良好な結果が報告されている.本邦ではアウトカムとして標準失語症検査(SLTA)が使用されているが,各課題の難易度が異なることが問題点であるため,rTMSの効果をより詳細に示すためにはSLTAスコアに重みづけのある値を用いる必要がある.本研究の目的は高頻度rTMSの部位別効果について,SLTA細項目の偏差スコアを用いて検討することである.

    方法:2017年から2021年に高頻度rTMSを施行した31例[58.0(10.1)歳,脳梗塞15名,脳出血16名]を対象とした.脳卒中発症後の期間は41.1(31.1)カ月であった[平均(標準偏差)].プロトコールとして,入院前に磁気共鳴機能画像(fMRI)を施行し,言語賦活部位およびrTMS刺激部位を決定し2週間の入院治療を行った.入院治療では高頻度rTMSと言語聴覚療法を日曜日を除く連日実施した.統計解析として入院時,退院3カ月後で得られたSLTA細項目の結果を偏差スコアに変換し,rTMS刺激部位に応じて前頭葉,側頭葉,左右半球の4群に群分けし前後比較を行った.

    結果:高頻度rTMS刺激部位は右前頭葉6例,左前頭葉10例,右側頭葉5例,左側頭葉10例であった.前後比較の結果,全ての群において全項目平均,発話項目に有意な向上を認めた.また,右半球刺激群,左前頭葉刺激群において聴覚的理解項目で有意な向上を認めた.

    結論:本結果より,高頻度rTMSによって刺激部位に関わらず言語機能に効果が得られること,また,右半球,左前頭葉刺激では,聴覚的理解がより改善する可能性が推察された.

  • 氷見 量, 石川 徹也, 杉山 貴哉, 三宅 秀俊, 渡辺 知真
    2025 年 62 巻 4 号 p. 403-413
    発行日: 2025/04/17
    公開日: 2025/06/18
    [早期公開] 公開日: 2025/04/17
    ジャーナル 認証あり

    目的:新鮮腰椎分離症症例の体幹柔軟性と体幹筋力のリハビリテーション治療導入前後の経過を明らかにすること.

    対象と方法:2019年9月から2022年12月までにMRIのSTIRで新鮮腰椎分離症と診断された158例を対象とした.体幹硬性装具装着後,リハビリテーション治療を実施した.体幹柔軟性評価としてposterior lumbar flexibility test(PLFt),lumbar locked rotation test(LLRt),finger floor distance test(FFDt)を実施した.PLFtは陽性率を,LLRt,FFDtは中央値(四分位範囲)を算出し,初回評価時と骨癒合判定時(判定時)を比較した.体幹筋力評価としてKraus-Weber test(KWt),Sahrmann core stability test(SCSt)を実施した.両テストとも中央値(四分位範囲)を算出し,初回時と判定時を比較した.統計処理はχ2検定とWilcoxonの符号順位検定を用い,有意水準は5%とした.

    結果:PLFtの陽性率は初回時68%,判定時9%であった.LLRtは初回時で右60.0°(51.3–70.0),左60.0°(50.0–70.0),判定時で右70.0°(65.0–80.0),左70.0°(60.0–80.0)であった.FFDtは初回時4.0 cm(15.0–-2.8),判定時-5.0 cm(0.5–-1.0)であった.各柔軟性評価は初回時と比較し判定時に有意に改善していた(p<0.01).KWt は初回時9.0点(7.0–10.0),判定時9.5点(8.0–10.0)であった.SCStは初回時Level 1.0(0.5–1.0),判定時Level 2.0(1.0–2.0)であった.両筋力評価とも初回時と比較し判定時に有意に改善していた(p<0.01).

    結論:腰椎分離症患者は体幹の柔軟性低下,筋力低下を有している例が多かった.リハビリテーション治療により判定時には体幹柔軟性,体幹筋力とも有意に改善していた.

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