The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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巻頭言
特集『リハビリテーション医療における歩行評価up to date』
  • 伊藤 惇亮, 川上 途行
    2026 年63 巻6 号 p. 533-537
    発行日: 2026/06/18
    公開日: 2026/08/17
    ジャーナル 認証あり

    臨床現場で歩行パターン(歩容)を評価するには,簡便かつ低コストに実施可能な観察的歩行分析が依然として有用である.重要な所見の見落としを防ぎ適切に評価するためには既存尺度の活用が推奨され,特に脳卒中患者においては採点項目の同質性,網羅性,客観性に優れるGait Assessment and Intervention Tool(G.A.I.T.)が最適とされている.治療効果の判定にあたっては,臨床的に意義のある最小変化量(MCID)を踏まえた解釈が不可欠である.一方で,観察による関節角度などの推定は誤差が生じやすいため,評価手順の標準化や動画の活用など,正確性を可能な限り高める工夫が求められる.

  • 森 公彦, 間野 直人, 長谷 公隆
    2026 年63 巻6 号 p. 538-544
    発行日: 2026/06/18
    公開日: 2026/08/17
    ジャーナル 認証あり

    歩行能力はリハビリテーション医療における重要な臨床指標であり,その定量評価は適切な治療戦略の立案に不可欠である.三次元動作解析は関節角度,関節モーメント,床反力などを高精度に計測し,歩行制御機構を客観的に評価できる.近年では歩行指標を構成要素に分解し,それらの相互関係を可視化することで,歩行障害の力学的機序や治療による歩行変化のメカニズムを臨床的に理解することが可能となっている.さらに,機械学習を用いて高次元歩行データを統合的に解析することにより,歩行制御戦略に基づく歩行パターンの類型化と臨床応用が進展している.本稿では三次元動作解析と機械学習による歩行評価の臨床的意義について概説する.

  • 向野 雅彦
    2026 年63 巻6 号 p. 545-549
    発行日: 2026/06/18
    公開日: 2026/08/17
    ジャーナル 認証あり

    歩行は日常生活活動(ADL)の根幹を成す要素であり,予後予測や介入効果の判定においても極めて重要である.近年の人工知能(AI)技術の進展に伴い,マーカーレスでの動作分析システムが開発され,歩行分析への応用が期待されている.これまでの報告によると,高精度なマーカーレスシステムは時間距離因子や矢状面の関節角度において高い精度を実現しているが,一方で骨盤・体幹の回旋,あるいは補助具の使用や身体変形を伴う症例では誤差が生じやすい傾向にある.加えて,簡便なシステムは学習モデルに依存するため,測定環境や疾患特異性に対する妥当性の検証が不可欠である.

  • 名倉 武雄, 岩間 友, 原藤 健吾
    2026 年63 巻6 号 p. 550-555
    発行日: 2026/06/18
    公開日: 2026/08/17
    ジャーナル 認証あり

    ウェアラブルセンサーを用いて歩行解析を行うデバイスが臨床応用されている.我々は脛骨粗面に単一の加速度センサーを装着し,深層学習アルゴリズムにより歩行速度・立脚時間・膝内反モーメントを計測するシステムを開発し,臨床応用している.膝内反モーメントは変形性膝関節症のDigital Biomarkerと考えられ,本疾患の病態・予後を反映するとされる.これまでモーションキャプチャを必要とした歩行解析が外来・病棟などのわずかなスペースで簡易に行え,実臨床における患者の動的評価が行えるようになった.ウェアラブルシステムを用いて多施設における歩行のビッグデータを蓄積することで,変形性膝関節症の新たな病態解明や治療法評価が期待される.

  • 金子 文成
    2026 年63 巻6 号 p. 556-565
    発行日: 2026/06/18
    公開日: 2026/08/17
    ジャーナル 認証あり

    脳卒中後の歩行機能の回復は社会参加を支える重要な目標であり,歩行評価は治療方針や予後予測において重要な役割を担う.従来,歩行自立度や歩行速度などの量的指標が臨床評価の中心であったが,これらのみでは歩行の質的特徴や実生活環境での特性を十分に反映できない場合がある.近年ではInternational Classification of Functioning, Disability and Healthの枠組みに基づき,歩行様式や地域社会での歩行能力を含めた多面的評価が重要視されている.さらに,解析技術の発展により,歩行の運動学的特徴や実生活下での歩行特性を客観的に評価することが可能となりつつある.本稿では,脳卒中における基本的な歩行評価を整理し,近年の評価概念の拡張およびデジタル技術を用いた歩行評価の現状について概説する.

  • 堀内 博志, 池上 章太
    2026 年63 巻6 号 p. 566-572
    発行日: 2026/06/18
    公開日: 2026/08/17
    ジャーナル 認証あり

    歩行機能の維持はリハビリテーション医療の重要課題であり,その低下は生活の質や生命予後を左右する.従来の評価法では,歩行の質的変化や代償戦略を把握するには限界があった.近年,テクノロジーの進歩により臨床現場での客観的定量化が進んでいる.マーカーレス動画解析は,通常のカメラ映像から深層学習を用いて関節位置を抽出し,関節角度などを簡便に算出できる.一方,ウェアラブルセンサーは加速度や角速度を計測し,動的可動域や歩行対称性の質的評価,さらには日常生活下での連続的評価を可能にする.これらの技術は,変形性膝関節症や脊椎疾患などの歩行解析に活用されており,今後は個別化された治療戦略の決定基盤となることが期待される.

  • 岡田 洋平
    2026 年63 巻6 号 p. 573-578
    発行日: 2026/06/18
    公開日: 2026/08/17
    ジャーナル 認証あり

    パーキンソン病(PD)における歩行障害は,疾患早期から出現し,進行に伴い日常生活動作に大きな影響を及ぼす.本稿では,評価の前提となるPDの歩行障害の特性について概説した上で,スタンダードな歩行評価の視点を整理した.さらに,すくみ足の定義に関する近年の変更点や,日常生活場面におけるウェアラブルセンサーを用いた歩行・すくみ足評価についても概説した.PDの歩行障害を捉える評価について,臨床観察と研究的知見の双方に基づいて体系的に整理し,診断およびリハビリテーション治療の効果検証へと橋渡しする実践的視点を提示する.

  • 牧迫 飛雄馬
    2026 年63 巻6 号 p. 579-584
    発行日: 2026/06/18
    公開日: 2026/08/17
    ジャーナル 認証あり

    高齢期における歩行評価はフレイルやサルコペニアのリスクを把握するうえで重要な評価として位置づけられている.なかでも歩行速度の低下は,フレイルの判定に利用される基準における項目のひとつに含まれており,通常歩行速度が1.0 m/秒未満であれば,歩行速度の低下に該当すると判断される.一方,サルコペニアに関しては2025年に発表されたアジアの基準において,歩行速度の低下はサルコペニアの判定には含めず,重要なアウトカム指標のひとつとされている.歩行評価は,地域での介入や臨床での治療効果を判定するうえでも有益となり得るが,歩行評価によって得られる指標の特性を考慮して解釈する必要がある.

教育講座
原著
  • 徳永 誠, 三宮 克彦
    2026 年63 巻6 号 p. 605-612
    発行日: 2026/06/18
    公開日: 2026/08/17
    [早期公開] 公開日: 2026/05/07
    ジャーナル 認証あり

    目的:重回帰分析の独立変数は連続変数である必要があるが,functional independence measure(FIM)小項目は段階数の少ない順序尺度である.独立変数にFIM小項目を用いた場合と入院時運動FIMおよび認知FIMを用いた場合の予測精度の違いは明らかでない.本研究は,回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者を対象に退院時運動FIMを従属変数とした重回帰分析を行い,2つの方法の予測精度の違いを明らかにすることを目的とした.

    方法:熊本機能病院の回復期リハビリテーション病棟を退院した脳卒中患者742例を対象とした.退院時運動FIMを従属変数とし,年齢,発症から入院までの日数,入院日数,入院時運動FIM,認知FIMを独立変数とした重回帰分析をA予測とした.入院時運動FIM,認知FIMの代わりにFIMの18小項目を用いた変数選択重回帰分析をB予測とした.A予測およびB予測における残差(実測値-予測値)の絶対値を算出し,Wilcoxon符号付順位和検定にて比較した.

    結果:残差絶対値は,A予測で9.2±7.1(中央値7.9),B予測で8.4±6.9(中央値6.7)であり,B予測の方が有意に小さかった.

    結論:FIM小項目を用いた変数選択重回帰分析は,入院時運動FIMと認知FIMを用いた重回帰分析よりも高い予測精度を示した.FIM小項目は,重回帰分析において有用である可能性があるが,段階数の少ない順序尺度であることを認識すべきである.

  • 後藤 有香, 真野 浩志, 北村 憲一
    2026 年63 巻6 号 p. 613-625
    発行日: 2026/06/18
    公開日: 2026/08/17
    [早期公開] 公開日: 2026/05/07
    ジャーナル 認証あり

    目的:遠城寺式乳幼児分析的発達検査法は,0か月から4歳7か月の乳幼児の発達を包括的に評価する検査法で,簡便で短時間に,運動,社会性,言語領域の発達を評価することが可能である.本研究は,小児専門病院である静岡県立こども病院にてリハビリテーション治療を行っている児の,遠城寺式乳幼児分析的発達検査法における特徴を明らかにすることを目的とした.

    方法:2022年12月〜2024年11月に実施した遠城寺式乳幼児分析的発達検査法の結果を解析した.383人の児,延べ1,067件を解析対象とした.

    結果:全対象者,また超低出生体重児,ダウン症候群児,神経発達症児では,暦年齢・修正年齢とも総合得点および全ての領域・領野において発達指数の低下が認められた.極低出生体重児では,暦年齢で総合得点および全ての領域・領野において発達指数の低下が認められるものの,修正年齢では発達指数の低下は明らかではなかった.ダウン症候群児,神経発達症児では,特に言語領域の発達の遅れが顕著であった.

    結論:個々の児の発達の状況,および今回明らかになった疾患・病態別による発達の傾向を考慮しながら,適切なリハビリテーション医療を立案・実施していくことが今後の課題である.

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