日本腎臓リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2436-8253
Print ISSN : 2436-8180
最新号
透析患者の足病変と腎臓リハビリテーション
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 松井 瑞子
    2024 年 3 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル 認証あり
    透析患者における足病変の治療は,循環・感染・靴/ 装具などの多くの問題が関与し,単科で 解決がつくものではない。形成外科としては,創傷がなるべく治癒の方向に向かうように,創傷 周囲の皮膚も含めた治療を行うことが重要である。2019 年に専門家国際諮問委員会で,その概 念について言及されたWound Hygiene(創傷衛生)のコンセプトを十分に理解し行うことが必 要である。また,多くの患者を診るにあたり,誰か一人のとてもやる気のある担当者に頼り切る のではなく,透析患者にかかわる全ての職種の人が,足を実際にみるということを当たり前に行 い,創があれば悪化させない方法を選択できるようにすることが一番重要だと考えている。これ らができれば,最高の治療である『完璧な予防』が可能となるからである。これからは,足病変 対策は予防がメインにならなくてはならないし,そのためにはチーム医療が非常に重要となる。
  • 愛甲 美穂, 日髙 寿美
    2024 年 3 巻 1 号 p. 12-23
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル 認証あり
    透析患者のフットケアは,下肢末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)の重症化予 防という点から2016 年の診療報酬改定より下肢末梢動脈疾患指導管理加算が開始され,臨床の 場では,血流評価を中心としたフットケアが提供されている。PAD 予防を目的としたフットケ アは透析看護師により実施され,その重要性や意義などについても明らかとなっている。その一 方で,爪や皮膚の異常による筋力低下やバランス変化など,運動機能に影響する介護予防を目的 とした透析患者のフットケアについては検討が不足している。 日本フットケア・足病医学会では,2022 年重症化予防のための足診療ガイドラインにおいて フットケアの用語や定義を提言している。本稿では,PAD と足部皮膚の側面から透析患者にお けるフットケアの実践を報告する。
  • 榊 聡子
    2024 年 3 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル 認証あり
    起立・歩行に影響する下肢・足の形態的,機能的障害(循環障害,神経障害)や感染とそれに 付随する足病変に加え,日常生活を脅かす非健康的な管理されていない下肢・足を足病と定義し ている。透析患者は糖尿病や動脈硬化の影響により,下肢動脈疾患や糖尿病性足病変が重篤化 しやすい。そして,下肢動脈虚血だけではなく,創の大きさ,深さ,部位,感染合併の有無など 多様であり,切断のリスクのある足病を包括的に捉える概念として,包括的高度慢性下肢虚血 (chronic limb-threatening ischemia:CLTI)が提唱されており,今回はCLTI を中心に話を進 めていく。透析患者のCLTI は,フレイルを呈しやすく機能的予後や生命予後が不良である。加 えて,動脈硬化による血流障害などの影響で創傷悪化リスクもある。よって創傷発生予防のかか わりや,創傷治療中における身体機能維持に対するリハビリテーションの役割は大きい。創傷予 防から創傷治療期における運動療法について解説していく。
  • 石川 祐一
    2024 年 3 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル 認証あり
    慢性腎臓病患者は心血管病のリスクが高くなるといわれており,透析導入時の末梢動脈疾患合 併率は18~25%ともいわれている。透析患者の足病変は栄養との関連が深くカルシウム,リン などの電解質の異常による石灰化が動脈硬化を助長する。また動脈硬化や血管石灰化,創傷治癒 に関連する栄養関連の因子として葉酸,ビタミンD やビタミンK,アルギニンなどが知られて いる。また低栄養もリスクの一つといわれていることから,早期からチーム医療の一員として管 理栄養士が介入し,低栄養を発見することが重要である。栄養評価法は複数の方法が紹介されて いるがそれぞれに一長一短があることから画一的なものはなく,その施設に応じ柔軟に使用すべ きである。末梢動脈疾患患者の低栄養や代謝異常に対する介入が重症化予防や予後改善につなが るよう,今後の研究成果に期待したい。
  • 小岩 文彦, 大宮 信哉, 河嶋 英里
    2024 年 3 巻 1 号 p. 42-52
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル 認証あり
    腎不全の進行に伴って増加する骨折リスクは維持透析患者では骨密度の低下,尿毒症や副甲 状腺機能亢進症の合併により一般人口の5 ~ 6 倍と高い。近年では慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に関連する骨・ミネラル代謝異常(mineral & bone disorder:MBD)に骨粗鬆 症を併せ持った病態としてCKD-MBD/ 骨粗鬆症ともよばれる。骨粗鬆症の評価は二重エネル ギーX 線吸収(dual-energy X-ray absorptiometry:DXA)法による骨密度測定,骨代謝マー カーによる骨代謝状態の把握が重要である。治療は生活習慣の見直しや運動などの非薬物療法と 薬物療法がある。透析患者を対象とした薬剤は開発されていないため,骨密度の上昇によって 骨折リスクを低下させる骨粗鬆症治療薬を用いる。大きく骨吸収抑制薬と骨形成促進薬に大別 され,閉経後骨粗鬆症に有効なビスホスホネートは,長期の骨組織への蓄積から透析患者では禁 忌,あるいは慎重投与に指定されている。骨吸収の亢進を認める場合はデノスマブが有効である が,低カルシウム(Ca)血症に注意が必要である。骨形成促進薬であるロモソズマブは骨吸収 抑制効果も併せもち,透析患者での有効性や安全性が徐々に報告されている。
  • 祖父江 理
    2024 年 3 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/08/10
    ジャーナル 認証あり
    腎移植患者における腎臓リハビリテーションは腎移植後のフレイル・サルコペニア予防を介し て,運動耐容能の維持・quality of life (QOL)の改善,ひいては長期にわたる移植腎機能保持・ 生活習慣病の予防を介した心臓血管病予防・社会復帰を目的とする。腎移植の身体活動,社会活 動における優位性より,腎代替療法を要する末期腎不全患者にとっては,腎移植医療そのものが 究極の腎臓リハビリテーションであるといえる。 腎移植後レシピエントにおけるリハビリテーションは,周術期の筋力を落とさないリハビリ テーションと維持期の筋力を維持するリハビリテーションに大別される。前者は理学療法士のガ イド下にて,後者は移植コーディネーターを含む多職種連携による非ガイド下にて実施されるこ とが多い。今後は腎移植後レシピエントにおける腎臓リハビリテーションの標準化と,エビデン ス創出のための研究実施が望まれる。
  • 水田 早智子, 内田 一彰, 中村 純也, 円丁 春陽, 芝野 航大, 野口 敦司, 松本 昭英, 秋末 敏宏, 小野 玲
    2024 年 3 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/08/10
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    研究背景:疲労感は身体活動を妨げる要因であるが,透析日と非透析日で変動があるため個別 に調査する必要がある。 目的:透析日および非透析日の疲労感と非透析日の身体活動量との関連を調査すること。 方法:外来血液透析患者30 人を対象とした横断研究である。非透析日の身体活動量は活動量 計を用いて,起床時から就寝時までの歩数を測定した。透析日の疲労感は透析終了後1 時間以 内,非透析日の疲労感は起床後に,日本語版Chalder fatigue scale を用いて評価した。歩数と疲 労感は,連続した透析日と非透析日にて計4 回測定し,それぞれの平均値を算出した。統計解析 は線形回帰分析を実施した。 結果:透析日の疲労感が高いと歩数は有意に少なかった(偏回帰係数:−206 . 28,95%信頼区 間:−359 . 17,−53 . 40 )。 結論:非透析日の身体活動量増加に向けて,透析日の疲労感に着目する必要がある。
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