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内田 岬希, 武田 直也, 鳥居 敦, 日下 真宏, 松井 彰, 吉田 憲生
2025 年14 巻6 号 p.
325-329
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/11
ジャーナル
認証あり
症例は72歳,女性.呼吸困難を主訴に前医を受診し,肺炎を指摘され当院に紹介された.画像検査で両側肺炎を認め,呼吸不全のため集中治療室に入室した.鼻咽頭ぬぐい液を用いた多項目PCRおよび迅速抗原検査でヒトメタニューモウイルス(hMPV)陽性,喀痰培養で有意菌を検出せず,hMPVによる重症肺炎と診断した.挿管・人工呼吸管理下でのステロイドパルス療法および支持療法により軽快した.hMPVによる成人の重症市中肺炎の報告は少なく,貴重な症例と考え報告する.
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前田 将臣, 北園 美弥子, 春日 憲太郎, 松田 周一, 山本 美暁, 髙森 幹雄
2025 年14 巻6 号 p.
390-394
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/14
ジャーナル
認証あり
日常生活動作が自立した61歳女性.発熱,悪寒戦慄,湿性咳嗽を主訴に受診した.胸部CT画像で右肺門部に腫瘤状陰影,縦隔リンパ節腫脹を認め入院とした.鼻咽頭ぬぐい液のマルチプレックスPCRにてアデノウイルス陽性であり,肺腫瘤状陰影からのクライオ生検でウイルス性肺炎を示唆する病理所見を認めた.アデノウイルス肺炎は,一般的なウイルス性肺炎と異なる画像所見を示すことがあることを念頭に置く必要がある.
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三好 由夏, 尾下 豪人, 緒方 美里, 井上 亜沙美, 吉岡 宏治, 池上 靖彦
2025 年14 巻6 号 p.
341-346
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/24
ジャーナル
認証あり
67歳男性.肺結核,肺Mycobacterium avium症の治療歴があった.1ヶ月前から発熱,右胸痛が出現し,M. intracellulareによる感染性肺嚢胞と診断した.抗菌薬治療だけでは解熱せず,長期の経皮的ドレナージを要した.また,遷延する気漏に対してendobronchial Watanabe spigotによる気管支充填術が奏効した.感染性肺嚢胞の原因として非結核性抗酸菌(NTM)は稀だが,NTM症の既往を有する患者では鑑別に挙げる必要がある.
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河井 基樹, 奥田 慶太郎, 田村 賢太郎, 沼田 尊功, 原 弘道, 荒屋 潤
2025 年14 巻6 号 p.
347-351
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/24
ジャーナル
認証あり
気管支喘息とシェーグレン症候群の既往がある29歳女性.発熱,咳嗽を主訴に前医を受診した.胸部CTにて多発すりガラス影を認め,呼吸不全を呈していたため当院へ転院となった.喀痰検査では起因菌が同定されず,鼻腔拭い液multiplex PCR法でヒトメタニューモウイルス(hMPV)を検出し,hMPV肺炎と診断した.早期に抗菌薬投与を中止,対症療法のみで軽快した.若年成人のhMPV肺炎は比較的稀であり,不要な抗菌薬の長期使用の回避に鼻腔拭い液multiplex PCR法が有用であったため,報告する.
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藤井 祥貴, 西田 達
2025 年14 巻6 号 p.
330-334
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/11
ジャーナル
認証あり
自然気胸を起因とする再膨張性肺水腫(RPE)は,重篤な場合は死亡に至る合併症で,急激な肺の再膨張がリスク因子とする報告がある.今回,緩徐な脱気を試みるも,大径のドレーンではクランプ後も皮下気腫として脱気される空気を制御できずRPEを発症した症例を経験した.一方で小径のドレーンでは肺が拡張せず,手術後にRPEを発症した症例も経験した.意図した速度で肺の再膨張を得ることは困難であるため,自然気胸の治療の際には重篤なRPEの発症に備え,RPEの治療では気管挿管のタイミングを逸さないことが重要である.
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西村 直也, 西岡 直哉, 小川 剛央, 徳田 深作, 山田 忠明, 高山 浩一
2025 年14 巻6 号 p.
361-365
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/07
ジャーナル
認証あり
症例は49歳男性.進行期 ALK融合遺伝子陽性肺腺癌に対し,腫瘍進行が速く早急な治療介入が必要と判断され,アレクチニブ(alectinib)を先行投与した.結核性胸膜炎を併発しており,CYP3A4誘導作用を有する抗結核薬の併用はアレクチニブの効果減弱が懸念されたが,腫瘍治療と結核治療はいずれも並行して行う必要があり,やむを得ず併用療法を選択した.治療を併用した後も腫瘍縮小が持続しており,併用下における有効性維持の可能性が示唆された.
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徳野 友也, 中西 雄, 露木 佳弘, 角本 慎治, 阿部 公亮, 濵井 宏介
2025 年14 巻6 号 p.
352-355
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/24
ジャーナル
認証あり
症例は67歳男性.背部痛のため近医を受診し,造影CTで肺癌が疑われたため紹介受診した.気管支鏡検査で小細胞肺癌を検出し,CTで縦隔リンパ節・多発肝転移を認めたため進展型小細胞肺癌と診断し,化学療法目的で入院した.入院時のCTで軽度の心嚢液貯留を認め,数日で呼吸困難が増悪し頻脈と血圧低下を認めた.心嚢穿刺で膿性心嚢液を認め,心嚢ドレナージと抗菌薬を開始したが循環不全により第8病日に死亡した.小細胞肺癌に化膿性心外膜炎を合併し心タンポナーデを発症した症例を経験したため報告する.
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丸山 総一, 足立 雄太, 髙橋 太郎, 稲田 崇志, 大石 展也, 杉山 幸比古
2025 年14 巻6 号 p.
356-360
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/05
ジャーナル
認証あり
64歳女性. EGFR/exon 19欠失変異陽性の肺腺癌cT1cN2bM1a(PLE),cStage IVAに対しオシメルチニブ(osimertinib)を開始したが,3ヶ月後にgrade 4の肺障害をきたしステロイド加療を要した.休薬1ヶ月後にエルロチニブ(erlotinib)+ラムシルマブ(ramucirumab)を開始したが,8ヶ月後の時点でも肺障害の再燃なく経過している.チロシンキナーゼ阻害薬はEGFR遺伝子変異陽性肺癌の治療においてきわめて重要であり,オシメルチニブ肺障害後のチロシンキナーゼ阻害薬の再投与について考察した.
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稲田 怜子, 水越 太志郎, 岡部 福子, 角田 尚子, 東口 将佳, 鉄本 訓史
2025 年14 巻6 号 p.
381-385
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
認証あり
症例は86歳男性.胸部異常陰影の精査目的に紹介.造影CTで左肺下葉に腫瘤影を認め原発性肺癌,縦隔リンパ節転移および多発肝転移が疑われた.気管支鏡下生検にて小型の類円形のクロマチン濃染を示す異型細胞の増殖を認め,小細胞肺癌が考えられたが,免疫染色を行い悪性黒色腫のsmall cell variantと診断した.皮膚に悪性黒色腫を疑う所見はなく,肺原発悪性黒色腫と診断した.肺原発悪性黒色腫は,小細胞肺癌と臨床像や病理組織像が類似する可能性があり,鑑別を要すると考えられた.
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池田 健太, 齋藤 充史, 三上 榛那, 武田 和也, 黒沼 幸治, 千葉 弘文
2025 年14 巻6 号 p.
366-370
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/07
ジャーナル
認証あり
慢性緑膿菌性肺炎は近年増加する免疫不全や重篤な基礎疾患を持つ患者で臨床的に問題となり,菌の薬剤耐性化や内服抗菌薬が限られることから治療に難渋する疾患である.今回は,免疫不全や間質性肺疾患を併存していた症例で短期間に再燃を繰り返した慢性緑膿菌性肺炎に対して,トブラマイシン(tobramycin)吸入療法を導入した2例について報告する.同療法は現在保険適応のある嚢胞性線維症(CF)に伴う緑膿菌性肺炎のみならず,非CF性緑膿菌性肺炎の感染制御にも有効で,今後の適応拡大が期待される.
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松崎 晋一, 永江 由香, 藤田 七恵, 遠山 兼史, 山田 達也, 信澤 純人
2025 年14 巻6 号 p.
371-376
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/07
ジャーナル
認証あり
症例は76歳男性.肺腺癌(cT4N3M1a Stage IVA,EGFR変異陽性,PD-L1発現:1~24%)の診断で,オシメルチニブ(osimertinib)の一次治療後に再発.PET-CTで胃に異常集積を指摘され,内視鏡検査で進行胃癌(cT3N1M0 Stage IIB)を認めたため重複癌と診断した.肺癌二次治療としてカルボプラチン(carboplatin)+ペメトレキセド(pemetrexed)+ペムブロリズマブ(pembrolizumab)の併用療法を実施した結果,肺癌は部分奏効,胃癌は完全奏効を示した.免疫チェックポイント阻害薬併用化学療法が重複癌に対して有効である可能性が示唆された.
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千葉 俊介, 當麻 景章, 田中 寿志, 牧口 友紀, 布村 恭仁, 田坂 定智
2025 年14 巻6 号 p.
386-389
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
認証あり
症例は49歳,男性.20歳時に肺結核症の治療歴がある.胸部異常陰影の精査目的に当院を受診した.右肺上葉に石灰化を伴う陳旧性結核病変および3個の結節影を認め,その1病変より生検を実施したところ定型カルチノイドと診断された.ロボット支援下右肺上葉切除および縦隔リンパ節郭清を施行し,残る2病変は乳頭腺癌,大細胞神経内分泌癌と診断された.陳旧性肺結核病変を背景とした右肺上葉に,異なる組織型の三重多発肺癌を同時に発症した若年例であり,結核と発癌の関連性を示唆する貴重な症例と考え報告する.
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河原 一磨, 竹村 知容, 扇谷 知宏, 植田 寛生
2025 年14 巻6 号 p.
377-380
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/07
ジャーナル
認証あり
症例は36歳男性.小児期にデュシェンヌ型筋ジストロフィーを発症し,症状進行に伴いNPPVにより呼吸管理されていたが,呼吸状態の悪化に伴い当院に救急受診.終末期の病態であり,気管や脊柱の変形も強く確実な気道確保を行うという点で非常に難渋したが,そのなかで気道管理に対して重視すべき種々の点について再認識する症例となったため文献的考察を踏まえて,これを報告する.
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