日本胸部疾患学会雑誌
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22 巻, 9 号
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  • 斉藤 元
    1984 年 22 巻 9 号 p. 733-741
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    特発性間質性肺炎のうち, 安静時低酸素血症のみられない症例に運動負荷試験を行い, 運動中のPaO2, A-aDO2, VD/VT, DLCOの変化について検討した. 対象は健康者14名, 患者12例で, PaO286.5±7.76Torr, %VC97.1±15.8, %TLC88.2±13.8で拘束性障害は軽度であった. 運動負荷により全例A-aDO2の開大とPaO2の低下がみられた. またVD/VTは運動によりほとんど変化せず, VDは上昇した.
    運動時のPaO2の低下はA-aDO2の開大によるが, その成因については, 換気血流比不均等, 拡散障害, 肺胞接触時間の短縮が推測されたが主因は明らかではなかった. DLCOは安静時63.4±10.5%と低下し, 運動により上昇したが, 対照群に比して軽度にとどまり, 肺血管床の予備力の低下が疑われた. 以上より特発性間質性肺炎のガス交換障害の検出には運動負荷試験が有用であると思われた.
  • 肺拡散能力の低下と末梢気道動態について
    斉藤 元
    1984 年 22 巻 9 号 p. 742-750
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    特発性間質性肺炎(IFP)22例について, 呼吸生理学的検討を加え, 進行性全身性硬化症(PSS)に伴う間質性肺炎の肺機能と比較した. IIPでは肺拡散能力の低下(21/22), 最大吸気位食道内圧の上昇(9/10), 静肺コンプラィアンスの低下(6/9)がみられたが, 安静時低酸素血症は22例中3例, 肺気量の減少は12例にみられただけであった. したがって拘束性障害の検出には肺の圧量関係の測定が必要であると考えられた. DLCOがTLCと正相関した(r=0.556, p<0.01)ことから, DLCOの低下の要因として肺気量の減少も考慮されなければならない. 末梢気道障害は, 非喫煙群に多くみられ, 肺気量の減少と相関しなかったことから, IIPの末梢気道障害の一部は喫煙による可能性が示唆された. IIPの非喫煙群はPSSに伴う間質性肺炎と同様の肺機能障害を有し, 膠原病類似の臨床像を示した.
  • 中田 安成, 小林 洋三, 岸 俊行, 江尻 東伍, 大熨 泰亮, 木村 郁郎
    1984 年 22 巻 9 号 p. 751-756
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシス40例の血清 Immunosuppressive Acidic Protein 量を免疫拡散法にて測定した. サ症全例のIAP量は472±132μg/ml(M±SD)と対照健常者の391±75に比して高値であった(p<0.001). 未治療症例のうち活動期8例では563±124, 非活動期17例では442±123, 病巣消失例6例では340±80であった. 即ち活動期例では非活動期例, 健常者に比して増加がみられ, また非活動期例においても健常者に比すれば高値であった. しかし病巣消失例では正常値であった. 未治療サ症患者血清のIAP量と血清 lysozyme 量および Angiotensin-converting enzyme 活性値との間には有意の正の相関が認められた. しかし血清IAP量とPPD皮内反応あるいは末梢血単球機能 (貪食能, 走性, β-galactosidase 活性値)との間には相関がみられなかった. 血清IAP量はサ症の活動性をよく反映しており, 他の臨床検査成績とともに本症の活動性の指標となりうる.
  • 肺胞マクロファージの機能におよぼす各種吸入薬剤の影響
    杉本 峯晴, 安藤 正幸, 荒木 淑郎
    1984 年 22 巻 9 号 p. 757-761
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    各種呼吸器疾患の治療に日常使用されている薬剤, とくに吸入薬が肺胞領域の防御機構におよぼす影響について肺胞マクロファージ機能および肺洗滌液の面から検討した. in vitro の実験では, epinephrine と tyloxapol は家兎肺胞マクロファージのNBT還元能を亢進させたが, orciprenaline, bromhexine および aminophylline は逆に抑制した. 吸入実験では bromhexine 吸入動物の肺洗滌液で刺激された肺胞マクロファージは, コントロールの肺洗滌液で刺激された肺胞マクロファージよりも多くのスーパーオキサイドを産生した. 以上の成績より, 吸入薬は肺胞マクロファージあるいは肺胞被覆層成分に影響を与えることにより, 肺胞領域の防御機構を変化させることが示唆された.
  • 小西 一樹, 伊東 宏昭, 村上 静一, 国部 久美, 小室 淳, 田村 昌士, 毛利 英満
    1984 年 22 巻 9 号 p. 762-768
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    農夫肺の主要な原因抗原として知られる Thermoactinomyces vulgaris と Micropolyspora faeni に対する特異IgG抗体をELISA (Enzyme-linked immunosorbent assay) にて測定し, 二元免疫拡散法の結果と比較, 考察した. 12例の農夫肺患者血清は, T. vulgaris, M. faeni に対する沈降抗体が陽性であり, これら抗原に対する高いIgG抗体活性を示した. 一方, 岩手県北部の酪農家を対象とした検診の際に, 18例の沈降抗体陽性無症候者が発見された. 彼等の血清中には, T. vulgaris, M. faeni を含む抗原に対する沈降抗体が認められたが, これら抗原に対するIgG抗体活性は農夫肺患者群よりも有意に低いものであった. 酪農家対照群と, 正常非酪農対照群のこれら抗原に対するIgG抗体活性はきわめて低値を示した. 以上の結果より, ELISAによる thermophilic actinomycetes に対する特異IgG抗体活性の測定は, 農夫肺の診断およびスクリーニングに有用な方法であることが示唆された.
  • 北市 正則
    1984 年 22 巻 9 号 p. 769-782
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    サルコイドージス(17例), 慢性ベリリウム肺(6例)および過敏性肺臓炎(5例)の開胸肺生検標本を比較検討した. サルコイドージスの肺病変の主体は壊死をほとんど伴わない直径300ミクロンまでの類上皮細胞肉芽腫が肺小葉全体の間質に形成される所見であって, 臓側胸膜と小葉間結合織にも肉芽腫が認められた. 慢性ベリリウム肺の主病変も壊死をほとんど伴わない類上皮細胞肉芽腫が小葉間結合織を含む肺間質に形成される所見であったが, 4例では中心部が硝子様化と壊死を示す直径1.5mmに及ぶ大きな肉芽腫が認められた. 過敏性肺臓炎では細気管支炎, 細気管支周囲炎と肺胞炎が主病変で, 小葉中心部に主たる病変が認められ, Masson 体は5例に認められた. 肉芽腫の小肺動静脈壁への進展はサルコイドージスの53%, 慢性ベリリウム肺の50%に認められた. サルコイドージスの肺病変は過敏性肺臓炎よりも慢性ベリリウム肺に類似性が強く認められた.
  • 藤屋 秀一
    1984 年 22 巻 9 号 p. 783-794
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    特発性間質性肺炎と診断された43症例を, その臨床病態30項目 (自覚症状と他覚所見5項目, 胸部X線写真所見10項目, 呼吸機能検査所見8項目, 血液, 生化学, 免疫学的検査所見7項目)についてクラスター分析を行い, I群(Ia群とIb群)とII群に大きく分類した. I群は比較的急性の重症型で, 従来の原因不明の肺線維症の定型像とほぼ一致する病像を呈していたが, その中でも気道系の障害の存在が示唆され, 慢性進行型と考えられるIa群と, 気道系の障害を示唆する所見に乏しく, 細胞性免疫能の低下が推測され, 急性進行型と考えられるIb群に分かれた. II群は慢性の軽症型で, その病像は従来の原因不明の肺線維症では特殊型と考えられる超慢性進行型, 気管支周囲型, 非定型例などと共通する部分も多く非定型的で, 定型群に対して“非定型群”として区別された.
  • 桑原 博一, 美谷島 季彦, 大坂 朋久, 安原 文子, 千治松 洋一, 稲富 恵子, 鷲崎 誠, 本間 日臣, 斉木 茂樹, 山中 晃
    1984 年 22 巻 9 号 p. 795-799
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    呼吸困難を主訴に入院し, 経気管支肺生検で確定診断した“びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症”の33歳女性に対して, プロゲステロン製剤並びに去勢術による治療を試みた. その効果については, プロゲステロン製剤の有効性は疑わしかったが, 去勢術は臨床所見の悪化に対する抑制効果があったと思える. 現在まで確立された治療法の皆無であった本症に対して, 経気管支肺生検を用いた新しい診断法と共に今後この二つの治療法は試みられるべきものと考える.
  • 溝口 健二, 恒川 博, 丹羽 義置, 下方 薫
    1984 年 22 巻 9 号 p. 800-803
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    胸部X線上異常影を呈し Pancoast 症候群を伴った男性が, 精査の目的で入院した. 本症例は Pancoast が記述した「上肺溝に局在し手の筋萎縮と Horner 症候群を伴った, 第8頚髄第1~2胸髄の皮膚節に一致した持続する痛みを有する腫瘤」という特徴を満たしていた. 喀痰細胞診で, 小細胞癌と判明した. 小細胞癌は, その中枢発生傾向のため Pancoast 症候群を呈する頻度は極めて低く (Pancoast 症候群中1.2%), 詳細な報告は少ないのでここに報告した.
  • 日下 幸則, 桑原 修, 北村 旦
    1984 年 22 巻 9 号 p. 804-808
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    超硬合金の成型作業に24年間従事し, 超硬合金粉塵に大量曝露した40歳の男性 (非アトピー, 非喫煙者) の胸部X線像に, 全肺野に密に分布する微細粒状影が認められた. このびまん性陰影は, タングステン (原子番号74) を主とする超硬合金粉塵が, 肺内に広く多量に蓄積したため, 放射線が吸収されて現われたものと考えられる. 従って, 本例は超硬合金によるじん肺と診断された. 本例は, 慢性気管支炎も合併していたが, 左下葉原発の巨細胞型肺癌のために死亡した.
  • 中谷 龍王, 島田 安博, 高橋 總一郎, 中田 紘一郎, 谷本 普一
    1984 年 22 巻 9 号 p. 809-814
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    オウム病の家族内発生例を2例報告した. 症例1は激症型であり多臓器障害を伴っていた. 患者は62歳男性で発熱, 息切れ, 意識障害で緊急入院した. 胸部X-Pでは両側広汎な肺炎を認め肝腫大を伴っていた. 検査所見では血沈の亢進, 貧血, 肝機能異常, CPKの上昇, 尿蛋白の陽性所見を認め, 心エコーで心嚢水貯留を認めた. 上記所見とインコの飼育歴からオウム病を強く疑い, 入院当日からDOXYを投与したが呼吸不全, 意識障害が進行し人工呼吸管理を施行した. 治療により胸部陰影の改善がみられ, 人工呼吸管理から離脱した. 経過中DICを併発したがヘパリン投与で改善した. 血清オウム病CF抗体価は64倍から256倍へと上昇しオウム病と診断した. 症例2は症例1の妻であり, オウム病肺炎に肝障害を伴っていた. DOXYの投与により翌日には解熱し, 2週間後に退院した. オウム病は多臓器障害を伴う例があり, 全身感染症として捉えるべき疾患である.
  • 岡田 賢二, 人見 滋樹, 三宅 正幸, 小林 淳, 桑原 正喜
    1984 年 22 巻 9 号 p. 815-818
    発行日: 1984/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    13歳男子中学生が検診で胸部X線上, 左上肺野の縦隔側に鶏卵大の腫瘍を指摘され来院した. 胸部X線上異常陰影は石灰化を伴い, 後縦隔から発生したと思われた. また, 左第3肋骨下縁の上方への陥凹を認めた. 開胸術により腫瘍は第4肋骨後縁原発の骨軟骨腫と診断した.
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