糖尿病患者の死亡時肺合併症率は大きいので, 肺の危険要素を知るために, 健常者と対比して糖尿病の肺機能を調査した. 健常群21名, 呼吸器症状をもたない糖尿病患者男性31名, 女性19名で年齢は平均50歳である. %FVC, %FEV
1.0は糖尿病群で低下していた. %DL
COと%DL/VAも低下していた. 糖尿病群中ではDL
COは糖尿病性網膜症のある群で, ない群より低下し, また%DL/VAは糖尿病の罹患年数が長いほど低下した. 糖尿病男性では正常予測式による%V
50, %V
25が加齢により有意に減少し, 喫煙率をコントロールした偏相関でも同様であった. %V
25の減少率は, 分散分析法で健常群より有意に大きな変化を示した. 糖尿病女性ではFVC, FEV
1.0の低下はあるが, 末梢気道の機能変化は認めなかった.以上の成績から, 糖尿病ではわずかであっても肺機能異常が存在し, 加齢, 糖尿病性血管障害, 外的増悪因子によって, 健常者に比べこれらがより強く進行すると考えられた.
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