気道平滑筋細胞の収縮発生機序を調べるため, イヌ気管平滑筋を用いて実験をおこなった. 神経刺激によっておこる反応はアセチルコリン (ACh) の放出により発生し, その放出機構は神経末端で合成される内因性プロスタグランジン類により調節されていることがわかった.気道平滑筋の収縮は電位依存性のCa
++チャネルを介した自発活動を示す消化管平滑筋型のものではなく, 血管平滑筋に近い性質を示したが, 細胞内Ca
++貯蔵部位に貯えられているCa
++量は血管平滑筋に比し極めて多く, 放出されたAchは受容器を介して, 細胞内貯蔵部位からCa
++を遊離させ, その結果収縮を惹起させると考えられた. 又, 気道平滑筋ではCa
++遊離機構にイノシトール3リン酸が関与している可能性が非常に強いことが推測された. このような気道平滑筋自体の特性や, 各種内因性物質の平滑筋に対する作用が, 様々に影響を与えながら気道平滑筋の緊張 (トーヌス) は維持されており, 気管支攣縮の発生には神経作用因子も深く関与していることを示している.
抄録全体を表示