日本胸部疾患学会雑誌
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26 巻, 12 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 雨夜 和俊, 三上 正志, 三觜 雄, 立野 史樹, 平井 英幸, 名取 博, 浅川 三男, 鈴木 明
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1235-1242
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    農夫肺4例, 加湿器肺3例の計7例の過敏性肺臓炎 (HP) に対して気管支肺胞洗浄 (BAL) を施行し, 気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中リンパ球サブセットの分析を健常非喫煙者10例と比較検討した. HP対象例は1例を除きいずれも, Micropolyspora faeni に対する血清沈降抗体が陽性であり, 他の1例は Trichoderma viride に対する沈降抗体が陽性であった. BALFの分析では総細胞数の増加, 細胞分画ではリンパ球比率, 多核白血球比率の増加を認め, またBALF-OKT4/OKT8比は上昇していたが, これは夏型過敏性肺臓炎の報告とは異なるものであった. 加湿器肺3例についてはIa抗原陽性 T cell を測定したが, いずれも高値を示し, OKT4+ T cell の活性化との関連が推測された. 農夫肺, 加湿器肺各1例についての経時的変化の検討では, 上記BALF中の異常所見は臨床的に無症状期についても認められ, BALF細胞所見の異常が長く持続した.
  • 佐藤 隆, 松原 修, 春日 盂
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1243-1248
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺の癌性リンパ管症33剖検例を臨床病理学的に検討した. 症例は男性18人, 女性15人で, 平均年齢は56歳であった. 呼吸器症状発症から死亡までの平均期間は8週間で, 直接死因は呼吸不全が21例と多く, 原発巣は胃が19例と多かった. 横隔膜を詳細に検索できた13例中の10例に, 腫瘍の横隔膜貫通所見を認めた. 癌性リンパ管症の強い部分には肺胞壁の線維性肥厚を16例に, 水腫性肥厚を13例に, 硝子膜形成を4例に認めた. 病理学的にリンパ管症の広がりを検討して見ると, 胸膜下型 (12例), 肺門気管支型 (4例), 混合型 (15例) と肺内型 (2例) の4型に分類できた. 胸膜下型の頻度の多いこと, 肺門気管支型の少ないこと, 横隔膜貫通例の多いことなどより, 肺の癌性リンパ管症の成立には肺門部リンパ管からの逆行性の進展よりも, 胸膜下型から混合型への進展がより重要であり, また, 胸膜および胸膜下へは経横隔膜的な経路が重要である可能性が示唆された.
  • 角 優
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1249-1256
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    健康成人, 肺癌患者, 悪性血液疾患患者, 手術患者, 高齢患者 (経口栄養者, 経管栄養者) を対象とし, 臨床分離緑膿菌株を用いて頬膜上皮細胞への菌付着を in-vitro で検討した. その結果, 健康成人では, 加齢に伴い菌付着が高くなる傾向がみられ, 特に50歳代以上で有意に増加していた. 手術患者では術後1日目で菌付着は最も高くなり, 以後経過と共に低下し, 術後3日目には術前と同程度になった. しかし肺癌患者における菌付着は健康成人と比較しても有意な差はみられず, また臨床病期別および抗腫瘍剤使用前後においても有意な変化は見られなかった. 高齢患者では, 特に経管栄養者は経口栄養者にくらべ, 2倍以上菌付着が亢進していた. 以上より緑膿菌の頬膜細胞への付着に関する宿主側因子として加齢, 手術侵襲, 低栄養の関与が重要と考えられた.
  • 谷崎 勝朗, 周藤 真康, 貴谷 光, 荒木 洋行, 沖 和彦, 辻 光明, 宗田 良, 高橋 清, 木村 郁郎, 竹山 博康
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1257-1262
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    アトピー型喘息の気道内組織反応を観察する目的で, 気管支肺胞洗浄法を行ない, 得られた洗浄液 (BALF) 中の液性および細胞性成分について検討を加えた. 1. 洗浄液中のIgE濃度は, アトピー型喘息において, 非アトピー型喘息と比べやや高い傾向がみられたが, 3者間に有意の差はみられなかった. 2. 洗浄液中のヒスタミン濃度は, 非アトピー型喘息に比べ, アトピー型喘息において有意の高値が示され, ヒスタミンがアトピー型喘息の発症機序に重要な役割を果していることが示唆された. 3. 洗浄液中のアリルサルファターゼ活性は, 非アトピー型喘息に比べ, アトピー型喘息でBALF中に好酸球の出現率が高い症例において, 有意に高い値を示した. 4. 洗浄液中の細胞成分では, アトピー型喘息では, 非アトピー型喘息に比べ好酸球の出現率が高い症例が多く, また喘息全般では, 健康人と比べ好中球, 好酸球の有意の増加が観察された.
  • 岸本 卓巳, 岡田 啓成, 藤原 謙太, 佐藤 利雄, 小野 哲也
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1263-1266
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    呉共済病院内科外来通院中患者において, 胸部レ線上胸膜プラーク陽性者が24例いた. これら症例について詳細な職業歴を調査したところ, 大半の19例は旧日本海軍工廠あるいは造船所において石綿曝露の既往があり, その他5例にもはっきりした石綿曝露の既往が認められた. 初回曝露より胸膜プラークの発現までの期間は平均40年以上経過しており, 平均曝露年数も20年を超えていた. 特に石灰化を伴った胸膜プラーク陽性者では, 石灰化を伴わない症例よりも, 初回曝露よりの期間も平均曝露年数も長い傾向にあった. また, 24例中2例は慢性関節リウマチ, 全身性強皮症を合併していた.24例の免疫能について検討を加えたところ, 石灰化を伴った胸膜プラーク陽性者において, リンパ球サブセットであるCD3, 4の減少ならびにCD4/8比の低下が認められた.
  • 松葉 健一, 桑野 和善, 池田 東吾, 白日 高歩, 重松 信昭
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1267-1273
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    私どもは, 呼吸細気管支 (RB) における病変と機能との関連を明らかにする目的で, 孤在性の小結節を有するために肺切術が行われた症例の切除肺を用いてRBの形態計測と病変の半定量的評価を行った. 対象は手術前に努力性呼出曲線, フローボリュウム曲線, 肺気量分画, 窒素洗い出し曲線の測定がなされた, 1秒量が予測値の80%以上を示す35例である. RBの内径の平均 (±SD) は0.48±0.10mmで, 肺組織1cm2あたり0.74のRBを認めた. RBに対する個々の pathology score の総和は, 北アメリカ住民に認められるそれより低かった. 末梢気道病変に特異的とされる肺機能検査は pathology score と相関しなかった. 以上より私どもは次のように結論した. (1) 平均年齢59.5歳 (42歳~78歳) の日本人で, 1秒量80%以上の35例の切除肺では, RBに病変が認められる. (2) その病変は喫煙の影響がなく北アメリカの住民より軽微であり, 日本人における健常な対象例の病変と考えられる. (3) 通常の肺機能検査では, 今回の対象例のRB病変を検出できないものと考える.
  • 森脇 優司, 中辻 裕司, 石原 英樹, 弘世 貴久, 相谷 雅一, 神代 尚芳, 伊藤 正己, 国府 達郎
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1274-1278
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    我々は, 結核性胸膜炎の鑑別診断の目的で, 各種胸水貯留疾患患者の胸水および血清 lysozyme 活性の測定を行い, 以下の結果を得た. 1) 結核性胸膜炎における胸水中 lysozyme 活性は, 癌性・転移性・肺炎に伴う胸膜炎, 濾出液のそれらに比較して有意の高値を示した (p<0.001, p<0.001, p<0.05, p<0.001). 2) 胸水 lysozyme 活性/血清 lysozyme 活性 (PL/SL) は, 結核性胸膜炎で癌性・転移性胸膜炎, 濾出液より有意 (p<0.01, p<0.01, p<0.001) の高値を呈し, さらに cut off 値を1.2とした時, 膿胸例を別とすれば, 結核性胸膜炎の診断における sensitivity, specificity, diagnostic accuracy はそれぞれ, 88%, 89%, 89%となった. 以上のことより, 胸水中 lysozyme 活性およびPL/SLの測定は結核性胸膜炎の診断の上で, 有用な指標になりうると考えられた.
  • 安間 文彦
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1279-1283
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    3例の中枢性肺胞低換気症候群 (CAH) 患者に片側の横隔膜ペーシング (DP) 治療が施行され, 6ヵ月から32ヵ月間, 夜間の呼吸状態の改善に効果的であった. DP開始より32ヵ月後に死亡した1例の横隔神経には, 光学顕微鏡レベルでの形態の変化は認められなかった. 本邦におけるDP治療の報告は数少ないが, CAH患者の呼吸補助法として長期的なDP治療は有用であると考えられる. CAHの診断ならびにDP治療に関連する諸問題, 例えば睡眠ポリグラフ, 上気道閉塞, 横隔膜の神経筋疲労現象, 換気モニター, 気管切開などについて, 本論文で言及した.
  • 諏訪部 章, 八鍬 直, 中村 秀範, 加藤 修一, 長内 和弘, 池田 英樹, 佐藤 忍, 高橋 敬治, 安井 昭二
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1284-1290
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    いわゆる“びまん性汎細気管支炎 (DPB)”に対するエリスロマイシン (EM) の少量長期投与が, 最近注目されている. 今回, その作用機序解明を目的として, DPBと診断された8名の患者に, EM 300mg/日を2ヵ月間投与し, 投与前後に患者末梢血から好中球と単核球を分離し, 細胞機能を検討した. 好中球機能として, 付着能, スーパーオキサイド産生能, 抗腫瘍活性, 及び化学遊走能を,単球機能として, その培養上清の肺線維芽細胞増多活性, インターロイキン-1活性を, リンパ球機能として, T細胞比, B細胞比, OKT-4比, OKT-8比を, それぞれ投与前後で比較した. 投与2ヵ月では, 臨床所見には著しい改善を認めなかったが, 好中球機能と単球機能は, 正常人レベルに復する改善を示した. EMの本疾患に対する作用機序として, まずEMが各免疫担当細胞の機能を改善させ, その後臨床症状の改善をもたらす可能性が示唆された.
  • 国頭 英夫, 秋下 雅弘, 高藤 繁, 村田 一郎, 滝沢 始, 小林 信之, 石井 彰, 大田 健, 野上 誠, 伊藤 幸治, 奥平 博一 ...
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1291-1296
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Sjögren 症候群 (SjS)・汎発性強皮症 (PSS) に罹患し, 呼吸機能検査上閉塞性障害を示した2例について報告した. 症例は52歳のSjS+PSSに罹患した女性及び33歳のSjSに罹患した女性であり, ともに労作時呼吸困難等を主訴として入院し, 低酸素血症及び閉塞性肺障害を認めた. 拡散能は正常であり, 発作性の呼吸困難の既往もなく, 気道~細気道領域の炎症がその本態と考えられた. ステロイド・気管支拡張剤にて治療を行ったが特に臨床上増悪も改善もなかった. SjSを含め膠原病肺では間質性病変が主とされてきたが, 最近は閉塞性肺障害をきたす例も報告されてきている. 我々の2例を含めこれらにつきその本態, 予後等に関する検討を行った.
  • 土屋 知洋, 神田 哲郎, 石黒 美矢子, 力竹 輝彦, 林 敏明, 河野 茂, 広田 正毅, 原 耕平, 綾部 公懿, 富田 正雄, 津田 ...
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1297-1301
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    悪性線維性組織球腫は成人の軟部組織から発生する腫瘍としては最も頻度が高いが, 縦隔原発例は極めて稀である. 今回我々は, 発熱で発症し, 診断に難渋した縦隔原発の悪性線維性組織球腫の症例を経験したので, 文献的考察を加えて報告した. 症例は49歳の男性で, 発熱と下痢を主訴として入院した. 入院時の生化学的検査では, 急性炎症反応物質の増加と胆道系酵素の上昇が認められた. 胸部レントゲンと胸部CTでは, 縦隔内の左肺動脈の後方に腫瘤が認められた. 左全肺切除術と縦隔リンパ節郭清が行われた. 病理学的に, 腫瘤は限局する縦隔原発の悪性線維性組織球腫であった. 胆道系酵素の上昇は, 原因不明の胆道炎に薬剤性肝障害が加わったことによると考えられた. 術後, 解熱し, 胆道系酵素も著明に改善した. 縦隔原発の悪性線維性組織球腫は, 本邦で4例目, 世界で10例目であり, 発熱を主訴とするものは極めて少なかった.
  • 河村 哲治, 田中 栄作, 冨岡 洋海, 倉沢 卓也, 川合 満, 久世 文幸, 生川 伸二, 橋井 康二, 森 崇英
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1302-1306
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    65歳女性. 胸部X線で両側胸水にて来院, 下腹部腫瘤を触知し, 血中及び胸水中CA125高値を示したため, 婦人科的疾患に関連する胸水貯留を疑い, 産婦人科に転科. 同科で施行されたMRIで腹水と骨盤内腫瘤を認めたため, 子宮卵巣全摘術を施行し, 左卵巣爽膜細胞腫と診断された. 術中採取した腹水中CA125も高値であった. 術後, 胸・腹水が消失したことより Meigs 症候群と診断した.
  • 高桑 欧美, 板橋 孝一, 酒井 一郎, 中野 郁夫, 藤野 通宏, 三上 洋, 木村 清延, 佐々木 雄一, 大崎 饒, 田村 久, 岡本 ...
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1307-1312
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性. 背部痛, 腹痛, 体重減少を主訴として来院. 胸部レントゲン写真上, 薄壁の多発空洞陰影を呈した. 開胸生検で転移性肺腫瘍と診断し, 化学療法を施行したが, 5ヵ月後死亡した. 剖検で原発は膵体部癌 (mucinous adenocarcinoma) と判明した. 肺の空洞病変の組織像では, 空洞壁にはムチン産生性の腫瘍細胞が浸潤, 増殖しており, 肺胞壁に沿って一層に配列していた. 空洞は呼吸細気管支から肺胞道・肺胞嚢にかけて拡張したものであり, その内部に空気と粘液を認めた. 空洞形成機序については, 本症例はチェックバルブ機構の関与が考えられた.
  • 副島 佳文, 宮原 嘉久, 尾下 文浩, 力竹 輝彦, 坂本 晃, 松本 好幸, 鶴川 陽一, 河野 謙治, 神田 哲郎, 原 耕平, 川原 ...
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1313-1317
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    18歳男性. 右前胸部痛ならびに背部痛を主訴として某病院を受診し, 胸部X線検査で右中下肺野縦隔側にニーボー形成を伴う陰影を指摘された. 当科での精査の結果, 嚢胞性縦隔腫瘍が疑われ, 腫瘍摘出術を受けた. 摘出標本の病理組織学的診断は嚢状リンパ管腫であった. 腫瘍と食道ならびに気管支との交通は明らかでなく, ニーボー形成の機序は不明であった.
  • 鈴木 隆, 虫明 孝康, 堀 豪一, 戸野塚 博, 鈴木 一, 野口 英世, 佐川 文明, 光谷 俊幸
    1988 年 26 巻 12 号 p. 1318-1322
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    後縦隔に発生した原発性骨髄脂肪腫の1例を報告した. 症例は63歳の男性で胸部圧迫感のため受診し撮影した胸部X線写真で右第2弓と重なる異常陰影が発見された. 同症例には肺結核, 胃潰瘍, 高血圧症, 嚢胞腎の既往があった. 胸部圧迫感は自然に消退したが, 胸部の精査で後縦隔の腫瘍が明らかになった. 右開胸下に腫瘍を切除したが, 病理組織学的に腫瘍は脂肪組織と骨髄組織からなる骨髄脂肪腫であった. 貧血がなく造血刺激がないことから髄外造血に伴う二次性骨髄脂肪腫ではなく原発性骨髄脂肪腫と診断した. CT上, 腫瘍内に脂肪組織を示唆する部分が散在しており, これは骨髄脂肪腫の診断上有用な所見と思われた. 骨髄脂肪腫は副腎に発生した症例の報告が多いが, 今後, 本疾患は縦隔腫瘍の鑑別診断の一つになるものと思われた.
  • 1988 年 26 巻 12 号 p. 1323-1325
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1988 年 26 巻 12 号 p. 1326-1330
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
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