癌の血行性転移と血小板, プロスタグランディンとの関係を臨床例で検討した. 対象は原発性肺癌患者68例 (血行性転移例26例, 転移のない例42例) で, 健常対照者42例, 良性呼吸器疾患患者27例, 脳梗塞患者14例を対照として血小板過酸化脂質, 血漿 Thromboxane B
2 (以下TXB
2), 血漿 6-keto Prostaglandin F
1α (以下6-keto PGF
1α), TX B
2/6-keto PGF
1αを測定し, 以下の結果を得た. (1) 原発性肺癌患者の血行性転移例では, 転移のない例と比較して血小板過酸化脂質, 血漿TXB
2およびTXB
2/6-keto PGF
1αは有意に高値を示し, かつ陽性率も血小板過酸化脂質で73.1%, TXB
2で42.3%と高かった. また対照とした良性呼吸器疾患患者および健常対照者との比較でも同様の結果を得た. (2) 血小板過酸化脂質は血漿TXB
2と正の相関 (p<0.01, r=0.414) を示し, TXB
2と同様に Thromboxane A
2 (以下TXA
2) の活性の指標となり得るとともに, 少量の検体でも測定が可能であり, 臨床的に有用な検査法であると思われた. (3) しかし, 現在臨床で行われている血小板凝集試験と今回著者が測定した血小板過酸化脂質, TXB
2, 6-keto PGF
α との間には相関は認められなかった. これは血小板凝集試験が血小板凝集能低下の病態を主に検索する検査法であることによると考えられた.
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