日本胸部疾患学会雑誌
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26 巻, 6 号
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  • 池田 真一郎
    1988 年 26 巻 6 号 p. 579-586
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    癌の血行性転移と血小板, プロスタグランディンとの関係を臨床例で検討した. 対象は原発性肺癌患者68例 (血行性転移例26例, 転移のない例42例) で, 健常対照者42例, 良性呼吸器疾患患者27例, 脳梗塞患者14例を対照として血小板過酸化脂質, 血漿 Thromboxane B2 (以下TXB2), 血漿 6-keto Prostaglandin F (以下6-keto PGF), TX B2/6-keto PGFを測定し, 以下の結果を得た. (1) 原発性肺癌患者の血行性転移例では, 転移のない例と比較して血小板過酸化脂質, 血漿TXB2およびTXB2/6-keto PGFは有意に高値を示し, かつ陽性率も血小板過酸化脂質で73.1%, TXB2で42.3%と高かった. また対照とした良性呼吸器疾患患者および健常対照者との比較でも同様の結果を得た. (2) 血小板過酸化脂質は血漿TXB2と正の相関 (p<0.01, r=0.414) を示し, TXB2と同様に Thromboxane A2 (以下TXA2) の活性の指標となり得るとともに, 少量の検体でも測定が可能であり, 臨床的に有用な検査法であると思われた. (3) しかし, 現在臨床で行われている血小板凝集試験と今回著者が測定した血小板過酸化脂質, TXB2, 6-keto PGFα との間には相関は認められなかった. これは血小板凝集試験が血小板凝集能低下の病態を主に検索する検査法であることによると考えられた.
  • 前田 裕二, 新田 啓次郎, 油井 泰雄, 信太 隆夫, 我妻 幾久寿, 村岡 輝雄
    1988 年 26 巻 6 号 p. 587-593
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    断続性ラ音 (crackle) の分類指標を周波数領域に求めることは聴感との対応を考えるとより合理的と考えられる. Crackle のパワースペクトラムから客観的な指標を求めるためにこれに線形予測分析法を適用し, 得られたパラメーターの分類指標としての有用性をIDWとほぼ等しいCD/2時間と比較し以下の成績を得た. 1) 波形領域の指標であるCD/2は良く聴感上の分類と一致した. 初めの一周期によりその crackle に固有なパワースペクトラムの形状が決定されることから波形の初めの部分を指標として用いることは妥当と考えられた. 2) パワースペクトラムからみると coarse crackle のピーク周波数, ピーク周波数よりも20dB低い音圧を示す周波数はそれぞれ150~250, 700~750Hz, fine crackle のそれは350~400, 1.5KHzであった. 3) 周波数領域の指標としてはサンプル間の純粋な相関係数であり周波数成分の拡がりを示す偏相関係数Kパラメーターが最も良い指標と考えられた.
  • 高田 勝利, 浅井 学, 宮地 厚雄, 柿原 秀敏, 佐道 理文, 荒川 啓基, 野田 正治, 伊奈 康孝, 山本 正彦, 森下 宗彦
    1988 年 26 巻 6 号 p. 594-601
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    各種びまん性肺疾患110例について, 血清および気管支肺胞洗浄液 (BALF) のタイプIIIプロコラーゲン (PIIIP) とBALFフィブロネクチン (FN) を測定し, びまん性肺疾患の病態との関連を検討した. 血清PIIIPはIIP, 肺結核, 塵肺で正常より高値を示した. BALF・PIIIPではサ症, IIPで高値を示し, またサ症病期ではII期および活動期に高値を示し, IIPでは急性型で高値を示した. BALF・FNもサ症, IIPで高値を示し, またそれぞれ活動期, 急性型で高値を示した. これらの結果より, サ症, IIPの活動期には血清およびBALF・PIIIP,BALF・FNはともに上昇するが, 既に線維化が完成したと思われる病態では低下し, PIIIP, FNは活動性の指標となるが, 線維化の診断には有用でないものと思われる.
  • 中野 博, 樫田 祐一, 川村 治子, 岡村 樹, 本田 耕士, 稲垣 護, 岸川 禮子, 松尾 信一, 久保 千春, 広瀬 隆士, 井上 ...
    1988 年 26 巻 6 号 p. 602-611
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    X線CTによる肺気腫診断の有用性を評価するため, おもに閉塞性障害を有する患者を対象として, 以下の検討をおこなった. 1. 42名の患者にX線CTと肺機能検査をおこなって両者の相関を調べた. X線CTの評価には, 肺野の平均CT値, 低吸収域比率 (-950H. U. 以下), 背腹CT値差の3つの指標を用いた. これらのうち低吸収域比率が肺気量諸量および DLCO/VA と高い相関があったが, これが必ずしも肺胞破壊を反映しない可能性が示唆された. 2. 31名の患者について, われわれが考案したCTによる視覚的評価法をSAB像の肺気腫所見の有無ならびに肺機能検査による診断法と対比することにより, その臨床的有用性について検討した. その結果, 低吸吸収域の存在をスコア化した指標がSAB所見による診断法と最もよく相関することがわかった. 以上の結果からX線CTによるわれわれの視覚的評価法は, 非侵襲的に得ることができ, しかも有用であると考えた.
  • 榊原 博樹, 末次 勸, 佐賀 務, 半田 美鈴, 鈴木 真砂, 土井添 隆史, 津田 美奈子, 堀口 高彦, 梅田 博道, Yoshimi ...
    1988 年 26 巻 6 号 p. 612-619
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    アスピリン喘息12名, 外因型喘息13名, 内因型喘息12名を対象にして, メサコリン, ヒスタミン, プロスタグランディンF, ロイコトリエンD4の各吸入試験を行い, アスピリン喘息の気道過敏性に特異な点がみられるかどうかについて検討した. 気道過敏性は1秒量が20%以上低下したときに吸入した薬剤の濃度 (PC20) とlog用量―反応曲線上で1秒量が12%低下した点と20%低下した点を結んだ直線 (ΔFEV1.0) から計算した. その結果, PC20, ΔFEV1.0ともすべての薬剤について各群間で有意差はなかった. しかし, アスピリン喘息では気道収縮を起こした後の1秘量の自然回復が遅く, 特にPGFとLTD4の吸入後にそれが著明であった. このことから, アスピリン喘息においては気道収縮が誘発された時に働くべき反応性の気道拡張機構, ことに拡張性プロフタグランディンの局所産生に障害があるものと推定した.
  • 谷 憲治, 安岡 劭, 中西 嘉巳, 野田 泰弘, 建沼 康男, 藤沢 謙次, 大串 文隆, 尾崎 敏夫, 佐野 暢哉, 小倉 剛
    1988 年 26 巻 6 号 p. 620-628
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    間質性肺炎初期の病態の解明やその病態分析におけるBAL液の有用性の検討を目的に, ラットにブレオマイシン (BLM) を経気管的に一回投与してBALを行い, BAL液の線維芽細胞に対する影響を測定した. BLM投与2日目には, BAL液中に線維芽細胞障害活性が, 組織学的には間質性肺炎の初期像が, BAL液細胞分類では好中球と好酸球の増加が認められた. この障害因子が末梢肺の障害に関与し, その一部は多核白血球から放出されると考えられる. BLM投与3日目には上記障害活性は証明されず, 逆に対照を上回る線維芽細胞増殖活性が認められ, 6日目まで存在した. 肺胞壁での線維芽細胞の増殖はBLM投与6日目に最も著明で, 15日目には線維化が認められ, 3~6日目のBAL液中に証明された増殖因子が in vivo での線維芽細胞の増殖に関与していると考えられた. 以上の成績から, BAL液成分中の所見は肺組織の病理学的所見と相関して変動し, 間質性肺炎から線維化の過程を知る上で有用と考えられた.
  • 線維芽細胞培養条件の相違に対する考察
    諏訪部 章, 中村 秀範, 八鍬 直, 高橋 敬治, 安井 昭二
    1988 年 26 巻 6 号 p. 629-636
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺胞マクロファージ (AM) の線維芽細胞増殖制御に関して, 現在一定の見解がない. この点を検討するため, 正常ラット及びブレオマイシン投与ハムスターAMのシリカ刺激上清を作成した. この上清は, 同種肺線維芽細胞の増殖を, 5%ヒト血小板欠如血漿下で促進し, 10%牛胎児血清 (Fetal Calf Serum: FCS) 下で抑制した. AMの線維芽細胞増殖促進・抑制に関する見解相違の一因に, 培養条件の相違があることが示された. しかし, 10%FCS下の抑制は, AM由来の抑制因子の作用より, むしろ10%FCSへのAM上清付加による「増殖因子過剰状態」下で線維芽細胞の「自己抑制」効果であり, AMは, FCSが存在しなければ, 線維芽細胞を増殖促進させると考えられた. 従って, AMは, 肺線維化を促進する方法に作用し, 肺線維化の抑制・治療の観点から, AMの機能抑制の方向が望ましいことが示唆された.
  • 秋山 仁一郎, 千田 金吾, 佐藤 篤彦
    1988 年 26 巻 6 号 p. 637-644
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ヒトの肺胞マクロファージ (A-Mφ) の機能と動態と研究するため, A-Mφの膜抗原を認識する単クローン性抗体, AMH-2, AMH-3を作製し, 各種単核食細胞との反応性を検討した. 抗体はヒトの気管支肺胞洗浄 (BAL) 細胞を抗原として, 細胞融合法により作製した. 2種類の抗体は末梢血単球とほとんど反応性を示さなかったが, 単球を培養すると陽性率の増加が認められた. 非喫煙者のBAL-Mφは両抗体といづれも高い陽性率 (約90%) で反応したが, 喫煙者では陽性率の低下が認められた. 両抗体はA-Mφと強い反応性を示したが, AMH-3は大多数の肺間質Mφと反応するのに対し, AMH-2は肺間質Mφの一部とのみ反応した. 過敏性肺臓炎とサルコイドーシス患者の肺肉芽腫の類上皮細胞は, 両抗体ともに強陽性を示した. 以上より, AMH-2とAMH-3は肺Mφの異なる分化抗原を認識しており, 肺Mφの亜群の研究や肺肉芽腫症の成立機序の研究に有用である事が示唆された.
  • 浅岡 峰雄, 今泉 宗久, 渡辺 正, 秋山 清次, 高木 弘, 阿部 稔雄
    1988 年 26 巻 6 号 p. 645-652
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺腺癌継代培養株NULC2を免疫原として, マウスモノクローナル抗体6F9 (IgG1) を作製した. 6F9は, 腫瘍継代培養株を用いた混合血球吸着法による分析では, 各種細胞と反応し特異性を示さなかったが, 免疫ペルオキシダーゼ染色による検索では, 扁平上皮癌のみに反応し, 他の組織型の癌にはほとんど反応しなかった. また正常組織においても, 扁平上皮組織のみに反応した. 6F9の認識する抗原は, シアル酸を含まない糖蛋白と考えられ, 血液型抗原A, B, H, iとも異なっていた. 6F9を用いて肺癌捺印細胞を染色したところ, 扁平上皮癌にのみ特異的に反応し, 腺癌や大細胞癌には反応しなかった. 以上の結果より6F9は, 細胞診断による肺癌の組織鑑別診断の補助として有用であると考えられた.
  • 松瀬 健, 福地 義之助, 石田 喜義, 山岡 実, 長瀬 隆英, 小坂 昇, 百瀬 敏光, 渡辺 俊明, 大嶽 達, 飯尾 正弘, 折茂 ...
    1988 年 26 巻 6 号 p. 653-657
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    N-isopropyl-p-123I-iodoamphetamine (I-123 IMP) を静注すると, 早期に肺に高濃度の集積がみられ, アミンの肺代謝との関連性で注目されている. 肺疾患のない非喫煙者5名 (71.8±4.1歳), 喫煙中止者5名 (73.2±2.2歳) 及び喫煙者5名 (78.0±4.6歳) を対象とし, 肺I-123 IMPシンチグラフィーを施行して, その動態を検討した. 両中肺野に関心領域を設定し, Count=A×EXP (-Time/Tc)+Cによる1コンパートメントでの, 減衰曲線の分析を行った. 時定数 (Tc) の平均値は, 非喫煙者群で46.88±4.10, 喫煙中止者群で49.28±4.82, 喫煙者群で67.71±2.15であり, 喫煙者群の時定数は, 非喫煙者群及び喫煙中止者群の時定数に比して, 有意に高値を示し, 喫煙が, 肺でのアミンの動態に影響をあたえている可能性が示された. 今後, 各種肺疾患のアミン代謝の病態解析に, 早期のI-123 IMPの動態解析が有用であると考えられた.
  • 藤沢 謙次, 安岡 劭, 建沼 康男, 野田 泰弘, 中西 嘉巳, 新居 康生, 尾崎 敏夫, 小倉 剛
    1988 年 26 巻 6 号 p. 658-664
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    血清と喀痰中のフコース (F) とシアル酸 (S) の呼吸器疾患における診断的意義を検討するために, 両者の測定法について検討した. 両検体中のFとSをHPLCで他の糖から分離後正確に測定するHPLC法を基準とし, 両者を分離することなく直接測定する方法 (方法I) の精度を検討した結果, Fの測定では方法Iに相当する Gibbons の方法では実際の値より血清で2~3倍, 膿性痰で1.4倍高値を示すこと, Sの測定では従来から利用されているTBA法により両検体でほぼ正確に測定できることが判明した. 血清中のFの診断的意義や, 膿性痰と粘性痰のFの診断的意義を比較検討する場合には, 方法Iでは不十分と考えられる. 一方, 血清ではFとSが異なる (糖) タンパクに分布している, 正常者ではFの約30~40%がIgGに分布している, 呼吸器疾患ではF値がIgGとIgG以外の成分の増減により変動する, FとSの診断的意義が異なる, ことが示唆された.
  • 藤吉 行雄, 多田 豊曠, 尾関 一郎, 神谷 増三, 立山 尚, 三木 充, 久原 肇, 岸本 英正
    1988 年 26 巻 6 号 p. 665-669
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    形質細胞肉芽腫 (Plasma cell granuloma) は種々の臓器に生じ得る稀な病変であるが, 肺の孤立性腫瘤性病変として, 臨床的に悪性腫瘍との鑑別が重要とされる. その病因について旧くは腫瘍とする説と炎症起源とする説があったが現在では後者とされている. 今回我々は53歳男性の症例を経験した. 患者は発熱にて発症, 血沈値106mm/h, CRP (5+) と感染症を疑わせる経過の後に左中肺野に腫瘤性陰影を指摘された. 腫瘤影は徐々に増大するので, 肺悪性腫瘍の診断のもとに3ヵ月後に腫瘤摘出を受けた. 摘出された腫瘤は形質細胞の著しい増殖が認められ, 異型性や, 核分裂像を殆ど示さない. また, 免疫染色にてIgG, IgM, IgAの polyclonality を示し, 形質細胞肉芽腫と診断された.
  • 新居 康生, 大串 文隆, 佐藤 香代, 曾根 三郎, 尾崎 敏夫, 古林 英香, 安岡 劭, 小倉 剛
    1988 年 26 巻 6 号 p. 670-673
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺原発と考えられた原発性マクログロブリン血症 (マ血症) を経験したので報告する. 58歳男性, 右下肺野の異常影を指摘され来院した. 高タンパク血症とMタンパク (IgM,λ type) を認め, 経気管支肺生検でマ血症の肺病変を疑った. 開胸肺生検で得られた組織のPAP法でIgM, λ type のMタンパク産生細胞が証明された.
  • 小林 英夫, 岡本 卓, 菅間 康夫, 松岡 緑郎, 北村 諭, 角田 尚久, 斉藤 建
    1988 年 26 巻 6 号 p. 674-679
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は20歳, 女性で生来健康であったが, 急性発症の発熱, 労作時呼吸困難を主訴に入院した. 胸部X線写真は, 両中下肺野に air bronchogram を伴う浸潤影, 両上肺野に小結節影が認められ, 全肺葉にわたる広範な陰影分布を示していた. 経気管支肺生検によりクリプトコッカスを証明し, 原発性肺クリプトコッカス症と診断した. 免疫学的検索では, PPD, PHAに対する皮内反応の減弱が認められ, 細胞性免疫の軽度の低下が示唆された. 肺野への広範な病変の進展の背景には, クリプトコッカスに対する易感染性を有していた可能性が推測された.
  • 1988 年 26 巻 6 号 p. 680-683
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1988 年 26 巻 6 号 p. 684-690
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1988 年 26 巻 6 号 p. 691-694
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
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