日本胸部疾患学会雑誌
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27 巻, 11 号
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  • 北村 諭
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1259-1267
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    The fundamental importance of the lung in providing oxygen and eliminating carbon dioxide is well known. However the lung has another critical role as the site of numerous and important metabolic events. Some of these metabolic activities are essential to the normal performance of pulmonary gas exchange. Impairment of pulmonary metabolic activities can, therefore, have far-reaching repercussions on many organ systems.
    Special features of pulmonary vascular beds which are helpful for the metabolism of various vasoactive substances through pulmonary circulation are described.
    The lung can uptake or metabolize various vasoactive substances including acetylcholine, serotonin, bradykinin, prostaglandin E2 (PGE2), PGF, leukotoriene C4 (LTC4), LTD4 and LTE4. On the other hand the lung can synthetize and release various vasoactive substances including histamine, serotonin, LTC4, LTD4, LTE4, thromboxane A4 (TXA4), PGD2, PGE2, PGF, PGI2, LTB4, and PAF (platelet activating factor).
    We also investigated the metabolism of LTC4 and LTD4 through isolated perfused guinea pig lung lobes. And it is clarified that the infused LTC4 was converted to LTD4 and LTE4, while the infused LTD4 was converted to LTE4.
    Seventeen years ago, we demonstrated the release of prostaglandins from the lung during mechanical ventilation at large tidal volumes in anesthetized mongrel dogs. We thought this PG is PGE2 which dilates pulmonary vasculatures. In the present study we investigated the release of PG from healthy volunteers by spontaneous hyperventilation. We demonstrated that serum levels of 6-keto PGF and PGE2 showed a marked increase following the spontaneous hyperventilation.
    Various humoral factors related to the pulmonary vascular responses and various humoral factors which related to the tracheobronchial responses were also presented. Various chemical mediators and cells which synthesize and release these mediators were summarized.
    It is well known that LTC4 and LTD4 deteriorate the circulation in coronary arteries (CA) and these substances are metabolized in the lung. Therefore, the influence of LTC4 and LTD4 on the coronary circulation through the lung was studied in anesthetized mongrel dogs. The coronary arthery blood flow was reduced by 90%.
    It is well known that cigarette smoking has diverse effects not noly on the airway system but also on the pulmonary and systemic circulatory system. The acute effects of cigarette smoking are induced mainly by nicotine, the main alkaloid in tobacco. We demonstrated that peripheral venous blood levels of complement C3a and C5a showed a marked increase.
    Bronchial asthma, idiopathic interstitial pneumonitis (IIP) and other diffuse interstitial lung diseases related to PG, LTS, disaturated phosphatidylcholine (DSPC) and SP-36 of 36KDa were also referred to.
  • 泉 孝英
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1268-1273
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    特発性肺線維症 (idiopathic pulmonary fibrosis, IPF) 56症例における自験成績を中心に, 原因不明の特発性間質性肺炎・肺線維症は, どのように分類され, どのような病態として認識されるべきかについて報告した. 原因不明の間質性肺炎・肺線維症のうち, 症例数が多く, 予後不良の慢性疾患であるIPFの病理組織所見は usual interstitial pneumonia (UIP) と呼ばれる病像である. この病変の特徴は病期に関係なく斑状の病変分布を示すことである. IPF (UIP) 病変は, 顕微鏡下においては, 肺胞隔壁におけるびまん性の炎症から線維化へと移行するものではなく, 局在性の線維化病巣の増加としての進展を示すものである. IPF (UIP) の治療において, ステロイド剤は無効である. IPFは治療法としての肺移植の対象となる代表的疾患であるが, どのような症例に, どのような時期に移植を行うべきか, recipient の選択の問題は, 今後に検討が残されている.
  • 梅木 茂宣, 矢木 晋, 日隈 慎一, 中島 正光, 築山 邦規, 副島 林造
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1274-1282
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    著者らは最近, ヒト肺犬糸状虫症で胸部X線上で右上下肺野に1つずつの腫瘤影と胸水貯留があり自然経過にて右下肺野の腫瘤影と胸水が消失した症例, 同様に右下肺野に腫瘤影がありその経過中に胸水貯留を併発したが, ステロイド療法にて軽快した症例, および胸部X線上右下肺野の小腫瘤影内に空洞を伴った症例などを経験した. ヒト肺犬糸状虫症は, 本邦での報告が32例と稀な疾患であり, 胸部X線上では腫瘤影として異常を指摘されることが殆どである. 本稿では, 胸部X線上興味深い所見を呈した3症例を中心として, ヒト肺犬糸状虫症の臨床像につき文献的考察を加えて検討した.
  • 森口 聡, 桑原 修, 池田 正人, 土肥 英樹, 藤原 清宏, 古山 順一, 山本 義弘
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1283-1287
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    一卵性双生児 (18歳男, 22歳男) 及びその妹 (20歳女) の計3名に発症した家族性自然気胸を経験した. 3例とも, 胸痛, 呼吸困難を主訴とし, 発症年齢も近く, また中等度から高度の肺虚脱を呈し, 再発しやすい傾向にあるなど臨床経過に類似する点が多く, 全例に肺部分切除術または肺縫縮術の外科治療を要した. 検査所見上ACE値, α1-アンチトリプシン値は正常範囲内であり, 家族歴では3同胞以外に気胸の発症は認めていない. また, 一卵性双生児の証明としてRFLPsによるDNA診断の手法を用いて, その裏付けを行った.
  • 倉島 一喜, 渡辺 彰, 河村 洋一, 大家 他喜雄, 西 耕一, 藤村 政樹, 松田 保
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1288-1293
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    3例のオウム病家族発症例が発熱, 関節痛のため来院した. 胸部写真上は淡いスリガラス陰影を呈し, Gaスキャンではより広範囲の集積が認められた. 2例においてBALF成分の分析を行った結果, 急性期においてリンパ球の増加, 特に活性化ヘルパーT細胞の上昇があり, リンパ球の増加は1ヵ月後も認められた. 3例全員に呼吸機能検査を行ったところ, 背景にある呼吸機能障害にかかわらず, 経過中共通の変化があり, 末梢気道の閉塞性変化とRVの増加が認められた. 特に, RVの変化は症状消失後もかなりの間持続した. 以上よりオウム病急性期においては, Tリンパ球の動員と閉塞性障害を認めることが示唆された.
  • 田中 満, 甲田 英一, 橋本 省三, 佐藤 勝, 山口 佳寿博, 岡田 泰昌, 山沢 文裕, 河合 章, 鳥潟 親雄
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1294-1299
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    末梢型肺癌を観察・撮影することが出来る新型の内視鏡を開発し試作した. 新型の内視鏡は外径φ2.2mm, 全長1,400mm, 有効長1,150mm, 視野角75°, 弩曲角up方向120°, down方向120°, 観察範囲3~50mmである. 症例中, 最も小さい1.5×1.5cm大の末梢型肺癌2例を含む10症例に施行し, 始めて臨床的に末梢型肺癌で癌と考えられる所見を観察・撮影することが出来た. 末梢型肺癌の検索に我々の内視鏡検査が新しい検査方法として加わり, 病変の診断・鑑別に重要な役割をはたすものと我々は期待している.
  • 新実 彰男, 山本 孝吉, 倉澤 卓也, 網谷 良一, 川合 満, 久世 文幸, 秋口 一郎
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1300-1308
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    粟粒結核の39歳男性に抗結核化学療法 (化療) 開始後頭痛が増強し11週後に右片麻痺が出現した. CTおよびMRIで多発性の頭蓋内結核腫 (IT) が証明された. 同時に肺病変も悪化したが化療継続により肺・脳病変とも治癒した. 1970年以降頭部CTで診断されたITの本邦報告例56例中経過中に化療が確実に施行されかつ評価可能な症例は27例 (含自験例) あり, 当初よりITと診断された7例の他は結核性髄膜炎, 粟粒結核, 肺結核などで化療を開始され, 後にITが発見されていた. CTや症状の経過から27例中24例で化療開始後にITが悪化あるいは出現したと考えられた. 24例中13例は化療無効例で, その原因は線維性被膜の存在, 血管炎の合併, 化療による髄膜炎の軽快に伴う薬剤の移行性低下が文献的に考えられる. 残る11例は化療継続で最終的に軽快した一時的悪化例であり, 自験例な肺ど数例の経過からINH・RFPを主軸とする結核化療でのいわゆる初期悪化と同様の機序が推測される.
  • 小林 英夫, 松岡 緑郎, 三重野 龍彦, 北村 諭
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1309-1315
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺胞蛋白症5例での, 初回および経時的なCT像にっいて検討した. 基本所見として, 非区域性で, 側胸壁下・後胸壁下・葉間領域の peripheral clear zone や, air bronchogram などを伴う, びまん性の, 不均一に濃淡の混じた肺野濃度上昇を認めた. また, 前胸壁に接する不整形の小斑状陰影の存在が比較的特徴的であった. 長期にわたる肺胞蛋白症の存在は, 間質の線維性変化を引き起こす可能性が示唆され, 2次的な肺容量の減少や気管支・細気管支の拡張性変化, さらに嚢胞性変化などが認められた. 検討例数が少ないが, 初回より存在する局所的な肺容量減少は, 経時的な病変の進展の指標となりえる可能性が推測され, 肺洗浄療法の影響とも合わせ, 今後検討すべき問題点と思われた.
    肺胞蛋白症は, 肺胞充実性病変の代表的疾患として評価されてきたが, その進展像においては間質性変化が生じうる可能性も想定するべきかと思われた.
  • 小川 純一, 井上 宏司, 正津 晃
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1316-1321
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    腫瘍との鑑別が困難で, 開胸手術により診断が確定した14例の炎症性疾患について検討した. 内訳は形質細胞肉芽腫4例, 肺膿瘍3例, 偽リンパ腫, リンパ球性間質性肺炎, アスペルギールス症, ムコール症, Wegener 肉芽腫症, Round atelectasis, 器質化肺炎各1例と多岐にわたっていた. 一部の形質細胞肉芽腫, 偽リンパ腫, リンパ球性間質性肺炎, Wegener 肉芽腫症, Round atelectasis 例では臨床症状, X線所見, 気管支鏡検査, 血液所見によりある程度の術前診断は可能と考えられた. しかし高齢者の形質細胞肉芽腫, 肺真菌症, 肺膿瘍, 器質化肺炎例では疾患に特徴的な所見に乏しく, 肺癌や良性腫瘍との鑑別が困難で, 診断のために開胸生検もやむを得ないと考えられた.
  • 森口 博基, 尾崎 敏夫, 安岡 劭, 小倉 剛
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1322-1329
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺胞マクロファージ (AM) からのフィブロネクチン (Fn) とプロスタグランディン (PG) E2の産生調節を明らかにするため, 特発性間質性肺炎 (IIP) 患者, 正常志願者 (NV) および対照患者 (CP) から気管支肺胞洗浄法で採取したAMのFnとPGE2産生を in vitro の系で検討した. IIP患者のAMはNVのAMに比較してFn産生量が多く, PGE2産生量は少なかった. IIP患者のAMは, lipopolysaccharide, phorbor 12-myristate 13-acetate あるいはザイモザン刺激によりPGE2産生の増加とFn産生低下がみられ, このFn産生低下は, インドメサシン添加により回復傾向がみられた. 一方, アルブミンー抗アルブミン免疫複合体刺激によりFn産生は増加した. また, 外因性PGE2添加によりFn産生は抑制された. 本結果から, AMのFn産生は, IIPで増加すること, 細胞への刺激の違いにより変化すること, また, Fn産生とPGE2量の間に密接な関連性が存在することが示唆された.
  • 前田 重一郎, 田村 伸介, 波田 寿一, 東野 一彌, 吉本 崇彦, 平尾 文男
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1330-1334
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    胸部レ線上多発性空洞形成を呈した原発性肺クリプトコッカス症 (原発性肺ク症) を経験した. 自覚症状, 炎症反応, 基礎疾患無く経気管支的肺生検にて有意な病原体は検出できなかった. しかし血清クリプトコッカス抗原 (血清ク抗原) は高値を呈した為, 本症例を原発性肺ク症と診断した. 尚, 本症例の胸部レ線上の異常影は自然消退を認めるとともに, 同抗原価も減少した. 近年血清ク抗原の本症に対する特異性が認められ, 診断及び治療指標の有力な手段と考える.
  • 野沢 悟, 佐藤 高久, 篠川 真由美, 鈴木 栄一, 来生 哲, 荒川 正昭
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1335-1341
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    29年間塗装業に従事していた46歳男性が, 夜間呼吸困雄, 乾性咳嗽を主訴に入院した. 胸部X線上, 両肺にびまん性粒状影を認め, 呼吸機能検査で, 拘束性障害と拡散障害を示した. 職業と経過から, イソシアネートによる過敏性肺臓炎を疑った. 免疫学的検査で, 皮内テストはTDI-HSA, MDI-HSAで弱陽性, 沈降抗体はTDI-HSAで陽性, 末梢血及び気管支肺胞洗浄液リンパ球刺激試験は陰生であった. 環境誘発試験は陽性を呈し, TBLBで胞隔炎と Masson 体を認めたが, 肉芽腫は認められなかった. 以上の結果よりTDIによる過敏性肺臓炎と診断した. イソシアネート―HSAは化学的に不安定なため, 免疫学的検索を困難にしている可能性があると考えられたが, 本症例では, 皮内テストと沈降抗体の結果から, III型アレルギーの関与が示唆された. イソシアネートの場合, 有機塵埃などの場合に比べて, 肉芽腫の陽性率が低く, 免疫学的反応や組織変化は, それとは異なると考えられた.
  • 白川 妙子, 福田 浩一郎, 岳中 耐夫, 志摩 清, 馬場 憲一郎, 長尾 和治, 宮山 東彦
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1342-1348
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例1は68歳男, 右上葉の肺炎罹患後5ヵ月目に同部位に腫瘤陰影あり, 抗結核剤を3ヵ月間投与したが陰影不変で, 咳, 痰, 血痰も伴うため, 悪性を否定できず試験開胸した. 成熟した形質細胞, リンパ球等の浸潤を伴う線維性結合織の増生よりなる炎症性偽腫瘍であった. 症例2は35歳男, 無症状で検診発見. 左下肺野に血管集束を伴う腫瘤影あり, 内科的に診断確定せず, 試験開胸施行っ病理所見は, ほとんどが異型性のない形質細胞の浸潤を伴う線維性結合織よりなる形質細胞肉芽腫であった. 本邦既報告46例と併せて検討した結果, 臨床症状, 殊に先行する気道感染のある例は, 症例1と同様に比較的多数のリンパ球を含む多彩な炎症細胞浸潤を認めるものが多く, 無症状の例は, 症例2と同じく病理所見上単調な像が多かった. 本病変は幅広い範囲のものを含んでいるが, 一部の症例に関しては誘因として気道感染が示唆される.
  • 花園 豊, 大石 展也, 武内 浩一郎, 岡輝 明, 四元 秀毅, 高久 史麿
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1349-1354
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    意識障害, 失語と不全片麻痺等の脳梗塞症状で発症し, 頸部リンパ節生検にて印環細胞型の腫瘍細胞を有する腺癌の転移を認めた42歳男性の肺原発腺癌症例. 剖検上, 右肺上葉に原発する低分化型腺癌が確認され, 原発巣及び転移巣に印環細胞型の腫瘍細胞を認めた. また, 心臓に非細菌性血栓性心内膜炎を認め, これが脳梗塞の発症に関与したものと推測された. 原発性肺癌において印環細胞型の腫瘍細胞をみたこと, 非細菌性血栓性心内膜炎によると思われる脳梗塞症状を契機に原発性肺癌が発見されたことが注目される.
  • 石原 享介, 冨岡 洋海, 長谷川 幹, 岡崎 美樹, 片上 信之, 坂本 廣子, 岩崎 博信, 梅田 文一, 中井 準
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1355-1361
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    夏型過敏性肺炎を発症後, 慢性呼吸不全に陥った女性喫煙例を報告した. 開胸肺生検で強い小葉中心性の分布を示す肉芽腫性細気管支胞隔炎が見られた. 肺機能検査は強い拘束性障害, 気道抵抗上昇, 残気率上昇を示し, ステロイド治療によっても呼吸困難持続し翌年に再発を認めた. 発症6年後, 慢性呼吸不全, 肺性心の急性増悪で入院した. 胸部写真で肺血管の拡張, 心陰影の拡大所見が見られたが, 肺野の縮み, 線維化陰影は見られなかった. その後在宅酸素療法を行い発症12年後の現在に至っている. 本例は喫煙例であることに加え長期間同一住居で抗原暴露を受けていたと考えられ, 結果として細気管支領域の非可逆的障害が残ったものと思われた. 夏型過敏性肺炎例でも農夫肺のように慢性化を来す可能性はあり徹底的な環境改善, 転居を含む早期の適切な治療と経過観察が必要である.
  • 福岡 和也, 春日 宏友, 森川 暁, 渡辺 裕之, 三笠 桂一, 堅田 均, 澤木 政好, 成田 亘啓, 今井 照彦, 大石 元, 尾辻 ...
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1362-1366
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は63歳女性. 鼻出血の既往あり. 主訴は労作時呼吸困難H-JIV度, 著明な低酸素血症の原因精査のため入院. 胸部X線写真では両側びまん性粒状影がみられ, 肺機能検査では著明な拡散能障害を認めた. 99mTc-MAAによる肺血流シンチでは注入した99mTc-MAAの50%が肺毛細血管で捕捉されず, 大動脈系ヘシャントし脳・腎に集積した. 選択的肺動脈造影では肺動静脈瘻を直接描出するには至らなかったが, TBLB病理組織像では肺胞壁に接して拡張した異常血管を認め, 多発性微小肺動静脈瘻と診断した. また, 腹部血管造影, 肝生検により脾静脈拡張, 脾・腎静脈吻合および非活動性慢性肝炎が明らかとなった. 多発性微小肺動静脈瘻は, Rendu-Osler-Weber 症候群の一分症としてまた, 肝硬変にみられる低酸素血症の原因として関連づけられている. 本例では基礎疾患として慢性肝炎が存在し, 肝疾患と肺動静脈瘻の関連性が示唆された.
  • 塩田 哲広, 池田 貞雄, 小西 孝明, 石田 久雄, 塙 健, 八木 一之, 小鯖 覚, 松原 義人, 畠中 陸郎, 船津 武志
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1367-1370
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性. 54歳から糖尿病と高血圧にて投薬治療を受けていた. 1988年2月, 咽頭部痛と嗄声が出現し, 次第に嚥下困難と左下顎部の疼痛が激しくなるため耳鼻科を受診し, 喉頭部の蜂窩織炎と診断され某病院に入院した. 入院後呼吸困難が激しくなり, 左無気肺の出現と胸水の増加が認められた. さらに左気胸も併発したため, 胸腔ドレナージが行なわれたのち当科に転院した. 胸部X線所見では, 縦隔と心陰影の拡大, 縦隔気腫, 左気胸, 両側胸水貯溜が認められた. CTでも, 著明な縦隔気腫が認められた. 直ちに全身麻酔下に左下顎部の膿瘍を切開し, 開放創とした. さらに縦隔と左胸腔にドレーンを挿入した. 創部から採取した組織と膿の培養からカンジダ症と診断された. 縦隔および左胸腔ドレーンから抗真菌剤の注入を行なうと同時に, 全身的にも抗真菌剤の投与を行ない5ヵ月後に軽快退院した.
  • 小川 晴彦, 藤村 政樹, 西 耕一, 金森 一紀, 松田 保, 渡辺 洋宇, 野々村 昭孝, 北川 正信
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1371-1374
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は37歳, 女性. 微熱, 喀痰, 咳嗽を認め近医受診. 胸部X-Pで右下肺野に異常陰影を認めたため精査目的で当科に紹介入院. 胸部CT, 選択的気管支造影, 大動脈造影により, 限局性嚢状気管支拡張症と肺分画症の合併と診断し右下葉切除術を施行した. 術後の病理学的検索では, 分画肺に隣接して存在する右気管支 (B7b) が, 軟骨構造の欠如する細気管支より末梢で嚢状に拡張していた. また, その部位において, 肺胞の数は減少していたが肺胞自体は気腫性の変化に富んでいた. 一方, 本症例で認められた漏斗胸は, 陥凹の最強点が胸骨右縁第5肋骨上であり, 分画肺の存在する部位に近接していた. 本症例は, 分画肺の存在自体が, 生後の正常な呼吸運動を阻害したために, 隣接する固有肺や胸郭に大きな変形をもたらしたと考えられる興味ある症例である.
  • 荒木 潤, 賀来 満夫, 増本 英男, 福田 安雄, 浅井 貞宏
    1989 年 27 巻 11 号 p. 1375-1379
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 女性. 歩行障害, 排尿障害を主訴として入院した. 神経学的所見および検査所見よりHAMの診断がなされた. 入院時の胸部X線では異常影は認めなかったが3ヵ月後に胸部X線を撮ったところ, 両肺野にび漫性に微小粒状影及び網状影が出現していた. 肺機能検査でV25の低下を認めたものの呼吸器症状は全くなく, 動脈血液ガス所見も正常であった. 気管支肺胞洗浄では総細胞数の増加, リンパ球比率の上昇が認められた. リンパ球は主としてT-cellであった. 気管支鏡下肺生検では細気管支炎および胞隔炎の所見がみられた. プレドニン維持療法していたところ徐々に異状影は消失した. 最近HTLV-1に関連した肺病変が問題となってきており, 本症も臨床経過が興味深く報告した.
  • 1989 年 27 巻 11 号 p. 1380-1397
    発行日: 1989/11/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
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