immotile cilia 症候群 (ICS) は, 先天的な線毛の超微細構造異常に基づき, 多彩な臨床症状を呈する. 気管支拡張症, 慢性副鼻腔炎, 中耳炎, 不妊を臨床症状とし, サッカリンテスト延長, 電顕上 inner 及び outer dynein arm の欠損, 微小管の数と配列の異常, compound cilia を認めた本症症例を報告した. さらに, 電顕上特徴的な異常が認められた本邦 ICS 38例を渉猟し, それらの臨床症状, 家族歴, 気道クリアランス, 電顕的異常について検討を加えた. 幼少時より反復する気道感染, 不妊をみる患者では, 非侵襲的スクリーニングとして, サッカリンテスト及び精子の鏡検が診断上有用であると思われた. また最近, 本症の線毛はかならずしも immotile ではなく, むしろ hypomotile あるいは asynchrony がその特徴とされ, さらに超微細構造異常と motility pattern, 臨床症状との対応が試みられている. 本症例で症状, 重症度にばらつきがあり, 今後, 不全型, 軽症例を含めた全科的な症例の蓄積が必要である.
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