日本胸部疾患学会雑誌
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27 巻, 6 号
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  • 平谷 一人, 崎戸 修, 迎 寛, 森川 伸雄, 千住 玲子, 門田 淳一, 福島 喜代康, 小森 清和, 廣田 正毅, 原 耕平
    1989 年 27 巻 6 号 p. 673-678
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌患者の癌性胸水におけるシアル化 Lewisx (S-Lex) とCA19-9として知られているシアル化 Lewisa (S-Lea) を検討した. これらの糖鎖抗原の癌性胸水における陽性頻度は, S-Lexが49.1%, CA19-9が40.0%で, S-Lexが高く, またCA19-9が陽性を示した例は殆どがS-Lexも陽性であった. このことから, 肺癌の癌性胸水における腫瘍マーカーとしては, S-LexがCA19-9より有用であると考えられた. 胸水中のS-LexとCA19-9が異常高値を示した1症例の胸水を sephacry S-1000でゲル濾過し, S-LexもCA19-9も分子量200万以上の高分子に共通して存在することを示唆する成績を得た. それゆえ, 2つの糖鎖抗原に対するモノクローナル抗体を用いて, doubledeterminant assay を行ったところ, 2つの糖鎖抗原の活性のパターンはほぼ一致した. 以上のことから, S-LexとCA19-9は胸水中では共通の高分子蛋白を carrier として存在することが強く示唆された.
  • 坂本 裕二
    1989 年 27 巻 6 号 p. 679-688
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Ergonovine が喘息発作を誘発したという報告があり, このアルカロイドの気道平滑筋に対する作用機序を犬気管気管支平滑筋を用いて分析した. Ergonovine および serotonin (以下5HT)はともに犬気管平滑筋を収縮した. 種々の拮抗薬のうち methysergide のみが ergonovine と5HTによる犬気管平滑筋の収縮反応を競合的に拮抗した. Phenoxybenzamine を用いて ergonovine の5HT受容体に対する親和力 (affinity) と効力 (efficacy) を計算したところ, ergonovine は5HT受容体において5HT自体よりも強い親和力と効力を示した. 犬気管支平滑筋においてもほぼ同様の結果が得られた. 以上の結果は, ergonovine が犬気管気管支平滑筋を5HT受容体を介して直接収縮させることを示しており, 報告されている気道収縮発作もこの機序により誘発されたものと思われる.
  • 北原 義也, 高本 正祇, 丸山 正夫, 田中 靖, 石橋 凡雄, 篠田 厚
    1989 年 27 巻 6 号 p. 689-695
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    X線CTから得られる定量的指標であるLL%w (肺野におけるCT値-950 Hounsfield unit 以下の占拠率, 最大呼気位) が, 慢性肺気腫と気管支喘息, 慢性気管支炎の鑑別に役立つか否かを検討した.
    まず, LL%wの平均値 (±標準偏差) は, 慢性肺気腫群では24.6±20.2% (n=40) と高値であり, LL%w≦1% のものはなかった. 気管支喘息群では0.5±0.8% (n=27), 慢性気管支炎群では0.3±0.6% (n=14) と低値であり, 慢性肺気腫群と他群との間に, 明らかな差があった. 臨床的に気管支喘息や慢性気管支炎と診断されていて, なおかつLL%w>1% の場合は, 肺気腫の合併や著しい air trapping が存在するものと思われた. また, 上記の各群の中から, 一秒率の平均値がほぼ同じになるように選抜した症例群の比較でも, LL%wは慢性肺気腫と気管支喘息, 慢性気管支炎の鑑別に有用であった.
  • 黒木 秀明, 加藤 政仁, 林 嘉光, 伊藤 剛, 松浦 徹, 武内 俊彦
    1989 年 27 巻 6 号 p. 696-702
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ラット気管を用い, 正常粘膜および傷害粘膜に対する P. aeruginosa の付着能を検討した. すなわち0.1N塩酸を10分間接触させて傷害粘膜を作製し, P. aeruginosain vitro で付着させ走査電顕で観察した. P. aeruginosa の付着能は傷害群が正常群に比し著明に高値を示した. P. aeruginosa の傷害粘膜への付着能におよぼすムチンと各種の糖の影響を検討した. P. aeruginosa の付着はムチン, N-Acetylneuraminic Acid, N-Acetyl-D-Galactosamine の前処置で抑制された. しかし N-Acetylglucosamine, L-Fucose, D-Mannose, D-Galactose の前処置では抑制されなかった. 傷害気管粘膜を過ヨウ素酸ナトリウムまたはノイラミニダーゼで前処理すると P. aeruginosa の付着は抑制された. 以上の成績よりシアル酸は気管粘膜およびムチンにおいて P. aeruginosa のレセプターあるいはその一部として働いている可能性が示唆された.
  • 鈴木 清, レシャード カレッド, 秋山 仁一郎, 糸井 和美, 平田 敏樹, 室 恒太郎
    1989 年 27 巻 6 号 p. 703-711
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    呼吸器疾患患者の血清TPA値を新しく開発された IRMA (Immunoradiometric assay) 法にて測定し, 従来用いていた二抗体法と比較検討した. 両測定法間には高い正の相関が得られ (r=0.7566, p<0.05), 両法の測定値には一致するものが多く認められたが, 非腫瘍性疾患患者群については, IRMA法は陽性率, 平均値ともに二抗体法と比べて有意に低値を示した (p<0.01). これは, IRMA法がより特異性の高い測定法であることを示すものと思われた. また, cut of 値を110u/lとした場合, 原発性肺癌199例, 非腫瘍性疾患495例のIRMA法の感度は54.8%, 特異性は85.1%, 正診率は76.9%であり, 組織型分類では50~60%の平均した陽性率を示し, 広い組織型スペクトルを有し, 日常臨床においてより信頼性の高いマーカーであると思われた.
  • 藤田 次郎, 豊後 雅巳, 秦 ゆうき, 中村 洋之, 塩谷 泰一, 入野 昭三
    1989 年 27 巻 6 号 p. 712-717
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支肺胞洗浄法を用いて, 細菌性肺炎患者の肺胞洗浄液中の細胞成分の分析, およびエラスターゼとα1アンチトリプシンとの均衡状態の定量を行ない, 正常非喫煙者と比較した. 肺炎患者の肺においては, 好中球の集積が特徴的であった. また肺胞洗浄液中のα1アンチトリプシンはその活性を失っていることが明らかとなった. さらに肺胞洗浄液中にエラスターゼ酵素活性を検出し, エラスターゼ負荷の増加していることが明らかとなった. 以上より肺炎患者においてはエラスターゼとα1アンチトリプシンの均衡状態が崩れていることが判明した.
  • 中村 仁, 北田 修, 岡村 婦美子, 来栖 昌朗, 杉田 實
    1989 年 27 巻 6 号 p. 718-723
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    33歳女性, 血痰と胸痛のため昭和60年9月当科に入院. 血管造影で右肺動脈の上中葉枝に欠損が認められたが, 大動脈とその分枝には異常はみられなかった. このため肺梗塞症と診断された. その後抗凝固療法を受けていたが, 62年6月, 右頚部に血管雑音が聴取されたため再入院となった. 血管造影では, 肺動脈病変の進行と共に, 両側総頚動脈と右椎骨動脈の狭窄が認められ大動脈炎症候群と診断された. 肺動脈病変の先行を血管造影で確認できた非常に稀な例と考えられ報告した.
  • 山本 暁, 横山 邦彦, 日下 幸則
    1989 年 27 巻 6 号 p. 724-729
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    33年間の石綿業従事の64歳の男性が, 中等度の息切れと左上葉の銭型陰影にて当院へ入院したが, 10ヵ月後, 呼吸不全死した. 剖検で石綿肺症の所見の他に, 右肺尖部の非定型抗酸菌症 (M. intracellulare) による空洞病変, さらに左上葉には, 扁平上皮癌, 腺癌および小細胞癌がそれぞれ隣接してみられ, 胃には印環細胞癌による早期癌も認められた. 石綿肺に合併した本例のような多彩像は過去の文献例にもみられず, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 桑原 正喜, 奥村 典仁, 康 天志, 有安 哲哉, 福瀬 達郎
    1989 年 27 巻 6 号 p. 730-734
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    56歳の男性で肺癌手術時に左胸腔内の肋骨横隔洞に直径が約6mmの真珠様の遊離物質が認められた. 胸腔内には少量の胸水の他には壁側胸膜には特に石灰化や Pleural plaque などの異常所見はみられなかった. また, 肺胸膜も腫瘍部位の胸膜巻き込みが認められた他には特に異常所見はみられなかった. 遊離物質の病理組織学的検索では脂肪組織がその核となり周りを線維組織や硝子様組織により被覆された球状のものであった. 遊離物質の核となっている脂肪組織は胸腔内あるいは肺胸膜の脂肪腫または脂肪組織が脱落遊離したものと推定した. このような症例は滝口らの言う『胸腔内結石』の前駆物質と考えられ, 内外文献上2例目と考えられる極めて稀な症例である.
  • 近藤 光子, 松田 直樹, 千代谷 厚, 川上 雅彦, 金野 公郎, 滝沢 敬夫, 浜野 恭一, 笠島 武, Gen Inuo
    1989 年 27 巻 6 号 p. 735-741
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は45歳女である. 進行性の労作時呼吸困難を主訴に入院した. 胸部レ線上肺の過膨張を示し, 肺機能上混合性障害を認めた. 選択的肺胞気管支造影と直径3mmの気管支鏡にて小気管支から細気管支の器質的な閉塞性病変が確認されその付近の気管支生検では非特異性炎症性肉芽の所見が得られた. 以上より閉塞性気管支細気管支炎 (BBO) と診断した. 本症例はまた血液検査で多クローン性のIgMの異常高値を認めた. さらに巨大な腹部腫瘤が発見され摘出手術を行った. 本腫瘤は腸間膜にあり組織学的に検索したところ Hyaline-Vascnlar type の Castleman リンパ腫と診断された. 腫瘤摘出後IgMの著明な低下とともに呼吸困難も軽度ながら改善傾向にある. BBOと Castleman リンパ腫の合併例は本邦第2例目でありBBOの病因を考える上で示唆に富む1例と思われる.
  • 中島 正光, 中浜 力, 日野 二郎, 角 優, 梅木 茂宣, 二木 芳人, 副島 林造
    1989 年 27 巻 6 号 p. 742-746
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は60歳, 女性, 約10年前より, 慢性気管支炎があり, 感染増悪, 軽快をくり返していた. 昭和61年12月15日, 37.2℃の発熱, 喀痰の増加のため来院, 喀痰の細菌学的検査では, P. multocida が分離された. 抗生剤の投与により, 発熱, 喀痰の減少, 本菌の消失が見られた. さらに昭和62年4月及び5月に同様の症状が出現, いずれにも本菌が喀痰より分離され, 抗生剤投与により, 症状の改善と本菌の消失が見られた. 同時期に患者はインコなど8羽の鳥を室内で飼育しており, 飼育鳥に抗生剤の投与を行ったところ, 以後患者喀痰より, P. multocida は分離されなくなった. 経過より考えて, 本症例は飼育鳥が原因であった P. multocida 感染症と考えた. 本菌は, 人畜共通感染症であり, ネコ, イヌなどの咬, 掻傷による感染が, 大部分をしめている. 鳥が原因と考えられた呼吸器感染症の報告は, 検索した限りではなく, 本例が第1例と考えられた.
  • 山城 敏行, 井上 敦, 田宮 達男, 鈴木 了司, 森木 利昭, 荒木 国興
    1989 年 27 巻 6 号 p. 747-753
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性. 咳嗽, 右胸痛にて発症し, 胸部X線写真上右S9領域に直径約4cmの孤立性陰影を認めた. 経気管支的組織診にて好酸球浸潤を伴う肉芽腫病変を得たため寄生虫疾患を疑い免疫学的検査を施行した. Ouchterlony 法で犬糸状虫抗原に対して強い沈降線が認められ, ELISA法では抗体価1:12,800の強陽性であった. 肺部分切除術を施行し壊死巣内に Dirofilaria immitis と推定される虫体断面を認めた. その後の抗体価の変動を節ELISA法により約1年間にわたり追跡したところ, 術後は抗体価が急速に低下し1ヵ月後1:3,200, 6ヵ月後1:200で, 9ヵ月後に陰転した. 以上の結果から, 本症の診断及び経過を追跡する上で Ouchterlony 法及びELISA法による免疫学的検査は極めて有用と考えられた.
  • 津田 透, 寺田 泰二, 根本 正, 呉 俊雄, 松延 政一, 外村 聖一, 清水 慶彦
    1989 年 27 巻 6 号 p. 754-759
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺野結節性陰影の場合, 胸腔内病変や胸腔外でも皮膚, 筋肉, 軟部組織の肺外病変はCTで明瞭に描写される. また前方の肋軟骨の化骨は肋骨の骨稜線を追うことにより胸部X線写真でも識別できる. しかし肋骨内病変は肺野, 縦隔レベルの window では明瞭に描出されない. 我々は, 胸部X線写真で肺野結節性陰影が認められるが, 断層写真では明確に肋骨内病変と判明せず, 肺野, 縦隔レベルのCTでも確認できなかった3症例を経験した. しかし, 同じスライスを骨レベルの window に検討することにより肋骨の硬化像であることが確認された. 今回我々の経験から肺野結節性陰影が, 断層写真や, CTで存在部位が不明の場合, 肋骨内病変も疑い肺結節病変に一致するスライスを骨レベルの window で再度確認することが必要であることが考えられた.
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