症例は60歳, 女性, 約10年前より, 慢性気管支炎があり, 感染増悪, 軽快をくり返していた. 昭和61年12月15日, 37.2℃の発熱, 喀痰の増加のため来院, 喀痰の細菌学的検査では,
P. multocida が分離された. 抗生剤の投与により, 発熱, 喀痰の減少, 本菌の消失が見られた. さらに昭和62年4月及び5月に同様の症状が出現, いずれにも本菌が喀痰より分離され, 抗生剤投与により, 症状の改善と本菌の消失が見られた. 同時期に患者はインコなど8羽の鳥を室内で飼育しており, 飼育鳥に抗生剤の投与を行ったところ, 以後患者喀痰より,
P. multocida は分離されなくなった. 経過より考えて, 本症例は飼育鳥が原因であった
P. multocida 感染症と考えた. 本菌は, 人畜共通感染症であり, ネコ, イヌなどの咬, 掻傷による感染が, 大部分をしめている. 鳥が原因と考えられた呼吸器感染症の報告は, 検索した限りではなく, 本例が第1例と考えられた.
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