日本胸部疾患学会雑誌
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27 巻, 9 号
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  • 石塚 全, 黒沢 元博
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1017-1022
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    vasoactive intestinal peptide は気道における非アドレナリン・非コリン作動性抑制神経の神経伝達物質と推定され, 気管支喘息の病態への関与が考えられている. 気道におけるVIPの動態, 役割を明らかにするための基礎実験として, モルモット気道のVIP免疫活性を radioimmunoassay により測定した. 気管, 肺外気管支, 肺を抽出操作後, 測定に供し, 組織湿重量1g当たりのVIP免疫活性を求めた. 気管, 肺外気管支のVIP免疫活性はそれぞれ939.9±262.1 (mean±SD)pg/g湿重量, 858.8±241.1pg/g湿重量であった. 肺は23検体中14検体で測定不能であったが, 残り9検体の測定値は111.7±61.5pg/g湿重量であった. すなわち, VIPは肺に比べ, 気管, 肺外気管支により多く存在することが示唆された.
  • 藤井 俊司, 池田 英樹, 佐々木 秀樹, 高橋 敬治
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1023-1030
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺線維症は肺組織の各構成成分 (膠原線維, 弾性線維, ムコ多糖体を含む基質) の形態学的及び生化学的変化と伴ない, その力学的特性に変化が生ずる疾患である. 形態学的および生化学的変化が肺胞壁組織の粘弾性特性を変化させ, 換気機能障害を生じさせると考えられる. 本研究は線維化肺の肺胞壁組織の粘弾性特性を検討することを目的とした. 対照ハムスター群 (C群) 及びブレオマイシン経気管投与による実験肺線維症群 (B群) に対して, 肺胞壁組織 (80×80×1000μm) の応力緩和曲線を測定し検討した. 応力緩和曲線をマクスウエルモデルを用い, 残差法により解析し, 3つの異なる緩和時間 (Tm) を算出した. C群に比し, B群のTm3 (応力緩和の一番長い要素) が有意に大となった. このことは,ブレオマイシン投与により肺の線維化が生じ, 弾性線維の増加によって粘性が増大したためと考えられた.
  • 田川 秀樹
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1031-1039
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺動脈血流は拍動流であり, 肺血管の病変をより詳細に把握するためには入力インピーダンス解析はきわめて重要である. 今回著者は, 慢性呼吸器疾患患者 (52例) を対象にマルチセンサーカテーテルにより, 肺動脈入力インピーダンス解析を行い検討を加えた. 全症例の検討ではインピーダンス指標である特性インピーダンス値は肺高血圧に伴い上昇し, 第1最小インピーダンス周波数値は右方移動を示した. しかし間質性肺炎症例では, 肺高血圧の程度と特性インピーダンス値との相関はなく, 肺血管障害の違いが示唆された.また肺動脈脈波伝播速度は第1最小インピーダンス周波数値と相関を認めたが, 特性インピーダンスとは相関を認めなかった. 以上のことにより, 肺動脈入力インピーダンスの解析は慢性呼吸器疾患患者の肺血管障害をみるのに有用な方法と考えられた.
  • 玉置 淳, 小林 健司, 坂井 典孝, 兼村 俊範, 川上 雅彦, 滝沢 敬夫
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1040-1045
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    多量の喀痰を有する慢性気道感染症例に対しインドメサシン (INDO) の吸入療法を行った. 吸入2週後には喀痰量の有意な減少が認められ (211±43→106±22ml/day, p<0.05), その効果はびまん性汎細気管支炎 (DPB) 症例で顕著であり, さらに喀痰中プロスタグランディンE2 (PGE2) 濃度の低下が認められた. 犬気管粘膜を用いた in vitro の実験においても, INDOは short-circuit current を著明に抑制したことから, Cl-の分泌の低下により管腔側への水分移動の減少が招来されるものと考えられた. したがって, INDO吸入は, 主に気道上皮のPGE2産生抑制を介したCl-チャンネルの機能低下により気道粘液性成分を減少させるものと推察され, DPBを主とする喀痰量の多い症例に対する新しい治療法として有用であると思われた.
  • 小林 英夫, 松岡 緑郎, 三重野 龍彦, 北村 諭, 武 彰, 山本 記顕, 福島 鼎, 早川 和志, 羽田 圓城
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1046-1052
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    一側肺全摘後の肺癌症例のCT像において, 胸郭・遺残胸腔について検討した. 遺残胸腔面積, 術側胸郭面積, 健側胸郭面積の計測と, 画像所見が検討項目である. (1) 右切除例と左切除例間では, 術側胸郭の縮小程度は差を認めなかったが, 遺残胸腔は左切除例で有意に小であった (p<0.01). (2) 右切除例では術側胸郭, 遺残胸腔ともに, 左切除例では遺残胸腔に, 経時的縮小が見られた. (3) 左肺切除例では胸骨正中切開時の術側胸郭の縮小率が, 後側方切開時に比し有意に小であった (p<0.01). 画像所見では, 遺残胸腔外縁の環状構造は, 従来, 壁側胸膜肥厚像との評価が見られるが, 器質化胸水が主たる構成成分と推測された. また, 左切除例での食道の拡張所見, 右切除例での肝挙上の flexibility, 石灰化の早期認識などが認められた. 肺全摘術後の胸腔・胸郭の動態および画像所見の把握は, 合併症や再発所見の理解の一助となるものと思われる.
  • エアロゾル2回吸入法による間質性肺疾患症例における検討
    石坂 彰敏, 金沢 実, 鈴木 幸男, 久保 敦司, 橋本 省三, 横山 哲朗
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1053-1058
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    99mTc-DTPAエアロゾル吸入法は間質性肺疾患の肺損傷を99mTc-DTPAの肺からの移動率k (%/min) として推定するものである. 本研究では99mTc-DTPAエアロゾルの気道への沈着が末梢肺領域における肺損傷の推定に及ぼす影響を間質性肺疾患症例と健常非喫煙者で検討した. エアロゾルの末梢肺沈着率は新たに考案した99mTc-DTPAエアロゾル2回吸入法を用いて算出した. エアロゾルの末梢肺沈着率は健常非喫煙者で73.5±7.8% (n=4), 間質性肺疾患症例で75.5±9.2% (n=8) であり, 両群間に差を認めなかった. 末梢肺沈着率を補正して得られたkc (corrected k) の平均は間質性肺疾患症例で4.08±1.63%/minと健常非喫煙者の1.36±0.47%/minに比べて高値であった (p<0.01). また両群ともkcはkに比べて有意に高値であった (p<0.01). しかしkとkcの間に相関を認め (r=0.951; p<0.01), 対象とした間質性肺疾患症例と健常非喫煙者を99mTc-DTPAエアロゾル吸入法により弁別するに際し, エアロゾルの末梢肺沈着率を考慮する必要がないと考えた.
  • 桑野 和善, 松葉 健一, 池田 東吾, 村上 純滋, 荒木 昭輝, 西谷 弘, 石田 照佳, 安元 公正, 城戸 優光, 重松 信昭
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1059-1065
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    比較的小型の肺腫瘤のために肺葉切除を受けた患者を対象として, 軽度の肺気腫の評価における高分解能CT及び肺機能検査の有用性を比較検討した. 切除肺の肺気腫の程度を Thurlbeck らによる picture grading method を評価基準として3群に分けて評価すると, その程度はCTと良く相関した. 又, 肺胞壁の破壊を表す Destructive Index によって3群に分けて評価すると, 最も破壊の程度の軽いI群とそれよりやや強いが軽度のII群とは, CTでは区別できなかったが, DLco/VAによって区別できた. このことは, CTは肺胞の拡張を捉えて肺気腫の程度を評価するが拡張に先行する肺胞壁の破壊は捉えることができないのに対し, DLco/VAは肺胞壁の破壊によく反映するためと考えられた. 肺気腫が軽度の場合, 高分解能CTと肺機能検査を組み合わせることによって評価が可能であると考えられた.
  • 西 耕一, 金森 一紀, 安井 正英, 笠原 寿郎, 藤村 政樹, 松田 保, 安江 静香, 末永 孝生
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1066-1073
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシス (以下サ症) 患者および健常対照者におけるBALFリンパ球および末梢血リンパ球の subpopulation を 2-color で分析し, 比較検討した. サ症および対照者のBALFリンパ球はPBLとは異なる subpopulation を示し, BALF-CD4 (Leu3a) +細胞はほとんどがCD4+4B4+細胞 (helper inducer cell) からなり, BALF-CD8 (Leu2a) +細胞はほとんどがCD8+CD11 (Leu15) -細胞 (cytotoxic cell) からなっていた. サ症患者では, BALFリンパ球が相対的にも絶対的にも増加し, その subpopulation ではCD4+4B4+細胞の増加, CD8+CD11-細胞の相対的減少および CD4+HELA-DR+細胞の増加が特徴的であった. このことは, サ症の肺内において活性化されたCD4+4B4+細胞が多数存在し, この細胞がサ症の病態形成に深く関与していることを示唆するものと考えられた. 今後は, この細胞の in vitroin vivo での作用やBALF細胞所見の臨床病期やステロイド療法による変動について検討したい.
  • 木村 郁郎, 坪田 輝彦, 上田 暢夫, 多田 慎也, 吉本 静雄, 十川 重次郎, 白石 高昌, 玉木 俊雄, 植野 克巳, 藤田 豊明, ...
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1074-1081
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    びまん性汎細気管支炎 (DPB), 特発性間質性肺炎 (IIP) の中にATLを発症ないし抗ATLA抗体陽性を示すもののあることを見いだしたが, ATLの側からみればその肺病変の中に肺炎とか腫瘍細胞浸潤以外に細気管支肺胞領域に特異的な病態像を形成するものがあり, この病態をHTLV-I関連細気管支・肺胞異常症, HTLV-I associated bronchiolo-alveolar disorder (HABA) と称した. そして, これまでに見いだした細気管支型5例及び肺胞型1例の計6例の臨床的特徴について述べた. 本病態はHTLV-I感染後長年の間に形成されるものと考えられるが, DPB, IIPの成因についての示唆を与えるものと思われる.
  • 猪尾 昌之, 藤田 次郎, 豊後 雅巳, 山地 康文, 二見 仁康, 秦 ゆうき, 中村 洋之, 塩谷 泰一, 入野 昭三
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1082-1086
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性, 昭和60年7月に肺小細胞癌と診断され, シスプラチン (CDDP), アドリアマイシン (ADM), VP-16を中心とした併用化学療法にて complete remission を得た. 初回治療後約2年6ヵ月後, 左上肺野に小結節陰影が出現し, 高分解能CT (ReView CT) と気管支肺胞洗浄法にて肺結核症の診断を得た. 肺小細胞癌長期生存例が増加するとともに, 二次的肺感染症 (結核, 非定型的抗酸菌症, 真菌症など) を合併する例が増えてくる可能性があり, 注意が必要と思われた.
  • 増本 英男, 賀来 満夫, 荒木 潤, 浅井 貞宏, 高田 俊夫, 窪田 芙佐雄, 松尾 武, 池田 高良
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1087-1091
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 男性. 胸部X線上, 縦隔腫瘤影の増大を指摘され, 来院. 手術にて右心縁に接する15cm大の胸腺嚢腫が摘出された. 嚢胞液の性状は灰白色混濁した, 蛋白0.5g/dlの漏出液であった. 本例において最も興味深いのは血清CEAが2.1ng/mlに対し, 嚢胞液中のCEAが223.2ng/mlと異常高値を示したことであった. 免疫組織化学による検討では, 嚢胞内腔を被う上皮細胞及びハッサール小体の一部にCEA陽性細胞が認められた. 今後の症例の集積が必要であるが, 少なくとも嚢胞液中のCEAが高値でも悪性を示唆する所見はみられないことより, このCEAはCEA関連抗原の可能性もあるように思われた.
  • 下元 博史, 今泉 和良, 溝口 健二, 池田 拓也
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1092-1099
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は59歳女性. 高熱, 咽頭痛を主訴に来院. 表在リンパ節, 肝脾腫を触知し, 著明な白血球増加, 肝障害, 血沈亢進, 貧血を呈した. 熱型は38℃~40℃の弛張熱を示し, 各種抗生剤, 抗結核剤によっても解熱せず, 各種自己抗体, RA因子は陰性であった. その後リウマトイド疹の出現により成人 Still 病と診断した. 経過中に心外膜炎, 胸膜炎及び広汎な肺臓炎を合併し呼吸不全を呈した. TBLBでの組織像は肺胞壁の軽度の線維化と炎症細胞浸潤であった. その後, ステロイドパルス療法にて症状及び検査所見の改善をみた. 成人 Still 病での胸部合併症では心外膜炎, 胸膜炎, 限局性肺臓炎の合併率は高いが, 広汎な肺臓炎を合併し呼吸不全を呈した症例はまれで本症例は貴重なー例と思われる.
  • 柴田 美恵, 沖 良隆, 岩田 雅人, 小笠原 文雄, 渡辺 久芳, 野田 康信, 高木 健三, 今泉 宗久
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1100-1105
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は47歳の男性. 胸部X線写真にて左下肺野に腫瘤影を認め, CT, 超音波検査にて気管支嚢胞と診断した. 穿刺液細胞診にて悪性が疑われたため手術を施行した. 手術時, 胸膜肥厚を認めた. 嚢胞とともに, 胸膜の一部と横隔膜上の2個の腫瘤を切除した. 組織所見は, 良性気管支嚢胞と, 混合型の悪性胸膜中皮腫の像を示した. 術後化学療法を施行したが, 心タンポナーデを併発し, 手術1年後肺炎にて死亡した.
  • 村田 朗, 竹田 雄一郎, 臼杵 二郎, 仁井谷 久暢, 鴨井 青龍, 荒木 勤, 小泉 潔, 庄司 佑, 川並 汪一
    1989 年 27 巻 9 号 p. 1106-1111
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    35歳の初産婦が妊娠21週になり左背部痛と呼吸困難を訴えて, 当院産科に入院した. 胸部X線写真上, 両側下肺野に優位なびまん性網状粒状陰影を呈し, 動脈血ガス分析では低酸素血症を示した. 肺機能検査上軽度の拘束性換気障害と拡散障害を認めた. 間質性肺炎を疑い, predonine の投与を開始した. 妊娠経過中に自然気胸を併発, また妊娠37週に男児を分娩後左側乳び胸水が出現したためOK432にて胸膜癒着術施行. 以上の経過から肺リンパ管筋腫症が強く疑われた. TBKLBで肺リンパ管筋腫症の病理診断を得た. 以後, predonine を減量中止し, tamoxifen を投与開始した. さらに開胸肺生検によって progesterone receptor の存在が証明された. 以後は, tamoxifen と cyclophosphamide を投与中である. 治療開始後1年が経過したが, 気胸などの再発はなく呼吸苦も軽度改善した. しかし, 肺機能上も, 胸部X線写真上も明かな改善は認められてない.
  • 1989 年 27 巻 9 号 p. 1112-1115
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1989 年 27 巻 9 号 p. 1116-1128
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1989 年 27 巻 9 号 p. 1129-1132
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
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