日本胸部疾患学会雑誌
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29 巻, 5 号
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  • 小泉 眞
    1991 年 29 巻 5 号 p. 547-553
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    呼吸器疾患における慢性の低酸素血症が, 血液のヘモグロビン酸素解離曲線のP50と 2,3-diphosphoglycerate (2,3-DPG) に与える影響については, いままで一定の見解がえられていなかった. 本研究の目的はこの点を明らかにすることであり, 以下の結果が得られた. 1) PaO2が60Torr以下の群では正常群と比較してP50が有意に高い値を示した. 2) Hb濃度 ([Hb]) とP50, 2,3-DPGは共に負相関が見られた. 3) 血液pHとP50, 2,3-DPGは共に正相関が見られた 4) [Hb], pHが正常範囲にある群では, PaO2とP50に負相関がみられた. 5) [Hb], pHが正常範囲にある群ではPaCO2とP50に正相関が見られた. 6) [Hb], pH, PaCO2が正常範囲にある群ではPaO2と2,3-DPGに負相関がみられた. 以上の結果からP50ならびに2,3-DPGに影響する因子では [Hb] とpHの役割が大きい. しかし低酸素血症自体にP50, 2,3-DPGを上昇させる作用がある.
  • 沈 海, 黄 正寿, 山之内 菊香, 桜井 滋, 北川 駿介, 長坂 行雄, 大谷 信夫, 福永 寿晴
    1991 年 29 巻 5 号 p. 554-559
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    閉塞型睡眠時無呼吸症候群 (OSA) の原因として上気道の構造的, 機能的異常が挙げられる. 睡眠時無呼吸は仰臥位で増強し, また側臥位で無呼吸が軽減するという報告もあり, 特にOSAの簡単な治療法として利用されている側臥位での咽頭断面積 (以下PA) の評価が必要かつ, 重要である. 我々は ART (Acoustic Reflection Technique) を用いて健常者41人 (男11, 女30人) を対象とし, 体位 (坐位, 仰臥位, 側臥位) によるPAの変化を検討した. PAは坐位では男女それぞれ3.8±0.6cm2, 3.3±0.5cm2, 側臥位では3.5±0.6cm2, 3.1±0.5cm2, 仰臥位では2.9±0.5cm2, 2.7±0.4cm2となった. PAは坐位を基準にして仰臥位では男24.4±9.5%, 女16.6±6.8%とそれぞれ減少し (p<0.01), 側臥位では男9.2±5.5%, 女5.7±5.4%減少した (NS). 以上健常者のPAは体位により異なり, 臥位によるPAの減少の程度は仰臥位から側臥位とすることにより軽減された.
  • 大塚 義紀, 浮田 英明, 正木 芳孝, 土肥 勇, 棟方 充, 川上 義和, 本間 行彦
    1991 年 29 巻 5 号 p. 560-565
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    昭和53年から昭和60年までに当科を受診しIIPと診断された45例の患者を4年から10年間 prospective に経過を追跡し, 肺癌発症率を検討した. またその対照群として性, 年齢, 喫煙指数をマッチさせた男性のみの慢性閉塞性肺疾患 (COLD) 患者45例を選び, 両群の肺癌発症率を比率した. さらに, 観察期間中に肺癌を合併したIIP群とそれ以外の群につき初診時の年齢, 性別, 喫煙歴, 臨床症状, レ線所見等を比較検討した. IIP症例45例中8例 (18%) に肺癌が経過中にみられた. 8例全員が男性喫煙者であった. 肺癌の組織型では腺癌 (4例), 小細胞癌 (3例) が多い傾向にあった. 男性のみに限るとIIPからの肺癌発症率は21.6% (37例中8例) となりCOLD群の肺癌発症率2.2%に比較し有意に高かった. また, 肺癌を合併したIIP群とそれ以外の群との比較では初診時の呼吸困難が軽く, 肺活量の低下が少なく, 下肺野の縮小が少なく, 経過中ステロイドの未使用例, 即ち慢性型の特徴を持ったIIP患者に肺癌の合併が多い傾向があった.
  • 三嶋 理晃, 杉浦 直治, 福永 隆文, 川上 賢三, 田中 螢子, 筒井 多佳志, 西村 浩一, 久野 健志
    1991 年 29 巻 5 号 p. 566-572
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ボディーボックス内で安静呼吸をしている被験者の box flow (Vb) と mouth flow (Vm) の位相差は, 慢性肺気腫 (CPE) やびまん性汎細気管支炎 (DPB) 等の閉塞性障害群において高値を示す. 本研究では, この増大因子を検討した.まず, 呼吸器システムを単一のコンパートメントより構成されると仮定し, Runge-Kutta 法 (R. K. 法) を用いて気道抵抗, 肺気量, Vbの実測データよりVmを求め, これより予測位相差を算出し, 実測値と比較した. その結果, 正常例では実測値とR. K. 法による予測値の比は0.99±0.25であり, 正常例ではこのモデルで位相差を予測出来る事を示していたが, CPEではこの比が1.83±0.63, DPBでは1.50±0.48と高値を示した. 閉塞性障害群における位相差増大の原因として, 気道抵抗の増大に加えて肺胞内圧の不均等分布を伴う気道抵抗の parallel inhomogeneity が関与していると考えられた.
  • 赤柴 恒人, 大塚 健蔵, 吉沢 孝之, 倉科 桂司, 河村 俊明, 佐々木 巌, 細川 芳文, 堀江 孝至
    1991 年 29 巻 5 号 p. 573-577
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    8例の閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) の夜間腎機能と, それに及ぼす Nasal CPAP (NCPAP) の影響について検討した. NCPAPの使用により, NCPAP前では, 夜間2回以上認められた頻尿が全例で消失した. 夜間の分時尿量は, NCPAP使用中では, 使用前の1.36±0.15ml/分から0.75±0.20ml/分へと有意に (p<0.01) 減少し, クレアチニンクリアランスも116.8±46.5から101.3±33.0へと有意 (p<0.05) に減少した. 血中NaとクレアチニンはNCPAPによる影響をうけなかったのに対し, 尿中Naとクレアチニンは有意の変化を示した. 血中レニン, アルドステロン, ADHは有意の変化を認めなかった. 夜間分時尿量はDIと有意 (p<0.05) の正相関, %FRCと有意の (p<0.05) 負の相関を示し, 低酸素血症との関連が示唆された. これらの結果より, OSAS患者では夜間の腎機能が正常者と異なっており, NCPAPにより正常に復すると考えられた.
  • 土井 義之, 檀原 高, 斎藤 博之, 家永 浩樹, 植木 純
    1991 年 29 巻 5 号 p. 578-587
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    超音波ガイド下に小カテーテルを挿入し, 気胸を作成することなく陰圧のままの状態で, 胸腔造影を実施した. 造影剤としてはコンレイ60 (0.5~1.0ml/kg) を使用したが, 胸膜刺激症状はほとんどなく, 適度な粘稠度で, 鮮明な画像を描出することができ, 胸腔内から48時間以内に排出された. 本法により, 従来より判定が困難であった胸膜癒着, 完全分葉, 不完全分葉, 過分葉などの肺葉の分葉状態, 葉間を越えた腫瘍の浸潤, 嚢胞や胸膜陥入などによる肺表面の形状変化を臨床的に評価することが可能になった. 本法の臨床への導入は, 肺, 胸腔疾患の胸膜への波及の評価, 外科的治療の選択にきわめて有用である.
  • 坪田 昭人, 中谷 龍王, 成井 浩司, 野口 昌幸, 中森 祥隆, 蝶名林 直彦, 中田 紘一郎
    1991 年 29 巻 5 号 p. 588-594
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    親族内発生のオウム病 (以下本症) 3例を報告した. 症例1 (46歳女性)・症例2 (18歳女性) は母娘で, セキセイインコの雛を購入し自宅室内で放し飼いにしていた症例3 (49歳女性, 症例1の姉, 症例2の伯母) の自宅を訪れ, 購入時より雛の世話をしていた. 症例1は発熱, 頭痛, 嘔気で髄膜炎を疑われ, 神経内科に入院したが, 低酸素血症, 肝障害, 胸部X線写真で陰影を認め, 問診により本症を疑われた. 症例2・3は発熱, 頭痛等で発症し, 胸部X線写真で陰影を認め, 問診で本症と考えた. 血清 Chlamydia CF 抗体価は症例2・3ともに32倍に上昇し, 本症と診断した. 最も重症の症例1は経過を通じ16倍で, CF抗体価の上昇をみなかったが, 臨床的に本症と診断した. 雛との接触歴が重要で, 問診が本症診断の重要な糸口となる. またCF抗体価の上昇をみない症例も存在し, 単独発症の場合は診断が困難で, 臨床的に興味ある症例と思われた.
  • 矢口 長門, 大久保 喜雄, 武田 正, 若林 透, 半田 健次郎, 関口 守衛
    1991 年 29 巻 5 号 p. 595-599
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例, 55歳, 男性. 発熱・咳嗽を主訴に入院. 38~39℃台の発熱が6週間持続し, 胸部X線写真上, 両側の肺部リンパ節腫脹 (以下BHL) と肺野の網状影を認めた. 血尿, 赤血球円柱尿, 高尿素窒素血症, 末梢神経炎, 白血球・血小板増多症, 網状皮班の出現及びその皮膚生検の組織所見より結節性多発動脈炎 (以下PN) と診断した. ステロイド療法により臨床症状及び検査所見は急速に改善した. 症状改善後の腎血管造影では両側腎動脈の末梢において, 血管径の不整・血管の途絶など血管炎の所見を認めたが, 腎生検では血管炎の所見は得られなかった. 発熱, BHLよりサルコイドーシス, 悪性リンパ腫を疑うも, 諸検査より否定された. PNでリンパ節腫脹を伴う症例は今までに報告されているが,BHLを伴うPNの報告例はないので, ここに報告した.
  • 鈴木 正義, 平田 世雄
    1991 年 29 巻 5 号 p. 600-605
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    急性膿胸を併発した副心臓支の1例を報告した. 症例は, 40歳, 男性で, 急性の症状で発病し, 胸部X線, 胸部CT像より, 後胸腔を中心とした急性膿胸と診断した. 抗生物質の全身投与と局所注入でも軽快しないため, 外科的処置が必要と考え, 術前の気管支鏡検査で, 右中間気管支幹起始部より内下方へ向かう, 発赤浮腫を伴う過剰気管支を発見, 気管支造影で先端に気管支瘻を思わせるような小枝を有する長憩室型の副心臓支と判明した. 膿胸の局在と, 術後, 膿胸の治癒に伴う副心臓支の炎症所見の消退より, 膿胸の発生に副心臓支が関与しているものと断定した. 副心臓支が炎症をおこし, 報告されているような血痰, 喀血の原因となるほかに本症例のように膿胸の発生の原因となりうることを強調し, さらに本邦報告例54例について文献的考察をおこなった.
  • 石黒 美矢子, 三浦 直樹, 太田 三夫, 西畑 伸二, 田中 民雄, 津野 至孝, 宮原 嘉之, 神田 哲郎, 吾妻 康次, 山下 三千年 ...
    1991 年 29 巻 5 号 p. 606-610
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    17歳女性, 右前縦隔腫瘍疑いにて入院, 開胸手術を行ない, 右肺中, 下葉の一部, 右胸腺, 心膜を含めて腫瘤を摘出した. 病理診断は Xanthogranuloma であった. 病変の主体は縦隔にあったが, 発症は, 右中葉を中心とした肺炎が先行し, ステロイドにより遷延し, 縦隔へ炎症が波及し, 縦隔で炎症性変化をおこした可能性が考えられた.
  • 迎 寛, 崎戸 修, 織田 裕繁, 千住 玲子, 福島 喜代康, 平谷 一人, 門田 淳一, 小森 清和, 廣田 正毅, 原 耕平
    1991 年 29 巻 5 号 p. 611-617
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    間質性肺炎の経過中に病勢と相関し, 糖鎖抗原腫瘍マーカーである, シアル化 Lewisa (CA19-9) とシアル化 Lewisx (SEX) が高値を示した間質性肺炎の2症例を経験した. 症例1は, 咳嗽ならびに体動時の呼吸困難を認め, 当科に入院. 抗生剤やステロイド治療を行ったにもかかわらず, 約2ヵ月の経過で急性呼吸不全で死亡した. 血清CA19-9は病勢と相関し500U/mlから5,506U/mlに増加し, またSLEXも167U/mlから1,185U/mlに増加を認めたが, 剖検で悪性腫蕩の合併は否定された. 症例2は, 慢性関節リウマチに合併した肺線維症の症例で, 一時ステロイドによる治療で軽快したが, 約2年後に急性呼吸不全で死亡した. 初回入院時に血清CA19-9が876U/mlと高値を示したが, ステロイドによる治療で42.4U/mlまで低下し, その後病勢の悪化と共にCA19-9の増加がみられ, 死亡直前には1,339U/mlを示した. 症例1では, 剖検により得られた各種臓器に対して, CA19-9とSLEXの局在を酵素抗体法で検討した. 肺でいわゆる microscopic honeycombing の上皮と気管支腔内内容物で陽性となった以外はほぼ正常の分布であった.
  • 大野 暢宏, 橋平 誠, 宮本 好博, Hidetaka Katsura
    1991 年 29 巻 5 号 p. 618-621
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺良性腫傷の内, 極めて稀とされる孤立性気管支乳頭腫の1例を報告する. 症例は25歳男性, 胸部異常影を主訴に入院. 気管支鏡にて左B6入口部に腫瘍を認め, 生検にて乳頭腫と診断された. 肺機能温存のため, 左 S6 sleeve segmentectomy を施行した. 腫瘍は4×4cm大でカリフラワー状であり, 病理学的に気管支乳頭腫と診断された. 孤立性気管支乳頭腫は, carcinoma in situ との合併の報告もあり, 治療は可能な限り外科的切除が必要である. また, 肺機能温存を図るため可能な限り, 気管支形成術等の術式がとられるべきである.
  • 山田 洋, 増山 泰治, 前崎 繁文, 安岡 彰, 古賀 宏延, 河野 茂, 神田 哲郎, 原 耕平, 綾部 公懿, 富田 正雄
    1991 年 29 巻 5 号 p. 622-626
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は45歳男性. 来院約1年前より, 発熱や喀血, 口腔内アフタ, 下肢血栓性静脈炎を認め, 来院時胸部X線写真で左肺門部に境界鮮明な腫瘤影と, 左肺野血管影の狭小化および消失を認めた. 入院中, 500mlの大喀血をきたし, 気管支動脈造影にて, 左肺門部に拡張および蛇行した多数の新生血管と肺動脈とのシャントの形成を認めたため, この部に閉塞術を施行した. また肺動脈造影にて, 左主肺動脈の一部に陰影欠損と同側の下葉枝や舌区枝の完全閉塞を認めた. 喀血2日後の気管支鏡検査では, 左主気管支の上下幹分岐部の直前および舌枝入口部粘膜に発赤を伴った不整形の小隆起を認め, この部位が出血源と思われた. その後も喀血が持続したため, 内科的にコントロール不能と判断し, 血管ベーチェット病や血管原性腫瘍などを疑い手術に踏み切った. 病巣血管を含めた左肺切除術が施行され, 組織学的には内膜の肥厚と弾性線維の断裂を伴った全層性血管炎と, 内視鏡での観察部位に一致すると思われる気管支粘膜下に拡張した異常血管を認め, この部位の破綻による出血と思われた. 術後, 初めて陰部潰瘍の出現を認め, 眼症状を欠如した不全型肺血管べーチェット病と診断した.
  • 石田 直, 松村 栄久, 三宅 淳史
    1991 年 29 巻 5 号 p. 627-631
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は43歳, 女性. 10歳時に胸部X線にて両肺のびまん性点状陰影を指摘され肺胞微石症と診断された. 自覚症状なく経過していたが40歳頃より呼吸困難が進行し入院した. 胸部X線では両肺に濃厚な石灰化陰影に加えて著明な気腫性嚢胞形成が認められ, 低酸素血症がみられた. 気管支肺胞洗浄にて沈査中に層状構造を有する微石が認められた. 胸部X線像の経時的推移より, 嚢胞形成, 嚢胞内液体貯留, 萎縮していく変化が観察され, 本症の進展期から末期への移行の機序が推察された. 長期にわたる経過が追え, 気管支肺胞洗浄が診断に有用であった点で貴重な症例であると考えられる.
  • 青木 毅, 高木 弘己, 安藤 達志, 飯田 邦夫, 伊藤 雅文
    1991 年 29 巻 5 号 p. 632-637
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は78歳, 男性. 20年間続いた通年型重症気管支喘息で大気汚染による公害認定患者であった. 咳嗽, 喘息発作時に頸部の著しい膨隆をみた. シネ・レントゲン等にて第6頸椎の高さまで両肺尖部が頸椎に沿って上昇してくることを観察し, 死後の剖検により確認した. 頸部型肺ヘルニアは稀な疾患と言われており, 本邦での報告は4例目であるが, 我々は現在までに15例観察しており慢性肺疾患によく合併する病態と考えている.
  • 原 宏紀, 米山 浩英, 田辺 潤, 松島 敏春
    1991 年 29 巻 5 号 p. 638-643
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    救命でき, 肺の線維化の経過を経時的に観察し得たパラコート中毒症例を経験した. 症例は42歳女性. 自殺目的にてパラコート内服し3日目から呼吸困難出現. 呼吸不全に対して低濃度酸素およびステロイド, サイクロフォスファマイドを投与し, 呼吸状態安定したため第191病日で退院した. 胸部CT像は第10病日では胸膜直下, cortical zone は正常に保たれそれより内側から肺門部にかけて肺野濃度が上昇していたが, その後この部の網状線状影が明らかとなり, 特に背側で濃度を増しながら中枢側へ収束し, 6ヵ月後の退院時には線状索状影の部は著明に萎縮していた. それに伴い胸膜直下の部分は牽引されることにより逆に過膨張となりブラが形成されていた. 末梢を残し中枢側に強い線維化を来たすのはパラコートによる肺線維症の1つの特徴と考えられ, その機序に若干の考察を加え報告した.
  • 富井 啓介, 岩田 猛邦, 種田 和清, 郡 義明, 田口 善夫, 南部 静洋, 三野 眞里, 柚木 由浩, 黄 政龍, 北野 司久, 黒田 ...
    1991 年 29 巻 5 号 p. 644-648
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    51歳男性. 喀血を主訴に来院. 気管支鏡で右B6起始部からの拍動性出血を認めた. 胸部XP, CT上著変ないものの気管支動脈造影で右気管支動脈の著明な増生と右中下葉の肺動脈系へのシャントを認めた. 肺血流シンチで右中下葉の欠損を認め, 肺動脈造影では右A4, 5, 6, 9, 10が起始部より途絶していた. これらの所見より本例は肺動脈血流低下に伴う代償性の気管支動脈増生があり, それに起因する出血と考えられた. 今後の出血を防止するため右中下葉切除を行い, 病理学的に陳旧性肺塞栓症が確認された. 喀血の原因となる気管支動脈増生は各種疾患で認められるが, 本例はこれまで無症状で経過し胸部XP上もほとんど無所見であった点特異である. 原因不明の喀血のひとつの可能性としてこのような無症候性に経過した陳旧性肺塞栓症も考慮しておくべきと思われる.
  • 中野 義隆, 紙森 隆雄, 少路 誠一, 樽谷 英二, 田中 勲
    1991 年 29 巻 5 号 p. 649-653
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は左肺S3bを原発巣とした低分化型肺腺癌を有する62歳の男性で, 平成元年6月の初回入院時すでに脳転移があった. 脳転移巣に対しては放射線療法が奏効したが, 原発巣に対する全身化学療法では腫瘍縮小効果が得られず, 8月にいったん退院した. しかし12月末から強い腹痛が出現し, 平成2年1月5日に再入院となったが, 胸部X線写真において横隔膜下に free air を認め, 消化管穿孔による腹膜炎と診断して緊急開腹手術をおこなった. Treitz 靱帯より約20cm肛門側の空腸壁内に中央部に穿孔を伴う腫瘤を触知し, さらにそれより約20cm肛門側の腸間膜にも腫瘤を認め, 空腸部分切除を施行した. 穿孔部の腫瘤は bridging fold を伴った粘膜下腫瘍様であり, 腫瘤の大きさに比して深く大きな潰瘍を形成していた. 切除標本の組織像は肺癌に極めて類似した低分化型腺癌であり, 転移巣と考えられた. 原発性肺癌は広範に他臓器転移をおこすが, 小腸への転移は剖検例での検討においても非常に少ない. さらに転移巣による臨床症状が発現して外科的治療の対象となることは極めて稀であり, 興味ある症例と思われたので報告した.
  • 1991 年 29 巻 5 号 p. 654-665
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1991 年 29 巻 5 号 p. 666-676
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
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