日本胸部疾患学会雑誌
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29 巻, 7 号
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  • 中谷 武, 小川 研一, 小林 淳, 北村 諭
    1991 年 29 巻 7 号 p. 789-794
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    peptide leukotriene は, 冠動脈血流量を減少させることが知られている. leukotriene D4 (LTD4), leukotriene C4 (LTC4) を麻酔下雑種成犬8頭の右房および左房から注入した際の冠血流量, 冠血管抵抗の変動の差から, 肺における leukotriene の代謝が冠循環に及ぼす影響について検討した. LTD4投与では左房注入に比し右房注入で冠血流量の減少率, 冠血管抵抗の増加率が有意に大であった. LTC4投与では右房注入, 左房注入間の有意差は認められなかったが右房注入で冠血流量の減少率, 冠血管抵抗の増加率が大である傾向を示した. LTC4注入後の動脈血中LTC4濃度は, 左房注入に比し右房注入で有意に低値を示した. 以上の結果より, LTD4は肺血管床で代謝, 失活し, LTC4はLTD4に変換され活性化されることが示唆され, 循環血液中のLTD4, LTC4の冠循環に対する作用が肺でのLTの代謝により修飾を受けることが解明された.
  • 西村 善博, 前田 均, 田中 勝治, 橋本 彰則, 橋本 由香子, 横山 光宏, 福崎 恒
    1991 年 29 巻 7 号 p. 795-801
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    加齢による呼吸筋力の変化を検討するため, 成人116名 (男性57例, 女性59例) を対象に, 座位にて全肺気量位での呼気最大口腔内圧 (PEmax) 及び残気量位での吸気最大口腔内圧 (PImax) を測定した. 口腔内圧測定の至適回数に対する予備的検討で, 最低3回測定すれば再現性のよい値が得られたので, 3回測定での最大値を用いた. PEmaxの平均値は, 男女それぞれ123.6cmH2O及び79.0cmH2O, PImaxの平均値はそれぞれ98.4cmH2O及び71.9cmH2を示し, 性別間で有意差を認めた. PEmax及びPImaxは男女とも年齢との間に有意な負の相関を認めた. PEmaxは全肺気量と有意な正相関を, PImaxは残気率と有意な負の相関を認めた. 残気率は加齢による増加を認めた. 以上の呼吸筋力の検討より, 加齢による吸気筋力低下の原因の一つに経年的な残気率増大が関与している可能性が示唆された. 一方, 呼気筋力の経年的筋力低下は肺機能諸量と明確な関係を示さず, 栄養状態, 全身的筋力低下など多因子の関与が推測された. 最大口腔内圧測定は最低3回行えば再現性のある値の得られることが確認された.
  • 早坂 真一, 高田 実, 篠原 勉, 今村 純孝, 瀧藤 伸英, 工藤 新三, 松井 薫, 楠 洋子, 益田 典幸, 根来 俊一, 福岡 正 ...
    1991 年 29 巻 7 号 p. 802-807
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺癌213例 (腺癌92例, 扁平上皮癌63例, 小細胞癌37例, 大細胞癌21例) および, 良性肺疾患87例について糖鎖抗原であるCA-50, SKLX, ST-439を測定し, 腫瘍マーカーとしての有用性を検討した. CA-50は肺癌全体で12.8%, 腺癌で22.8%, SLXは肺癌全体で29.7%, 腺癌で42.4%, ST-439は, 肺癌全体で25.3%, 腺癌で38.0%の陽性率であった. 良性肺疾患での偽陽性率はCA-50が4.8%, SLXが15.3%, ST-439が3.6%であった. 腺癌における Combination assay では, CEA, ST-439の組み合わせが61.9%と最も高い診断効率を示した.
  • 木内 英則, 永田 真, 保谷 功, 倉光 薫, 坂本 芳雄, 山本 恵一郎, 土肥 豊, 吉田 哲
    1991 年 29 巻 7 号 p. 808-813
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支喘息発作重積状態10例について気管支ファイバースコープを用いた気管支洗浄療法を試み, その有効性および適応について検討した. 施行前後の平均PaCO2値は, それぞれ64.4±17.4Torr, 51.9±11.0Torrであり, 洗浄により有意に低下した. 理学的所見, 発作強度を含めた治療効果は, 有効7例 (有効率70%) であった. 施行前PaCO2が55Torr以上の5例は粘液栓が大量に回収され, いずれも有効であったが, 55Torr以下の5例中3例は洗浄によりPaCO2が上昇し, 発作も悪化, 遷延した. 施行前後のPaO2/FiO2比は軽度改善傾向に止まり, 明らかな動脈血の酸素化の改善は認めなかった. 以上より本療法の適応は一般的薬物療法に反応しない高炭酸ガス血症があり, 気管内挿管・人工換気開始後もなおPaCO2 55Torr以上であり, 粘液栓による高度な気道閉塞が想定される症例と考えられた. 本療法は適応を慎重に決定する限りにおいては有効であり, 試みる価値があると考えられた.
  • 松原 正秀, 坪田 紀明
    1991 年 29 巻 7 号 p. 814-823
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    胸部手術患者148例の術前後にトレッドミルによる運動負荷試験を行い, 心肺機能の変化について検討した. 術前に比べ術後は運動によるPaO2の低下する症例が増え, 肺摘除群では全例低下するなど術式による差が認められた. また, 運動の終点 (End point) における中止理由として, 術後呼吸器症状を呈する症例が増え, その中でもPaO2の低下するものが増加した. 呼吸器症状群は, その他の中止理由群に比べ, 術前は一秒率が, 術後は%DLCOが低く, 運動に伴う呼吸器症状の発現には, 術前は換気制限や循環反応の差が関与しているが, 術後は拡散障害によるPaO2の低下が主として関与していると考えられた. また, 好気的運動能力の指標となる嫌気的代謝閾値 (Anaerobic thereshold, AT) は, 術式による差は認めず, 一方, 自覚的最大酸素摂取量 (VO2max (s. l)) では肺切除量による差が現れ, 胸部手術患者の心肺機能を評価するにはATだけでなく, VO2max (s. l) まで測定する必要があると思われた.
  • 中西 美枝, 曽根 三郎, 小倉 剛
    1991 年 29 巻 7 号 p. 824-828
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    未治療の癌性胸水のCSF活性を骨髄細胞を用いた in vitro のコロニー形成能にて検討したところ, 主に単球・マクロファージがみられ, 他に顆粒球, 好酸球コロニーも少数認められた. 抗体中和実験にて胸水中にGM-CSFおよびM-CSFの存在することが明かとなった. さらに, 癌性胸水に対し, 局所療法として遺伝子組替え型ヒトIL-2の14日間連日胸腔内投与したところ胸水中CSF活性は有意に増加し, 主にマクロファージと顆粒球・マクロファージコロニーも軽度に増加した. 以上より, 肺癌に伴う悪性胸水にはCSF活性が存在し, IL-2投与にて有意に増加することから, 局所での単球・マクロファージの動態・機能発現に関与する可能性が示唆された.
  • 米丸 亮, 阿部 直, 小林 弘祐, 川城 丈夫, 横山 哲朗
    1991 年 29 巻 7 号 p. 829-835
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺・胸郭系において胸水貯留の音の伝達特性に及ぼす影響を検討した. 実験的胸水として生理的食塩水を雑種成犬の胸腔内へ注入し, 気管切開口から胸壁までの音の伝達特性を100~1,000Hzの周波数範囲で測定した. 実験的胸水の貯留部では100~200Hzの範囲で周波数が低いほど音の透過損失が増大した. 一側の胸腔あたり5, 10, 15ml/kgの実験的胸水による100Hz純音の透過損失は, コントロールに較べてそれぞれ3.7±3.7 (平均±1標準偏差), 6.6±4.7, 10.0±5.7dB増大した. 実験的胸水貯留部より上部では音の透過損失の減少を認めた. 一側の胸腔あたり5, 10, 15ml/kgの実験的胸水による650Hz純音の透過損失はコントロールに較べてそれぞれ5.4±6.0, 7.8±6.9, 9.4±7.1dB減少した. 胸水貯留時の声音聴診の所見はこのような音の伝達特性の変化に起因すると考えた.
  • 白井 正浩, 佐藤 篤彦, 千田 金吾
    1991 年 29 巻 7 号 p. 836-843
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    呼吸器疾患の治療に際してのステロイド剤の効果の指標および耐性化要因を検討することは, 臨床的に有意義である. われわれは肺局所免疫応答を担うBAL-cellのグルココルチコイドレセプター (GR) に注目し, 宿主因子 (加齢, 活性化, 絶食) およびステロイド投与による変化を観察した. その結果, 加齢 (若年群>老年群), heat-killed BCGによる活性化 (感作群>非感作群), 栄養障害 (非絶食群>絶食群) などの宿主因子はGRに大きな影響を及ぼす事が示唆された. またプレドニゾロン1回投与によるGRの推移の検討では, 3時間後に低下し, 2日4日後に一過性に上昇を示したが, 7日後に前値に復した. ステロイドの耐性化機序の要因としてGR数の減少による感受性の低下が報告されているが, 今回の研究成績より, 耐性化は7日目以後に出現することが推察された.
  • 窪田 理, 西村 一孝, 井上 義一, 阿久津 弘, 水野 裕雄
    1991 年 29 巻 7 号 p. 844-848
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    夜間低酸素症の指標として尿中尿酸: クレアチニン変化率を肺結核後遺症患者 (127名) と正常者 (20名) において検討した. また入院できた27名では同時に血中乳酸変化率, Coenmzyme Q10 変化率, 呼吸機能も測定し検討した. 尿中尿酸: クレアチニンが増加した頻度は患者群で37%に, 正常群で10%にみられた. 尿中尿酸: クレアチニンが増加した患者群は増加しなかった群に比べて%VC, PaO2は低値を, PaCO2は高値を示した. 尿中尿酸: クレアチニン変化率は血中乳酸変化率, Coenmzyme Q10 変化率更にSaO2モニターの成績と相関しなかった. 尿中尿酸: クレアチニン変化率は夜間低酸素状態の代謝性指標として有用と考えられた.
  • 高山 浩一, 永田 忍彦, 宮川 洋介, 平野 裕志, 重松 信昭
    1991 年 29 巻 7 号 p. 849-853
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肉芽腫検出におけるTBLB階段切片標本作製の意義を検討する目的で, 1979年から1990年までの12年間に臨床的に肺サルコイドーシスと診断された132症例を解析した. 臨床病期の内訳は, Stage 0: 20例, Stage 1: 47例, Stage 2: 65例であった. 初回の気管支鏡検査における肉芽腫検出率は, Stage 0: 5%, Stage 1: 40%, Stage 2: 57%であった. 初回の検査にて肉芽腫を得られなかった75症例に対し15μm間隔でTKBLIB標本の階段切片を作製し組織学的検査を行った. 階段切片標本作製後, 肉芽腫検出率は Stage 1: 47%, Stage 2: 82%と向上が認められた. Stage 0 では, 肉芽腫検出率の向上は認められなかった. 臨床所見から胸部レ線で Stage 2 とされる症においてTBLB標本より階段切片標本を作製することにより肉芽腫病変の検出頻度の増加がみられた.
  • 小久保 光治, 山田 拓, 東 健一郎, 酒井 聡, 佐々木 裕茂, 村川 真司, 森 義雄, 梅田 正五, 松本 興治, 広瀬 一
    1991 年 29 巻 7 号 p. 854-857
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    上大静脈症候群に起因する downhill esophageal varices の報告は本邦では少ない. 我々は上大静脈症候群症例に積極的に食道内視鏡および剖検を施行し, 上大静脈症候群症例9例中2例 (22%) に downhill esophageal varices をみとめた. 8例には食道内視鏡を施行し, うち1例に downhill esophageal varices を認め, 剖検にても確認した. 他の1例は剖検のみで確認した. 自験例2例を含めた本邦報告例についても検討を加えた.
  • 松葉 健一, 桑野 和善, 池田 東吾, 村上 純滋, 石田 照佳, 安元 公正, 重松 信昭
    1991 年 29 巻 7 号 p. 858-865
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    臨床的に明らかでない軽度の肺気腫を生前に診断することは困難とされている. 最近, 肺気腫の診断にCTの有用性が注目されており, 切除肺との対比もなされてきている. 私どもは高分解能CTを用いることによって, 軽度の肺気腫がどの程度まで診断可能であるかを明らかにする目的で, 高分解能CT上の肺気腫の程度 (CT score), 切除肺でそれに対応する割面の肺気腫の程度 (pathology score) 及び肺胞壁の破壊の程度をあらわすとされる Destructive Index (DI) を比較検討した. 対象は比較的小型の肺腫瘤のために肺切除術をうけた42名である. CT score 及び pathology score の基準には, Thurl-beck らの picture grading system を用いた. その結果, スライス厚1mmの CT (1mm CT) score は12ないし57, 平均 (±SD) 22.1±9.6 (n=35), スライス厚5mmの CT (5mm CT) score は7ないし46, 平均 (±SD) 16.5±8.3 (n=33) であった. Pathology score は10ないし57, 平均 (±SD) 23.2±9.8 (n=42), DIは15.4ないし67.1, 平均 (±SD) 31.4±10.8 (n=42) であった. CT score と pathology score は相関した (1mm CT; r=0.68, p<0.001, 5mm CT; r=0.76, p<0.001). CT score とDIも有意に相関した (1mm CT; r=0.62, p<0.001, 5mm CT; r=0.74, p<0.001). さらに pathology score とDIも有意に相関した (r=0.72, p<0.001). 以上のことから, 高分解能CTを用いることによって軽度の肺気腫の診断及びその重症度の評価が可能であると考える.
  • 大道 和宏, 有田 健一, 土井 正男, 楠部 滋, 麻奥 英毅, 永島 明, 佐々木 幸治, 和田崎 晃一, 森 正樹
    1991 年 29 巻 7 号 p. 866-872
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺結核に罹患後数十年経て発症した胸腔内原発悪性リンパ腫を3例経験した. いずれも主訴は胸痛で, 診断には胸部CT, 67Gaシンチグラムが有用であり, 胸部写真では早期発見は困難であった. 病変は周囲肺組織, 胸壁軟部組織, 肋骨等を破壊しながら増殖していた. これらの病態は, 基礎疾患のない肺に発生する肺原発悪性リンパ腫とは異なり, 長期に及ぶ慢性の炎症性刺激が発症の原因であると思われた. 本邦での報告は40例余りであり稀な病態であるが, 呼吸機能障害や結核性病変の併存のために, 悪性リンパ腫に対して強力な化学療法を行いにくい症例が多く, 肺結核後遺症の診療のうえで常に念頭に置いておくべきであると思われた.
  • 小川 晴彦, 藤村 政樹, 倉島 一喜, 西 耕一, 松田 保, 村上 真也, 渡辺 洋宇, 野々村 昭孝, 北川 正信, 近藤 邦夫
    1991 年 29 巻 7 号 p. 873-877
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は25歳, 男性. 高熱, 喀痰, 咳嗽を主訴に近医を受診. 胸部X線写真で左上肺野に浸潤影と, その中の腫瘤様陰影を指摘され, 種々の抗生剤や抗結核剤が投与されたが解熱しないため, 精査加療目的で当科に紹介された. 胸部CT, 気管支造影, 気管支動脈造影, 肺動脈造影などにより, 部分肺静脈還流異常 (partial anomalous pulmonary venous drainage, 以下PAPVD) を伴う先天性気管支閉鎖症 (congenital bronchial atresia, 以下CBA) と診断し, 左上葉切除術を施行した. 本例では幼少時より, CBAの末梢相当領域に肺炎を繰り返していたが, 切除標本の所見から, 気管支の閉塞部位より末梢の気腫性領域において, 側副換気路からの感染が生じ, 一種の閉塞性肺炎を起こしていたものと判明した.
  • 鈴木 直仁, 由本 光次, 荒井 康男, 宮本 康文, 福島 範子, 佐野 靖之
    1991 年 29 巻 7 号 p. 878-884
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性. 43歳時喘息発作出現. 当初よりステロイド治療を要し入退院を繰り返していた. 50歳時当科に紹介入院となり種々の治療を行ったがステロイドを離脱できず, 入院5ヵ月目に Pneumocystis carinii 肺炎 (PCP) を併発して死亡した. 臨床上も剖検上も悪性疾患の所見はなくHIV抗体は陰性であり, ステロイド以外の免疫抑制剤や抗癌剤の使用歴もないことから, 本症例のPCPは7年にわたるステロイドの長期投与による続発性免疫不全に起因するものと考えられた. 気管支喘息のみを基礎疾患としてPCPを発症した例は検索した限りでは本例が第1例と考えられる.
  • 梅木 茂宣, 加藤 裕司, 橋口 浩二, 矢木 晋, 副島 林造, 原田 美貴
    1991 年 29 巻 7 号 p. 885-892
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    68歳の女性. 慢性リウマチとして経口金製剤 (リドーラ®) 720mg服用後6週間後に労作性呼吸因難を訴え入院した. 入院時胸部X線像, 胸部CT像, TBLB標本の病理学的所見および臨床経過より Gold lung と診断した. ステロイド剤投与により肺機能所見, 胸部X線像, 胸部CT像などの改善を得たが, 胸部CT上血管壁に沿った線維化の強い病変部の改善はわずかであった. 現在までに経口金製剤による肺臓炎の報告がない.経口金製剤による間質性肺炎の発症機序は注射製剤のそれと同様と考えられるが, その間質性肺炎において線維化の遷延する可能性が示唆された.
  • 見元 達朗, 内田 和仁, 桜庭 晶子, 土井 義之, 貫和 敏博, 植草 利公, 桑原 紀之, 稲冨 恵子, 吉良 枝郎
    1991 年 29 巻 7 号 p. 893-899
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は51歳・男性, 既往歴に慢性副鼻腔炎がある. 1983年6月, 咳嗽・喀痰・呼吸困難を主訴に入院. 理学的所見, 胸部X線・CT像, 経気管支肺生検 (TBLB) 所見などからびまん性汎細気支炎 (DPB) と診断され, 以後, 慢性副鼻腔炎・鼻中隔蛮曲症に対する手術, 縁膿菌ワクチン, アンピシリン, エリスロマイシンなどの投与を受けた. その後, 約6年を経過して施行された後縦隔腫瘍の手術に際し, 開胸肺生検を行う機会を得た. 臨床所見は各種の治療で軽快しており, 病理学的には, 呼吸細気管支壁およびその周囲に限局する線維化所見と, ごく軽度の単核細胞の浸潤・泡沫細胞の集籏を認めた. 臨床所見と併せ, この形態像はDPB病変が修復された状態を示唆するものと考えられた.
  • 梅田 啓, 市瀬 裕一, 石坂 彰敏, 笠原 美也子, 東 俊文, 鈴木 幸男, 梅沢 明弘, 金沢 実, 川城 丈夫, 横山 哲朗
    1991 年 29 巻 7 号 p. 900-903
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    眼窩あるいは眼球転移症状を初発として発見された原発性肺癌の各1例を報告した. 原発性肺癌の眼部転移, 特に眼球外眼窩転移は頻度が低い. 組織型としては腺癌が多いと報告されており, 我々の経験した2症例のうち1例は腺癌が強く疑われ, もう1例は高分化型腺癌と診断された. 眼症状発現からの平均予後は短いことが知られているが, 我々の経験した眼窩転移症例では3ヵ月, 眼球転移症例では1ヵ月であった.
  • 西 耕一, 山田 素宏, 森下 大樹, 中村 勇一, 村田 義治, 藤岡 正彦, 村本 信吾, 村上 眞也, 佐々木 恵子, 安井 正英, ...
    1991 年 29 巻 7 号 p. 904-908
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    明らかな基礎疾患のない, 25歳の若年健康男性に, 肺嚢胞, 好酸球性肺炎, 末梢血好酸球増加の臨床像を呈した症例を経験した. 好酸球性肺炎に対しステロイド療法を行ったが, 経過中に感染性肺嚢胞を合併した. 経皮的ドレナージを施行後, 右上葉切除術を行ったところ, アスペルギルス菌の菌塊が切除肺から認められた. 肺組織ではアスペルギルス菌の周囲に類肉芽腫反応が存在し, 血中アスペルギルス抗体も存在し, しかも, 肺切除後に末梢血好酸球数が減少したことから, 好酸球性肺炎および末梢血好酸球増加は, 肺アスペルギルス症によるものと考えられた. また, 肺嚢胞は好酸球性肺炎の明らかな部位に限局して認められており, 肺嚢胞の発生にも肺アスペルギルス症の関与が考えられた. 以上の様な所見を呈した肺アスペルギルス症は, きわめて稀な例と考えられたため, 文献的考察を加え報告した.
  • 寺町 政美, 宮本 信昭, 佐坂 徳浩, 中村 隆澄, 北村 文夫
    1991 年 29 巻 7 号 p. 909-912
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は68歳, 女性. 咳, 呼吸困難を主訴とし, 胸部X線写真で右胸水貯留と, 縦隔腫瘍を指摘された. 胸水中に悪性細胞を認めず, 浸潤型胸腺腫, 正岡分類III期の術前診断で, 胸骨縦切開を行った. 腫瘍は, 右肺, 心嚢に浸潤しており, さらに, 右胸腔内に多数の播種巣を認めた. 術中迅速で扁平上皮癌の診断を得たため, 腫瘍の亜全摘のみを行った. 切除標本では, 腫瘍細胞の異型性は著明で, また免疫組織化学染色でも, 抗ケラチン抗体陽性, Leu7抗体陰性で, 胸腺癌と診断した. 術後, 放射線療法, 及びシスプラチンを中心とした化学療法を行ったが効果はなく, 術後早期に遠隔転移が出現し, 術後約1年で不幸な転帰をとった.
  • 田中 春仁, 劉 震永, 楠 洋子, 福岡 正博
    1991 年 29 巻 7 号 p. 913-916
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    41歳の健康女性が咳と血淡を主訴に入院した. 胸部X線および胸部CTでは, 右肺門近傍に約5×4cmの境界鮮明な充実性腫瘤影を認めた. 血液検査では軽度の炎症反応を示すのみで, 腫瘍マーカーは正常値, また抗アスペルギルス抗体は陰性であった. 当初, 肺良性腫瘍や悪性リンパ腫を疑った. 経気管支的細胞診, 組織診は何れも陰性であったため, 上中間幹分岐部より経気管支的吸引生検 (TBAC) を施行したところ, アスペルギルスの菌要素を証明した. 抗真菌剤の投与で, 腫瘤は縮小し, air crescent sign が出現した. Sider らの提唱した locally invasive form の肺アスペルギルス症の経過中に, 壊死性菌球が出現した稀な1例と考えられた.
  • 小林 卓正, 住元 巧, 河野 修興, 村上 英紀, 日和田 邦男, 高橋 広, 永井 勲, 高田 泰治
    1991 年 29 巻 7 号 p. 917-920
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    患者は57歳, 男性. 胸部X線写真で右縦隔陰影の拡大を指摘され精査目的で入院した. CT所見から縦隔の充実性腫瘍と嚢胞の合併が疑われた. 手術時の所見は右前縦隔より胸骨後面に及ぶ腫瘍を認め, 組織学的に胸腺扁平上皮癌および胸腺嚢胞と診断した. 胸腺扁平上皮癌も胸腺嚢胞も比較的稀な疾患であり, その合併は極めて少なく, 貴重な1例と考えられた.
  • 鰤岡 直人, 冨田 桂公, 佐々木 孝夫
    1991 年 29 巻 7 号 p. 921-924
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は71歳女性. 偶然胸部異常陰影を指摘された. 胸部写真上, 左下肺野後方に辺縁平滑な半球状の腫瘤陰影を認めた. 腫瘤像はCT上, 回転異常を伴う腎であり, 経静脈腎盂造影の所見とあわせて完全重複腎盂・不完全重複尿管を合併した胸部腎であると診断した. 胸部腎は後縦隔腫瘍との鑑別が重要であるがCTと経静脈腎盂造影による画像診断により, その鑑別は容易である. 本邦では, これまで本例を含めて79例が報告されているのみで腎位置異常のうちでも稀なものである. その中でも本症例のように腎回転異常と完全重複腎盂・不完全重複尿管を合併した報告はこれまで無く, 本例は極めて稀な症例である.
  • 1991 年 29 巻 7 号 p. 925-931
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1991 年 29 巻 7 号 p. 932-942
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
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